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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01H
管理番号 1197765
審判番号 不服2007-18012  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-28 
確定日 2009-05-18 
事件の表示 平成 8年特許願第242412号「自動車用スイッチ入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月10日出願公開、特開平10- 92256号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年9月13日の出願であって、平成19年5月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年6月28日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、平成19年7月30日に手続補正がされたものである。

2.平成19年7月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年7月30日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】一端側が接地されている自動車用スイッチ入力装置において、該自動車用スイッチ入力装置は、スイッチと直列に接続されスイッチON時に一定の電圧効果が発生する素子と、スイッチラインがハイレベルかローレベルかを検出する入力レベル判別回路と、スイッチラインがローレベルかショート状態かを判別するためにスイッチラインの電圧を監視する入力電圧レベル監視回路と、入力レベル判別回路からの出力信号と入力電圧レベル監視回路からの出力信号からスイッチONの状態かスイッチラインのショート状態かを判別し、負荷を動作させる論理制御回路とを備えていることを特徴とする自動車用スイッチ入力装置。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「論理制御回路」について「負荷を動作させる」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭61-37321号(実開昭62-150674号)のマイクロフィルム(以下「第1引用例」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。
(ア)「[産業上の利用分野]
本考案は、スイッチのオン、オフ信号を伝達する経路の故障検知回路に関する。
[従来の技術]
自動車各部の制御の電子化が進み、操縦性や燃費の改善にも電子制御装置(ECU)が大きな役割りを果たしている。この場合、自動車の走行状態はスイッチ、センサ等の信号としてECUに入力する。
[考案が解決しようとする問題点]
ところが、自動車内の信号経路はハーネスとコネクタで構成されるので、これらに故障(断線、ショート等)が生じるとその後のスイッチ信号がECUに伝達されなくなる。しかも、その状態が信号経路の故障と判定されるまではスイッチ入力と区別できないので、そのままECUが動作を継続すれば制御特性の劣化をきたすことになる。
本考案は上述した信号経路の故障を簡単な回路で検出可能とするものである。」
(イ)「[実施例]
第1図は本考案の一実施例を示す回路図で、Lはスイッチ信号伝達経路、R_(0)はそのプルアップ抵抗、V_(cc)は電源、R_(1)は第1の抵抗、R_(2)は第2の抵抗、Sはオン、オフ式のスイッチである。本例ではR_(1),R_(2),Sをスイッチ部SWにブロック化して示し、またR_(0)は電子制御装置ECU内部のものを使用するものとする。ADCはECU入力段のA/Dコンバータであるが、入力型式はこれに限定されない。このスイッチ部SWはオンで(1)式の電圧を、オフで(2)式の電圧をECUに入力する。
例えば、R_(0)=2KΩ、R_(1)=1KΩ、R_(2)=3KΩとすれば、オン時はV_(in)=V_(cc)/3となり、またオフ時は2V_(cc)/3となる。
第2図は信号伝達経路Lの具体例で、1はスイッチコネクタ、2は中継コネクタ、3はECUコネクタ、4はスイッチ側ハーネス、5はECU側ハーネスである。このように多くのコネクタがあり、またハーネスが長いと断線や対アース・ショートの可能性がある。第3図(a)は経路Lの一部で断線が生じた場合である。このときはR_(0)の一端が開放されるのでV_(in)=V_(cc)になる。また同図(b)は経路Lの途中でアースに短絡したケースである。このときはR_(0)の一端がアースされるのでV_(in)=0となる。
従って、ECUは入力V_(in)の各レベルV_(cc),2V_(cc)/3,V_(cc)/3,0からそれぞれ断線、SWオフ、SWオン、アース事故を区別して判定できる。」

上記記載事項(ア)、(イ)及び第1図ないし第3図に記載された技術事項を総合すると、第1引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されていると認められる。
「一端側がアースされている自動車用のスイッチ信号伝達経路の故障検知回路において、該自動車用のスイッチ信号伝達経路の故障検知回路は、プルアップ抵抗R_(0)と、スイッチと直列に接続される第1の抵抗R_(1)と、スイッチと並列に接続される第2の抵抗R_(2)と、伝達されたスイッチ信号によって、断線、SWオフ、SWオン、アース事故を区別して判定するECUとを備えた自動車用のスイッチ信号伝達経路の故障検知回路。」

また、同じく原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された刊行物である、特開昭50-46374号公報(以下「第2引用例」という。)には、特に第1図ないし第3図とともに、概略次の技術的事項が記載されている。
(ウ)第1図の従来装置は、スイッチの状態を検出する状態検出装置に関し、スイッチ(1)と状態検出回路(3)とを接続する電線(2)に、抵抗(7)を通じて電源端子(4)を接続したものである。この回路では、電線(2)に断線事故が発生した場合にスイッチオフと区別がつかない。
(エ)第2図の装置は、電線(2)の断線事故も検出できる装置である。具体的には、第1図のものにさらに、スイッチ(1)と並列に抵抗(9)が接続されている。そして、状態検出回路(3)は、電位検出レベル(V_(1))を有する電位検出回路(82)と、電位検出レベル(V_(2))を有する電位検出回路(81)とを備える。この装置においては、電位検出レベルを3つの領域に区分できるので、スイッチオフ,オン,断線の各状態を、上記3つの領域に属させることにより、各状態を検出することができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「アース」が、本願補正発明の「接地」に相当し、同様に、「SWオン」が「スイッチON」に、「アース事故」が「ショート状態」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「第1の抵抗R_(1)」は、SWオンのときに一定の電圧効果を発生するものであるから、本願補正発明の「スイッチON時に一定の電圧効果が発生する素子」に相当する。さらに、引用発明の「スイッチ信号伝達経路の故障検知回路」は、スイッチのオン、オフ状態を検出するスイッチ入力回路を構成するものであって、装置といい得るから、本願補正発明の「スイッチ入力装置」に相当する。
そうすると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。

(一致点)
「一端側が接地されている自動車用スイッチ入力装置において、該自動車用スイッチ入力装置は、スイッチと直列に接続されスイッチON時に一定の電圧効果が発生する素子を備え、スイッチONの状態かスイッチラインのショート状態かを判別する自動車用スイッチ入力装置。」
一方で、両者は、次の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明が、「スイッチラインがハイレベルかローレベルかを検出する入力レベル判別回路と、スイッチラインがローレベルかショート状態かを判別するためにスイッチラインの電圧を監視する入力電圧レベル監視回路と、入力レベル判別回路からの出力信号と入力電圧レベル監視回路からの出力信号からスイッチONの状態かスイッチラインのショート状態かを判別し、負荷を動作させる論理制御回路とを備え」ているのに対し、引用発明は、「伝達されたスイッチ信号によって、断線、SWオフ、SWオン、アース事故を区別して判定する」が、その判定に至る回路は不明である点。

(4)相違点についての判断
第2引用例の記載事項(ウ)のように、第1図のものは、抵抗(7)を備え、スイッチのオンオフ状態を検出するものであるが、断線やショート状態を検出できないことは明かである。そして、同記載事項(エ)のように、第2図のものは、抵抗(7)に加えて、スイッチ(1)と並列に抵抗(9)を備えており、これによって断線が検出できるというものである。即ち、この第1図と第2図との比較により、抵抗(9)は、スイッチオフと断線とを区別するために存在していることが明かである。
翻って、引用発明のものは、プルアップ抵抗R_(0)、第1の抵抗R_(1)及び第2の抵抗R_(2)の3つの抵抗を備え、断線、SWオフ、SWオン、アース事故の4つの状態を検出するものである。そこで、この3つの抵抗がどのような作用を有しているのかにつき検討するに、プルアップ抵抗R_(0)は、第2引用例記載の抵抗(7)に対応するものであって、SWオフオンを検出するために必要なものであり、第2の抵抗R_(2)は、同抵抗(9)に対応し、断線状態の検出のためのものであることが明かである。すると、第1の抵抗R_(1)は、その回路配置からみて、アース事故の状態の検出のために存在するものであることが必然的に理解できるはずである。
一般に、装置を構成する場合の故障対策として、どのような故障に対処するようにするかは、その必要性やコスト面などを考慮しつつ決すべきものであって、既存の故障対策を採択する場合に、その取捨選択は正に設計的事項に属する。
すると、引用発明において、その故障対策として、断線状態を検出対象から外すことは設計的事項というべきであり、この場合、第2の抵抗R_(2)を除外することが明白である。
ところで、第2引用例には、状態検出回路(3)に、電位検出レベル(V_(1))を有する電位検出回路(82)と、電位検出レベル(V_(2))を有する電位検出回路(81)とを備え、電圧レベルを3つの領域に区分し、検出電圧がその領域の何れに属するかによって、スイッチオフ,スイッチオン,断線の何れの状態であるかを判定できる技術が開示されている。
この技術によれば、引用発明の、断線状態を検出対象から外したものにおいて、電圧レベルを3つの領域に区分し、その領域の何れに属するかによって、SWオフ、SWオン、アース事故の何れの状態であるかを判定するようにすることは当業者に容易である。この場合、回路構成としては、2つの電位検出回路に、それぞれ、スイッチオフ時とスイッチオン時の2つの電圧の間の適宜電位検出レベルと、スイッチオン時とアース事故時の2つの電圧の間の適宜電位検出レベルとを設定することとなる。
そして、引用発明のものは、スイッチ入力があった場合にある負荷を動作させるべきものであることは明かであるから、2つの電位検出回路からの2つの出力信号を基に、SWオフ、SWオン、アース事故の何れの状態であるかを判別して、SWオン時に負荷を動作させるべき回路を構成するようにして、本願補正発明の相違点に係る構成とすることは当業者にとって容易想到の範囲ということができる。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明、第2引用例記載事項から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、第2引用例記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成19年7月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年11月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】一端側が接地されている自動車用スイッチ入力装置において、該自動車用スイッチ入力装置は、スイッチと直列に接続されスイッチON時に一定の電圧効果が発生する素子と、スイッチラインがハイレベルかローレベルかを検出する入力レベル判別回路と、スイッチラインがローレベルかショート状態かを判別するためにスイッチラインの電圧を監視する入力電圧レベル監視回路と、入力レベル判別回路からの出力信号と入力電圧レベル監視回路からの出力信号からスイッチONの状態かスイッチラインのショート状態かを判別する論理制御回路とを備えていることを特徴とする自動車用スイッチ入力装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「論理制御回路」について「負荷を動作させる」との限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明、第2引用例記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると,このような特許を受けることができない発明を包含する本願は,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-19 
結審通知日 2009-03-24 
審決日 2009-04-06 
出願番号 特願平8-242412
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀川 一郎高橋 学  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 中川 真一
金丸 治之
発明の名称 自動車用スイッチ入力装置  

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