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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  D01F
管理番号 1197838
審判番号 不服2006-20301  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-13 
確定日 2009-06-09 
事件の表示 特願2001-136808「熱融着性繊維」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月28日出願公開、特開2002- 61033、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年5月8日(優先権主張 平成12年6月7日)の特許出願であって、平成16年10月19日付けで拒絶理由(最初)がなされ、同年12月17日に意見書及び手続補正書が提出され、平成17年7月12日付けで拒絶理由通知(最後)がなされ、同年9月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年8月10日付けで、平成17年9月13日付けの手続補正について補正の却下の決定がなされるとともに、拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月13日に審判請求がなされ、同年11月21日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたものである。

2.平成18年8月10日付けの補正の却下の決定の適否
[結論]
平成18年8月10日付けの補正の却下の決定を取り消す。

[理由]
平成18年8月10日付けの補正の却下の決定の理由は、概略、平成17年9月13日付けの手続補正は、請求項1、2について、特許請求の範囲の限定的減縮を目的として補正するものであるが、当該補正後の請求項1、2に係る発明は、引用例1(特開平11-113388号公報)、引用例2(特開平03-139216号公報)、引用例3(実願昭58-113622号(実開昭60-22151号)のマイクロフィルム)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができるものではない、とするものである。
ところで、平成17年9月13日付けの手続補正により補正された請求項1に係る発明は、「繊維形成性重合体と、該繊維形成性重合体よりも融点または軟化点が20℃以上低い熱可塑性重合体とからなる複合紡糸繊維または混合紡糸繊維よりなる、土を用いた培土基材に配合して用いるための熱融着性繊維であって、繊維長が0.5?2mmおよびアスペクト比が20?300であることを特徴とする、土を用いた培土基材に配合して用いるための熱融着性繊維」であって、当該発明特定事項により、「土を用いた培土基材への分散性に極めて優れており、前記基材への配合時にボール状の繊維塊を形成せず、基材中に良好に混合・分散する。そのため、本発明の熱融着性繊維を基材に配合したものを加熱処理することにより、強力の高い各種固化物が形成される。」という優れた効果を奏するものである。
これに対し、引用例1には、「苗床の床土としては一般的に土壌培土が用いられていた。ところが、このような土壌培土は、良質(均質)の床土が比較的高価で入手が困難であったり、重く運搬性等が悪かった。」(【0002】)という課題を解決するために、土壌培土に代わる床土(培土)として、「籾殻と、芯部と前記芯部よりも軟化温度が低い鞘部とから成る芯鞘型繊維と、を有し、前記籾殻と芯鞘型繊維とを攪拌混合し、前記攪拌混合した籾殻及び芯鞘型繊維を、前記鞘部が軟化するが前記芯部は軟化しない温度で加熱成形して成る育苗用培土」(請求項1)を提供するものである。このため、引用例1には、「芯部と前記芯部よりも軟化温度が低い鞘部とから成る芯鞘型繊維」の発明について記載されているものの、当該繊維を、土を用いた培土基材に配合して用いることについて、むしろ積極的に排除するものと認められる。さらに、引用例1に記載の発明は、当該繊維の繊維長およびアスペクト比について何ら特定されていない。
また、引用例2には、「(1)パルプ素材と(2)醗酵残さい、ピートモス、水こけ、山こけ及び合成繊維の一種以上とを含有してなる植物栽培用粒状人工土壌」(請求項1)と記載されているところ、「合成繊維の長さは一概には云えないが約0.1?5mmが好ましい。」(第3頁右上欄第1?2行)と、合成繊維の長さについて言及されているものの、当該合成繊維は、熱融着性繊維に関するものではない。さらに、引用例2の第1頁右欄1?3行に「本発明は、土に代わる植物栽培用材料、特に花・野菜栽培のための人工土壌に関する。」と記載されているように、引用例2に記載の合成繊維も、土を用いた培土基材に配合して用いることについて、むしろ積極的に排除するものと認められる。
そして、引用例3は、「土壌素材を、単繊維繊度0.01?30dr、長さ0.1?20mm、土壌素材の重量に対して50重量%以下の合成繊維と糊剤とで結合固化してなる人工培土」(実用新案登録請求の範囲)と記載され、合成繊維以外に「糊剤」を別途使用することを発明特定事項としているように、当該合成繊維も熱融着性繊維に関するものではない。
よって、熱融着性繊維を、土を用いた培土基材に配合して用いることは引用例1乃至3のいずれにも記載されていないし、ましてや当該特定の用途に用いる熱融着性繊維であって、繊維長が0.5?2mmおよびアスペクト比が20?300とすることについて記載も示唆もされていない。
このため、請求項1に係る発明は、引用例1乃至3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、同様に、請求項1を引用する請求項2に係る発明についても当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、平成17年9月13日付けの手続補正により補正された請求項1、2に係る発明について、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことを理由として、平成17年9月13日付けの手続補正を却下するとした判断は妥当とはいえないことから、平成18年8月10日付けの補正の却下の決定は取り消すべきものである。

3.本願発明について
以上のとおりであるから、本願の請求項1、2に係る発明は、平成16年年12月17日付け及び平成17年9月13日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2009-05-25 
出願番号 特願2001-136808(P2001-136808)
審決分類 P 1 8・ 121- WYA (D01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 健史  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 細井 龍史
唐木 以知良
発明の名称 熱融着性繊維  
代理人 辻 良子  

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