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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E01B |
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管理番号 | 1198224 |
審判番号 | 不服2007-13539 |
総通号数 | 115 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-05-10 |
確定日 | 2009-06-01 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第285205号「レール絶縁継目構造」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月27日出願公開,特開平11-117203〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成9年10月17日の出願であって,平成19年4月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年5月10日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされるとともに,同年6月1日付けで手続補正がなされた。その後,当審において平成20年9月5日付けで審尋が通知され,これに対し,同年11月7日付けで回答書が提出され,さらに,同年12月12日付けで当審において拒絶理由の通知がなされ,これに対し,平成21年2月13日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成21年2月13日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 (本願発明) 「レールの軌道両側面に絶縁プレートを介在させて鋼鉄製継目板をあてがい、絶縁フランジ付きチューブを通して継目ボルトで継目板を固定するレール絶縁継目構造において、 前記鋼鉄製継目板は、レール腹に面した側に張り出し部を持たないとともに、レール腹に面していない側の下端部に張出部を持たず、絶縁プレートを介してレール腹と面接触する形状にして、レールに直交する方向の断面形状をレール方向に沿って均一化し、レール腹に面した側に張り出し部を持つとともに、レール腹に面していない側の下端部に張出部を持つ鋼鉄製絶縁継目板に比して、レールに直交する方向の断面積をレール方向に沿ってより大きくするとともに、前記下端部の張出部の箇所に対応する箇所以外のレールに直交する方向の断面の断面係数をレール方向に沿ってより大きくしたことを特徴とするレール絶縁継目構造。」 3.引用刊行物 (1)当審の拒絶理由で引用され,本願の出願前に頒布された特開昭56-19753号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「繊維製品強化結合シートおよびその製造方法」に関し,図面とともに,次の事項が記載されている。 (1a)「大部分の電気絶縁性レールジヨイントは隣接するレールの間のすきまを固定するために、レールに接着剤で結合されている1組の継ぎ目板またはジヨイントバー(joint bar)からなつている。代表的な接着剤は1,2-エポキシ樹脂および交さ結合剤のような2成分樹脂組成物である。 2成分樹脂組成物は使用するのが煩雑であり、かつ難かしい。2成分は十分に混合しなければならず、かつ、もし、ジヨイントバーが金属であれば十分な絶縁性を確保するためには十分なかさになるように織物に塗布しなければならない。・・・」(第1頁右下欄最終行から第2頁左上欄第10行) (1b)「第2図は第1図の装置で製造した繊維製品強化結合シートで製造した絶縁レールジヨイントの縦断面である。」(第3頁右下欄第1?3行) (1c)「第2図に示すように絶縁レールジヨイントを製造するためには、織物結合シート24から切り取つた1層またはそれ以上の層を暖め、木型で成型し、1組のジヨイントバー30およびレール32(その1つは示してある)の対向表面に適合する1組の予成形体24aが得られる。予成形体にあけた穴にボルト34および絶縁ブツシング36を入れる。」(第4頁左上欄第13?20行) (1d)「織物強化結合シートの3層からなる予成形体を使用し、第2図に示す鋼製ジョイントバーを用いて、132-ポンド/ヤードサイズの溶接線路用絶縁レールジヨイントを製造するために使用した。」(第4頁右下欄第11?14行) (1e)第2図には,レール32の軌道両側面に予成形体24aを介在させてジヨイントバー30をあてがい,絶縁ブツシング36を通してボルト34でジヨイントバー30を固定したことが示されている。 (1f)第2図には,ジヨイントバー30は,レール32の腹に面した側に張り出し部を持たないとともに,レール32の腹に面していない側の下端部に張り出し部を持たず,予成形体24aを介してレール32の腹と面接触する形状であることが示されている。 したがって,上記記載事項(1a)ないし(1f)によれば,刊行物1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「レール32の軌道両側面に予成形体24aを介在させて鋼製ジヨイントバー30をあてがい,絶縁ブツシング36を通してボルト34で鋼製ジヨイントバー30を固定する絶縁レールジヨイントであって,鋼製ジヨイントバー30はレール32の腹に面した側に張り出し部を持たないとともに,レール32の腹に面していない側の下端部に張り出し部を持たず,予成形体24aを介してレール32の腹と面接触する形状である絶縁レールジヨイント。」 (2)当審の拒絶理由で引用され,本願の出願前に頒布された実願平4-31917号(実開平6-67501号)のCD-ROM(以下,「刊行物2」という。)には,「レール絶縁継目用ツバ付チユーブ」に関し,図面とともに,次の事項が記載されている。 (2a)「【請求項1】ガラス繊維クロス、ビニロンクロス及び熱硬化性樹脂からなるツバ3と、アラミド繊維クロス、ガラス繊維クロス及び熱硬化性樹脂からなるチユーブ2が熱硬化性樹脂で一体に固定されていることを特徴とするレール絶縁継目用ツバ付チユーブ。」 4.対比 本願発明と引用発明を比較すると,引用発明の「レール32」は本願発明の「レール」に相当し,以下同様に,「ボルト34」は「継目ボルト」に,「絶縁レールジヨイント」は「レール絶縁継目構造」に,それぞれ相当する。 また,「鋼製」と「鋼鉄製」とは,ともに精錬技術によって造られた鉄鋼材を総称するものであるから,引用発明の「鋼製ジヨイントバー30」は本願発明の「鋼鉄製継目板」に相当する。 また,上記「3.」の記載事項(1a)などから見て,引用発明の「予成形体24a」はジヨイントバーとの十分な絶縁性を確保するための部材であるから,本願発明の「絶縁プレート」に相当する。 また,引用発明の「絶縁ブツシング36」と本願発明の「絶縁フランジ付きチューブ」とは,「絶縁チューブ」である点で共通している。 してみれば,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「レールの軌道両側面に絶縁プレートを介在させて鋼鉄製継目板をあてがい,絶縁チューブを通して継目ボルトで継目板を固定するレール絶縁継目構造において, 前記鋼鉄製継目板は,レール腹に面した側に張り出し部を持たないとともに,レール腹に面していない側の下端部に張出部を持たず,絶縁プレートを介してレール腹と面接触する形状にした,レール絶縁継目構造。」 <相違点1> 絶縁チューブが,本願発明は「絶縁フランジ付きチューブ」であるのに対し,引用発明は「絶縁ブツシング」ではあるものの,絶縁フランジを有するものではない点。 <相違点2> レール絶縁継目構造が,本願発明は「レールに直交する方向の断面形状をレール方向に沿って均一化し、レール腹に面した側に張り出し部を持つとともに、レール腹に面していない側の下端部に張出部を持つ鋼鉄製絶縁継目板に比して、レールに直交する方向の断面積をレール方向に沿ってより大きくするとともに、前記下端部の張出部の箇所に対応する箇所以外のレールに直交する方向の断面の断面係数をレール方向に沿ってより大きくした」ものであるのに対し,引用発明はレール方向に沿った形状が明らかでない点。 5.判断 まず,相違点1について検討する。刊行物2には,レール絶縁継目用のチューブを,ツバの付いたものとする技術が開示されている。引用発明において,確実な絶縁を行うために刊行物2記載の技術を採用することは,当業者が容易になし得たことである。 次に,相違点2について検討する。絶縁構造を有するレールに用いる継目板のレールに直交する方向の断面形状は,例えば実公昭5-1768号公報(「金屬接手鈑(2)」参照。),実公昭11-16000号公報(「接續金(3)」参照。),特開平7-145601号公報(「継目板2」参照。)等にみられるように,通常,レール方向に沿って均一化した形状となっており,引用発明においても,特別な事情がない限り,当然,レール方向に沿って均一化した形状になっているものと解される。仮にそうでなくとも,レール方向に沿って均一化した形状とすることは,当業者が容易になし得たことである。そして,引用発明においても,継目板が所望の耐久性を持つように設計するのは当然のことであり,その結果として,断面積や断面係数を適当な値とするのは,当業者の通常の創作能力の範囲内の事項である。 また,本願発明の「レール腹に面した側に張り出し部を持つとともに、レール腹に面していない側の下端部に張出部を持つ鋼鉄製絶縁継目板に比して、レールに直交する方向の断面積をレール方向に沿ってより大きくするとともに、前記下端部の張出部の箇所に対応する箇所以外のレールに直交する方向の断面の断面係数をレール方向に沿ってより大きくした」という構成は,それによって,断面積や断面係数を特定することができるものとはなっていない。なぜなら,上記「レール腹に面した側に張り出し部を持つとともに、レール腹に面していない側の下端部に張出部を持つ鋼鉄製絶縁継目板」は,それ自体,断面積や断面係数を特定することができるものではなく,断面積や断面係数を比較する対象としての適格性を欠いているからである。 上記したように,継目板の断面積や断面係数は,耐久性等を考慮して設計されるべきものであって,上記「レール腹に面した側に張り出し部を持つとともに、レール腹に面していない側の下端部に張出部を持つ鋼鉄製絶縁継目板」と,断面積や断面係数を比べることに技術的意味は認められない。 6.むすび 以上のとおり,本願発明は引用発明,刊行物2記載の技術及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-31 |
結審通知日 | 2009-04-03 |
審決日 | 2009-04-16 |
出願番号 | 特願平9-285205 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(E01B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深田 高義 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
宮崎 恭 関根 裕 |
発明の名称 | レール絶縁継目構造 |
代理人 | 阿部 龍吉 |
代理人 | 内田 亘彦 |
代理人 | 菅井 英雄 |
代理人 | 米澤 明 |
代理人 | 青木 健二 |
代理人 | 蛭川 昌信 |
代理人 | 韮澤 弘 |