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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1198221
審判番号 不服2007-3416  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-05 
確定日 2009-06-01 
事件の表示 特願2000-610665「耐圧用ホース」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月19日国際公開、WO00/61356、平成14年12月 3日国内公表、特表2002-541407〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、2000年4月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年4月8日、韓国)を国際出願日とする国際出願であって、平成18年10月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると共に、同年3月7日付けで特許請求の範囲についての手続補正がされたものである。

2.平成19年3月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
耐圧用ホース12において、
全体的に円筒形をなしながら下部では平らな形状をなす中心パイプ38と、この中心パイプから外れた上部一側に位置し、第1ポリエチレン交織物48の一面または両面に水密膜44がコーティングされた第1ホース層14が巻かれている第1供給用ロール18と、前記第1供給用ロール18よりは低い位置にあり、円周方向にも第1供給用ロール18とは異なる位置に設け、第2ポリエチレン交織物50の一面または両面に水密膜44がコーティングされた第2ホース層16が巻かれている第2供給用ロール20と、前記第1供給用ロール18から供給される第1ホース層14が前記中心パイプ38の外周縁に円形に巻かれるようにガイドする上広下狭状の第1ガイド部材22と、前記第1ガイド部材22を通過した第1ホース層14の両端部が重なる部分に接着剤を塗布する第1接着剤塗布用ノズル26と、前記第1接着剤塗布用ノズル26によって接着剤が塗布された部分の外面を圧着する第1圧着用ローラ32と、前記第1圧着用ローラ32を通過した第1ホース層14の外周面の円弧に沿って一定間隔で接着剤を塗布する複数の第2接着剤塗布用ノズル28と、前記第2供給用ロール20から供給される第2ホース層16が前記中心パイプ38の外周縁に円形に巻かれるようにガイドし、前記円弧に沿って一定間隔で接着剤が塗布された第1ホース層14の外周縁に円形に巻かれるようにするための上広下狭状の第2ガイド部材24と、前記第2ガイド部材24を通過した第2ホース層16の両端部が重なる部分に接着剤を塗布する第2接着剤塗布用ノズル30と、前記第2接着剤塗布用ノズル30によって接着剤が塗布された部分の外面を圧着する第2圧着用ローラ34と、前記第1ホース層14とその外周縁に巻かれた第2ホース層16とが中心パイプ38の下部を外れ出る部分に設けられて、前記第1ホース層14および第2ホース層16を再度圧着するための一対の第3圧着用ローラ36と、からなる装置を用いて、一面または両面に水密膜44がコーティングされた第1ポリエチレン交織物48の幅方向の両端部が重なる第1接着部40が形成された第1ホース層14と、
一面または両面に水密膜44がコーティングされた一つ以上の第2ポリエチレン交織物50の幅方向の両端部が重なって、前記第1接着部40とは円周方向に互いに異なる方向に第2接着部42が形成されるが、前記第1ホース層14の外面を覆って、接着されるように形成された一つ以上の第2ホース層16と、が構成されていることを特徴とする耐圧用ホース12。

【請求項2】
両面の少なくとも一面に1つ以上の水密膜がコートされた第1ポリエチレン交織物の幅方向の両端部をホース長手方向に沿って(第1接着部)互いに接着させることにより形成される第1ホース層と、
両面の少なくとも一面に1つ以上の水密膜がコートされた第2ポリエチレン交織物の両端部を第1接着部または第1接着部と異なる位置のホース長手方向に沿って(第2接着部)互いに接着させることにより形成され、その内面が前記第1ホース層の外面に接着される第2ホース層とを備え、 前記第1ホース層と、第2ホース層との接着は、第1ホース層の外面上に長手方向に所定の間隔を空けて連続的に塗布された接着剤によって接着されることを特徴とする耐圧用ホース。

【請求項3】
請求項2に記載の耐圧用ホースにおいて、
前記第1ホース層の第1接着部と前記第2ホース層の第2接着部とが重なり合わないように前記耐圧用ホースの円周方向に沿って離隔するとともに、第2接着部と、第1ホース層-第2ホース層間接着剤とは重なり合うように接着されることを特徴とする耐圧用ホース。

【請求項4】
請求項2に記載の耐圧用ホースにおいて、
前記第1ホース層の第1接着部と前記第2ホース層の第2接着部とが重なり合わないように前記耐圧用ホースの円周方向に沿って離隔するとともに、第1接着部と、第1ホース層-第2ホース層間接着剤とは重なり合うように接着されることを特徴とする耐圧用ホース。

【請求項5】
耐圧用ホースを成形する方法において、一面または両面に水密膜がコートされた第1ポリエチレン交織物を、第1ガイド部材を通してその幅方向両端部がほぼ重なり合うようにすることにより、ほぼ円形の断面形状を成すようにする段階と、第1ポリエチレン交織物の幅方向の一端部に接着剤を連続して塗布する段階と、前記第1ポリエチレン交織物を中心パイプの外面を取り囲むように案内しながら、第1ポリエチレン交織物の幅方向の両端部ホース長手方向に互いに接着させることにより、第1接着部を形成する段階と、前記中心パイプの外面に沿って移動される第1ポリエチレン交織物の円周方向外面上の所定間隔で複数個所に接着剤を線形に連続して塗布する段階と、一面または両面に水密膜がコートされた第2ポリエチレン交織物を、第2ガイド部材を通してその幅方向の両端部がほぼ重なり合うようにすることにより、ほぼ円形の断面形状を成すようにする段階と、第2ポリエチレン交織物の幅方向の一端部に接着剤を連続して塗布する段階と、第2ポリエチレン交織物を、中心パイプの外面に沿って移動する第1ポリエチレン交織物の外面を取り囲むように案内して、第1ポリエチレン交織物の接着剤が塗布された円周方向外面上の複数個所で接着させる段階と、第1ポリエチレン交織物と共に中心パイプに沿って移動する第2ポリエチレン交織物の幅方向の両端部を、第1接着部と180度の位置にて互いに接着させることにより、第2接着部を形成する段階とを備える、ことを特徴とする耐圧用ホース成形方法。

【請求項6】
請求項5に記載の耐圧用ホース成形方法において、成形済みの耐圧用ホースを巻取り用ロールに巻き取らせるために耐圧用ホースを1対の圧着用ローラで圧着させる段階をさらに備える、ことを特徴とする耐圧用ホース成形方法。

【請求項7】
請求項5に記載の耐圧用ホース成形方法において、前記第1接着部と第2接着部とが重なり合わないようにするため、前記第1ガイド部材及び第2ガイド部材が前記中心パイプの円周方向に沿って離隔する、ことを特徴とする耐圧用ホース成形方法。

【請求項8】
耐圧用ホース成形装置において、生地の移送経路上に長手方向に設置され、製作しようとするホースの内径と同一の外径を有する中心パイプと、前記中心パイプに沿って順次設置され、前記生地が前記中心パイプの外面に沿って移送されながら幅方向の両端部が一定間隔離隔した状態で重畳され、前記中心パイプを取り囲むホース状を成しながら排出されるように、それぞれ案内通路が設けられる複数のガイドブロックと、前記ガイドブロックの後方に設置され、前記ガイドブロックを順次通過した前記生地の離隔した両端部の間に接着剤を塗布する接着剤供給器と、前記接着剤供給器の後方に設置され、生地の重畳された両端部が前記接着剤によって付着されるように前記生地の重畳部分を前記中心パイプ側に押し付ける圧着ローラとを備える、ことを特徴とする耐圧用ホース成形装置。

【請求項9】
請求項8に記載の耐圧用ホース成形装置において、前記複数のガイドブロックは、前記中心パイプの前方部を取り囲むと共に、巻取りロールから供給される平らな生地が下方に湾曲された状態で移送されるように、U字状の第1案内通路を中心パイプの長手方向に設けた第1ガイドブロックと、前記中心パイプの中央部を取り囲むと共に、前記第1ガイドブロックを通過した生地の一側端部が前記中心パイプの半分を囲んだ状態で通過するように、半円状と半U字状の各下端部が連結されて構成される第2案内通路を中心パイプの長手方向に設けた第2ガイドブロックと、前記中心パイプの後方部を取り囲むと共に、前記第2ガイドブロックを通過した生地が円形を成しながらその重畳された両端部が一定の間隔離隔した状態で通過するように、前記中心パイプを囲みながら重畳両端部が一定間隔離隔している円形の第3案内通路を中心パイプの長手方向に設けた第3ガイドブロックと、を有し、前記ガイドブロックはブロック内に設けられた空気通路を介して供給されるエアにエアベアリング方式により生地を挟持することを特徴とする耐圧用ホース成形装置。

【請求項10】
請求項8または9に記載の耐圧用ホース成形装置において、前記各ガイドブロックには、案内通路を通過する生地とガイドブロックとの摩擦を防止するために、各ガイドブロックの案内通路の上下面に沿ってそれぞれ気圧室が設けられ、外部から印加される空気圧が前記各気圧室に連続して印加されるように構成される、ことを特徴とする耐圧用ホース成形装置。

【請求項11】
請求項8に記載の耐圧用ホース成形装置において、前記中心パイプには、移送される生地と中心パイプとの摩擦を減少させるために、外部から一定の空気圧を移送される空気移送管が長手方向に沿って前記中心パイプの内側に設けられ、前記空気移送管から前記生地に密着される中心パイプの外面各部位までそれぞれ延長される分技管が放射方向に多数形成される、ことを特徴とする耐圧用ホース成形装置。

【請求項12】
耐圧用ホース成形方法において、巻取りロールから供給される生地を中心パイプに沿って移送させる移送段階と、前記移送段階によって移送される生地を第1ガイドブロックのU字状の第1案内通路に沿って移送させ、前記生地が下方に湾曲された状態で移送されるようにする湾曲段階と、前記湾曲段階を経た生地を第2ガイドブロックの半円状/半U字状の第2案内通路に沿って移送させ、前記生地の一側端部が前記中心パイプの半分を囲む状態で巻かれながら移送されるようにする第1密着段階と、前記第1密着段階を経た生地を第3ガイドブロックの第3案内通路に沿って移送させ、前記生地の他側端部が中心パイプに密着された前記一側端部の上側に重畳されるようにするが、前記生地の重畳された両端部が一定の間隔離隔した状態で前記中心パイプを囲みながら移送されるようにする第2密着段階と、前記第2密着段階を経た生地の離隔した両端部の間に接着剤を塗布する接着剤塗布段階と、前記接着剤塗布段階によって接着剤が塗布された生地の重畳部位を前記中心パイプ側に加圧し、前記生地の両端部が接着剤によって固着されるようにする圧着段階とを含む、ことを特徴とする耐圧用ホース成形方法。

【請求項13】
請求項12に記載の耐圧用ホース成形方法において、前記移送段階から第2密着段階までの各段階には、移送される生地と中心パイプ及びガイドブロックとの摩擦を防止するために、中心パイプまたは各ガイドブロックから生地側に一定の空気圧を加える過程が含まれる、ことを特徴とする耐圧用成形方法。」
と補正された(なお、アンダーライン部は補正された箇所を示す。)。

(2)判断
本件補正後の特許請求の範囲には、「耐圧用ホース」に関する発明(請求項1ないし請求項4)の他に、「耐圧用ホース成形方法」に関する発明が請求項5ないし請求項7、請求項12及び請求項13に、「耐圧用ホース成形装置」に関する発明が請求項8ないし請求項11にそれぞれ記載されているが、本件補正前の特許請求の範囲には、「耐圧用ホース成形方法」に関する発明や「耐圧用ホース成形装置」に関する発明は記載されていなかったものである。
そうすると、本件補正は、「耐圧用ホース」とは技術的概念を異にするこれらの発明を新たに追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しない。
そして、上記補正事項は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年4月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

「耐圧用ホースにおいて、
両面の少なくとも一面に1つ以上の水密膜がコートされた第1ポリエチレン交織物の幅方向の両端部を第1接着部に沿って互いに接着させることにより形成される第1ホース層と、
両面の少なくとも一面に1つ以上の水密膜がコートされた第2ポリエチレン交織物の両端部を第1接着部または第2接着部に沿って互いに接着させることにより形成され、その内面が前記第1ホース層の外面に接着される1つ以上の第2ホース層とを備える、
ことを特徴とする耐圧用ホース。」

(1)引用例
これに対して、平成16年6月29日付けの拒絶理由通知書に引用された特開平7-232394号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は繊維強化熱可塑性樹脂管の内面に熱可塑性樹脂内層を有する繊維強化熱可塑性樹脂複合管の製造方法に関するものである。」

・「【0011】図1の(イ)並びに図1の(ロ)において、A_(10)(A_(20))は繊維強化熱可塑性樹脂管であり、長手方向に連続的に配された強化繊維に熱可塑性樹脂が保持され(通常、融着により保持されている)、巾方向両端に薄肉部が設けられてなる二枚以上の繊維・樹脂複合シ-トA_(1)(A_(2))(図示の例では2枚)を、両端薄肉部a_(1)(a_(2))同士を重畳して管状体に形成し、重畳部界面を融着してある。B_(1)は繊維強化熱可塑性樹脂管の内面に積層した熱可塑性樹脂内層である。A_(30)は繊維強化熱可塑性樹脂管上に設けた外部補強層であり、長手方向に連続的に配された強化繊維に熱可塑性樹脂が保持されてなる繊維・樹脂複合テ-プA3を巻回し融着してある。B2は必要にお応じて被覆する熱可塑性樹脂外層である。
【0012】上記繊維・樹脂複合シ-トA_(1),A_(2)、内層B_(1)並びに繊維・樹脂複合テ-プA_(3)更には外層B_(2)の熱可塑性樹脂には、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカ-ボネ-ト、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルフォン、ポリエ-テルエ-テルケトン等が、管の使用条件に応じて選択され、必要に応じ、熱安定剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、無機充填剤等か添加される。熱可塑性樹脂は通常単独で使用するが、相溶性を有するものであれば、2種以上の混合物で使用することもできる。繊維・樹脂複合シ-ト、内層並びに繊維・樹脂複合テ-プの熱可塑性樹脂は、相互間を強固に融着できる組合せとされ、通常、同一の熱可塑性樹脂が使用される。
【0013】上記繊維・樹脂複合シ-ト並びに繊維・樹脂複合テ-プの強化繊維材には、長手方向連続繊維からなるもの(例えば、モノフィラメント状、ロ-ビング状、ストランド状の連続繊維)以外に、長手方向連続繊維を有するもの(例えば、クロス状、網状、ネット状繊維)、更には長手方向連続繊維に短繊維等を無秩序に配列したもの、長手方向連続繊維とマットや不織布等との積層体等を使用することもできる。繊維の材質としては、例えば、ガラス繊維、カ-ボン繊維等の無機繊維、ステンレス繊維、銅繊維等の金属繊維、アラミド、ビニロン、ポリエステル等の有機繊維の単独または2種以上を使用できる。繊維の太さについては、太すぎると熱可塑性樹脂の未保持部分が発生し易く、細すぎると切断し易いので、1?100μmとされ、特に3?50μmとすることが好ましい。」

・「【0016】上記繊維・樹脂複合シ-トや繊維・樹脂複合テ-プにおいては、補強繊維一本一本の間に熱可塑性樹脂を確実に含浸・融着させることが管の水密性や層間の強固の融着のために要求され、その製造には、(1)長手方向に連続の繊維、例えば、多数のフィラメントからなるロ-ビング状、ストランド状の補強繊維を粉体状熱可塑性樹脂の流動床中を通過させ、粉体状熱可塑性樹脂を繊維に付着させたのち加熱し、樹脂と繊維とを一体化させる方法、(2)長手方向連続繊維を熱可塑性樹脂のエマルジョン中に通過させて熱可塑性樹脂を繊維間に含浸させ、次いで、溶融温度以上に加熱して繊維と樹脂とを一体化するか、あるいはエマルジョン中を通過させた後、一旦乾燥させ、その後に溶融温度以上に加熱して一体化する方法、(3)溶融粘度が低い樹脂の場合は、溶融樹脂を満たした槽中に長手方向連続繊維を浸漬して樹脂を含浸する方法、(4)長手方向連続繊維にフィルム状熱可塑性樹脂を積層し、加熱加圧する方法等を使用でき、特に繊維・樹脂複合シ-トについては、これらの方法により得た一様厚みの繊維・樹脂複合シ-ト材を巾方向にずらして融着等により積層一体化すること、あるいは、図4に示すような、上ロ-ルR_(1)の一端に凸部rを、下ロ-ルR_(2)の他端に凸部rをそれぞれ設け、ギャップgをシ-ト厚みに、このギャップ部の巾を上記L(図2)に、ギャップg’を薄肉部の厚みに、このギャップ部の巾L”を上記薄肉部巾L’(図2)よりもやや大にそれぞれ設定した加熱ロ-ルを適所に設置し、この加熱ロ-ルで引き抜き成形し、該成形体の薄肉部を上記の巾L’にトリミングすること等による得ることができる。」

・「【0020】請求項2記載の方法において使用される繊維・樹脂複合テ-プの巾、厚み、巻回角度は、管の口径や使用条件に応じて設定され、通常、巾は5mm?100mm、厚みは0.1mm?5mm、巻き付け角度は管軸に対し300?850の範囲とされる。この繊維・樹脂複合テ-プの巻き付け層と繊維強化熱可塑性樹脂管とを強固に融着するために加熱しながら巻き付けること、または加熱しつつかつ大なる張力で巻き付けることが有効である。」

・「【0027】この製造装置を使用して請求項2記載の発明により繊維強化熱可塑性樹脂複合管を製造するには、引取り機を駆動し、各供給ボビン11から繊維・樹脂複合シ-トA_(2)を引出し、これらの繊維・樹脂複合シ-トA_(2),A_(2)を太鼓状賦形ロ-ル14,14でコア金型13に添わせ、かつ、両端薄肉部a_(2),a_(2)同士を互いに重ね合わせて管状に賦形し、これをコア金型と外型との間の環状間隙に通過させ、この通過中にコア金型からの熱と外金型からの熱とでその重ね合わせ部を加熱融着して繊維強化熱可塑性樹脂管状体を形成し、前記コア金型の先端外周部から前記管状体の形成と並行して熱可塑性樹脂を押出し、コア金型からの熱により加熱された繊維強化熱可塑性樹脂管状体内面iに押出溶融樹脂を接触させて熱可塑性樹脂内層B_(1)を積層し、更に、この管状体に、長手方向に連続的に配された強化繊維に熱可塑性樹脂が保持されてなる繊維・樹脂複合テ-プA_(3)をテ-プ巻機17で異方向に二層、かつヒ-タ18で加熱しつつ巻回し、更にこの管状体を押出装置19のクロスヘッド20に通過させて熱可塑性樹脂外層B_(2)を押出し、冷却機21で冷却のうえ、引取り機22で引き取っていく。」

・「【0045】
【発明の効果】本発明によれば、長手方向に連続の強化繊維に熱可塑性樹脂が保持されてなる巾方向に一様厚さの繊維・樹脂複合シ-トを、複数枚、樹脂押出機先端のコア金型上に巾両端部を重畳して管状体に賦形し、この管状体をコア金型に通過させる間に、その重畳部を融着し、前記管状体の形成と並行してコア先端の外周部から熱可塑性樹脂を押出し、この押出し樹脂を管状体内面に積層する方法により、繊維強化熱可塑性樹脂複合管を製造する場合、管状に賦形された繊維・樹脂複合シ-トの重畳部を強固に融着し得、他の部分と同等の肉厚を確保し得ると共に、その管状体内面と熱可塑性樹脂内層とを強固に融着でき、製造設備面での有利性(押出機先端のコア金型の管状化繊維・樹脂複合シ-ト内への導入の容易性)を維持しつつ、良品質の繊維強化熱可塑性樹脂複合管を製造できる。特に請求項2記載の発明によれば、耐内圧クリ-プ強度の飛躍的な向上を達成できる。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「耐内圧クリープ強度の大きい繊維強化熱可塑性樹脂管において、
両面の少なくとも一面に1つのフィルム状熱可塑性樹脂を積層し、加熱加圧した長手方向連続繊維の幅方向の両端部を融着させることにより形成される繊維・樹脂複合シートと、
両面の少なくとも一面に1つのフィルム状熱可塑性樹脂を積層し、加熱加圧した長手方向連続繊維を融着させることにより形成され、その内面が前記繊維・樹脂複合シートの外面に融着される1つの繊維・樹脂複合テープとを備える、
耐内圧クリープ強度の大きい繊維強化熱可塑性樹脂管。」

(2)対比
本願発明と引用発明を対比すると、後者の「耐内圧クリープ強度の大きい繊維強化熱可塑性樹脂管」と前者の「耐圧用ホース」とは、「耐圧用管」なる概念で共通する。
そして、後者の「フィルム状熱可塑性樹脂を積層し、加熱加圧した長手方向連続繊」が水密性を有することは、引用例の【0016】の「上記繊維・樹脂複合シ-トや繊維・樹脂複合テ-プにおいては、補強繊維一本一本の間に熱可塑性樹脂を確実に含浸・融着させることが管の水密性や層間の強固の融着のために要求され、」なる記載から明らかであり、また、後者の「長手方向連続繊維」と前者の「第1ポリエチレン交織物」とは、「第1繊維」なる概念で共通し、後者の「融着」と前者の「接着」とは、「固着」なる概念で共通し、後者の「繊維・樹脂複合シート」と前者の「第1ホース層」とは、「第1層」なる概念で共通するから、後者の「両面の少なくとも一面に1つのフィルム状熱可塑性樹脂を積層し、加熱加圧した長手方向連続繊維の幅方向の両端部を融着させることにより形成される繊維・樹脂複合シート」と前者の「両面の少なくとも一面に1つ以上の水密膜がコートされた第1ポリエチレン交織物の幅方向の両端部を第1接着部に沿って互いに接着させることにより形成される第1ホース層」とは、「両面の少なくとも一面に1つ以上の水密膜がコートされた第1繊維の幅方向の両端部を固着させることにより形成される第1層」なる概念で共通する。
さらに、後者の「長手方向連続繊維」と前者の「第2ポリエチレン交織物」とは、「第2繊維」なる概念で共通し、後者の「繊維・樹脂複合テープ」と前者の「第2ホース層」とは、「第2層」なる概念で共通するから、後者の「両面の少なくとも一面に1つのフィルム状熱可塑性樹脂を積層し、加熱加圧した長手方向連続繊維を融着させることにより形成され、その内面が繊維・樹脂複合シートの外面に融着される1つの繊維・樹脂複合テープ」と、前者の「両面の少なくとも一面に1つ以上の水密膜がコートされた第2ポリエチレン交織物の両端部を第1接着部または第2接着部に沿って互いに接着させることにより形成され、その内面が第1ホース層の外面に接着される1つ以上の第2ホース層」とは、「両面の少なくとも一面に1つ以上の水密膜がコートされた第2繊維を固着させることにより形成され、その内面が第1ホース層の外面に固着される1つ以上の第2層」なる概念で共通する。

したがって、両者は、
「耐圧用管において、
両面の少なくとも一面に1つ以上の水密膜がコートされた第1繊維の幅方向の両端部を固着させることにより形成される第1層と、
両面の少なくとも一面に1つ以上の水密膜がコートされた第2繊維を固着させることにより形成され、その内面が前記第1層の外面に固着される1つ以上の第2層とを備える、
耐圧用管。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
耐圧用管に関して、本願発明では「耐圧用ホース」であるのに対し、引用発明では「耐内圧クリープ強度の大きい繊維強化熱可塑性樹脂管」であり、耐圧用ではあるが、「ホース」なる特定はされていない点。
[相違点2]
第1繊維に関して、本願発明では「ポリエチレン交織物」であるのに対し、引用発明では「長手方向連続繊維」である点。
[相違点3]
第1繊維の固着に関して、本願発明では「第1接着部に沿って互いに接着」させているのに対し、引用発明ではかかる特定がされていない点。
[相違点4]
第1層に関して、本願発明では「第1ホース層」であるのに対し、引用発明では「繊維・樹脂複合シート」であり、「ホース」なる特定はされていない点。
[相違点5]
第2繊維に関して、本願発明では「ポリエチレン交織物」であるのに対し、引用発明では「長手方向連続繊維」である点。
[相違点6]
第2繊維の固着に関して、本願発明では「両端部を第1接着部または第2接着部に沿って互いに接着」させているのに対し、引用発明ではかかる特定がされていない点。
[相違点7]
第2層に関して、本願発明では「第2ホース層」であるのに対し、引用発明では「繊維・樹脂複合テープ」であり、「ホース」なる特定はされていない点。
[相違点8]
第2層の第1層の外面への「固着」に関して、本願発明では「接着」であるのに対し、引用発明では「融着」である点。

(3)判断
上記相違点1ないし相違点8について以下検討する。

(3-1)相違点1、相違点3、相違点4、相違点6ないし相違点8について
例えば特表平9-501759号公報(「このチューブは可撓性であり且つ押し潰し可能であり、それによって最大内径よりもはるかに小さいサイズに押し潰されることができる。」(8頁8?10行)、「本発明の薄肉チューブは、薄肉チューブの所望の直径と同じ直径のステンレス鋼マンドレルの周りに多孔質延伸膨張PTFEフィルムの第一と第二の層を巻回することによって作成される。・・・」(13頁下から2行?14頁19行)、図2、図11等参照。以下、「周知例」という。)に開示されているように、管の技術分野において、シート(フィルム21)の幅方向の両端部を第1接着部に沿って互いに固着させることにより形成される第1ホース層(第一層21)と、シート(フィルム22)の両端部を第2接着部に沿って互いに固着させることにより形成され、その内面が前記第1ホース層の外面に固着される第2ホース層(第二層22)とを備えるホース(可撓性を有する薄肉チューブ10)は、周知技術である。
そして、引用発明とこの周知技術とは管という同一の技術分野に属しているから、引用発明において、各層の構造及び管の形態としてこの周知技術を適用することにより相違点1、相違点4及び相違点7に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易であり、またその際に、固着手段として常套手段である接着(なお、周知例には固着手段として接着を採用することが示唆されている。周知例の15頁16?17行の「隣接した層を一緒に接着させるため、PTFEフィルムの層の間に接着剤が使用されてもよい。」なる記載を参照。)を採用することにより、相違点3、相違点6及び相違点8に係る本願発明の構成とすることは、単なる設計的事項にすぎない。

(3-2)相違点2及び相違点5について
例えば特開平5-124117号公報に開示されているように、管の技術分野において、繊維の材質としてポリエチレン交織物を用いることは、周知技術である。
そして、本願発明においてポリエチレン交織物を採用したことの技術的意義を検討すると、段落【0080】には「本発明によれば、上述したように、一面または両面に水密膜がコートされて幅方向の両端部が互いに接着される2層以上のポリエチレン交織物を用いて耐圧用ホースを成形することにより、高圧力の液体または気体の噴出に効果的に使用できるようになり、先行技術による多数のゴムチューブ層及び多数の繊維層を有する耐圧用ホースに比べて厚さが著しく薄くなり、材料比が節減し、屈曲性が向上し、その成形が簡単かつ容易な方式で行われ、生産性が増大する。」なる記載があるものの、このような効果は水密膜がコートされた織物を採用すれば必然的に得られる一般的なものであることは明らかであり、本願明細書には他の繊維からなる織物と比較してポリエチレン交織物特有の効果を示す記載はないから、ポリエチレン交織物特有の技術的意義を見いだすことができない。
そうすると、引用発明において、同一技術分野に属する上記周知技術を単に適用することにより、相違点2及び相違点5に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。

そして、本願発明の全体構成により奏される効果も、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-25 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-19 
出願番号 特願2000-610665(P2000-610665)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16L)
P 1 8・ 57- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 米山 毅
仁木 浩
発明の名称 耐圧用ホース  
代理人 工藤 一郎  

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