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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1197785
審判番号 不服2006-22938  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-10 
確定日 2009-05-21 
事件の表示 平成 7年特許願第161418号「選択的除草性組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年12月19日出願公開、特開平 7-330506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成7年6月5日(パリ条約による優先権主張1994年6月3日、スイス国、1994年7月14日、スイス国)の出願であって、平成14年5月21日付けで手続補正がされ、平成17年7月13日付けで拒絶理由が通知され、同年10月20日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がされ、同年11月14日付けで拒絶理由が通知され、平成18年3月10日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がされたところ、該手続補正は、同年6月29日付けで却下されるとともに同日付けで拒絶査定がされ、同年10月10日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに同年11月9日付けで手続補正がされ、平成19年1月5日付けで手続補正書(方式。審判請求書の補正書)が提出され、同年8月8日付けで審尋が通知され、平成20年2月15日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成18年11月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年11月9日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
平成18年11月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲である
「【請求項1】 栽培植物の作物の雑草を選択的に防除するための組成物であって、不活性担体および助剤に加えて、有効成分として
a)除草有効量の式I
【化1】


(式中、R_(0) はエチル基を表す。)で表される化合物RS,1’S(-)N-(1’-メチル-2’-メトキシエチル)-N-クロルアセチル-2-エチル-6-メチルアニリン
および
b)除草剤と拮抗させるために、解毒有効量の薬害軽減剤としての式III
【化2】


で表される化合物の混合物
よりなる組成物。
【請求項2】 栽培植物の作物中の雑草およびイネ科雑草を選択的に防除する方法であって、前記植物、種子もしくはそれらの生育地を同時にもしくは別々に、有効量の請求項1記載の式Iの除草剤、および前記除草剤と拮抗させるための解毒有効量の請求項1記載の式IIIの化合物により処理することよりなる方法。
【請求項3】 栽培植物の作物もしくは栽培植物を耕作しようとする耕地を、0.001ないし10kg/haの量の請求項1記載の式Iの化合物および.005ないし0.5kg/haの量の請求項1記載の式IIIの化合物で処理することよりなる請求項2記載の方法。
【請求項4】 トウモロコシの作物中の雑草およびイネ科雑草を選択的に防除する請求項2記載の方法。」
を、
「【請求項1】 トウモロコシの作物中の雑草およびイネ科雑草を選択的に防除する方法であって、トウモロコシの作物もしくはトウモロコシを耕作しようとする耕地を、除草剤として、0.001ないし10kg/haの量の式I
【化1】


(式中、R_(0) はエチル基を表す。)で表される化合物RS,1’S(-)N-(1’-メチル-2’-メトキシエチル)-N-クロルアセチル-2-エチル-6-メチルアニリンおよび、
前記除草剤と拮抗させるために、薬害軽減剤として、0.005ないし0.5kg/haの量の式III
【化2】


で表される化合物で処理することよりなる方法。」
とする補正を含むものである。

補正後の請求項1は、補正前の請求項4を補正したものであって、その発明を特定する事項である除草剤についての「有効量」を「0.001ないし10kg/haの量」と限定し、IIIの化合物の「解毒有効量」を「0.005ないし0.5kg/haの量」と限定し、かつ、「前記植物、種子もしくはそれらの生育地」を「トウモロコシの作物もしくはトウモロコシを耕作しようとする耕地」と限定するものであって、補正前の請求項4に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、補正後の請求項1に係る補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。また、補正後の明細書を、「本願補正明細書」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.独立特許要件の検討
(1)引用文献及び引用文献に記載された事項
引用文献1?3は次のとおりである。
引用文献1:特開昭60-146882号公報
(原査定についての平成17年11月14日付けの
拒絶理由通知における刊行物2に同じ)
引用文献2:Weed Science,1991年,Vol.39,No.1,p.78-82
(同刊行物1に同じ)
引用文献3:Tetrahedron:Asymmetry,(1992),3(3),p.337-340
(同刊行物3に同じ)

引用文献1?3には、次の事項が記載されている。
引用文献1:
(1a)「(1)不活性な担体及び所望により配合される除草剤に加えて、拮抗物質として次式I:


・・・で表わされるアシルアミド誘導体を含有することを特徴とする、除草剤の植物毒性から栽培植物を保護する為の組成物。
・・・
(28)除草剤及び拮抗剤としての次式I:


・・・で表わされるアシルアミド誘導体の有効量の両方で栽培植物またはその作付地を処理することを特徴とする、有用植物の栽培において雑草を選択的に防除する方法。」(特許請求の範囲第1項、第28項)
(1b)「本発明は、除草剤に対する拮抗物質としてアシルアミド誘導体を含有する除草剤の植物毒性から栽培植物を保護する為の組成物、さらに除草剤並びに該拮抗物質を既に含有している組成物、並びに除草剤と該拮抗剤を使用して雑草を選択的に防除する方法に関する。」(8頁左下欄2?7行)
(1c)「トリアジン、尿素誘導体、カルバメート、チオカルバメート、ハロゲノアセトアニリド、ハロゲノフェノキシ酢酸等のような非常に広い範囲の化合物類に属する除草剤を有効濃度で使用すると、防除すべき雑草のほかにある程度、栽培植物をも損傷することがあるということは知られている。」(8頁左下欄10?16行)
(1d)「この問題の対策として、栽培植物に対する除草剤の有害な作用に特殊な方法で拮抗し得る、すなわち防除されるべき雑草に対する除草作用に目につくような影響を与えることなく栽培植物を保護し得る各種の化合物が既に提案されている。この方法においては、提案された拮抗剤には栽培植物及び除草剤に関し、さらに場合によっては施用の方法により、各種類に特有の作用を示すことが多いこと、すなわち特定の拮抗剤は特定の栽培植物と少数種類の除草剤に対してのみ適していることが認められている。」(8頁右下欄5?15行)
(1e)「驚くべきことに、本発明においてアシルアミド誘導体の化合物群が栽培植物を農薬、例えば植物保護組成物、特に除草剤の有害作用から保護するのに特に適していることが見出された。」(9頁右上欄8?11行)
(1f)「使用目的により式Iで表わされる拮抗剤または解毒剤を栽培植物の種子の前処理・・・に使用することができ、あるいはまた播種の前後に土壌中に施用することができる。しかしまた植物の発芽前または発芽後に単独にまたは除草剤と一緒に施用することもできる。・・・いずれをも包含する。」(13頁左下欄1?15行)
(1g)「除草剤に対する拮抗剤の施用量は施用の方法に大きく左右される。畑地処理を実施するところでは除草剤と拮抗剤とを同時に施用する場合(タンク混合物)でも、別々に施用する場合でも拮抗剤対除草剤の比は1:100ないし5:1の範囲内である。十分な保護作用は、拮抗剤対除草剤の比率1:5ないし1:50において得られる。・・・完全な保護作用は通常、100ないし1000ppmの解毒剤濃度によって得られる。」(13頁左下欄16行?右下欄15行)
(1h)「本発明の範囲内の栽培植物は・・・である。これらの植物は例えば小麦、・・・そして特に稲のような穀類、栽培されたキビ、トウモロコシ、・・・である。」(14頁左上欄7?15行)
(1i)「本発明はまた栽培作物中の雑草、栽培作物、栽培植物の部分または栽培植物の作地を、除草剤と式Iで表わされる化合物またはこの組合せを含む組成物で処理して、選択的に防除するための方法にも関するものである。除草剤/解毒剤の組合せを含有する組成物はまた本発明の一部をなすものである。
防除されるべき雑草は単子葉類または双子葉類のどちらでもよい。」(18頁右下欄8?16行)
(1j)「製造例
実施例H1:
4-ジクロロアセチル-2,3-ジヒドロ-3-メチル-1,4-ベンズオキサジン(化合物1.1)


」(22頁左上欄7行?下から6行)
(1k)「実施例B2:
本願の拮抗剤と公知解毒剤との比較試験
実施例B1に記載した試験手順で、本願の有効成分:

No.1.1
の保護作用を、・・・公知の解毒剤:
(式略)
化合物A
との比較試験により測定する。
施用した除草剤はN-クロロアセチル-N-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-2,6-ジメチルアニリン〔除草剤AA〕、及びN-クロロアセチル-N-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-2-エチル-6-メチルアニリン〔除草剤BB〕であった。
使用した試験植物は’00482-0220B’育種系のとうもろこしである。解毒剤と除草剤はタンク混合物として発芽前に施用する。評価は施用の21日後に実施例B1と同様に行ない、そして保護作用のパーセントで行なう。
試験結果:


」(25頁右下欄1行?26頁左上欄下から3行)
(1l)「除草剤AA及びBBで処理した、試験されるとうもろこしの種子上における拮抗剤No.1.1と化合物Aとの作用の比較により、全ての試験された混合比及び全ての試験された施用率におて、有効成分No.1.1は化合物Aより栽培植物のためのよりよい保護を与えることが示される。その試験においては、化合物Aの保護作用が、工業的農業を目的とするためには、ほとんどのテストケースにおいて不十分であるのに対して、化合物No.1.1の施用は常に栽培作物の損傷を容認できる程度にまで減少する。」(26頁左欄下から2行?右欄9行)

引用文献2(記載内容は訳文で示す):
(2a)「概要・・・
高濃度のメトラクロールは、敏感なトウモロコシ種の実生に重大な損傷を与える。しかしながら、メトラクロールにCGA-154281を加えたものを用いると、7.8kg ha^(-1)という濃度下、最も敏感な種においてさえも、ほとんど損傷の徴候は観察されなかった。・・・メトラクロール、2-クロロ-N-2-エチル-6-メチルフェニル)-N-(2-メトキシ-1-メチルエチル)アセタミド;CGA-154281、4-(ジクロロ-アセチル)-3,4-ジヒドロ-3-メチル-2H-1,4-ベンゾキサジン;・・・」(78頁左欄1?32行)
(2b)「表2.CGA-154281が併用される場合とされない場合について、8種類の雑草のメトラクロールに対する(2種類の適用濃度におけるもの)応答」
表中に記載された8種類の雑草中、「アキノエノコログサ(Giant foxtail)」、「ヒメモロコシまたはセイバンモロコシ(Johnsongrass)」がある。(80頁のTable2.)
(2c)「雑草の応答。2.2kg ha^(-1)の濃度のメトラクロールの適用は、8種の雑草の研究において、98%もしくはそれ以上の抑制効果をもたらした(表2)。」(80頁下から2行?1行)

引用文献3(記載内容は訳文で示す):
(3a)「メトラクロール・・・は、クロロアセタミド系化合物の中で、最も強力に除草剤として使われるもののひとつである。この化合物は4つの立体異性体を持ち、それは、脂肪族側鎖のキラル中心による異性とフェニル基と窒素原子との間のキラル軸による異性によっている。4つの立体異性体は雑草生育抑制作用に違いがあるが、除草作用は主としてキラル中心によって影響を受け、S異性体はR異性体よりも高活性を発現する、と報告されている。」(337頁Abstractの次の行?338頁3行)

(2)対比
引用文献1に記載された発明
引用文献1には、(1a)に摘記したように、「除草剤と次式Iで表される拮抗剤の両方で栽培植物またはその作付地を処理することを特徴とする、有用植物の栽培において雑草を選択的に防除する方法」が記載され、これは、(1b)、(1d)、(1e)に摘記したように、「除草剤と該拮抗剤を使用し、提案された特定の拮抗剤を用い、除草剤の有害作用から保護するのに特に適している、雑草を選択的に防除する方法 」といえ、除草剤は(1c)に摘記したように多種のものが用いられ、拮抗剤は(1a)に記載のごとくアシルアミド誘導体が用いられるものであるところ、その具体的な態様として、除草剤として「N-クロロアセチル-N-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-2-エチル-6-メチルアニリン〔除草剤BB〕」を用い、拮抗剤として、No.1.1の化合物を用いたものが記載されている(摘記(1j)、(1k))。
また、引用文献1に記載された発明において適用できる栽培植物にはトウモロコシが挙げられ(摘記(1h))、防除される雑草は特に規定されておらず「単子葉類または双子葉類のどちらでもよい」ものであって「栽培作物中の雑草、栽培作物、栽培植物の部分または栽培植物の作地を、除草剤と式Iで表わされる化合物またはこの組合せを含む組成物で処理」するものであり(摘記(1i))、施用形態も種々の方法があり(摘記(1f))、具体例においては、栽培植物としてトウモロコシの保護作用をみている(摘記(1k)、(1l))のであるから、ここで防除しようとしている雑草は、トウモロコシの作物中の雑草といえる。
そして、拮抗剤と薬剤軽減剤とは同じ意味であるから、引用文献1には、
「トウモロコシの作物中の雑草を選択的に防除する方法であって、トウモロコシの作物もしくはトウモロコシを耕作しようとする耕地を、除草剤として、N-クロロアセチル-N-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-2-エチル-6-メチルアニリン〔除草剤BB〕および、
前記除草剤と拮抗させるために、薬害軽減剤として、4-ジクロロアセチル-2,3-ジヒドロ-3-メチル-1,4-ベンズオキサジン(化合物1.1)で処理することよりなる方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における〔除草剤BB〕であるN-クロロアセチル-N-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-2-エチル-6-メチルアニリンと、本願補正発明における【化1】で表される化合物とは立体配置を考慮しなければ同じものであって、引用文献2によれば「メトラクロール」と呼ばれるものであり(摘記(2a))、また、引用発明における薬害軽減剤である4-ジクロロアセチル-2,3-ジヒドロ-3-メチル-1,4-ベンズオキサジンと、本願補正発明における【化2】で表される化合物は全く同じであるから、これを「化合物(III)」とすると、両者は、
「トウモロコシの作物中の雑草を選択的に防除する方法であって、トウモロコシの作物もしくはトウモロコシを耕作しようとする耕地を、除草剤として、メトラクロールおよび、前記除草剤と拮抗させるために、薬害軽減剤として、化合物(III)で処理することよりなる方法。」
で一致し、
ア メトラクロールが、本願補正発明においては、「RS,1’S(-)」の立体配置を有するものであるのに対し、引用発明においては、このような立体配置が特定されていない点、
イ 防除する対象として、本願補正発明においては、「イネ科雑草」も対象としているのに対し、引用発明においては、「イネ科雑草」を対象としていない点、
ウ 化合物の量について、本願補正発明においては、0.001ないし10kg/haの量のメトラクロールおよび0.005ないし0.5kg/haの量の化合物(III)で処理するのに対し、引用発明においては、特定されていない点、
で相違する。

(3)相違点ア?ウについての判断
相違点アについて
本願補正発明における「RS,1’S(-)」の立体配置について検討する。
引用文献3に、メトラクロールは、「4つの立体異性体を持ち、それは、脂肪族側鎖のキラル中心による異性とフェニル基と窒素原子との間のキラル軸による異性によっている」(摘記(3a))とされているから、これからすると、本願補正発明における上記立体配置の記載中、「1’S(-)」とは「1’位」すなわち、摘記(3a)における「脂肪族側鎖のキラル中心による異性」が「S」であることを示しており、同記載中、「RS」とは摘記(3a)における「フェニル基と窒素原子との間のキラル軸による異性」が、RとSが当量存在していることにより打ち消されている、ということを示しているといえる。
すなわち、本願補正発明の「RS,1’S(-)」の立体配置を有するメトラクロールとは、「キラル軸ではキラル性を示さず、キラル中心がSの異性体」のメトラクロールであるといえ、キラル性を示さないことを敢えて特定する必要はないのであるから、「キラル中心がSの異性体」のメトラクロールであるといえる。
ところで、メトラクロールが除草剤として有用であることは、引用文献1?3に記載されるのみならず周知といえ(必要なら、特開昭58-79964号公報、米国特許第5002606号明細書等参照。キラル中心がSの異性体が除草作用に優れることも記載されている。)、引用文献3には、「4つの立体異性体は雑草生育抑制作用に違いがあるが、除草作用は主としてキラル中心によって影響を受け、S異性体はR異性体よりも高活性を発現する」なる記載がされており(摘記(3a))、ここに記載される「S異性体」とは、「除草作用は主としてキラル中心によって影響を受け」るのであるから、「キラル中心がSの異性体」と解される。
そして、ハロゲノアセトアニリド類に属するメトラクロールのような除草剤を有効濃度で使用すると、防除すべき雑草のほかにある程度、栽培植物をも損傷することがあり(摘記(1c))、引用発明は、栽培植物をも損傷することがあるメトラクロールに化合物(III)を併用することで、栽培植物に損傷を与えず、雑草を選択的に防除できるものなのであるから、メトラクロールの「キラル中心がSの異性体」が高活性である旨の引用文献3の記載に接した当業者なら、引用発明で使用されている、立体配置が特定されていないメトラクロールに代えて、より高活性の、「キラル中心がSの異性体」のメトラクロールを使用してみるのは当然といえる。
したがって、引用発明において、「キラル中心がSの異性体」のメトラクロール、すなわち、「RS,1’S(-)」の立体配置を有するメトラクロールを用いることは、当業者にとって容易である。

相違点イについて
引用文献2に記載の「CGA-154281」とは「化合物(III)」のことであり、引用文献2の表2.には、これとメトラクロールとを併用したものが、8種類の雑草を防除することが記載され(摘記(2b)、(2c))、8種類の雑草の中に「アキノエノコログサ(Giant foxtail)」と「ヒメモロコシまたはセイバンモロコシ(Johnsongrass)」が含まれているが、これらはどちらもイネ科雑草である。
そうしてみると、メトラクロールと化合物(III)の併用したものが、イネ科雑草の防除に有効であることは公知であるから、引用発明において、防除の対象として「イネ科雑草」を加えることは、当業者が適宜なし得るところといえる。

相違点ウについて
引用発明における、具体的に記載された「実施例B2」において、「試験結果」と題された表(摘記(1k))の、上から2番目の例では、化合物(III)を0.38kg/ha、除草剤メトラクロールを6kg/ha用いており、上から4番目の例では、化合物(III)を0.25kg/ha、除草剤メトラクロールを4kg/ha用いているところ、これらの化合物の量は、いずれも本願補正発明の範囲内のもの、すなわちメトラクロールについて0.001ないし10kg/haの範囲内であり、化合物(III)について0.005ないし0.5kg/haの範囲内のものであるから、相違点ウは、実質的に相違していない。
あるいは、メトラクロールに4つの立体異性体があることを考慮し、そのうちの特定の高活性の立体異性体を用いる場合を想定してみる。高活性の異性体を用いるのであるから、より少量で足ると考えられるが、4つの立体異性体のうち、例えばキラル中心がSである高活性な2種の異性体を使用する場合でも、上記表に記載のものの1/2量である3kg/ha又は2kg/ha程度を使用するであろう考えられ、その場合でも、本願補正発明の範囲である0.001ないし10kg/haに含まれるものとなる。
したがって、メトラクロールに4つの立体異性体があることを考慮した場合であっても、本願補正発明における化合物の量にすることは、当業者にとって容易である。

(4)本願補正発明の効果についての判断
本願補正発明の効果は、本願補正明細書の段落【0060】に記載されるとおり、
「実施例B1:トウモロコシの実についての式Iの除草剤、および除草剤および式IIの薬害軽減剤の混合物の発芽前薬害作用
トウモロコシの実をプラスチック鉢中の標準土壌の中に播種した。播種後即座に、上記配合剤1ないし8の内の1つから調製された試験物質の水性懸濁液を鉢に噴霧した(500l水/ha)。式Iの除草剤の濃度は4、3および2kg/haであった。薬害軽減剤No.1.006を除草剤と、1:18、1:24および1:30の比において施用した。試験植物をその後最適の条件下の温室中において栽培した。トウモロコシの実について除草剤の薬害作用を22日の試験期間の後に評価した。
a)除草剤の濃度:4kg/ha
除草剤と薬害軽減剤の比 薬害%
薬害軽減剤なし 65
18:1 20
24:1 20
30:1 15
b)除草剤の濃度:3kg/ha
除草剤と薬害軽減剤の比 薬害%
薬害軽減剤なし 55
18:1 0
24:1 0
30:1 0
c)除草剤の濃度:2kg/ha
除草剤と薬害軽減剤の比 薬害%
薬害軽減剤なし 25
18:1 0
24:1 0
30:1 0
結果は、式IIの化合物は、栽培植物への除草剤により引き起こされる損傷を顕著に軽減させ得ることを示している。」
というものである。
ここで、「結果は、式IIの化合物は、栽培植物への除草剤により引き起こされる損傷を顕著に軽減させ得ることを示している。」とまとめられているが、より具体的には、キラル中心がSの異性体のメトラクロールをトウモロコシの実に適用したところ、薬害軽減剤である化合物(III)の不存在下では、除草剤の濃度が2kg/haでも薬害が発生したが、化合物(III)の存在下では、除草剤の濃度が3kg/haでも薬害が全く発生しなかった、というものである。
一方、引用発明の効果は、(1l)に摘記したとおり、除草剤BBすなわち立体配置を特定していないメトラクロールと、化合物No.1.1すなわち化合物(III)を併用すると、栽培作物の損傷を容認できる程度にまで減少するというものであるから、当業者なら、より高活性であるキラル中心がSの異性体のメトラクロールを用いても、同様の栽培作物の損傷を減少させるという効果があるであろうことは当然に予測することである。
そして、本願補正発明の効果である、上記本願補正明細書の段落【0060】の記載をみても、立体配置を特定していないメトラクロールをキラル中心がSの異性体のメトラクロールにしたことによって、予測し得ない程の格別の効果があったとすることはできないから、本願補正発明の効果も引用発明の奏する効果から、当業者の予測の範囲であったといえる。

(5)請求人の主張
(5-1)
ア 請求人は、平成20年2月15日付け回答書においては、さらに提示した補正案について特許性があることを主張するのみであって本願補正発明については意見を述べていないので、本願補正発明について意見を述べているところの、平成19年1月5日付け手続補正書(方式。審判請求書の補正)における主張について検討する。

イ 上記手続補正書の「【本願発明が特許されるべき理由】 1.本願請求項1に係る方法発明の説明 <本願発明の特徴>」において、請求人は、
「本願明細書、特に実施例B1において、除草剤及び薬害軽減剤は以下の濃度で使用されている:除草剤4kg/ha、薬害軽減剤0.22?0.13kg/ha(除草剤:薬害軽減剤=18:1?30:1);除草剤3kg/ha、薬害軽減剤0.17?0.10kg/ha(18:1?30:1);除草剤2kg/ha、薬害軽減剤0.11?0.067kg/ha(18:1?30:1)。」、「除草剤と薬害軽減剤とは作用が互いに拮抗する。従って、一般的には、除草剤の除草作用は薬害軽減剤の併用により低下する。しかしながら、本願請求項1に係る方法発明では、除草剤と薬害軽減剤とを最適に選択して組み合わせ、且つ、それぞれ適する濃度にて、トウモロコシの作物若しくはトウモロコシを耕作しようとする耕地を処理することにより、雑草に対する除草剤の除草作用は、薬害軽減剤の併用により低下しない。」と本願補正発明の特徴について主張する。
しかしながら、使用量については、引用発明においても摘記(1g)にあるように「十分な保護作用は、拮抗剤対除草剤の比率1:5ないし1:50において得られる。」とされており、上記主張中の「除草剤:薬害軽減剤=18:1?30:1」という範囲は、引用発明において十分な保護作用が得られるとされる範囲に包含され、引用発明においても当然に検討される範囲である。
さらにメトラクロールに4つの立体異性体があることを考慮し、4つの立体異性体のうち、例えばキラル中心がSである高活性な2種の異性体を使用する場合を想定し、この場合は、除草剤量が1/2で足るとしても、除草剤の量を1/2として拮抗剤:除草剤の比率1:2.5ないし1:25を検討することになり、やはり、上記主張中の「除草剤:薬害軽減剤=18:1?30:1」という範囲は、引用発明において十分な保護作用が得られるとされる範囲と重複し、引用発明においても当然に検討される範囲である。
また、「雑草に対する除草剤の除草作用は、薬害軽減剤の併用により低下しない。」という効果について、本願補正発明や引用発明のような「除草剤と拮抗させるために薬害軽減剤で処理する方法」に関する発明においては、このような効果を奏するのは寧ろ当然であって、本願補正明細書に従来技術として「防除されるべき雑草に対する除草作用を実質的に損なわずに栽培植物を保護するという提案がすでになされてきた」(段落【0003】)と記載され、引用文献1にも従来技術として「防除されるべき雑草に対する除草作用に目につくような影響を与えることなく栽培植物を保護し得る各種の化合物が既に提案されている」(摘記(1d))と、同内容の記載がされていることからも、具体的データは示されていないが、両者ともに「雑草に対する除草剤の除草作用は、薬害軽減剤の併用により低下しない」という効果を奏するものと解される。
したがって、請求人のこの主張は採用できない。

ウ 上記手続補正書の「【本願発明が特許されるべき理由】 2.拒絶理由について ii)本願請求項1に係る方法発明と刊行物2に記載された発明との対比」において、請求人は、
「刊行物2には、式Iで表される拮抗剤(第4頁右上欄)を式IVで表される除草剤(第14頁右上欄)と組み合わせて使用し得ることが記載されている。刊行物2の式Iで表される拮抗剤は、本願請求項1の式IIIで表される薬害軽減剤に、また、刊行物2の式IVで表される除草剤は、本願請求項1の式Iで表される除草剤に、それぞれ、形式的に対応する。しかしながら、刊行物2の式Iで表される拮抗剤及び式IVで表される除草剤は一般式で記載されており、刊行物2の式Iで表される拮抗剤として、本願請求項1の式IIIで表される薬害軽減剤に対応する化合物は記載されているが(化合物No.1.1)、刊行物2の式IVで表される除草剤として、本願請求項1の式Iで表される除草剤に対応する化合物は記載されていない。それ故、刊行物2から、本願請求項1における、・・・は示唆されない。」と主張する。
なお、請求人の上記主張中、「刊行物2」は本審決における「引用文献1」に同じである。
しかしながら、引用文献1に、立体配置は特定されていないものの、メトラクロール、すなわち、「N-クロロアセチル-N-(2-メトキシ-1-メチルエチル)-2-エチル-6-メチルアニリン〔除草剤BB〕」(摘記(1k))が具体的に記載されていることは、先に示したとおりであり、立体配置についても、上記「(3)」の「相違点アについて」で示したとおりであるから、請求人のこの主張も採用できない。

(5-2)
ア 請求人は、平成17年10月20日付け意見書に「<試験報告書>」を添付し、その中で「表A」を示し、
「表Aのデータの検討は、発芽率50%(式Ibで表される除草剤が単独で施用された場合)から発芽率80%(式Ibで表される除草剤+式IIIで表される薬害軽減剤の組み合わせが施用された場合)に増加したことにより示されるように、式Ibで表される除草剤への式IIIで表される薬害軽減剤の添加(先行技術の組み合わせ)が、除草剤-薬害軽減剤組成物の植物毒性作用(雑草の発芽率抑制作用)の非常な低下をもたらすことを示している。
驚くべきことに、本願発明の、(式Iaで表される除草剤+式IIIで表される薬害軽減剤)の除草剤-薬害軽減剤の組み合わせは、式Iaで表される除草剤単独の場合に比較して、植物毒性作用(雑草の発芽率抑制作用)の低下をもたらさない。更に驚くべきことに、式Iaで表される除草剤に対する式IIIで表される薬害軽減剤の添加は、予想し得ないことに、発芽率40%(式Iaで表される除草剤が単独で施用された場合)から発芽率20%(式Iaで表わされる除草剤+式IIIで表される薬害軽減剤の組み合わせが施用された場合)に減少したことにより示されるように、除草剤-薬害軽減剤組成物の植物毒性作用(雑草の発芽率抑制作用)の非常な増加をもたらすことを示している(表Aを参照)。」と、キラル中心がSの異性体のメトラクロールと化合物(III)を組み合わせたことにより予測し得ない効果が得られることを主張する。

イ また、平成18年3月10日付け意見書においても、「【意見の内容】 (5) 拒絶理由1について <本願発明と刊行物に記載された発明との対比> i)本願発明と刊行物1に記載された発明との対比」において、
「刊行物1に記載された発明の組み合わせ(メトラクロール+ベノキサコール)に対する本願発明の組み合わせ(S-メトラクロール+ベノキサコール)の進歩性は、本願に関する平成17年10月20日提出の意見書に添付した試験報告書の試験結果に明確に示されています。」として、
「薬害軽減剤は除草剤と拮抗させる成分であり、以下の試験報告書に示すように、除草剤との組み合わせによっては、除草剤の除草効果(例えば、発芽抑制効果)を低下させる場合もあり得ますが、本願発明の組成物(S-メトラクロール+ベノキサコール)においては、薬害軽減剤によって除草剤の除草効果(発芽抑制効果)は低下せず、むしろ増大します。」、「式Iaで表される除草剤は、式IIIで表される薬害軽減剤と組み合わせることにより、除草剤-薬害軽減剤組成物の、雑草の発芽率抑制作用の非常な増加をもたらします。
この結果は、先行技術の組み合わせに対する本願発明の組み合わせの予想し得ない性質(大きな効果の相違)を示しています。本願発明の組み合わせにより示された前記性質は、ラセミ体のメトラクロールとS-メトラクロールとの間の僅かな相違からは予想され得ないほど驚くべきものです。」と、キラル中心がSの異性体のメトラクロールと化合物(III)を組み合わせたことにより予測し得ない効果が得られることを主張する。
なお、請求人の上記主張中、「刊行物1」は本審決における「引用文献2」に同じである。

ウ そこで、上記「<試験報告書>」において示される効果について検討するにあたり、該効果が本願補正明細書にどのように記載されているかを検討する。
本願補正明細書には、本願補正発明の産業上の利用分野、解決しようとする課題、実施例、効果に関する記載として、次のものがある。
(a)「【産業上の利用分野】
本発明は栽培植物の作物、特にトウモロコシの作物中のイネ化雑草および雑草を防除するための選択的除草性組成物に関し、該組成物は除草剤および薬害軽減剤(解毒剤)よりなりそして栽培植物を保護するが、しかし除草剤の薬害作用から雑草を保護しないものである、および栽培植物中の作物中の雑草を防除するための前記組成物もしくは除草剤および薬害軽減剤の組み合わせの使用に関する。」(段落【0001】)
(b)「【従来の技術】除草剤を施用する場合に、栽培植物はまた、除草剤の濃度および施用の様式、栽培植物それ自体、土壌の性質、および気象条件例えば日差し、温度および降雨を含む要因によって厳しい損傷を受ける。
この問題および類似の問題を克服するために、栽培植物について除草剤の有害作用と拮抗し得る種々の化合物を薬害軽減剤として使用すること、即ち防除されるべき雑草に対する除草作用を実質的に損なわずに栽培植物を保護するという提案がすでになされてきた。」(段落【0002】、【0003】)
(c)「【発明が解決しようとする課題】
ある種のクロロアセトアミドおよびジクロロアセトアミドは、栽培植物を次式I
【化1】(式略)
(式中、R_(0) はメチル基もしくはエチル基を表す。)
で表される化合物、RS,1’S(-)N-(1’-メチル-2’-メトキシエチル)-N-クロルアセチル-2-エチル-6-メチルアニリンの薬害作用から保護するのに適していることが今見いだされた。」(段落【0004】)
(d)「実施例B1:トウモロコシの実についての式Iの除草剤、および除草剤および式IIの薬害軽減剤の混合物の発芽前薬害作用
・・・・
結果は、式IIの化合物は、栽培植物への除草剤により引き起こされる損傷を顕著に軽減させ得ることを示している。」(段落【0060】、上記(4)に記載したものと同じ)

これを検討するに、本願補正発明について、本願補正明細書には、「除草剤および薬害軽減剤(解毒剤)よりなりそして栽培植物を保護するが、しかし除草剤の薬害作用から雑草を保護しないものである」こと(上記(a))、及び具体的に、「式IIの化合物(審決注:化合物(III)を概念的に包含する)は、栽培植物への除草剤により引き起こされる損傷を顕著に軽減させ得ることを示」すものであること(上記(d))は、記載されているが、上記試験報告書を通して請求人が主張するような、キラル中心がSの異性体のメトラクロールと化合物(III)を組み合わせたことにより「雑草の発芽率抑制作用の非常な増加をもたら」すことについては、記載も示唆もされていない。
このことは、従来技術として、「防除されるべき雑草に対する除草作用を実質的に損なわずに栽培植物を保護する」ということ(上記(b))が挙げられ、本願補正発明においても「薬害作用から保護するのに適していることが今見いだされた。」ものである(上記(c))ことからも、窺える。
すなわち、本願補正明細書には、キラル中心がSの異性体のメトラクロールと化合物(III)を組み合わせることにより、防除されるべき雑草である「トウモロコシの作物中の雑草およびイネ科雑草」に対する除草作用を実質的に損なわずに、栽培植物である「トウモロコシ」への除草剤により引き起こされる損傷を顕著に軽減させ得ることは記載されているものの、キラル中心がSの異性体のメトラクロールと化合物(III)を組み合わせることにより、除草剤-薬害軽減剤組成物の、雑草の発芽率抑制作用の非常な増加をもたらすことは記載されておらず、示唆もされておらず、また自明でもない。
そうしてみると、上記試験報告書のデータに基づく請求人の主張は、明細書の記載に基づくものではなく、採用することはできない。

(5-3)請求人の主張のまとめ
したがって、請求人の主張はいずれも認められない。

3.むすび
本願補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、請求項1に係る補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する特許法126条5項の規定に違反するものであるから、その余のことを検討するまでもなく、本件補正は、平成18年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成18年11月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成14年5月21日付け及び平成17年10月20日付け手続補正書により補正された明細書の記載よりみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1?4に係る発明は、以下のとおりである。

「【請求項1】 栽培植物の作物の雑草を選択的に防除するための組成物であって、不活性担体および助剤に加えて、有効成分として
a)除草有効量の式I
【化1】


(式中、R_(0) はエチル基を表す。)で表される化合物RS,1’S(-)N-(1’-メチル-2’-メトキシエチル)-N-クロルアセチル-2-エチル-6-メチルアニリン
および
b)除草剤と拮抗させるために、解毒有効量の薬害軽減剤としての式III
【化2】


で表される化合物の混合物
よりなる組成物。
【請求項2】 栽培植物の作物中の雑草およびイネ科雑草を選択的に防除する方法であって、前記植物、種子もしくはそれらの生育地を同時にもしくは別々に、有効量の請求項1記載の式Iの除草剤、および前記除草剤と拮抗させるための解毒有効量の請求項1記載の式IIIの化合物により処理することよりなる方法。
【請求項3】 栽培植物の作物もしくは栽培植物を耕作しようとする耕地を、0.001ないし10kg/haの量の請求項1記載の式Iの化合物および.005ないし0.5kg/haの量の請求項1記載の式IIIの化合物で処理することよりなる請求項2記載の方法。
【請求項4】 トウモロコシの作物中の雑草およびイネ科雑草を選択的に防除する請求項2記載の方法。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定における「拒絶の理由1」の概要は、
「請求項1?4について
下記刊行物1、2には、本願請求項1に式I及びIIIとして記載された化合物を含有するトウモロコシ等の植物の雑草に対する除草剤、式IIIに相当する化合物が薬害軽減剤であることが記載されている。そして、下記刊行物3、4に記載されるように式Iで表される化合物のS体がその他の異性体に比べてより活性の高いことも公知である。したがって、式IのS体と式IIIの化合物とを併用することは当業者が容易に行うことである。」から、「特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであって、刊行物1?4は次のとおりである。
刊行物1:Weed Science,1991年,Vol.39,No.1,p.78-82
(引用文献2に同じ)
刊行物2:特開昭60-146882号公報
(引用文献1に同じ)
刊行物3:Tetrahedron:Asymmetry,(1992),3(3),p.337-340
(引用文献3に同じ)
刊行物4:Chemical Abstracts,vol.99,abs.no.48882

3.刊行物に記載された事項
刊行物2、1、3に記載された事項は、それぞれ、上記「第2 [理由] 2.(1)引用文献1」、「同引用文献2」、「同引用文献3」に記載された事項と同じである。

4.対比・判断
上記したように、本願補正発明は本願の請求項4に係る発明を限定したものであるから(第2 [理由] 1.参照)、本願の請求項4に係る発明は、本願補正発明を包含する。
そして、本願補正発明が本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは、上記「第2 [理由] 3.」に示したとおりであるから、これを包含する本願請求項4に係る発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.結論
以上のとおり、本願の請求項4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできないので、本願は、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-11 
結審通知日 2008-12-17 
審決日 2009-01-06 
出願番号 特願平7-161418
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01N)
P 1 8・ 121- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 保吉住 和之  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 鈴木 紀子
坂崎 恵美子
発明の名称 選択的除草性組成物  
代理人 加藤 勉  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 中村 壽夫  
代理人 萼 経夫  
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