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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B
管理番号 1197606
審判番号 不服2008-8680  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-09 
確定日 2009-05-14 
事件の表示 特願2002-253735「研磨布用ドレッシング装置及び研磨布のドレッシング方法並びにワークの研磨方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日出願公開、特開2004- 90142〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成14年8月30日の特許出願であって、同19年1月5日付けで拒絶理由が通知され、同19年3月19日に意見書の提出とともに手続補正がされ、その後、同19年8月16日付けで再度拒絶理由が通知され、同19年10月18日に意見書の提出とともに手続補正がされたが、同20年3月7日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同20年4月9日に本件審判の請求がされた。
本件出願の請求項1乃至9に係る発明は、平成19年10月18日付けで補正がされた明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項2】 研磨布を貼付した上定盤と下定盤を具備する両面研磨装置に対し、前記研磨布をドレッシングするための研磨布用ドレッシング装置であって、少なくとも、研磨布と接してドレッシングを行うドレス面を有するドレッシング手段と、該ドレッシング手段を保持する保持手段と、前記ドレッシング手段のドレス面の角度を調整する角度調整手段とを具備し、前記角度調整手段が、前記ドレッシング手段と保持手段を連結するエアバック又はボールジョイントからなるものであり、前記ドレッシング手段のドレス面がドレッシングを行うときに前記定盤の形状に応じて角度が調整されて前記研磨布と接触するものであり、前記ドレッシング手段を2つ具備し、各ドレッシング手段のドレス面が上下に向いてそれぞれ独立して角度が調整されるものであることを特徴とする研磨布用ドレッシング装置。」

2 刊行物記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に頒布された刊行物である特開2001-246550号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の技術的事項が記載されている。

(1) 刊行物1の記載内容
ア 第2頁第1欄第35行?第2欄第40行
「【発明の属する技術分野】
本発明は半導体ウエハ等の基板を研磨する研磨装置に関し、ターンテーブル上に配置された研磨パッド又は砥粒を含む研磨プレートの研磨面を削って目立て等再生・修整(以下、「ドレッシング」と称する)を行うドレッサーの構成に特徴を有する研磨装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の研磨装置は図1に示すように、上面に研磨パッド(研磨布)2を設けたターンテーブル1と半導体ウエハ等の被研磨基板(図示せず)を保持するトップリング3を具備し、該トップリング3の下面に保持した被研磨基板をターンテーブル1上面の研磨パッド2の研磨面に押圧すると共に、該研磨面に砥液を供給し、ターンテーブル1を矢印A方向に回転し、トップリング3を矢印B方向に回転し、研磨パッド2と被研磨基板の相対運動により、該被研磨基板を平坦且つ鏡面に研磨している。なお、研磨パッド2に替え砥粒を含んだ研磨プレートを設ける場合もある。なお、図中、4はターンテーブル駆動モータ、5は減速機である。
【0003】上記構成の研磨装置において、何枚かの被研磨基板を研磨すると、研磨パッド2の研磨面が経時変化や目詰まり等を起こして研磨効率が低下するという問題がある。そこで、通常は所定枚数の被研磨基板を研磨したら、或いは目詰まり等で研磨効率が低下した場合、ドレッサー6により研磨パッド2の研磨面を削って、ドレッシングを行っている。
【0004】上記ドレッサー6はドレッサープレート7と該ドレッサープレート7を支持するドレッサーシャフト8を具備し、該ドレッサーシャフト8は図示しない回転機構で矢印C方向に回転するようドレッサー旋回アーム10に回転支持されている。ドレッサー旋回アーム10は旋回モータ11により矢印D方向に旋回するようになっており、該旋回モータ11を含むドレッサー旋回アーム10はエアシリンダ12で矢印E方向に上下動できるようになっている。ドレッサーシャフト8の回転力は回転力伝達ピン9でドレッサープレート7に伝達される。
【0005】また、ドレッサープレート7はエアシリンダ12により、ドレッサーシャフト8を介して研磨パッド2上に押圧されるようになっている。ドレッサープレート7の下面にはダイヤモンド粒を埋め込んだ部材(ダイヤモンドペレット等)又はセラミック材等の硬質材からなる環状突起7a又はペレットが設けられている。ドレッサーシャフト8とターンテーブル1の回転によるドレッサープレート7と研磨パッド2の相対運動により、該研磨パッド2の研磨面は削られ、ドレッシングが行われる。
【0006】研磨パッド2のドレッシングに際して、研磨面の削り量はドレッサープレート7の押圧力に比例するから、押圧力を大きくすれば研磨パッド2の削り量、即ち研磨パッド2の消耗量が大きくなる。そこで研磨パッド2の消耗量の少ないドレッシングを行うにはドレッサープレート7の押圧力を小さくすること、即ち押圧力の低荷重化が必要である。しかしながら、上記構成の研磨装置のように、エアシリンダ12で旋回モータ11、ドレッサー旋回アーム10を含むドレッサー6を上下動させる構成では、ドレッサープレート7の押圧力の低荷重化を精度良く実現することは困難となる。
【0007】また、ドレッサープレート7の研磨パッドに対する追従性も悪く、更にドレッサー6はドレッサープレート7を傾動自在に支持するため、ボール軸受13又は自動調芯コロ軸受を必要とする等構造が複雑になるという問題があった。」

イ 第3頁第3欄第42行?第4欄第33行
「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態例を図面に基いて説明する。図2は本発明に係る研磨装置に用いるドレッサーの構成例を示す図である。なお、本発明に係る研磨装置のドレッサーを除く部分は図1の研磨装置と略同一であるのでその説明は省略する。
【0016】本ドレッサー6は図2に示すように、中空のドレッサーシャフト15の下端にベローズ14を介してドレッサープレート7を取付けた構成である。また、ドレッサーシャフト15の中空部15aにはロータリージョイント16を介して加圧空気源(図示せず)から加圧空気17が供給されるようになっている。ドレッサーシャフト15は図1に示す研磨装置のドレッサー旋回アーム10に回転自在に支持され、回転機構により矢印C方向に回転できるようになっている。
【0017】上記のようにドレッサーシャフト15の下端にベローズ14を介してドレッサープレート7を取付けた構成のドレッサー6を具備する研磨装置において、ドレッサー旋回アーム10を旋回させ、ドレッサー6をターンテーブル1上の研磨パッド2上のドレッシング位置まで移動させ、更にエアシリンダ12でドレッサー旋回アーム10と共にドレッサー6を下降(ドレッサープレート7の環状突起7a又はペレットの下面と研磨パッド2の上面の間に若干の間隙が生じる程度に下降)させる。
【0018】上記状態から、ベローズ14の内部にロータリージョイント16及びドレッサーシャフト15の中空部15aを通して加圧空気17を供給することにより、該ベローズ14は下降し、ドレッサープレート7を研磨パッド2に押圧する。この時の押圧力はベローズ14の内部に供給する加圧空気17の量で設定されるから、押圧力を0から任意の値に設定することが極めて容易となり、押圧力の低荷重化も容易となる。
【0019】また、ドレッサープレート7の背面を上下に伸縮自在で傾動自在なベローズ14で支持し押圧することになるので、ドレッサープレート7の研磨パッド2面に対する追従性が極めて良好となる。また、ドレッサー6の構成をドレッサーシャフト15の下限にベローズ14を介してドレッサープレート7を取り付ける構成とすることにより、従来構造のドレッサーに比較しその構造が極めて簡単になる。なお、ベローズ14は伸縮傾動自在で且つ回転方向に剛性のあるものであれば、格別の限定はない。」

(2) 刊行物1記載の発明
刊行物1において、ドレッサープレート(7)が研磨パッド(2)と接してドレッシングを行うドレス面を有していることは、技術常識より明らかである。また、刊行物1の段落【0007】、【0019】の記載からみて、ベローズ(14)又はボール軸受(13)が、ドレッサープレート(7)のドレス面の角度を調整するものであり、ドレッサープレート(7)のドレス面がドレッシングを行うときに前記研磨パッド(2)の形状に応じて角度が調整されて前記研磨パッド(2)と接触することは明らかである。
そこで、これらの事項を技術常識を勘案しながら本願発明に照らして整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「研磨パッド(2)を設けたターンテーブル(1)を具備する研磨装置に対し、前記研磨パッド(2)をドレッシングするためのドレッサー(6)であって、少なくとも、研磨パッド(2)と接してドレッシングを行うドレス面を有するドレッサープレート(7)と、該ドレッサープレート(7)を保持するドレッサー旋回アーム(10)と、前記ドレッサープレート(7)のドレス面の角度を調整するベローズ(14)又はボール軸受(13)とを具備し、前記ベローズ(14)又はボール軸受(13)が前記ドレッサープレート(7)とドレッサー旋回アーム(10)を連結するものであり、前記ドレッサープレート(7)のドレス面がドレッシングを行うときに前記研磨パッド(2)の形状に応じて角度が調整されて前記研磨パッド(2)と接触するものであるドレッサー。」


3 対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「研磨パッドを設けた」は、本願発明の「研磨布を貼付した」に相当しており、以下同様に、「ドレッサー」は「研磨布用ドレッシング装置」に、「ドレッサープレート」は「ドレッシング手段」に、「ドレッサー旋回アーム」は「保持手段」にそれぞれ相当し、「ベローズ又はボール軸受」は「エアバック又はボールジョイント」に相当するとともに「角度調整手段」に相当していることが明らかである。
また、刊行物1記載の発明の「ターンテーブルを具備する研磨装置」は、定盤を具備する研磨装置であることに限り、本願発明の「上定盤と下定盤を具備する両面研磨装置」と共通している。
さらに、刊行物1記載の発明では、ドレッシング手段のドレス面はドレッシングを行うときに研磨布の形状に応じて角度が調整されるものであるが、研磨布は定盤に貼付されているので、ドレッシング手段のドレス面はドレッシングを行うときに定盤の形状に応じて角度が調整されものであることが明らかである。
従って、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。
[一致点]
「研磨布を貼付した定盤を具備する研磨装置に対し、前記研磨布をドレッシングするための研磨布用ドレッシング装置であって、少なくとも、研磨布と接してドレッシングを行うドレス面を有するドレッシング手段と、該ドレッシング手段を保持する保持手段と、前記ドレッシング手段のドレス面の角度を調整する角度調整手段とを具備し、前記角度調整手段が、前記ドレッシング手段と保持手段を連結するエアバック又はボールジョイントからなるものであり、前記ドレッシング手段のドレス面がドレッシングを行うときに前記定盤の形状に応じて角度が調整されて前記研磨布と接触するものである研磨布用ドレッシング装置。」である点。
[相違点]
本願発明では、研磨装置が研磨布を貼付した上定盤と下定盤を具備する両面研磨装置であり、ドレッシング手段を2つ具備し、各ドレッシング手段のドレス面が上下に向いてそれぞれ独立して角度が調整されるものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、そのように特定されていない点。

4 相違点についての検討
上記相違点について検討する。
研磨布を貼付した上定盤と下定盤を具備する両面研磨装置は、例えば、特開平11-123658号公報、特開2000-42898号公報等にも記載されているように従来周知のものである。
また、両面研磨装置において、上下の研磨面のそれぞれに対してドレッシング手段を設けることも、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-170720号公報の図1及び段落【0007】?【0009】、並びに原査定の備考欄に引用された実願昭52-39825号(実開昭53-134289号)のマイクロフィルムの第6頁第5?7行等に記載されているほか、上記特開2000-42898号公報の図6及び段落【0033】等に記載されているように従来周知の事項にすぎない。
してみると、刊行物1記載の発明の研磨布用ドレッシング装置に上記従来周知の事項を採用し、研磨布を貼付した上定盤と下定盤を具備する両面研磨装置に対し前記研磨布をドレッシングするための研磨布用ドレッシング装置とし、ドレッシング手段を2つ具備し、各ドレッシング手段のドレス面が上下に向くように設けることに格別の困難性はない。その際に、各ドレッシング手段のドレス面がそれぞれ独立して角度が調整されるものとなることは、刊行物1記載の発明に上記従来周知の事項を採用することに伴う自明の事項にすぎない。
また、本願発明の作用効果についてみても、刊行物1記載の発明、従来周知の事項より当業者が十分予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであり、本願発明は、刊行物1記載の発明、及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-05 
結審通知日 2009-03-17 
審決日 2009-03-30 
出願番号 特願2002-253735(P2002-253735)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今関 雅子  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 佐々木 一浩
鈴木 孝幸
発明の名称 研磨布用ドレッシング装置及び研磨布のドレッシング方法並びにワークの研磨方法  
代理人 好宮 幹夫  

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