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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B08B
管理番号 1197591
審判番号 不服2007-25091  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-12 
確定日 2009-05-14 
事件の表示 特願2001-343413「炭化ケイ素焼結体の洗浄方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月20日出願公開、特開2003-145074〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年11月8日の特許出願であって、平成19年5月18日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年7月19日に意見書が提出されるとともに明細書について手続補正がされたが、同年8月7日付けで拒絶すべき旨の査定がされ、同年9月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年7月19日付けで補正された明細書及び願書に添付された図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。
「半導体部品製造用の高密度かつ高純度の炭化ケイ素焼結体をブラスト法を用いて洗浄するに際し、
粒径が1?3mmのドライアイス紛を、ブラスト圧3?6kg/cm^(2)、ブラスト時間0.3?0.5秒/cm^(2)の条件で前記炭化ケイ素焼結体の表面にブラストすることを特徴とする炭化ケイ素焼結体の洗浄方法。」

3.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-119840号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、PVD、CVD法等の薄膜形成装置、ドライエッチング法、CMP法、スピンコート法等による薄膜加工装置のチャンバーの内壁面及びチャンバー内装置部品の表面の汚れを除去するための成膜装置のクリーニング方法、PVD装置のスパッタリングターゲットのクリーニング方法及びこれらに用いるクリーニング装置に関する。」
(2)段落【0011】
「【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明者らはドライアイスによるショットブラスト法に着目した。従来から塗装膜や金型離型剤等を除去する手段の一つとして、ドライアイスブラスト法が知られており、この方法はブラストしたショット材が気化消失するため、ショット材の回収を要しないという利点を有する。」
(3)段落【0023】
「ショット材であるドライアイス粉末の粒径を0.5mm以下に制限する理由は、より大きな粒径例えば1mm以上では、後記の実施例に示すように、クリーニング後の対象物表面の粗度が大きくなることが知られ、表面に与える物理的なダメージが無視しえなくなると考えられるためである。また、破砕機2で破砕された直後のドライアイス粉末粒子は角張った形状を有しており、そのため粒径を0.5mm以下にしても、これが1mm以上の場合と比較して、そのクリーニング効果にほとんど差がないことが見出されたためである。」
(4)段落【0037】
「(2)焼結体からなるスパッタリングターゲット:スパッタリング装置のスパッタリングターゲットには、各種の金属、非金属が用いられるが、とくにこれが酸化物、炭化物、窒化物等の焼結体の場合には、経時的に表面組成が変化し、或いは組織の内部成長によるノジュールが発生する。これらは生成する薄膜の特性を著しく劣化させるため、スパッタリングターゲットの再生クリーニングがきわめて重要である。」
(5)段落【0040】
「【実施例】(実施例1)クリーニング対象物表面の物理的なダメージに対するドライアイス粒径の影響を評価するため、以下の試験を行った。図1及び図2に示すような装置を用い、ロールミルのロール間隔tを、0.5、1.0、1.5、2.0、3.0mmの5段階に変えて、同1条件で供試材表面にドライアイス粒子をブラストし、ブラスト前後の表面粗さを比較した。」
(6)段落【0041】
「供試材は純Al板で、表面粗さは約7000Å一定とした。ブラスト条件は、ノズルスロート径9mm、固気混合器前の空気圧力4.5×10^(5)Pa(ゲージ圧)、ドライアイスペレット供給速度約1.0kg/mim、ブラスト時間15秒とし、Al板表面50mmの距離からほぼ直角にブラストした。ブラスト後のAl板の表面粗さ(Ra)を、触針式表面粗さ計で測定した結果を表1に示す。」
(7)段落【0043】
「ロールミルで破砕した後のドライアイスの粒径分布は測定していないが、上記のロール間隔tは、ほぼドライアイス粒子の最大粒径に対応する。表1に見られるように、tが大きいほど表面粗さが大きくなり、とくにtが0.5mmの時と1.0mmの時ではかなりの差がある。したがって、クリーニング対象物表面のダメージを軽減するためには、ドライアイス粉末の粒径を0.5mm以下にする必要があると考えられる。」
(8)段落【0044】
「また、スパッタリング装置のアルミニウム製部品の表面の付着物を除去するに際して、上記のロール間隔tを0.5、1.0、2.0mmの3段階に変えて、クリーニング所要時間を比較した。ブラスト条件は上記と同じにし、径20cmの円形の平滑な部品表面をクリーニングするに要した時間は、tが上記のいずれの場合にも約1.5分であった。この結果から、クリーニング所要時間に対するドライアイス粒径の影響は小さいことが確かめられた。」
そこで、上記摘記事項を技術常識を勘案しながら本願発明に照らして整理すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「スパッタリングターゲットの炭化物の焼結体をショットブラスト法を用いてクリーニングするに際し、
粒径が0.5、1.0、1.5、2.0、3.0mmのドライアイス粒子を、固気混合器前の空気圧力4.5×10^(5)Pa(ゲージ圧)、ブラスト時間15秒の条件で前記炭化物の焼結体の表面にブラストした炭化物の焼結体の洗浄方法。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ショットブラスト法を用いてクリーニングする」は本願発明の「ブラスト法を用いて洗浄する」に相当し、以下同様に、「ドライアイス粉末」は「ドライアイス粉」に相当する。
したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。
<一致点>
「焼結体をブラスト法を用いて洗浄するに際し、ドライアイス粉を焼結体の表面にブラストする焼結体の洗浄方法。」
<相違点1>
洗浄の対象となる焼結体が、本願発明は「半導体部品製造用の高密度かつ高純度の炭化ケイ素焼結体」であるのに対し、引用発明は「スパッタリングターゲットの炭化物の焼結体」である点。
<相違点2>
ドライアイス粉をブラストする条件が、本願発明は「粒径が1?3mmのドライアイス紛を、ブラスト圧3?6kg/cm^(2)、ブラスト時間0.3?0.5秒/cm^(2)」であるのに対し、引用発明は「粒径が0.5、1.0、1.5、2.0、3.0mmのドライアイス粒子を、固気混合器前の空気圧力4.5×10^(5)Pa(ゲージ圧)、ブラスト時間15秒」である点。

5.相違点についての判断
<相違点1>について
半導体部品用の炭化ケイ素焼結体の洗浄を行うことは、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-169233号公報、特開平5-17229号公報にも見られるように、本願出願前より周知の技術であり、引用発明において、洗浄の対象を、半導体部品用の炭化ケイ素焼結体とすることに困難性はなく、また、その際に、高密度かつ高純度のものとすることは、単なる設計的な事項に過ぎない。
<相違点2>について
・粒径について
請求人は、審判請求書において、
「確かに、引用文献1の実施例ではドライアイス粉のロール間隔(最大粒径)0.5?3.0mmの範囲で洗浄している。しかし、引用文献1の段落番号[0023]の「ドライアイス粉の粒径を1mm以上にすると被洗浄体表面への物理的ダメージが無視できなくなる」旨の記載を裏付けるかのように、ドライアイス粒径が小さいほど(0.5mm以下)被洗浄体表面の物理的なダメージが抑制される傾向が引用文献1の実施例から見出せる。即ち、ドライアイス粉の粒径を1?3mmとすることで最も有効な洗浄効果が得られることは引用文献1には示唆されていない。」
と主張している。
しかしながら、被洗浄体表面の物理的なダメージが被洗浄体の表面硬度に応じて異なることは、当業者であれば推察し得ることである。よって、ドライアイス粉の粒径は、期待する洗浄効果と許容されうるダメージの程度に応じて、ドライアイス粉の粒径を設定することは、当業者が適宜設計を行う事項に過ぎない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明には、ドライアイスの粒子径に関して、段落【0010】に「ドライアイスの粒子径は、前記汚染物の剥離効果が得られるのであれば特に制限はないが、取扱いの容易性、また後に説明するブラスト装置の機構上の理由から、粒径1?3mmのドライアイス紛を用いることが好ましい。」と記載されているのみであって、被洗浄体を「半導体部品製造用の高密度かつ高純度の炭化ケイ素焼結体」とした際に、ドライアイス粒子の粒径を1?3mmと限定することによって、他の数値範囲に比して、特に有効な洗浄効果が得られるものとも認められない。
・ブラスト圧について
引用発明における「固気混合器前の空気圧力」は、本願発明の「ブラスト圧」に実質的に相当するものであり、引用発明の「4.5×10^(5)Pa」は、約4.6kg/cm^(2)であるから、本願発明の数値範囲に入るものである。
・ブラスト時間について
本願発明は、ブラスト時間を「ブラスト時間0.3?0.5秒/cm^(2)」とし、単位面積当たりの時間を定義するものであるのに対し、引用発明は、ブラスト時間15秒であるが、被洗浄体の面積が不明であるため、単位面積当たりの時間は不明である。しかしながら、ドライアイス粉をブラストすることにより洗浄を行うという洗浄形態から、期待する洗浄効果を得るためには、被洗浄体の面積によって、洗浄時間が異なることは、当業者であれば容易に推察し得る事項であって、本願発明のように単位面積当たりのブラスト時間を設定することは、適宜成し得る設計的な事項に過ぎない。
本願発明の効果についてみても、引用発明及び周知の技術から予測しうる範囲内であり、特別顕著なものとは言えない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-10 
結審通知日 2009-03-17 
審決日 2009-03-30 
出願番号 特願2001-343413(P2001-343413)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長馬 望  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 尾家 英樹
鈴木 孝幸
発明の名称 炭化ケイ素焼結体の洗浄方法  
代理人 三好 秀和  

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