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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200625301 審決 特許
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不服20062586 審決 特許
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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1197714
審判番号 不服2005-6899  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-18 
確定日 2009-05-21 
事件の表示 平成 7年特許願第524702号「疎水性薬物送達システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 9月28日国際公開、WO95/25505、平成 9年10月28日国内公表、特表平 9-510708〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成7年3月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1994年3月18日 米国)を国際出願日とする出願であって、拒絶理由通知に応答して平成16年5月6日付けで手続補正がなされたが、平成17年1月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年5月17日付けで手続補正がなされたものであり、その後、前置報告書を用いた審尋がなされ、平成19年12月27日付けで回答書が提出されたが、当審において拒絶理由が通知され、平成20年7月8日付けで手続補正がなされたものである。

本願の請求項1?5に係る発明は、平成20年7月8日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】0.5乃至10ミクロン未満の粒径の疎水性担体を持つ粒子と一体化された薬物およびポリペプチドから選択される医薬を含む、経口投与に適した用量形態を有していることを特徴とする薬物調製物であって、
前記薬物がカルバマゼピン、グリセオフルビン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、フルタミド、ニフェジピン、インドメタシン、ナプロキセン、エストロゲン、テストステロン、ステロイド、フェニトイン、エルゴタミンおよびカンナビノイドから選択され、
前記ポリペプチドがシクロスポリン、アンギオテンシン/I,IIおよびIII、エンケファリン、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)、抗炎症ペプチドI,II,III、ブラジキニン、カルシトニン、コレシストキニン断片26-33および30-33、プレ/プロ・コレシストキニン(V-9-M)、β-エンドルフィン、ジノルフィン、ロイコキニン、黄体化ホルモン放出ホルモン、ニューロキニン、ソマトスタチン、サブスタンスP、甲状腺放出ホルモンから選択され、
前記疎水性担体がモノステアリン酸グリセリド、モノパルミチン酸グリセリド、モノステアリン酸グリセリドとモノパルミチン酸グリセリドの混合物、モノリノール酸グリセリド、モノオレイン酸グリセリド、モノパルミチン酸グリセリド・モノステアリン酸グリセリド・モノオレイン酸グリセリドおよびモノリノール酸グリセリドの混合物、モノリノレン酸グリセリド、モノガドレイン酸グリセリド、モノパルミチン酸グリセリド・モノステアリン酸グリセリド・モノオレイン酸グリセリド・モノリノール酸グリセリド・モノリノレン酸グリセリドおよびモノガドレイン酸グリセリドの混合物、モノおよびジグリセリドエステルの混合物、ラクチル化ステアロイルカルシウム、エトキシル化モノおよびジグリセリド、乳酸化モノおよびジグリセリド、グリセロールおよびプロピレングリコールのラクチル化カルボン酸エステル、長鎖カルボン酸のラクチル化エステル、長鎖カルボン酸のポリグリセロールエステル、長鎖カルボン酸のプロピレングリコールモノおよびジエステル、ラクチル化ステアロイルナトリウム、ソルビタンモノステアラート、ソルビタンモノオレアート、長鎖カルボン酸の他のソルビタンエステル、スクシニル化モノグリセリド、クエン酸ステアリルモノグリセリル、ヘプタン酸ステアリル、ロウのセチルエステル、カプリル酸ステアリル、C10-C30コレステロール/ラボステロールエステル、スクロース長鎖カルボン酸エステル、アセチル化モノグリセリド、プロピレングリコールモノエステル・蒸留モノグリセリド・ラクチル化ステアロイルナトリウムの混合物、プロピレンモノエステル・蒸留モノグリセリド・ラクチル化ステアロイルナトリウムの混合物、ならびにグリセリルモノグリセレートからなる群から選択される少なくとも1個の疎水性物質を含み、
ここで、長鎖カルボン酸が、12個乃至30個の炭素原子を含むことを特徴とする薬物調製物。」

2.引用例
当審の拒絶理由に引用された本願出願前の刊行物である特開平2-223533号公報(以下、「引用例1」という。)と、同じく周知例として提示された図書である「松本光雄等編、「薬剤学マニュアル」、1989年、株式会社南山堂発行、第59頁」(以下、「周知例」という。)には、図面とともに、次のことが記載されている。なお、下線は、当審で付与した。

[引用例1]
(1-i)「(1)ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはそれを含有してなる常温で固体のマトリックスに薬効成分が分散しているマトリックス剤。
(2)ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはそれを含有してなる常温で固体のマトリックスに薬効成分が分散している細粒剤または顆粒剤。
(3)?(5)・・省略・・
(6)請求項(2)または(5)記載の細粒剤または顆粒剤をカプセルに充填してなるカプセル剤。」(特許請求の範囲の請求項(1)、(2)、(5)参照)
(1-ii)「本発明において用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステルである。ポリグリセリンは、「1分子中にn個(環状)?n+2個(直鎖・分枝状)の水酸基と、n-1個(直鎖・分枝状)?n個(環状)のエーテル結合をもった多価アルコール」であり[“ポリグリセリンエステル”阪本薬品工業株式会社編集,発行(1986年5月2日)第12頁]、たとえば式
HO-(CH_(2)-CH(OH)-CH_(2)-O)_(n)-H [I]
[式中、nは重合度を示す。]で表わされるもの等が用いられ、nとしては通常2?50、好ましくは4?20の整数が用いられる。この様なポリグリセリンの具体例としては、たとえばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ペンタデカグリセリン、エイコサグリセリン、トリアコンタグリセリン等が用いられ、特にたとえばテトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン等か繁用される。また、脂肪酸としては、たとえば炭素数8?40、好ましくは12?22の飽和または不飽和高級脂肪酸等を用いることができる。この様な脂肪酸としては、たとえばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リシノール酸、カプリル酸、カプリン酸、ベヘニン酸等が用いられ、とりわけたとえばステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、リシノール酸等が繁用される。ポリグリセリン脂肪酸エステルは上記のごときポリグリセリンと脂肪酸とのモノエステルまたはポリエステルが用いられる。」(第3頁左上欄1行?同頁右上欄13行参照)
(1-iii)「薬効成分としては、比較的融点の高い(たとえば約121℃以上)医薬、たとえば塩酸フェニルプロパノールアミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸フェニレフリン、テオフィリン、カフェイン、塩酸プロ力インアミド、スルファニルアミド、セファレキシン、アンピシリン、モルシドミン、インドメタシン、スルフィソキサゾール、スルファダイアジン、ディアゼパム、バルプロ酸、硫酸キニジン、アスピリン、3,4-ジヒドロ-2,8-ジイソプロピル-3-チオキソ-2H-1,4-ベンズオキサジン-4-アセティックアシッド(以下“AD-5467”と称する)、塩酸デラプリル、イブリフラボン、トレピブトン等や、比較的融点の低い(約0?120℃、好ましくはたとえば約40?120℃)医薬、たとえば硝酸イソソルバイド、ケトプロフェン、シクランデレート、イデベノン、2-(12-ヒドロキシドデカ-5,10-ジイニル)-3,5,6-トリメチル-1,4-ベンゾキノン(以下“AA-861”と称する)などが用いられるほか、たとえばインスリン、バソプレッシン、インターフェロン、IL-2、ウロキナーゼ、a.FGF、b.FGFなどのペプタイド、タンパク等も薬効成分として用いることができ、本発明のマトリックス剤ではこれら医薬を徐々に消化管中で溶解または(および)吸収させることができる。」(第4頁左下欄18行?第5頁左上欄3行参照)
(1-iv)「たとえばポリグリセリン脂肪酸エステルまたはそれと常温で固体のマトリックスを作りうる上記のごとき添加剤とを加温(40?150℃好ましくは50?110℃)熔融したものに、薬効成分、あるいは酸性薬効成分と水に不溶ないし難溶の固体塩基、あるいは塩基性薬効成分と腸溶性物質を適量加えて分散させた後に冷却し、マトリックス特に細粒または顆粒とする等によって本発明の安定な放出制御性マトリックス剤特に細粒剤または顆粒剤を得ることかできる。ポリグリセリン脂肪酸エステルを加温熔融する際に上記の脂質、添加剤を一緒に加温熔融させてもよく、また別々に加温熔融した後に混合してもよい。また、薬効成分と共に添加剤の粒子を加えることもできる。公知の造粒機等を用いて目的の細粒(通常500?10μmの粒子75重量%以上、500μm以上の粒子5重量%以下、10μm以下の粒子10重量%以下であり、好ましくは500?105μmの粒子75重量%以上、500μm以上の粒子5%重量以下、74μm以下の粒子10重量%以下である)、顆粒剤(たとえば1410?500μmの粒子90重量%以上、177μm以下の粒子5重量%以下である)等のマトリックス剤にすることができる。細粒剤を製造する場合は冷却下に細粒にするのが特によく、たとえば噴霧冷却、特にスプレーチリング等を行うことにより球形の細粒剤を得るのが好ましい。スプレーチリングは、たとえば通常10?6,000回転/分、好ましくは900?6,000回転/分、より好ましくは1,000?3,000回転/分の高速回転ディスク(たとえば直径5?100cm、好ましくは10?20cmの平滑円盤等であり、たとえばアルミ製円盤等)の上に一定流速(2?200g/分、好ましくは5?l00g/分)で滴下する等により行うことができる。」(第6頁右上欄1行?同頁左下欄15行参照)
(1-v)「・・・本発明のマトリックス剤の細粒剤、顆粒剤、錠剤及びカプセル剤等は、一般の細粒剤、顆粒剤、錠剤及びカプセル剤と同様にして用いることができ、たとえば薬効成分の対象患者(人、家畜、実験用動物等の哺乳動物)に経口的に投与すること等により使用できる。」(第7頁左上欄18行?同頁右上欄3行参照)
(1-vi)「「作用」
本発明のマトリックス剤の細粒剤、顆粒剤、錠剤及びカプセル剤は、医薬(薬効成分)の放出速度の変化しない極めて安定な放出制御性を有しており、長期間の保存後においても医薬の放出パターンにほとんど変化がないほか、薬物の味、臭いをマスキングすることもでき、薬物の溶出速度が制御し易い、適用薬物の範囲が広い、製造時には有機溶媒を必要とせず、製造過程で大気汚染を生じることなく、製剤に残留溶媒の危険性及び静電気の発生もなく、製造工程が簡便で特別な装置も必要とせず、従って放出制御性製剤としては理想的なものである。」(第7頁右上欄4?16行参照)
(1-vii)「実施例1
ステアリン酸ペンタ(テトラ)グリセリド(阪本薬品(株)製:PS-310^(R))80gを90℃に加温、融解し、20gのテオフィリンを投入して30分間撹拌し分散させた。これを90℃に加温し、2000rpmで回転している直径15cmのアルミ製ディスクに20g/分で滴下し、42メッシュの篩を通過し60メッシュの篩を通過しない(以下42/60メッシュと略記する)ところの球形の細粒剤を得た。
実施例2
ステアリン酸モノ(テトラ)グリセリド(阪本薬品(株)製MS-310^(R)、以下”MS -310”と略称する。)37.5gと硬化綿実油42.5gとを90℃で加温、融解し、テオフィリン20gを投入して30分間撹拌分散させた以外は実施例1と同様にして(即ちスプレーチリング ”Spray Chilling”して)42/60メッシュ球形の細粒剤を得た。」(第7頁左下欄8行?同頁右下欄7行参照)

[周知例]
(2-i)吸収に影響する要因として、「粒子径」が挙げられること(第59頁の「生物薬剤学の基礎」の項の「消化管からの吸収(3)」参照)
(2-ii)「粒子径の小さい方が表面積大,溶解速度が大となり,吸収性が増大する
ジゴキシン(溶解度0.1mg/ml以下) 102μm→7μm 吸収性2倍以上」(第59頁参照)

3.対比、判断
そこで、本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1には、上記「2.[引用例1]」の摘示事項によれば、そして、特に、薬効成分として「インドメタシン」等が例示されていること(摘示(1-iii))、及びポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素数として「好ましくは12?22」と説明されていること(摘示(1-ii))、経口的に投与すると説明されていること(摘示(1-v))に鑑み、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリグリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸の炭素数は好ましくは12?22)またはそれを含有してなる常温で固体のマトリックスに、インドメタシン等の薬効成分が分散している、経口投与に用いる細粒剤または顆粒剤。」

そして、(a)引用例1発明の「ポリグリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸の炭素数は好ましくは12?22)」は、ポリグリセロールがポリグリセリンであること及び炭素数12?22の脂肪酸が長鎖脂肪酸と言えることに鑑み、本願発明の「疎水性担体」としての「長鎖カルボン酸のポリグリセロールエステル」,「長鎖カルボン酸が、12個乃至30個の炭素原子を含む」(炭素数12?22で一致)に相当し、「疎水性担体」であることも明らかである。
(b)引用例1発明の「インドメタシン等の薬効成分」は、本願発明の薬物として「インドメタシン」が特定されていることに鑑み、本願発明の「薬物およびポリペプチドから選択される医薬」から選択した「薬物」について「インドメタシン」を選択したことに相当する。
(c)引用例1発明の「薬効成分が分散している細粒剤または顆粒剤」は、本願発明の「粒子」に対応するとともに、「薬物調製物」に相当する。
(d)引用例1発明の「経口投与に用いる」は、本願発明の「経口投与に適した用量形態を有している」ことに相当する。

してみると、両発明は、
「疎水性担体を持つ粒子と薬物を選択した医薬を含む、経口投与に適した用量形態を有している薬物調製物であって、
前記薬物がインドメタシンから選択され、
前記疎水性担体が長鎖カルボン酸のポリグリセロールエステルから選択される少なくとも1個の疎水性物質を含み、ここで、長鎖カルボン酸が、12個乃至22個の炭素原子を含む
薬物調製物。」
で一致し、次の相違点Aで相違している。
<相違点>
A.疎水性担体を持つ粒子と薬物から選択した医薬について、本願発明では、「0.5乃至10ミクロン未満の粒径の疎水性担体を持つ粒子と一体化された薬物(およびポリペプチド)から選択される医薬」と規定しているのに対し、引用例1発明ではそのように特定していない点。

そこで、この相違点について検討する。
本願発明において、「一体化された」ことについて特別の定義はなされていないものの、「薬物は・・・従来の混合装置およびホモジェナイザーを用いる混合剤によりクリームおよびエマルジョンのような乳化製品に共通した速度で攪拌することにより疎水性物質と一体化される。使用される通常の装置の例は、プロペラあるいはタービンミキサー、ホモジェナイザー、・・・・が利用出来る。 これらの装置を利用して、疎水性物質中の薬物混合物はスプレー凝固あるいは「噴射造粒」(prilling)により粒子、つまりビードあるいは球体に形成される。物質がスプレーされると、表面張力が均一な球形ビードを形成させるようにする。ビードが冷却チャンバを経て落下すると、それは固化して安定した無傷球体となる。」(平成18年9月18日付けの特許法第184条の5第1項の規定による書面(以下、「本願明細書」ともいう。)第6頁末行?第7頁17行参照)との説明がある。そして、実施例1には、「粒子は以下の通り調製される。モノステアリン酸グリセリルとリシノール酸グリセリルが60℃で融解され、生成液にカルシトニンが加えられる。微結晶セルロースおよびシリカが混和され、一方前記混合物は40℃にまで冷却される。この混合物は噴射造粒(スプレー凝固)により粒子化される。」(本願明細書第10頁12?16行参照)と説明されている。
他方、引用例1発明における粒子の粒径については、「ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはそれと常温で固体のマトリックスを作りうる上記のごとき添加剤とを加温(40?150℃好ましくは50?110℃)熔融したものに、薬効成分、あるいは酸性薬効成分と水に不溶ないし難溶の固体塩基、あるいは塩基性薬効成分と腸溶性物質を適量加えて分散させた後に冷却し、マトリックス特に細粒または顆粒とする」(摘示(1-iv)参照)と説明され、更に、「公知の造粒機等を用いて目的の細粒(通常500?10μmの粒子75重量%以上、500μm以上の粒子5重量%以下、10μm以下の粒子10重量%以下であり、・・・)・・等のマトリックス剤にすることができる。細粒剤を製造する場合は冷却下に細粒にするのが特によく、たとえば噴霧冷却、特にスプレーチリング等を行うことにより球形の細粒剤を得るのが好ましい。」(摘示(1-iv)参照)と説明されている。
してみると、引用例1発明と本願発明は、疎水性担体と薬剤を一緒に熔融させ、噴霧冷却(造粒)して粒子化している点で同じであるから、引用例1発明でも、疎水性担体と薬剤が一体化されたものと言う他なく、両発明はその点では相違しない。

次いで、粒径について検討する。
本願発明において、「0.5乃至10ミクロン未満」と規定する粒径がどのような粒径を意味するのか(平均粒径を指すのか、その粒径のものが含まれていれば足りるのか、全ての粒子がその範囲内にあるものか等)が、発明の詳細な説明にも説明されておらず不明瞭である旨の指摘(当審拒絶理由の記[1]参照)に対し、「一般に」(generally)とは「the majority (>50%)」を意味するから「50%を超える大部分が0.5乃至10ミクロン未満にある」ことを意味する旨を請求人は主張している(平成20年7月8日付け意見書参照)。
その粒径(0.5乃至10ミクロン未満)のものが含まれていれば足りるのであれば、引用例1には上記摘示のように10μm以下のものも含まれているから、粒径は実質的な相違点ではない。
そして、前記請求人の主張のように、大部分の粒子についての粒径であると解する場合について検討すると、10ミクロン未満(発明の詳細な説明では10ミクロン以下)にすることは単に「望ましくは」とされているだけである(本願明細書第7頁18?20行)ところ、その技術的意義はせいぜい「経口送達に関する向上した吸収能力を提供する」(本願明細書第3頁1?2行)との効果を望ましくするとの意味に解するのが相当と認められる。
しかし、粒子径の小さい方が吸収性が増大することは知られている(例えば、前記周知例の摘示(2-i),(2-ii)参照)のであり、例えば102μmのものを7μmとすることで吸収性2倍以上になる例も示されている(摘示(2-ii)参照)ことを勘案すると、吸収性を向上させることも周知の課題であることに鑑み、粒子径を小さく、例えば0.5?10μm未満にする程度のことは当業者が容易に想到し得たものというべきである。
しかも、本願明細書に記載された実施例において、粒径がどの程度の大きさか何ら記載されていないし、その作用効果については吸収性の向上を明らかにするデータもなければ、他に格別の作用効果を示すデータもない。実施例の粒径については、参考資料(米国特許5051362号明細書の実施例1)を提示し、噴霧乾燥によって粒径が2?5μmになることを釈明している(平成20年7月8日付け意見書参照)が、参考資料で指摘された粒径は光架橋を行なった後の粒径を示しているもので適切なものではなく、その不適切性な点はひとまず置くとしてもそもそも噴霧乾燥によって必ず2?5μmになることが釈明されたわけではないし、当初0.5?100ミクロンの粒径のものを対象とする実施例であり、0.5?10ミクロン未満のものが得られていたと断定すべき理由とはならない。それよりまして、粒径を0.5?10ミクロン未満と限定したことによって「溶解性や吸収性の点で優れた効果を発揮できる」(平成20年7月8日付け意見書参照)との主張を裏付ける根拠は何も示されていない。

以上のとおりであるから、相違点Aに係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであり、その採用によって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。
よって、本願発明は、周知技術を勘案し引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。それ故、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-12 
結審通知日 2008-12-17 
審決日 2009-01-06 
出願番号 特願平7-524702
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上條 のぶよ  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 弘實 謙二
谷口 博
発明の名称 疎水性薬物送達システム  
代理人 三枝 英二  
代理人 斎藤 健治  
代理人 掛樋 悠路  
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