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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1198195
審判番号 不服2007-6454  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-02 
確定日 2009-05-27 
事件の表示 特願2001-306170「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月15日出願公開、特開2003-111900〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月2日を出願日とする特許出願であって、平成18年6月19日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年8月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成19年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年3月2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年8月21日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 遊技動作に関連して遊技者に有利な第1状態と遊技者に不利な第2状態とを択一的に決定するための抽選を行う抽選手段(52,53) を有し、この抽選手段(52,53) による抽選結果に基づいて遊技動作を制御可能な遊技制御手段(80)を備えた遊技機において、
前記遊技制御手段(80)は、表示状態が変化可能な可変表示装置(16)を変動・停止制御する表示制御手段(60)と、サウンド発生器(74)を制御するサウンド制御手段(73)と、前記第1,第2状態に応じた制御を実行し且つ第1状態のとき可変表示装置(16)が所定の停止態様で停止表示するように表示制御手段(60)を制御する主制御手段(50)とを有し、
前記サウンド制御手段(73)は、可変表示装置(16)が表示状態を変化させていない待機表示状態のとき、前記サウンド発生器(74)に所定のサウンドを発生させるように構成され、
前記可変表示装置(16)の表示状態の変化中に発生させるサウンドの複数のサウンド情報を夫々含む複数グループのサウンド情報を記憶したサウンド情報記憶手段(73a) であって前記第1状態が抽選された場合に用いる複数グループのサウンド情報と、前記第2状態が抽選された場合に用いる複数グループのサウンド情報を記憶したサウンド情報記憶手段(73a) と、
前記サウンド情報記憶手段(73a) に記憶したサウンド情報のうちから1つのサウンド情報を乱数抽選にて選択するサウンド抽選手段(73b) とを設け、
前記待機表示状態は、遊技中に遊技者が遊技していない非遊技状態であって、可変表示装置(16)の表示態様が変化していない停止表示状態であり、この待機表示状態のときに、前記サウンド抽選手段(73b) は、前記乱数抽選にて前記第1,第2状態で用いるサウンド情報のうちの何れかを選択する、
ことを特徴とする遊技機。」

3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-288219号公報(以下「引用文献A」という。)には、図面とともに、
【0008】ここで、遊技盤面上に発射された遊技球が特定の入賞口に入賞又は特定の通過口を通過するタイミングに起因して遊技者に有利なゲーム内容とするか否かを決定するとは、特定の入賞口に入賞又は特定の通過口を通過するタイミングに起因して抽出される乱数の値により直接的に遊技者に有利な状態とすることは当然に含まれる他、特定の入賞口に入賞又は特定の通過口を通過するタイミングに起因して抽出される乱数の値により所定の特定入賞口(入球口)を開放し、この開放した特定入賞口内の特定領域を遊技球が通過すると遊技者に有利な状態とする所謂「第3種遊技機(権利物)」又は「アレンジボール遊技機」等の遊技機が有する間接的に遊技者に有利な状態とするゲーム内容も含む。・・・
【0010】請求項1に記載の遊技機は、遊技盤面上に発射された遊技球が特定の入賞口に入賞又は特定の通過口を通過するタイミングに起因して抽出される乱数値に従って主制御基板が遊技者に有利なゲーム内容とするか否かを決定し、この決定をする毎に画像制御基板が画面上の画像を変動表示した後に遊技者に有利なゲーム内容であるか否かを示す当否画像で静止表示するよう制御すると共に、所定の条件が成立したときには前記遊技者に有利なゲーム内容と決定する確率を主制御基板が向上させるが、この遊技者に有利なゲーム内容と決定する確率を向上させる期間を、画像制御基板により表示される遊技者に有利なゲーム内容であるか否かを示す当否画像の表示回数に基づき高確率制限手段が制限するよう働く。・・・
【0017】続いて前述したパチンコ機10の電気的構成を図4のブロック図を用いて説明する。パチンコ機10の電気回路は、図示するように、前述した主制御基板30、賞球制御基板31、特別図柄表示装置32、発射制御基板33、ランプ制御基板34及び音制御基板35等から構成されている。・・・
【0018】・・・主制御基板30の入力側には、第1種始動口スイッチ36a、普通図柄作動スイッチ38a及び39a、役物連続作動スイッチ(以下、単に「Vスイッチ」と呼ぶ)40a、カウントスイッチ40b、賞球払出しスイッチ29a,満タンスイッチ43、補給スイッチ44、タッチスイッチ24a等が接続されている。また、出力側には、大入賞口ソレノイド40c、Vソレノイド40b、普通役物ソレノイド36b及び外部接続端子基板50等が接続されている。
【0024】音制御基板35は音源IC及びアンプ等から構成されており、主制御基板30の指令を受けてスピーカ46を駆動制御するためのものである。
【0032】続く各出力処理(ステップS200)は、遊技の進行に応じて主制御基板30は、特別図柄表示装置32、賞球制御基板31、発射制御基板33、ランプ制御基板34、音制御基板35、大入賞口ソレノイド40c等の各種ソレノイドに対して各々出力処理を実行する。即ち、前記各入力処理(ステップS170)により遊技盤面22上の各入賞口に遊技球の入賞があることが検知されたときには賞球としての遊技球を払い出すべく賞球制御基板31に賞球データを出力する処理を、遊技状態に対応したサウンドデータを音制御基板35に出力する処理を、遊技機10に異常があるときにはエラー中であることを報知すべく図柄制御基板32bにエラー信号を出力する処理を、更には、大当り発生時には大当り処理を、各々実行する。
【0034】・・・遊技中において前述したランプ制御基板34及び音制御基板35が実行する制御は従来と同様な構成であり、その説明は割愛することにする。
【0035】ここで、前述した画像出力処理(ステップS190)を、次の表1を用いて詳細に説明する。表1に示すコマンドコードは、主制御基板30から特別図柄表示装置32の図柄制御基板32bに送信されるコードである。表1に示すように、本実施例の主制御基板30と図柄制御基板32bとの送信コマンドコードは、1.電源投入時、2.客待ちデモ、3.図柄変動中、4.大当り開始時、5.大当り中、6.大当り終了時、7.動作異常時、の7種類に大別できる。
【0038】2.客待ちデモ
客待ちデモのコマンドは、前記電源投入のデモ画面が終了した後、又は遊技者が所定時間(通常約3分間)発射ハンドル24に触れていないと判断されたときに送信されるコマンドであり、20H及び01Hの2バイト命令で構成されている。図柄制御基板32bがこのコマンドを受信するとROMに書込まれた制御プログラムに従ってLCD32aの画面上に客待ちのデモ画面を表示する。例えば、特別図柄表示領域50a?50c上に変動表示される特別図柄の変動パターンを全て順番に表示する。このとき、背景画面52上には各々の変動パターンに対応した背景画像及びキャラクタが表示される。この客待ちデモ画面は遊技客が発射ハンドル24を操作するまで全ての変動パターンを順番に表示して一巡した後繰り返し表示する。・・・
との記載が認められる。

摘記した上記の記載によれば、引用文献Aには、
「 遊技盤面上に発射された遊技球が特定の入賞口に入賞又は特定の通過口を通過するタイミングに起因して抽出される乱数値に従って遊技者に有利なゲーム内容とするか否かを決定し、抽出される乱数の値により直接的に遊技者に有利な状態とする遊技機において、
画面上の画像を変動表示した後に遊技者に有利なゲーム内容であるか否かを示す当否画像で静止表示するよう制御する画像制御基板と、スピーカ46を駆動制御する音制御基板35と、前記乱数値に従って遊技者に有利なゲーム内容とするか否かを決定し、遊技の進行に応じて、特別図柄表示装置32、ランプ制御基板34、音制御基板35、大入賞口ソレノイド40c等の各種ソレノイドに対して各々出力処理を実行する主制御基板30とを有し、
電源投入のデモ画面が終了した後、又は遊技者が所定時間発射ハンドル24に触れていないと判断されたときに画面上に客待ちのデモ画面を表示し、
前記音制御基板35は音源IC及びアンプ等から構成され、遊技状態に対応したサウンドデータを出力し、
前記電源投入のデモ画面が終了した後、又は遊技者が所定時間発射ハンドル24に触れていないと判断されたときに表示される前記客待ちのデモ画面は特別図柄表示領域50a?50c上に変動表示される特別図柄の変動パターンを全て順番に表示する遊技機。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「遊技者に有利なゲーム内容」は、本願発明の「遊技者に有利な第1状態」に相当し、以下同様に、
「画面上の画像を変動表示した後に遊技者に有利なゲーム内容であるか否かを示す当否画像で静止表示するよう制御する画像制御基板」は「表示状態が変化可能な可変表示装置(16)を変動・停止制御する表示制御手段(60)」に、
「特別図柄表示装置32」は「可変表示装置(16)」に、
「スピーカ46」は「サウンド発生器(74)」に、
「スピーカ46を駆動制御する音制御基板35」は「サウンド発生器(74)を制御するサウンド制御手段(73)」に、
「サウンドデータ」は「サウンド情報」に、それぞれ相当する。
また、引用文献A全体の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明においては「抽出される乱数値に従って遊技者に有利なゲーム内容とするか否かを決定」しており、「遊技者に有利なゲーム内容」でないことは本願発明の「遊技者に不利な第2状態」に相当するから、引用発明が本願発明の「遊技者に有利な第1状態と遊技者に不利な第2状態とを択一的に決定するための抽選を行う抽選手段(52,53) 」に相当する手段を有していることは明らかである。
また、引用発明において「遊技者に有利なゲーム内容とするか否か」は、「遊技盤面上に発射された遊技球が特定の入賞口に入賞又は特定の通過口を通過するタイミングに起因して」決定されているから、引用発明も遊技動作に関連して「遊技者に有利なゲーム内容とするか否か」が決定されているといえる。
さらに、引用発明は「抽出される乱数の値により直接的に遊技者に有利な状態とする」ようになっているから、本願発明の「抽選結果に基づいて遊技動作を制御可能な遊技制御手段(80)」に相当する手段を備えているといえる。

b.引用発明の「主制御基板30」は「前記乱数値に従って遊技者に有利なゲーム内容とするか否かを決定し、遊技の進行に応じて、特別図柄表示装置32、ランプ制御基板34、音制御基板35、大入賞口ソレノイド40c等の各種ソレノイドに対して各々出力処理を実行する」ものであって、その「遊技の進行」には本願発明における「前記第1,第2状態」に相当する状態を含んでいること、「主制御基板30」が実行する出力処理が「遊技の進行に応じて、特別図柄表示装置32、ランプ制御基板34、音制御基板35、大入賞口ソレノイド40c等の各種ソレノイド」を制御するものであること、及び「主制御基板30」が「前記乱数値に従って遊技者に有利なゲーム内容とする」ことを決定した時に、特別図柄表示装置32すなわち画像制御手段を遊技者に有利なゲーム内容であることを示す当り画像で静止表示するよう制御することは明らかであるから、引用発明の「主制御基板30」は本願発明の「前記第1,第2状態に応じた制御を実行し且つ第1状態のとき可変表示装置(16)が所定の停止態様で停止表示するように表示制御手段(60)を制御する主制御手段(50)」に相当するものといえる。

c.引用発明において「電源投入のデモ画面が終了した後、又は遊技者が所定時間発射ハンドル24に触れていないと判断されたときに画面上に客待ちのデモ画面を表示」しているから、引用発明の上記「判断されたとき」と本願発明の「可変表示装置(16)が表示状態を変化させていない待機表示状態のとき」とは、“遊技していない状態のとき”である点で共通している。
また、同じく引用発明の上記「判断されたとき」と本願発明の「遊技中に遊技者が遊技していない非遊技状態であって、可変表示装置(16)の表示態様が変化していない停止表示状態」のときとは、“遊技中に遊技者が遊技していない状態のとき”である点で共通している。
そして、引用発明において「画面上に客待ちのデモ画面を表示」させることと、本願発明において「サウンド発生器(74)に所定のサウンドを発生させる」こととは、“非遊技時の演出を行わせる”点で共通している。

d.引用発明の「音制御基板35」は「遊技状態に対応したサウンドデータを出力」しているから、その構成の一部である「音源IC」が複数のサウンドデータを記憶していることは明らかである。
そうしてみると、本願発明の「サウンド情報記憶手段(73a)」と引用発明の「音源IC」とは、“複数のサウンド情報を記憶した手段”である点で共通している。

e.引用発明の「客待ちのデモ画面」で表示される「特別図柄表示領域50a?50c上に変動表示される特別図柄の変動パターン」と本願発明の「第1,第2状態で用いるサウンド情報」とは、「第1,第2状態で用いる演出情報」である点で共通している。
そして、上記cで述べた共通点を考え合わせると、本願発明の「前記待機表示状態は、遊技中に遊技者が遊技していない非遊技状態であって、可変表示装置(16)の表示態様が変化していない停止表示状態であり、この待機表示状態のときに、前記サウンド抽選手段(73b) は、前記乱数抽選にて前記第1,第2状態で用いるサウンド情報のうちの何れかを選択する」ことと、引用発明の「前記電源投入のデモ画面が終了した後、又は遊技者が所定時間発射ハンドル24に触れていないと判断されたときに表示される前記客待ちのデモ画面は特別図柄表示領域50a?50c上に変動表示される特別図柄の変動パターンを全て順番に表示する」こととは、“遊技者が遊技していない状態のときに、前記第1,第2状態で用いる演出情報のうちの何れかを利用する”点で共通している。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技動作に関連して遊技者に有利な第1状態と遊技者に不利な第2状態とを択一的に決定するための抽選を行う抽選手段を有し、この抽選手段による抽選結果に基づいて遊技動作を制御可能な遊技制御手段を備えた遊技機において、
前記遊技制御手段は、表示状態が変化可能な可変表示装置を変動・停止制御する表示制御手段と、サウンド発生器を制御するサウンド制御手段と、前記第1,第2状態に応じた制御を実行し且つ第1状態のとき可変表示装置が所定の停止態様で停止表示するように表示制御手段を制御する主制御手段とを有し、
遊技者が遊技していない状態のとき、非遊技時の演出を行わせ、
複数のサウンド情報を記憶した手段を設け、
前記遊技者が遊技していない状態のときに、前記第1,第2状態で用いる演出情報のうちの何れかを利用する遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
なお、山括弧内の記載は、相当する本願発明の構成を示す。

[相違点1]“遊技者が遊技していない状態のとき”が、本願発明においては「可変表示装置(16)が表示状態を変化させていない待機表示状態のとき」であり、また「遊技中に遊技者が遊技していない非遊技状態であって、可変表示装置(16)の表示態様が変化していない停止表示状態」のときであるのに対し、引用発明においては「電源投入のデモ画面が終了した後、又は遊技者が所定時間発射ハンドル24に触れていないと判断されたとき」である点。

[相違点2]“非遊技時の演出”に関して、本願発明は「前記サウンド制御手段(73)は」、「前記サウンド発生器(74)に所定のサウンドを発生させるように構成され」ているのに対し、引用発明は「画面上に客待ちのデモ画面を表示」するものであって、「音制御基板35」<サウンド制御手段(73)>がスピーカ46<サウンド発生器(74)>にどのような駆動制御を行っているか明らかでない点。

[相違点3]本願発明の「サウンド情報記憶手段(73a)」が、前記第1状態が抽選された場合に用いる複数グループのサウンド情報と、前記第2状態が抽選された場合に用いる複数グループのサウンド情報を記憶したものであるのに対し、引用発明の「音源IC」は複数のサウンドデータ<サウンド情報>を記憶したものである点。

[相違点4]本願発明は「サウンド情報記憶手段(73a) に記憶したサウンド情報のうちから1つのサウンド情報を乱数抽選にて選択するサウンド抽選手段(73b)」を設け、“遊技者が遊技していない状態のとき”に「サウンド抽選手段(73b) は、前記乱数抽選にて前記第1,第2状態で用いるサウンド情報のうちの何れかを選択する」のに対し、引用発明は遊技状態に対応したサウンドデータを出力するものであって本願発明の「サウンド抽選手段(73b) 」に相当する手段を設けておらず、“遊技者が遊技していない状態のとき”には「客待ちのデモ画面」として「特別図柄表示領域50a?50c上に変動表示される特別図柄の変動パターンを全て順番に表示する」点。

5.判断
そこで、上記各相違点について検討する。
[相違点1について]
引用発明における「電源投入のデモ画面が終了した後、又は遊技者が所定時間発射ハンドル24に触れていないと判断されたとき」に遊技者が遊技していないことは明らかであり、そのうち「遊技者が所定時間発射ハンドル24に触れていないと判断されたとき」は遊技中においても発生し得ることであるから、本願発明のように「遊技中に遊技者が遊技していない非遊技状態」のときとすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって格別困難なことではない。
また、“遊技者が遊技していない状態のとき”に「特別図柄表示装置32」<可変表示装置(16)> の表示状態又は表示態様を変化させない点に技術的困難性は見出せず、むしろ変化させない方が原始的な制御であるから、その点も当業者にとって格別困難なことではない。
よって、引用発明に基づいて上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

[相違点2について]
遊技機においては、各種演出の際に、画面の表示、ランプの点灯及び音の発生を、単独で行うことはもちろん、これらを適宜組み合わせて行うことも、従来例を挙げるまでもなく慣用されている技術(以下「慣用技術1」という。)である。
また、引用発明は「音制御基板35」<サウンド制御手段(73)>及び「スピーカ46」<サウンド発生器(74)>も備えているから、“非遊技時の演出”として「画面上に客待ちのデモ画面を表示」する引用発明に慣用技術1を適用し、該「デモ画面」の表示とともに音を発生させ又は該「デモ画面」の表示を音の発生に代え、「音制御基板35」が「スピーカ46」に所定のサウンドを発生させるようにして上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。
なお、引用発明の「デモ画面」の表示を変化しない画面とすることも、上記[相違点1について]の項で述べたように、当業者にとって格別困難なことではない。

[相違点3、4について]
相違点3、4は、いずれも「サウンド情報」に関するものであって、密接に関連しているので、まとめて検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-126365号公報(以下「引用文献B」という。)には、以下の記載がある。
「【0011】本発明の遊技機は、・・・特別遊技の発生を報知する効果音パターンを複数用意することにより、・・・」
「【0012】・・・遊技媒体の投入を条件に遊技を行わせるとともに、所定の条件が達成された場合に、通常遊技と比較して遊技者に有利な特別遊技を行わせる遊技機において、複数の効果音パターンを記憶した効果音パターン記憶手段と、所定の条件に基づいて、前記効果音パターン記憶手段に記憶された複数の効果音パターンの中からいずれか一つの効果音パターンを選択するための効果音パターン選択手段と、前記特別遊技が発生した場合に、前記効果音パターン選択手段により選択された効果音パターンに基づく効果音を発生させることにより、遊技者に対して前記特別遊技の発生を報知するための報知手段とを備えたことを特徴とするものである。」
「【0013】また、前記効果音パターン選択手段は、所定の数値範囲内で乱数を発生させるための乱数発生手段を備え、前記乱数発生手段により発生させた乱数値に基づいて、効果音パターンを選択するように構成してもよい。」
「【0045】上記確率設定部28は、CPU24の制御に従って一定範囲の乱数を発生させるための乱数発生器31と、乱数発生器31で発生した乱数の中から任意の乱数を抽出してCPU24へ送信するための乱数サンプリング回路32を備えている。・・・」
これらの記載等から、引用文献Bには、所定の条件が達成された場合に、通常遊技<第2状態>と比較して遊技者に有利な特別遊技<第1状態>を行わせる遊技機において、複数の効果音パターンを記憶した効果音パターン記憶手段と、該複数の効果音パターンの中からいずれか一つの効果音パターンを選択するための効果音パターン選択手段と、前記特別遊技<第1状態>が発生した場合に、乱数値に基づいて選択された効果音パターンに基づく効果音を発生させる技術(以下「引用文献B記載の技術」という。)が記載されていると認められる。
そして、所定の条件が達成されず通常遊技<第2状態>となった場合においても何らかの効果音を発生させることは、従来例を挙げるまでもなく慣用されている技術(以下「慣用技術2」という。)であるから、引用発明に引用文献B記載の技術及び慣用技術2を適用し、引用発明の「音源IC」<サウンド情報記憶手段(73a)>が記憶している「複数のサウンドデータ」<サウンド情報>を、「特別遊技」<第1状態>で用いる複数のサウンドデータと、「通常遊技」<第2状態>で用いる複数のサウンドデータとして、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。
また、本願発明と引用発明は、“遊技者が遊技していない状態のとき”に、第1,第2状態で用いる演出情報のうちの何れかを利用する点では共通しており、上記[相違点2について]の項で述べたように、引用発明の「デモ画面」の表示を音の発生に代えることも格別困難なことではないから、引用発明に引用文献B記載の技術及び慣用技術1、2を適用し、引用発明において“遊技者が遊技していない状態のとき”に表示される「特別図柄の変動パターン」に代えて、該変動パターンに対応した複数のサウンドデータの中から乱数値に基づいて選択したいずれか一つのサウンドデータを発生させるようにして上記相違点4に係る本願発明の構成とすることも、当業者が容易に想到し得る事項である。

さらに、本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献B記載の技術及び慣用技術1、2から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献B記載の技術及び慣用技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、他の請求項(請求項2)に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-31 
結審通知日 2009-04-01 
審決日 2009-04-15 
出願番号 特願2001-306170(P2001-306170)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
▲吉▼川 康史
発明の名称 遊技機  
代理人 岡村 俊雄  

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