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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B23K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B23K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23K
管理番号 1197589
審判番号 不服2007-24336  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-05 
確定日 2009-05-14 
事件の表示 平成 8年特許願第163697号「スケーリング補正機能を持つレーザ描画装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月16日出願公開、特開平 9-323180〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年6月4日に出願した特願平8-163697号であって、平成19年7月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月5日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年9月27日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年9月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成19年9月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成18年4月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、
「被描画体をレーザビームでもって走査させつつ該被描画体に対するレーザビームの変調をラスタデータに基づいて所定の周波数のクロックパルスに従って制御して描画を行うレーザ描画装置であって、
前記被描画体の寸法値を基準寸法値と比較してその寸法差及びその大小関係を判別する寸法判別手段と、
前記寸法差に従って定められる所定の間隔だけレーザビームの走査が進む毎に、前記クロックパルスの位相を前記大小関係に応じて正側及び負側のいずれか一方へ順次シフトさせ、かつ前記クロックパルスの位相シフトによる画素の全シフト量を前記寸法差に実質的に一致させるように前記クロックパルスの出力を制御するクロックパルス出力制御手段と
を具備して成るレーザ描画装置。」が、

「被描画体をレーザビームでもって走査させつつ該被描画体に対するレーザビームの変調をラスタデータに基づいて所定の周波数のクロックパルスに従って制御して描画を行うレーザ描画装置であって、
前記被描画体の寸法値を基準寸法値と比較してその寸法差及びその大小関係を判別する寸法判別手段と、
前記寸法差に従って定められる所定の間隔だけレーザビームの走査が進む毎に、前記クロックパルスの位相を前記大小関係に応じて正側及び負側のいずれか一方へ順次シフトさせ、かつ前記クロックパルスの位相シフトによる画素の全シフト量を前記寸法差に実質的に一致させるように前記クロックパルスの出力を制御するクロックパルス出力制御手段とを具備し、
前記クロックパルス出力制御手段が、前記寸法差が大きければ大きいほど前記所定の間隔が短くなるように、前記クロックパルスの位相を順次シフトさせていくことを特徴とするレーザ描画装置。」と補正された。

上記の本件補正による特許請求の範囲の請求項1における補正は、クロックパルス制御手段の制御内容を「前記寸法差が大きければ大きいほど前記所定の間隔が短くなるように、前記クロックパルスの位相を順次シフトさせていく」と限定したものであるから、いわゆる限定的減縮を目的としたものであるということができ、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものということができる。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2 特許法第36条第6項第1号及び同条項第2号についての検討
(1)本願明細書には、【発明の詳細な説明】において、
「本発明によるレーザ描画装置にあっては、個々の被描画体の寸法変動に対して適正なスケーリング補正処理をラスタデータの一画素以下の単位で行うことが特徴とされる。」(【0038】)
と記載されており、また、【0039】以降の記載においても、スケーリング補正処理を、1画素分(5μm)より小さい0.5μmシフトさせることにより行うことを前提にした実施例のみが記載されている。
これに対して、本願補正発明においては、スケーリング補正処理(シフト)をラスタデータの一画素以下の単位で行うことが特定されておらず、また、それを示唆する特定もなく、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載が整合していない。
よって、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるということができない。

(2)本願補正発明には、
「前記クロックパルス出力制御手段が、前記寸法差が大きければ大きいほど前記所定の間隔が短くなるように、前記クロックパルスの位相を順次シフトさせていく」
ことが特定されているが、発明の詳細な説明においては、上記特定について何ら記載されておらず、また、実施例も上記所定の距離を250μmとするもののみが記載されているだけであり、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載が整合していない。
よって、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるということができず、また、明確でない。

3 特許法第29条第2項(発明の進歩性)についての検討
(1)本願補正発明について
本願補正発明は、平成19年9月27日付け手続補正書でなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(上記「1 本件補正について」の記載参照)。

(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特公平4-7629号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。(下記の「イ 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した箇所に下線を付した。)

「本発明に係るパターン描画装置は、描画ビームの一走査線を画素化したとき、その各画素を描画データに基づき描画ビームで照射又は非照射することにより、対象物にパターンを描画する装置において、1走査期間内に、走査線中の画素数に対応したパルス数の描画パルス列を発生すると共に、該描画パルス列中、離散的な小なくとも2つのパルスの周期を他のパルスの周期に対して伸縮する描画パルス発生装置を備え、前記描画パルス列の各パルスの周期を1画素として描画することにより、走査線方向のパターン幅を伸縮させることを特徴とする。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第1図は本発明の一実施例に係るパターン描画装置の斜視図である。
レーザ光源1から出たレーザビームは、光変調器2によつて強度変調され、ビームエクスパンダ3によつてビームの幅が拡大された後、回転ポリゴン鏡4の反時計方向、すなわち矢印5方向の回転によつて反射・偏向され、fθレンズ6により集光され、反射鏡7の所定位置を入射される。反射鏡7は、水平に入射されたビームを下向きに変換する働きをする。その下向きのビーム、すなわちレーザスポツトは、1次元移動ステージ8上の感光材9の上に結像し、光変調器2の働きにより明滅しながら、矢印10の出力(x方向)に直線走査される。この感光材9には、例えば銀塩フイルム、ジアゾフイルム等の感光材料が用いられ、ステージ8上に真空吸着等で固定されている。また、ステージ8は、架台11上に配置され、ねじ12及びモータ13により架台11上を矢印10と直角方向(y方向)に移動する。従つて、上述のようにレーザスポツトは矢印10の方向(x方向)に走査され、そして、ステージ8が矢印10と直角方向(y方向)に移動するので、2次元のパターンが感光材9上に描画される。」(第2ページ左欄第27行?同ページ右欄第19行)

「レーザ走査同期検出器16の出力は、プリアンプ21を経てコンパレータ22によつて論理値「1」又は「0」のデジタル信号38aとなり、信号38aが「1」の場合は、タイマ(以下TMと略す)23により微小時間Tm遅延された信号CLとなる。このTM23による遅延時間Tmは、レーザ走査同期検出器16にレーザスポツトが入射してから実際に描画を始めるまでの時間差に相当する時間を与えるためのものである。この遅延信号CLは、オア回路24に供給されると共に、後述する5進カウンタ(以下CCと略す)39及びカウンタ(以下CBと略す)36に供給される。カウンタ(以下CAと略す)25は、オア回路24からのプリセツト指令PRが供給され、ラツチ回路(以下LTと略す)26からプリセツトデータが供給される。CA25は、発振器27からのクロツク信号CKをLT26でプリセツトされたデータからカウントダウンし、カウント値が零になつたならば零信号28を出力する。零信号28は、オア回路24に供給されているので、CA25はプリセツトされるカウント値に対応する周期で、一定時間毎に零信号28を出力し、その位相はレーザ走査同期検出器16の検出信号と同期する。
一方、LT26には、描画装置の外部から、リセツトデータ29が供給されている。また、描画装置の外部からは、パターンの伸縮のための符号信号30が、インバータ31及びアンド回路32に供給される。インバータ31の出力信号及び零信号28はアンド回路33に供給され、その出力信号はオア回路34に供給される。アンド回路32は符号信号30の他に零信号28が供給され、その出力信号はオア回路35に供給される。オア回路34及びオア回路35には、上述の入力の他に、CB36及びROM37からなる補償回路の出力も供給される。」(第2ページ右欄第43行?第3ページ左欄第34行)

「さて、実際のパターン描画に際し、描画パターンを0.01%走査方向に長くする場合の動作について説明する。尚、1走査線は10000画素とする。この場合は、レーザスポツトが発振器27のクロツク信号CKにして10001個で描画される走査線の長さを、描画パルス信号44の10000パルス(10000画素)で描画パターンを描けばよい。すなわち、CKDL41によつてクロツク信号CKの10000クロツクのうち、離散的な5ケ所で1クロツクの周期を1/5周期分だけ長くした描画パルス信号42を作ればよい。そこで、まずデータ29として、10000/5=2000をLT26に入力する。また符号信号30としては、パターンを長くするので、論理値「0」を与える。
第6図は、第2図中のCA25のカウントと零信号28との関係を示したタイムチヤートである。CA25は、LT26を介してプリセツトデータとして2000がプリセツトされる。このプリセツトは、オア回路24の出力すなわちプリセツト指令PRの立上りでセツトされる。従つて、1走査線の開始時は遅延パルス信号CLの立上がりでデータ2000がCA・25にセツトされ、途中CA25の出力である零信号28の立上りでセツトされる。また、零信号28の1パルスはクロツク信号CKの1パルスと同期し、CA25はクロツク信号CKの立上がりでカウントダウンする。つまり、クロツク信号CKの立上がりでCA25が0となり、このため零信号28が「1」となり、その結果その立上がりでプリセツトデータ2000がセツトされる。本来ならば、プリセツトデータがセツトされると直ちに零信号28は「0」になるが、クロツク信号CKと同期しているためクロツク信号CKと共に「0」になる。
さて、このようにCA25が、信号CLに応答してクロツク信号CKの計数を開始すると、符号信号30が論理値「0」のため、アンド回路32と33のうち、アンド回路33のみがゲートを開いているから、CC39のカウント出力値は「0」である。このためDEC40は信号40Aのみを論理値「1」とし、CKDL41は第3図のアンド回路51Aのゲートを開き、オア回路53からはクロツク信号CKがそのまま描画パルス信号42として発生する。さて、CA25が零信号28を出力すると、その信号はアンド回路33、オア回路34を介して、CC39にアツプ入力として印加され、CC39の計数値は「1」となる。このとき、前述の表-1よりDEC40は信号40Bのみを論理値「1」にするから、CKDL41は、遅延回路50Aによつてクロツク信号CKに対して1/5周期分遅した信号52Bをオア回路53から描画パルス信号42として発生する。すなわち、零信号28が出力された時、描画パルス信号42はクロツク信号CK、そのものである信号52Aから、クロツク信号CKに対して1/5周期遅れた信号52Bに切替えられる。
第7図は、その動作を示したタイムチヤートである。信号52A?52Eは、それぞれ周期TP、デユーテイ50%のクロツク信号であり、これらの信号は時間θ、すなわちTP/5ずつずれている。CKDL41は、これらの信号のうち1つを選択して取り出すので、デコーダ40の出力が端子40Aから40Bへ破線70の時点で切替わると、第7図中、信号42aに示すように、パルスの1つ分の長さT_(71)がTP/5だけ長くなるが、それ以後のパルス列は信号52Aに対してθだけ位相が遅れたまま規則的に続く。時間TP(1周期)は1つの画素の長さに対応したものであるが、上記のように切り替えた場合には、その時のパルスの周期t2は上記TPより長くなり、その1画素分の走査距離が長くなり、描画パターンが伸びることになる。
さて、CA25は、クロツク信号CKが2000個供給される度に1個の零信号28を出力し、CC39のカウント出力値はクロツク信号CKが10000個供給される間に5回、零信号28を出力するので、順次、カウントアツプし、デコーダ40の出力も零信号28の発生に応答して順次40A→40B→40C→40D→40E→40Aと変化する。このため、CKDL41からの描画パルス信号42は、第7図中、信号52A→52B→52C→52D→52E→52Aと順次切替えられる。もちろん、各切替えのタイミングにおける1パルスは1/5周期だけ他のパルスの周期TPよりも長くなつている。」(第4ページ右欄第27行?第5ページ右欄第22行)

「このように、1走査線中の画素数(10000)に対応したパルス数から成る出力信号44のうち、離散的な(2000パルス毎)5パルスの周期が1/5周期だけ長くなる。その結果スケーリングを行なわない1走査線に対して、1画素分長い1走査線としてパターンが描画され、走査方向に、0.01%だけ拡大されたパターンが描画される。
さて、パターンを縮小させる場合には、符号信号30を論理値「1」にしておくことにより、第2図中、零信号28はアンド回路32、オア回路35を介してCC39にダウン入力として供給され、デコーダ40の出力信号が40A→40E→40D→40C→40B→40Aと変化する。
今、デコーダ40の出力が信号40Aから40Eへ切替わると、第7図の信号42bに示すように、パルス間隔が1つだけT_(72)となつてTP/5だけ短くなるが、それ以後のパルス列は信号52Aに対してθだけ位相が進んだまま規則的に続く。このときのパルスの周期t_(3)は上記TPより短くなり、その1画素分の走査距離が短くなり、描画パターンが縮小されることになる。この場合も、一定周期ごとに切り換えが行なわれ、CKDL41からの描画パルス信号42は52A→52E→52D→52C→52B→52Aと順次切り換えられる。
このように、符号信号30の正負(論理値「0」、「1」)によつてCC39はアツプカウントあるいはダウンカウントに切替えられ、零信号28がアツプ入力として与えられれば描画パターンが伸び、ダウン入力として与えられれば縮むことになる。」(第6ページ左欄第18行?同ページ右欄第4行)

「さらに、上記実施例でLT26にプリセツトデータとして1000を入力しておくと、1走査線の走査開始から1000画素毎に、1画素分の長さが1/5周期分だけ伸縮し、一走査線中、離散的な10画素分によつて、パターンの伸縮が行なわれる。このときパターンの伸縮は0.02%となる。尚この場合、第2図中、CB36は、OSC27のクロツク信号CKを計数するとしたが、CKDL41の信号42を計数して10000カウントしたら、信号38bを発生するように構成する。」(第7ページ左欄第5?14行)

イ 引用例1に記載された発明の認定
上記記載から、引用例1には、パターン描画装置に関し、
「レーザ光源1から出たレーザビームは、1次元移動ステージ8上の感光材9の上に結像し、光変調器2の働きにより明滅しながら、矢印10の出力(x方向)に直線走査され、ステージ8が矢印10と直角方向(y方向)に移動するので、2次元のパターンが感光材9上に描画される装置であって、
描画ビームの一走査線を画素化したとき、その各画素を描画データに基づき描画ビームで照射又は非照射することにより、対象物にパターンを描画する装置において、
1走査期間内に、走査線中の画素数に対応したパルス数の描画パルス列を発生すると共に、前記描画パルス列の各パルスの周期を1画素として描画し、
実際のパターン描画に際し、描画パターンを0.01%走査方向に長くする場合の動作については、1走査線は10000画素とすると、レーザスポツトが発振器27のクロツク信号CKにして10001個で描画される走査線の長さを、描画パルス信号44の10000パルス(10000画素)で描画パターンを描けばよく、すなわち、CKDL41によつてクロツク信号CKの10000クロツクのうち、離散的な5ケ所で1クロツクの周期を1/5周期分だけ長くした描画パルス信号42を作ればよく、まずデータ29として、10000/5=2000をラッチ回路LT26に入力し、
カウンタCA25は、発振器27からのクロツク信号CKをLT26でプリセツトされたデータからカウントダウンし、カウント値が零になつたならば零信号28を出力するものであり、
CA25は、LT26を介してプリセツトデータとして2000がプリセツトされ、
CA25が、信号CLに応答してクロツク信号CKの計数を開始した後に、
零信号28が出力された時、描画パルス信号42はクロツク信号CK、そのものである信号52Aから、クロツク信号CKに対して1/5周期遅れた信号52Bに切替えられ、
切替わると、
パルスの1つ分の長さT_(71)がTP/5だけ長くなるが、それ以後のパルス列は信号52Aに対してθだけ位相が遅れたまま規則的に続き、ここで、時間TP(1周期)は1つの画素の長さに対応したものであり、
各切替えのタイミングにおける1パルスは1/5周期だけ他のパルスの周期TPよりも長くなつており、
また、描画装置の外部からは、パターンの伸縮のための符号信号30が、供給され、
符号信号30の正負(論理値「0」、「1」)によつて描画パターンが伸び、または、縮むことになり、
パターンを縮小させる場合には、切替わると、パルス間隔が1つだけT_(72)となつてTP/5だけ短くなるが、それ以後のパルス列は信号52Aに対してθだけ位相が進んだまま規則的に続くものであり、
このように、1走査線中の画素数(10000)に対応したパルス数から成る出力信号44のうち、離散的な(2000パルス毎)5パルスの周期が1/5周期だけ長くなり、その結果スケーリングを行なわない1走査線に対して、1画素分長い1走査線としてパターンが描画され、走査方向に、0.01%だけ拡大されたパターンが描画され、
さらに、上記実施例でLT26にプリセツトデータとして1000を入力しておくと、1走査線の走査開始から1000画素毎に、1画素分の長さが1/5周期分だけ伸縮し、一走査線中、離散的な10画素分によつて、パターンの伸縮が行なわれ、このときパターンの伸縮は0.02%となるパターン描画装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭62-124999号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。
「第1図において、プリント基板9には、複数部分例えば4つの隅部に断面円形状の貫通孔21、22、23、24が穿設され、これと対応するように、テーブル10には伸縮のないプリント基板9を所定の位置に位置ずれなく正確に取り付けた際に、各貫通孔21、22、23、24と中心軸を同じくする検出部31、32、33、34が設けられている。
検出部31?34は互いに同じ構成を有し、第2図に示すように、例えば貫通孔21の上方に当該検出部の光源としてのランプP1及びランプPlの光を平行光線にして貫通孔21に導くためのレンズL1を有し、貫通孔21を通った光を集光レンズL2を通じてセンサSE上に投射することにより、貫通孔21の像をセンサSE上に結像させるようになされている。」(第3ページ右上欄第18行?同ページ左下欄第14行)

「これに対して、第4図に示すように、貫通孔21の位置がセンサSEの中心点01よりずれると、そのずれた方向及びずれ量を表す電圧出力Va?Vdを発生する。例えば、貫通孔21がX方向に移動すると、センサSE上に導かれた像Mは貫通孔21の移動方向と逆方向に移動し、これにより各光センサSEa?SEdは像Mの面積Sa、Sb、Sc、Sdに比例した電圧Va、、Vb、Vc、Vdを出力する。従って、像Mの移動方向及び移動量を表すΔUxは、像Mの面積((Sb-Sd)/ (Sb+Sd))に比例することから、貫通孔21の移動方向及び移動量を表すΔtxは、電圧Va?Vdを用いて表すことができる。」(第4ページ左上欄第4-16行)

「以上のように、演算回路36は、センサSEの出力電圧に基づいて各貫通孔21?24の検出部31?34に対するずれ量及び方向を求めて、当該ずれ量及び方向からプリント基板9の変形量及びずれ方向、ずれ量を算出して各補正データDX、DY、Dθを出力する。
描画制御回路39は、X方向の補正データDXに基づいて、光ビーム変調走査系40に含まれる光変調器3(第9図)及び回転多面鏡6(第9図)のタイミングを変化させて、プリント基板9上のX方向の描画開始点を移動することによりX方向のずれを補正する。またプリント基板9のX方向の変形を補正する場合は、例えば特開昭59-178072号公報に開示の手法を用いて、作図データIMDAのクロックレートを伸縮率α_(X)に応じて僅かに変更することによりプリント基板9の変形を補正するような描画を行う。」(第6ページ右上欄第8行?同ページ左下欄第5行)

(3)本願補正発明と引用発明の対比
ア ここで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「レーザ光源1から出たレーザビームは、1次元移動ステージ8上の感光材9の上に結像し、光変調器2の働きにより明滅しながら、矢印10の出力(x方向)に直線走査され、ステージ8が矢印10と直角方向(y方向)に移動するので、2次元のパターンが感光材9上に描画される装置であって、描画ビームの一走査線を画素化したとき、その各画素を描画データに基づき描画ビームで照射又は非照射することにより、対象物にパターンを描画する装置において、1走査期間内に、走査線中の画素数に対応したパルス数の描画パルス列を発生すると共に、前記描画パルス列の各パルスの周期を1画素として描画」する装置が、本願補正発明の「被描画体をレーザビームでもって走査させつつ該被描画体に対するレーザビームの変調をラスタデータに基づいて所定の周波数のクロックパルスに従って制御して描画を行うレーザ描画装置」に相当する。

引用発明において「CA25は、LT26を介してプリセツトデータとして2000がプリセツトされ、CA25が、信号CLに応答してクロツク信号CKの計数を開始した後に、零信号28が出力された時」は、1走査線の10000画素を(離散的な)5箇所で分けられた各2000画素分の走査が進んだとき(毎)のことであるから、引用発明の「CA25は、LT26を介してプリセツトデータとして2000がプリセツトされ、CA25が、信号CLに応答してクロツク信号CKの計数を開始した後に、零信号28が出力された時」は、本願補正発明の「所定の間隔だけレーザビームの走査が進む毎」に相当する。

引用発明の「描画装置の外部からは、パターンの伸縮のための符号信号30が、供給され、符号信号30の正負(論理値「0」、「1」)によつて描画パターンが伸び、または、縮むことになり、」「描画パターンを0.01%走査方向に長くする場合・・・描画パルス信号42はクロツク信号CK、そのものである信号52Aから、クロツク信号CKに対して1/5周期遅れた信号52Bに切替えられ、切替わると、パルスの1つ分の長さT_(71)がTP/5だけ長くなるが、それ以後のパルス列は信号52Aに対してθだけ位相が遅れたまま規則的に続き、」「パターンを縮小させる場合には、切替わると、パルス間隔が1つだけT_(72)となつてTP/5だけ短くなるが、それ以後のパルス列は信号52Aに対してθだけ位相が進んだまま規則的に続くもの」であることと、本願補正発明の「前記クロックパルスの位相を前記大小関係に応じて正側及び負側のいずれか一方へ順次シフトさせ」ることとは、「クロックパルスの位相を、被描画体の伸縮の方向性に応じて正側及び負側のいずれか一方へ順次シフトさせ」ることで一致する。

引用発明は、「レーザスポツトが発振器27のクロツク信号CKにして10001個で描画される走査線の長さを、描画パルス信号44の10000パルス(10000画素)で描画パターンを描」くことを、「10000クロツクのうち、離散的な5ケ所で1クロツクの周期を1/5周期分だけ長く」して10000パルスによって10001(=10000+1/5×5)画素分の長さを走査することにより成そうしたものであり、それを実施するため、2000画素毎に1/5周期遅れた信号に切替えられ、切替わると、パルスの1つ分の長さがTP/5だけ長くなるが、それ以後のパルス列は位相が遅れたまま規則的に続くように処理し、このような処理を5箇所の各切り替えタイミングで行ったものであるから、引用発明は、「クロックパルスの位相シフトによる画素の全シフト量を描画パターンの伸縮量に実質的に一致させるように前記クロックパルスの出力を制御する」ものであるということができる。
したがって、引用発明の「実際のパターン描画に際し、描画パターンを0.01%走査方向に長くする場合の動作については、1走査線は10000画素とすると、、レーザスポツトが発振器27のクロツク信号CKにして10001個で描画される走査線の長さを、描画パルス信号44の10000パルス(10000画素)で描画パターンを描けばよく、すなわち、CKDL41によつてクロツク信号CKの10000クロツクのうち、離散的な5ケ所で1クロツクの周期を1/5周期分だけ長くした描画パルス信号42を作ればよ」いことと、本願補正発明の「クロックパルスの位相シフトによる画素の全シフト量を前記寸法差に実質的に一致させるように前記クロックパルスの出力を制御する」こととは、「クロックパルスの位相シフトによる画素の全シフト量を被描画体の伸縮量に実質的に一致させるように前記クロックパルスの出力を制御する」ことで一致する。

引用発明の「1走査線中の画素数(10000)に対応したパルス数から成る出力信号44のうち、離散的な(2000パルス毎)5パルスの周期が1/5周期だけ長くなり、その結果スケーリングを行なわない1走査線に対して、1画素分長い1走査線としてパターンが描画され、走査方向に、0.01%だけ拡大されたパターンが描画され、さらに、上記実施例でLT26にプリセツトデータとして1000を入力しておくと、1走査線の走査開始から1000画素毎に、1画素分の長さが1/5周期分だけ伸縮し、一走査線中、離散的な10画素分によつて、パターンの伸縮が行なわれ、このときパターンの伸縮は0.02%となる」ことは、0.01%拡大する場合は2000パルス毎にクロックパルスを長くする(シフトさせる)のに対して、0.02%拡大する場合は(すなわち、伸縮量が大きいほど)、1000パルス毎に(すなわち、所定の間隔が短くなるように)クロックパルスを長くする(シフトさせる)ことを意味しているから、引用発明の「1走査線中の画素数(10000)に対応したパルス数から成る出力信号44のうち、離散的な(2000パルス毎)5パルスの周期が1/5周期だけ長くなり、その結果スケーリングを行なわない1走査線に対して、1画素分長い1走査線としてパターンが描画され、走査方向に、0.01%だけ拡大されたパターンが描画され、さらに、上記実施例でLT26にプリセツトデータとして1000を入力しておくと、1走査線の走査開始から1000画素毎に、1画素分の長さが1/5周期分だけ伸縮し、一走査線中、離散的な10画素分によつて、パターンの伸縮が行なわれ、このときパターンの伸縮は0.02%となる」ことと、本願補正発明の「前記クロックパルス出力制御手段が、前記寸法差が大きければ大きいほど前記所定の間隔が短くなるように、前記クロックパルスの位相を順次シフトさせていく」こととは、「クロックパルス出力制御手段が、被描画体の伸縮量が大きければ大きいほど所定の間隔が短くなるように、クロックパルスの位相を順次シフトさせていく」ことで一致する。
また、上記より、引用発明では、「所定の間隔」は、被描画体の伸縮量に従って定められるといえるから、引用発明の「1走査線中の画素数(10000)に対応したパルス数から成る出力信号44のうち、離散的な(2000パルス毎)5パルスの周期が1/5周期だけ長くなり、その結果スケーリングを行なわない1走査線に対して、1画素分長い1走査線としてパターンが描画され、走査方向に、0.01%だけ拡大されたパターンが描画され、さらに、上記実施例でLT26にプリセツトデータとして1000を入力しておくと、1走査線の走査開始から1000画素毎に、1画素分の長さが1/5周期分だけ伸縮し、一走査線中、離散的な10画素分によつて、パターンの伸縮が行なわれ、このときパターンの伸縮は0.02%となる」ことと、本願補正発明の「所定の間隔」が「前記寸法差に従って定められる」こととは、「所定の間隔」が「被描画体の伸縮量に従って定められる」ことで一致する。

イ 本願補正発明と引用発明の一致点
したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「被描画体をレーザビームでもって走査させつつ該被描画体に対するレーザビームの変調をラスタデータに基づいて所定の周波数のクロックパルスに従って制御して描画を行うレーザ描画装置であって、
被描画体の伸縮量に従って定められる所定の間隔だけレーザビームの走査が進む毎に、前記クロックパルスの位相を被描画体の伸縮の方向性に応じて正側及び負側のいずれか一方へ順次シフトさせ、かつ前記クロックパルスの位相シフトによる画素の全シフト量を前記被描画体の伸縮量に実質的に一致させるように前記クロックパルスの出力を制御するクロックパルス出力制御手段とを具備し、
前記クロックパルス出力制御手段が、前記被描画体の伸縮量が大きければ大きいほど前記所定の間隔が短くなるように、前記クロックパルスの位相を順次シフトさせていくレーザ描画装置。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

ウ 本願補正発明と引用発明の相違点
本願補正発明は「被描画体の寸法値を基準寸法値と比較してその寸法差及びその大小関係を判別する寸法判別手段」を具備し、該寸法判別手段で判別された被描画体の寸法値と基準寸法値の「寸法差」、及び、「大小関係」によって被描画体の伸縮量、及び、被描画体の伸縮の方向性を特定するのに対し、引用発明においてはそのような限定がなされていない点。

(4)当審の判断
ア 次に、上記相違点について検討する。
引用例2には、プリント基板9の4隅に穿設された貫通孔21-24の位置の、該各貫通孔と対応するテーブル10の検出部31-34の中心点の位置に対するずれ量及び方向を求めて、補正データを出力する手段が記載されている。そして、引用例2の4隅の貫通孔21-24間の寸法が本願補正発明の「被描画体の寸法値」に相当し、引用例2の検出部31-34の各センサの中心点間の寸法が本願補正発明の「基準寸法値」に相当し、引用例2の「ずれ量及び方向」が本願補正発明の「寸法差及び大小関係」に相当するから、引用例2には、上記相違点1の「被描画体の寸法値を基準寸法値と比較してその寸法差及びその大小関係を判別する寸法判別手段」と同等の機能を有するものが記載されているといえる。
そして、引用例2には、「プリント基板9のX方向の変形を補正する場合は、例えば特開昭59-178072号公報に開示の手法を用いて」と記載されているが、「特開昭59-178072号公報」は、特許出願公告公報である引用例1に係る特許出願の特許出願公開公報であるから、実質的に引用例1と同じ発明が記載されているといえる。したがって、引用例2には、引用例2に記載された上記手段を引用例1に適用することが示唆されているから、引用例2に記載された上記手段を引用発明に適用することは当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例2に記載された事項から、当業者が容易に想到し得ることである。

イ そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるということができず、また、明確でないから、特許法第36条第6項第1号及び同条項第2号の規定に違反しており、本願補正発明は特許を受けることができない。
また、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、本件補正は、同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年4月21日付け手続補正書でなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(「第2 平成19年9月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照)。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成19年9月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「3 特許法第29条第2項(発明の進歩性)についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明における、クロックパルス制御手段の制御内容について「前記寸法差が大きければ大きいほど前記所定の間隔が短くなるように、前記クロックパルスの位相を順次シフトさせていく」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成19年9月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「3 特許法第29条第2項(発明の進歩性)についての検討」において記載したとおり、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-11 
結審通知日 2009-03-17 
審決日 2009-03-30 
出願番号 特願平8-163697
審決分類 P 1 8・ 537- Z (B23K)
P 1 8・ 575- Z (B23K)
P 1 8・ 121- Z (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 重雄  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 森林 克郎
日夏 貴史
発明の名称 スケーリング補正機能を持つレーザ描画装置  
代理人 松浦 孝  
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