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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1198233
審判番号 不服2007-19229  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-09 
確定日 2009-06-03 
事件の表示 平成10年特許願第506190号「不透明膜及び透明膜の厚さを測定する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月22日国際公開、WO98/03044、平成12年11月14日国内公表、特表2000-515244〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、1997年7月14日の国際出願(パリ条約による優先権主張 1996年7月15日 米国、1997年1月15日 米国)であって、平成19年3月30日付け(送達 同年4月10日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月9日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の請求項1ないし28に係る発明は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし28に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「薄い試料の厚さを判定する方法において、
波動ベクトルにより決められ励起放射場を上記試料に当てることにより上記試料に時間依存性音響導波モードを励起する段階と、
プローブ放射を上記音響導波モードによって上記試料の表面に誘導されたリップル形態から回折させることにより上記音響導波モードを検出する段階と、
上記音響導波モードの少なくとも一つの速度又は周波数を測定するため、上記回折されたプローブ放射を分析する段階と、
上記測定された位相速度又は周波数から上記薄い試料の厚さを判定する段階とを含む方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例の記載事項・引用発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、優先日前に頒布された刊行物である、国際公開第93/01476号(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。(訳文は当審による。)
(a)「It has been discovered that the surface ripple phenomenon can be selectively induced based on the nature of the sample, e.g. sample stiffness and thickness and the angle of incidence and wavelengths of the excitation radiation and selectively detected or analyzed by control or monitoring of parameters such as angle of incidence, polarization and intensity of a probe beam reflected from the ripple morphology. 」(2頁25行?32行)(表面のリップル現象はサンプルの性質、すなわちサンプルのスティフネスや厚さ、励起放射光の入射角や波長に基づいて選択的に励起することができ、プローブビームの入射角や偏光そしてリップル形態から反射される強度のようなパラメータを制御し、あるいは監視することにより選択的に検出し分析することができることがわかっている。)
(b)「A detector detects the diffraction signal from the probe source radiation reflected from the surface, and an analyzer selectively analyzes the diffraction signal formed by the transient ripple morphology.」(6頁11行?15行)(検出器が表面で反射されたプローブ源放射光からの回折光を検出し、分析器が遷移的リップル形態によって形成された回折光信号を分析する。)
(c)「In another particular aspect, a method for measuring the properties of a sample. The method includes impinging a pulse of excitation radiation upon the sample. The excitation radiation is composed of at least two component pulses which interfere within the sample and are selected to induce a transient phonon in the sample which gives rise to a transient, time dependent ripple morphology on a surface of the sample. Probe radiation is reflected from the periodic ripple morphology on the surface of the sample to form a diffraction signal. The diffraction signal from the probe source radiation reflected from the ripple morphology is selectively detected.」(6頁16行?28行)(別の見地から見た試料の特性を計測する方法。該方法は試料に励起放射パルス光を照射することを含む。励起放射光は試料と干渉し、試料表面に時間的に遷移するリップル形態を生じる遷移的なフォノンを励起するよう選ばれている少なくとも2つの成分パルス光から成る。プローブ放射光は試料表面上の周期的リップル形態で反射し、回折信号を形成する。リップル形態で反射したプローブ源放射光からの回折信号は選択的に検出される。)
(d)「In order to extract the elastic constants of the thin film from the pseudo-Rayleigh mode frequencies measured at different scattering wavevector magnitudes q, the dispersion of ω(q) for the various modes is to be understood. In fact, the frequency depends only on the product qh, where h is the film thickness, so that the results of measurements on films of different thickness can be compared. 」(25頁11行?18行)(様々な散乱波動ベクトルの大きさqで測定された疑レイリーモードの周波数から薄いフィルムの弾性定数を抽出するためには、色々なモードに対する分散ω(q)がわかる必要がある。実際、周波数は積qh(ここでhはフィルム厚)のみに依存する。それ故様々な厚さのフィルムに対する測定結果が比較できる。)
(e)「The diffracted ISTS signal arises predominantly from corrugation or ripple displacements at the film surface and the film/substrate ripple due to the propagating pseudo- Rayleigh modes.」(9頁1行?5行)(回折されたISTS信号はフィルム表面でのしわ又はリップル変位あるいは伝播する疑レイリーモードによるフィルム/基体のリップルから主に生じる。)
(f)「In general, there are several different protocols available for extracting the elastic parameters from ISTS data on thin supported films. One method, which was demonstrated above, involves determining the mode velocities at a range of qh values - by either changing scattering angle or sample thickness or both - and then varying the elastic parameters until a good match between theoretical dispersion curves and data is obtained. 」(55頁26行?33行)(一般的に、薄い支持されたフィルム上のISTSデータから弾性パラメータを抽出するプロトコルはいくつかある。一つの方法は上記したように、散乱角又は試料の厚さ若しくはその両方を変え、次いで理論的分散カーブとデータとの間に良好な一致が得られるまで弾性パラメータ値を変化させることにより、qh値の範囲でのモード速度を決定することを含む。)
(g)「 The indices of refraction and film thickness can be measured by other techniques, or treated as free parameters in a fitting scheme. 」(56頁10行?12行)(屈折率やフィルム厚は別の技術で測ることができるが、フィッティングスキームの中でフリーパラメータとして取り扱ってもよい。」)

・上記記載(a)から、
(1)「試料表面のリップル現象を励起する励起放射光は、入射角や波長により決められるべきものであること」が読みとれる。
・上記記載(c)から、
(2)「励起放射光を試料に照射することにより上記試料に時間的に遷移するリップル形態を生じる遷移的フォノンを励起する段階」が読みとれる。
「回折されたISTS信号は・・・疑レイリーモードによるフィルム/基体のリップルから主に生じる」(記載(e))ことから、回折されたISTS信号は励起された疑レイリーモードに対応すると解される。
このことを考慮すると、上記記載(c)から、
(3)「プローブ放射光を遷移的なフォノンによって試料の表面に生じたリップル形態から回折させることにより疑レイリーモードを検出する段階」が読みとれる。
・上記記載(b)、(d)から、
(4)「疑レイリーモードの周波数を測定するため、回折光信号を分析する段階」が読みとれる。
・上記記載(d)、(f)から、
(5)「疑レイリーモードの周波数から、理論的分散カーブとデータの間に良好な一致が得られるまで試料の弾性定数をパラメータ値として変化させるとのフィッティングスキームにより薄い試料の弾性定数を抽出する方法。」が読みとれる。
・上記記載(g)から、
(6)「該フィッティングスキームにおいて薄い試料の厚さをフリーパラメータとして扱うこと」が読み取れる。
以上(1)ないし(6)を総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されていると認められる。
「薄い試料の弾性定数を抽出する方法において、
入射角や波長により決められ励起放射光を上記試料に照射することにより上記試料に時間的に遷移するリップル形態を生じる遷移的フォノンを励起する段階と、
プローブ放射光を上記遷移的なフォノンによって上記試料の表面に生じた上記リップル形態から回折させることにより疑レイリーモードを検出する段階と、
疑レイリーモードの周波数を測定するため、回折光信号を分析する段階と、
疑レイリーモードの周波数から、薄い試料の厚さをフリーパラメータとして扱って、理論的分散カーブとデータの間に良好な一致が得られるまで試料の弾性定数をパラメータ値として変化させるとのフィッティングスキームにより薄い試料の弾性定数を抽出する方法。」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における、
「抽出」、「入射角や波長により決められ」、「励起放射光」、「照射する」、「時間的に遷移するリップル形態を生じる遷移的フォノン」、「プローブ放射光」、「生じた」、「疑レイリーモード」、「疑レイリーモードの周波数」及び「回折光信号」は、
本願発明における、
「判定」、「波動ベクトルにより決められ」、「励起放射場」、「当てる」、「時間依存性音響導波モード」、「プローブ放射」、「誘導された」、「音響導波モード」、「音響導波モードの少なくとも一つの速度又は周波数」及び「回折されたプローブ放射」にそれぞれ相当する。
本願発明における「測定された位相速度又は周波数から上記薄い試料の厚さを判定する方法」も、引用発明における「疑レイリーモードの周波数から、薄い試料の厚さをフリーパラメータとして扱って、理論的分散カーブとデータの間に良好な一致が得られるまで試料の弾性定数をパラメータ値として変化させるとのフィッティングスキームにより薄い試料の弾性定数を抽出する方法」も、共に、「測定された位相速度又は周波数から薄い試料の物理的属性を判定する方法」である点で共通する。
してみると、両者は
(一致点)
「 薄い試料の物理的属性を判定する方法において、
波動ベクトルにより決められ励起放射場を上記試料に当てることにより上記試料に時間依存性音響導波モードを励起する段階と、
プローブ放射を上記音響導波モードによって上記試料の表面に誘導されたリップル形態から回折させることにより上記音響導波モードを検出する段階と、
上記音響導波モードの少なくとも一つの速度又は周波数を測定するため、上記回折されたプローブ放射を分析する段階と、
上記測定された位相速度又は周波数から上記薄い試料の物理的属性を判定する段階とを含む方法。」
で一致し、以下の点で相違している。
(相違点)
相違点:判定すべき薄い試料の物理的属性について、
本願発明は「厚さ」であるのに対し、引用発明は「弾性定数」である点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用発明の弾性定数を判定する際のフィッティングスキームにおいて、試料の厚さはフリーパラメータとして扱うこととしていることから、引用発明の弾性定数を判定する上記フィッティングスキームにおいて、試料の厚さについてもそれに付随して判定できることは当業者ならば明らかである。
ところで、薄い試料の代表的な物理的属性である試料の厚さを測定対象とすることは例示するまでもなく普通に行われている技術事項である。
したがって、付随的に試料の厚さが判定できることが明らかな引用発明に接した当業者にとって、引用発明を試料の厚さ測定に転用しようとすることは容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の作用効果は、引用発明から当業者が予測可能なものであって、格別なものではない。
(請求人の主張について)
請求人は審判請求の理由において、引用例には如何にして試料の材料特性から独立して試料の厚さを測定するかや、如何にして試料の材料特性の測定中に試料の厚さを測定するかについて示唆も教示もない旨主張しているが、引用発明の弾性定数を判定するフィッティングスキームにおいて、試料の厚さについてもそれに付随して判定できることが当業者にとって明らかであることは上記で説示したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

5.むすび
したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-25 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-20 
出願番号 特願平10-506190
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 山下 雅人
下中 義之
発明の名称 不透明膜及び透明膜の厚さを測定する方法及び装置  
代理人 伊東 忠彦  
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