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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H |
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管理番号 | 1197605 |
審判番号 | 不服2008-7552 |
総通号数 | 115 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-27 |
確定日 | 2009-05-14 |
事件の表示 | 特願2001-297805「モータ付ハイポイド減速装置及びそのシリーズ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年4月3日出願公開、特開2003-97650〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成13年9月27日の出願であって、平成20年2月21日付けで拒絶査定がされたところ、平成20年3月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、本願の請求項1?3に係る発明は、平成15年7月31日付け、及び平成19年6月6日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項3】 特定のハイポイドピニオンを直切りしたモータ軸と、該モータ軸を軸受を介して支持するモータカバーとを有するモータに対して、 前記特定のハイポイドピニオンに噛合するハイポイドギヤと、前記モータ軸と直交するよう配され前記ハイポイドギヤに入力された回転動力を外部に出力する出力軸とを少なくとも収容可能で、且つ、互いに減速段数が異なると共に減速段数の違いに応じて互いに異なる複数タイプの歯車箱が、 前記モータカバーを介して直接結合可能及び分離可能とされ、且つ、 前記モータと前記歯車箱との結合においては、該複数タイプの歯車箱のうちの1つが、前記モータカバーと連結されている ことを特徴とするモータ付ハイポイド減速装置。」 2.原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明及び記載事項 (1)刊行物1:「HYPOID GEARMODE カタログ」,青木精密工業株式会社,1995年 (刊行物1) 刊行物1には、下記の技術的事項が記載されている。なお、「モーター」を「モータ」、「ギヤー」を「ギヤ」と表記した個所がある。 (a)モータ付ハイポイド減速装置がシリーズ別に掲載されており、テクニカルイラストレーションによる3タイプの分解図が記載されている(第51?53頁)。 (b)「ハイポイドギヤモード資料編-10」には、テクニカルイラストレーションで示されるGHB型モータ付ハイポイド減速装置が記載されている。(第51頁) (c)モータ36から突出したモーターシャフト5は、先端にハイポイドピニオンを備えており、そのハイポイドピニオンは表紙の写真からも明らかな如く、モータ軸に直切りされている。(第51頁、表紙) (d)本体1内には、ハイポイドピニオンに噛合するハイポイドギヤ(1次側ギヤ6)が組み込まれている。(第51頁、表紙) (e)本体1は、モータシャフト5と直交するように配置され、ハイポイドギヤ(1次側ギヤ6)に入力された回転動力を外部に出力する出力軸9とを備えている。(第51頁) (f)2次側ピニオン軸7と出力ギヤ8との組み合わせから成る減速装置を結合することにより、1つのモータ付ハイポイド減速装置が構成されている。(第51頁) (g)モータ36は、本体1に対してモータカバー4を六角穴付ボルト30にて直接結合可能及び分離可能とされている。(第51頁) (h)モータ36は、ハイポイドピニオン付きのモータシャフト5及びそれを支持するラジアルボールベアリング10、モータカバー4等で構成されている。(第51頁) (i)本体1のベース2の4隅に固定用の穴が設けられている。(第51頁) (j)モータ付ハイポイド減速装置の仕様一覧が示されている。(第2?41頁) (k)GHB型直結タイプの0.2KW仕様一覧によると、このモータ付ハイポイド減速装置は、図面の下に「()寸法は1段型」と注釈があることからも明らかなように、噛合段数(減速段数)が1段の減速装置(減速比5,10)又は2段の減速装置(減速比15,20・・60)であり、減速段数の違いに応じた互いに異なる本体1が記載されている。(第3頁、第51頁) (l)GHB型直結タイプのモータ付ハイポイド減速装置の0.1KW?1.5KW仕様一覧が掲載されている。(第2?5頁) (m)GHBB型ブレーキ付きタイプの0.2KW仕様一覧によると、このモータ付ハイポイド減速装置の本体1は、GHB型直結タイプの0.2KW仕様で採用されている本体1と概ね同一の構造である。(第3及び8頁、第51頁) したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 【引用発明】 ハイポイドピニオンを直切りしたモータシャフト5と、該モータシャフト5をラジアルボールベアリング10を介して支持するモータカバー4とを有するモータ36に対して、 前記ハイポイドピニオンに噛合するハイポイドギヤ(1次側ギヤ6)と、前記モータシャフト5と直交するよう配され前記ハイポイドギヤ(1次側ギヤ6)に入力された回転動力を外部に出力する出力軸9とを少なくとも収容可能で、且つ、互いに減速段数が異なると共に1段又は2段に応じて互いに異なる1段型及び2段型の本体1が、 前記モータカバー4を介して直接結合可能及び分離可能とされ、且つ、 前記モータ36と前記本体1との結合においては、該1段型及び2段型の本体1のうちの1つが、前記モータカバー4と連結されている モータ付ハイポイド減速装置。 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「モータシャフト5」は本願発明の「モータ軸」に相当し、以下同様に、「ラジアルボールベアリング10」は「軸受」に、「モータカバー4」は「モータカバー」に、「モータ36」は「モータ」に、「ハイポイドギヤ(1次側ギヤ6)」は「ハイポドギヤ」に、「出力軸9」は「出力軸」に、「1段又は2段」は「減速段数の違い」に、「1段型及び2段型」は「複数タイプ」に、「本体1」は「歯車箱」に、それぞれ相当するので、両者は、下記の一致点、及び相違点を有する。 <一致点> ハイポイドピニオンを直切りしたモータ軸と、該モータ軸を軸受を介して支持するモータカバーとを有するモータに対して、 前記ハイポイドピニオンに噛合するハイポイドギヤと、前記モータ軸と直交するよう配され前記ハイポイドギヤに入力された回転動力を外部に出力する出力軸とを少なくとも収容可能で、且つ、互いに減速段数が異なると共に減速段数の違いに応じて互いに異なる複数タイプの歯車箱が、 前記モータカバーを介して直接結合可能及び分離可能とされ、且つ、 前記モータと前記歯車箱との結合においては、該複数タイプの歯車箱のうちの1つが、前記モータカバーと連結されているモータ付ハイポイド減速装置。 (相違点) 前記ハイポイドピニオンに関し、本願発明は、「特定の」ものであるのに対し、引用発明は、そのような構成を具備しているかどうか明らかでない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (相違点について) 刊行物1には、例えば第3頁のGHB型直結タイプの0.2KW仕様一覧によれば、このモータ付ハイポイド減速装置は、図面の下に「( )寸法は1段型」と注釈があることからも明らかなように、噛合段数(減速段数)が1段の減速装置(減速比5,10)と2段の減速装置(減速比15?60)といった互いに減速段数が異なると共に、減速段数の違いに応じた互いに異なる複数タイプの本体1(本願発明の「歯車箱」に相当。以下同様。)が記載されている。 また、刊行物1には、当該図面(当該頁に記載された図面のうち右上の図面参照)におけるモータ36の尾部から本体1に設けられた出力軸9の中心までの寸法として、241(240.5)との記載があり、当該数値から判断するに、減速段数が1段型に比べて2段型の場合は、モータ36尾部から本体1に設けられた出力軸9の中心までの寸法が0.5mm大きくなっていることが明らかである。 一方、当該図面を、「ハイポイドギヤモード資料編-10」(第51頁)の記載も併せて参照すれば、当該図面における本体1のベース2の4隅に設けられた固定用の穴の中心と、本体1に設けられた出力軸9の中心との間の寸法として、図面左側では80(80.5)、図面右側では80(79.5)との記載があり、当該数値から判断するに、本体1内において出力軸9の中心が、1段型に比べて2段型の場合は、図面左側に0.5mm移動していることが見てとれる。 これらのことを総合して判断すれば、刊行物1において、上記したモータ36の尾部から本体1に設けられた出力軸9の中心までの寸法として、241(240.5)となっている理由は、1段型に比べて2段型の場合は、本体1内において出力軸9の中心が、図面左側に0.5mm移動したことに起因するものであって、モータ36側に起因するものではないとみるのが妥当である。 そうすると、刊行物1に記載されたものにおいては、ハイポイドギヤが直切りされたモータシャフト5は、減速段数にかかわらず同一であると理解することができる。 また、そうでないとしても、歯車減速機の技術分野において、モータと歯車減速機を分離した構造として、部品の共通化を図り、生産性の向上や流通・在庫等のコスト低減を図ることは、従来周知慣用の技術手段(例えば、特開昭63-262042号公報には、「電動機と歯車減速機を分離し、組合せにより使用できるようにし、電動機と歯車減速機が一体の場合より大幅に種類数を減らし、生産性の向上と、流通在庫等のコスト低減をはかるものである」(第3頁右下欄第17行?第4頁左上欄第1行)と記載されている。)であること、ハイポイドギヤが直切りされた高価なモータシャフト5をモータ36毎に複数種類用意することになれば、部品の種類の増大、コストの増大となることは明らかであることは、引用発明においても当然に検討されるべき技術的課題であるなどの諸事情を考え併せれば、引用発明のモータ36のモータシャフト5(ハイポイドピニオン)を、特定の(同一の)ものとすることにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が技術的に格別の困難性を有することなく容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。 また、本願発明の奏する効果についてみても、引用発明の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。 したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】を補充した平成20年4月28日付けの手続補正書において、「仮に1段型と2段型とにおいて、同一仕様のモータ(ハイポイドピニオンが直切りされているモータ軸も同一)が使用されている場合には、ハイポイドギヤに対する噛合状態(組付け状態)が異なる筈である。 ここで、ハイポイドピニオンとハイポイドギヤとの噛合は、その性質上、高い噛合精度(±0.025mm程度)が要求されることから、例えば上記のように1段型と2段型とで0.5mmもの差が生じれば、噛合精度の誤差範囲(組付け誤差の範囲)を遥かに超えてしまい、正常に機能を発揮し得ない。 かかる点を考慮するならば、引用文献1(刊行物1)においては、1段型と2段型とで使用される(ハイポイドピニオンが直切りされた)モータ軸は、『異なるもの』と判断するのが自然且つ妥当なものである。」(【本願発明が特許されるべき理由】「(3)本願発明(請求項1)と引用発明との対比」の項参照)などと主張している。 審判請求人は、刊行物1に記載されたものにおいて、「特定のハイポイドピニオン」と噛合う複数の減速段数(例えば、1段型と2段型)で使用されるハイポイドギヤの諸元が「同一仕様のもの」であることを前提として主張をしているが、本願発明では、「特定のハイポイドピニオン」と噛合う複数の減速段数で使用されるハイポイドギヤの諸元が「同一仕様のもの」であるとは特定されていないし、また、刊行物1に記載されたものにおいては、1段型に比べて2段型の場合は、本体1内において出力軸9の中心が、図面左側に0.5mm移動していることに鑑みれば、本体1内の歯車、すなわちハイポイドギヤの仕様が変更されていると理解されることから、ハイポイドギヤが直切りされたモータシャフト5は、減速段数にかかわらず同一であると理解することができるし、また、そうでないとしても、引用発明のモータ36のモータシャフト5(ハイポイドピニオン)を、特定の(同一の)ものとすることにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が技術的に格別の困難性を有することなく容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せないことは、上述のとおりであるから、審判請求人の上記主張は認められない。 4.むすび 結局、本願の請求項3に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の請求項1及び2に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-04 |
結審通知日 | 2009-03-10 |
審決日 | 2009-03-30 |
出願番号 | 特願2001-297805(P2001-297805) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 忠志 |
特許庁審判長 |
溝渕 良一 |
特許庁審判官 |
常盤 務 岩谷 一臣 |
発明の名称 | モータ付ハイポイド減速装置及びそのシリーズ |
代理人 | 高矢 諭 |
代理人 | 牧野 剛博 |
代理人 | 松山 圭佑 |