• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1197775
審判番号 不服2003-11675  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-24 
確定日 2009-05-21 
事件の表示 特願2000-516375「多孔性シリコン・オキシカーバイドの集積回路絶縁体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月22日国際公開、WO99/19910、平成15年 3月18日国内公表、特表2003-510795〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は2000年10月14日(優先権主張 1997年10月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成15年3月18日付で拒絶査定がなされ、平成15年6月24日付で審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、当審にて、平成19年11月2日付で、拒絶理由が通知されるとともに、平成15年6月24日付手続補正が却下されたものである。

2.本願発明
本願の発明は、平成14年7月4日付手続補正書に記載された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 基板上に形成された、2未満の誘電率を有する多孔性シ
リコン・オキシカーバイド絶縁体を含む集積回路。」

(2)刊行物
当審の拒絶理由に引用された特開平7-321206号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

摘記1「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、全体的にいえば、半導体デバイスの上の誘電体の作成に関する。さらに詳細にいえば、本発明は、多孔質誘電体材料で作成された電気的絶縁体を用いて、半導体デバイスの上で静電容量的結合の小さい構造体と、その製造法に関する。
【0002】
【従来の技術およびその問題点】半導体は、コンピュータおよびテレビジョンのような電子デバイスのための集積回路に広く用いられている。これらの集積回路は、典型的には、複雑な機能を実行するためおよびデータを記憶するために、単結晶シリコン・チップの上に多数個のトランジスタを組み合わせて使用する。半導体および電子装置の製造業者および最終のユーザは、小形のパッケージでかつ短時間で達成でき、一方電力消費の少ない、集積回路を要望している。・・・」
摘記2「【0007】
【問題点を解決するための手段】本発明により、半導体絶縁体として用いられる多孔質/非多孔質・混成誘電体の新規な構造体と、その製造法が得られる。この構造体は、小さな誘電率(kは通常3.0より小さく、そして2.0より小さいことが好ましい)の多孔質材料と非多孔質材料とを組み合わせ、半導体デバイスの上に作成された導電体の間の好ましくない静電容量を小さくするという主要な目的のために、これらの両方の材料の好ましい特徴を強調する方式で利用される。ここで考えられる問題点の1つは、多孔質層の後に作成される重要な構造体を備えたデバイスを作成することの困難さである。本発明の方法により、多重な多孔質層さえも作成可能であり、そして層の逐次作成技術により、デバイスを作成することが可能である。」
摘記3「【0028】
表1

図面の素子 好ましい実施例ま 一般的用語 また別の実施例
たは特定の実施例
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
26 TEOSストック 前駆溶液 ・・・
比例配分TEOS/
MTEOS(メチル
トリエトキシシラン)
ストック・・・


【0029】本発明の範囲は、前記で説明された特定の実施例に限定されると考えてはならない。前記実施例は例示のために示された実施例であって、本発明がこれらの実施例に限定されることを意味するものではない。本発明は、本発明の範囲内に含まれるすべての処理工程および構造体を包含するものである。例えば、当業者は、適切な前駆体から湿ったゲルを最初に作成する多くの他の発表された方法のいずれかを、本発明に対し応用することができるであろう。本発明の範囲内において、いくつかの特定の実施例の性質を組み合わせることができる。」

当審の拒絶理由に引用された刊行物であるAnant K.Singh 他"Porous Silicon Oxycarbide Glasses",Journal of the American Ceramic Society 、米国、1996、 Vol.79 No10,pp2696?2704(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

摘記5「High-surface-area silicon oxycarbide gels and glasses were synthesized from mixtures of methyldimethoxysilane (MDMS) and tetraethoxysilane (TEOS) through acidic hydrolysis and condensation. A surface area of ?275 m^(2)/g and an average pore size of ?30 Å was obtained for a 50% MDMS-50% TEOS glass at 800°C under a flowing argon atmosphere. The average pore size was increased by aging the precursor gels in ammonium hydroxide. The increased average pore size and the higher strength of the mesoporous gel network enhanced the surface-area stability of the glasses; in this case, surface areas >200 m^(2)/g were retained at 1200°C under an argon atmosphere. ^(29)Si MAS NMR spectra revealed that an oxycarbide structure was established in the mesoporous glasses obtained after pyrolysis of the aged gels. The role of carbon was demonstrated by comparing the surface-area stability of the oxycarbide glasses with that of pure silica and that of oxycarbide glasses where all the carbon groups were removed through low-temperature plasma-oxidation treatments. In the absence of carbon, the thermal stability of the surface area decreased dramatically.」(2696頁,左欄第1行?第21行)

(仮訳「高い表面積のシリコンオキシカーバイトゲルおよびガラスは酸性加水分解および凝縮によって、メチルジメトキシシラン(MDMS)およびテトラエトキシシラン(TEOS)の混合から合成される。?275 m^(2)/gの表面積および?30 Åの平均気孔サイズは、800℃でアルゴン雰囲気流の下、50%のMDMS-50% TEOSで得られる。平均気孔サイズは、水酸化アンモニウム中の前駆体ゲルをエージングすることにより増加した。増加した平均気孔サイズおよびメソポーラスなゲル・ネットワークのより高い強さは、ガラスの表面安定性を増強する;この場合、表面積>200 m^(2)/g、アルゴン大気の下の1200℃で保持される。^(29)Si MAS NMRスペクトルは、ゲルの熱分解の後に得られたメソポーラスなガラスにオキシカーバイト構造が形成されることを示す。炭素の役割は、炭素グループがすべて低温プラズマ酸化処理を通じて除去された場合に、オキシカーバイトガラスの表面安定性を、純粋な珪酸の場合およびオキシカーバイトガラスの場合と比較することにより実証された。炭素がない状態で、表面の熱的安定性は劇的に減少する。 」)

(3)検討
刊行物1には、「TEOS/ MTEOS(メチルトリエトキシシラン)ストックを用いた前駆体からゲルを作成し、単結晶シリコン・チップの上に2未満の誘電率を有する多孔質誘電体材料で作成された電気的絶縁体を形成する半導体デバイス」が記載されている(以下「刊行物発明」という。)。
本願発明と刊行物発明とを比較すると、刊行物発明の、「単結晶シリコン・チップ」、「半導体デバイス」が、本願発明の、「基板」、「集積回路」に相当し、また、刊行物発明の「多孔質誘電体材料で作成された電気的絶縁体」と本願発明の「多孔性シリコン絶縁体」とは、「多孔性絶縁体」である点で一致するので、両者は、
「基板上に形成された、2未満の誘電率を有する多孔性絶縁体を含む集積回路。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
多孔性絶縁体が、本願発明では、「シリコン・オキシカーバイド」であるのに対し、刊行物発明では、「シリコン・オキシカーバイド」とは規定されていない点。



相違点について検討する。
相違点1について
刊行物発明において、「当業者は、適切な前駆体から湿ったゲルを最初に作成する多くの他の発表された方法のいずれかを、本発明に対し応用することができるであろう。」(摘記3)と記載されているように、他のゲル材料から多孔質を形成する方法を選択することは当業者が容易になし得るものである。刊行物2は、「Porous Silicon Oxycarbide Glasses」(多孔性シリコンオキシカーバイトガラス)というタイトルで、「高い表面積のシリコンオキシカーバイトゲルおよびガラスは酸性加水分解および凝縮によって、メチルジメトキシシラン(MDMS)およびテトラエトキシシラン(TEOS)の混合から合成される。」(「High-surface-area silicon oxycarbide gels and glasses were synthesized from mixtures of methyldimethoxysilane (MDMS) and tetraethoxysilane (TEOS) through acidic hydrolysis and condensation.」 )が記載されているので、多孔質材料として、刊行物2に記載の多孔性シリコン・オキシカーバイドを用い、かつ、ゲル材料から多孔質を形成する方法を選択し刊行物発明の多孔性絶縁体に適用することにより、本願発明をなすことは当業者が容易になし得ることである。
また、本願明細書、第17段落には、「シリコン・オキシカーバイド絶縁体140の多孔性は、表面積によって特徴付けられる。本発明の一つの特徴によれば、シリコンオキシカーバイド絶縁体140の表面積は、多孔性シリコン・オキシカーバイドの1グラム当たり約200平方メーターと450平方メーターの間である。」と記載されているが、刊行物2に記載の、表面積>200 m^(2)/gの多孔性シリコン・オキシカーバイドと、本願発明の多孔性シリコン・オキシカーバイドとは同じ程度の1グラム当たり表面積を有しているので、両者の気孔率や誘電率も同程度のものと認められる。

3.むすび
したがって、本願発明は、刊行物発明及び、刊行物2の記載に基づいて当業者が容易に為し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よってその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-09 
結審通知日 2008-12-16 
審決日 2008-12-26 
出願番号 特願2000-516375(P2000-516375)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正加藤 浩一  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 綿谷 晶廣
粟野 正明
発明の名称 多孔性シリコン・オキシカーバイドの集積回路絶縁体  
代理人 大橋 邦彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ