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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1198259
審判番号 不服2006-21469  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-25 
確定日 2009-06-03 
事件の表示 特願2003-507839「家電機器用コントロールパネル組立体及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 3日国際公開、WO03/01546、平成16年 7月22日国内公表、特表2004-522309〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、2002年6月22日(優先権主張2001年6月22日、2001年7月31日、韓国)に国際出願されたもので、平成17年10月25日付け拒絶理由通知書が送付され、平成18年6月21日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたもので、願書に添付した明細書又は図面についての平成18年10月19日付け手続補正書が提出されている。

2.原査定
原査定の拒絶理由は、以下のとおりのものと認める。

「この出願の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1?3、又は4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1;特開平10-27983号公報
刊行物2;特開平5-212748号公報
刊行物3;実願昭55-35626号(実開昭56-137233号)のマイクロフィルム
刊行物4;特開2000-151136号公報」

「特開平5-212748号公報」を、以下、「引用刊行物」という。

3.当審の判断
原査定の拒絶理由について検討する。

3-1.本件の発明
本件の請求項19に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付した明細書の請求項19に記載の事項により特定されるものであって、同項の記載は、以下のとおりのものと認める。

「ユーザが家電製品を作動し、動作状態を把握できるように外観フィルムを形成する段階と、
前記外観フィルムに樹脂を射出して前記外観フィルムと一体に前記コントロールパネルを形成する段階と、
前記外観フィルムが基板上に装着されるスイッチ及びボタンと連動可能に前記外観フィルムに一体化したコントロールパネルを前記基板に装着させる段階からなることを特徴とする家電機器用コントロールパネル組立体の製造方法。」

ここで、この記載について触れておくと、ここには、「前記コントロールパネル」との記載があるが、請求項19には、この記載より前には「コントロールパネル」なる記載はなく、この記載の後に「コントロールパネル」との記載があることから、前記「前記コントロールパネル」は、「後記コントロールパネル」であるか、或いは、単に「コントロールパネル」の誤記であると認められ、このいずれの誤記であっても、いわゆる、発明特定事項としては、その内容に違いはないから、以下の検討においては、後者、すなわち、「コントロールパネル」の誤記として扱う。

3-2.引用刊行物の記載
引用刊行物には、以下の記載が認められる。

A;「【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明又は半透明の可撓性を有するプラスチックフィルム若しくはシ-トからなるスイッチ盤用生地部材の少なくとも片面に文字、図柄、或いは着色等が施された印刷表示層を形成し、該表示層にスクリ-ン印刷等により接着融解層を設けた所望形状の積層材片を、射出成形金型内の所定位置に設置して芯材樹脂側の射出成形樹脂部と接着接合し一体成形されてなり、かつ前記射出成形樹脂部にはキ-スイッチ操作部の対応箇所に欠損窓孔が形成された構成からなることを特徴とするプラスチック成形銘板スイッチ部。」(1頁)
B;「【0007】本発明において、スイッチ盤用生地部材としては、家電製品や産業機器等での機械器具に取付けられる電気回路の切断、切り換え、接続等のため指先等で接触押圧の如き簡便な操作に適した素材であり、通常プラスチック素材が多く用いられており、例えばキ-スイッチ用表面シ-トではポリエステル・フィルム等の可撓性を有する素材が好適である。」(3頁)
C;「【0011】
【実施例】以下に本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例を示す断面部、図5は本発明のキ-スイッチ部を設けたプラスチック成形銘板の一実施例を示す正面図であり、図1及び5において、プラスチック成形銘板1には文字、図形等が視認できるキ-スイッチ操作部4と、透視窓部5が設けられており、その最外層に指触押圧し操作できるポリエステルフィルムからなるスイッチ盤用生地部材6と、文字、図形等の印刷部2及び着色3が施される印刷表示層7、さらにその裏面にはスクリ-ン印刷、又はロ-ルコ-タ-、全面塗布や吹き付け等によりホットメルト系樹脂等からなる接着融解層8が層着された積層材片15が、射出成形金型内の所定位置(図示しない)に設置又は載置され溶融樹脂を加圧注入するインサ-ト成形により一体化成形され、かつキ-スイッチ操作部4の対応箇所に欠損窓孔10が形成された芯材樹脂の射出成形樹脂部9とが接着融解層8を介して一体的に成形された概略構成となっている。
【0012】図2は、スイッチ盤用生地部材に凸状隆起部を形成した構成の断面図であり、前記図1と同様にキ-スイッチ操作部4の対応箇所に欠損窓孔10が形成された芯材樹脂の射出成形樹脂部9と積層材片15とが一体成形された構成よりなり、キ-スイッチ操作部4に対応するスイッチ盤用生地部材6の裏面側には通常文字又は図形等の印刷部2或いは着色3が施されており、しかも印刷部2の文字、図形等がキ-スイッチ操作部4に対応する箇所に設けた凸状隆起部11は、前記スイッチ盤用生地部材6が透明又は半透明で且つスイッチ操作機能を備えた可撓性のあるポリエステルフィルムを円弧突出状の形態とした凸状隆起部11が形成された構成である為、該凸状隆起部11の膨隆状態により屈折、拡散反射により透明又は半透明で屈折率が見る角度によって異なるレンズ素子効果を備えており、特殊な視覚上の効果を発揮するスイッチ表示部材の構成となっている。」(3?4頁)並びに、【図1】、【図2】(4頁)及び【図4】(5頁)

3-3.引用刊行物の発明
引用刊行物には、記載Aによれば、「透明又は半透明の可撓性を有するプラスチックフィルム若しくはシ-トからなるスイッチ盤用生地部材の少なくとも片面に印刷表示層を形成し、該印刷表示層にスクリ-ン印刷により接着融解層を設けた所望形状の積層材片を、射出成形金型内の所定位置に設置して射出成形樹脂部と接着接合し一体成形されてなり、かつ前記射出成形樹脂部にはキ-スイッチ操作部の対応箇所に欠損窓孔が形成された、プラスチック成形銘板」の発明が記載されていると認められる。
そこで、更に、この発明のプラスチック成形銘板について見ていくと、該プラスチック成形銘板は、記載Bによれば、家電製品の操作に用いるものであることが窺える。
また、記載Cの【図2】に記載のものを見ると、上記発明において、そのキ-スイッチ操作部は、積層材片における所定の部位であって、凸状隆起部として形成されていることが見て取れる。そして、このように、積層材片は、そこにおける所定の部位をキ-スイッチ操作部としていること、並びに、この積層材片を有する上記プラスチック成形銘板が、上述したように、家電製品の操作に用いるものであることから、上記積層材片は、ユーザが家電製品を操作できるように、形成されているということができる。
更に、記載Cには、上記発明のプラスチック成形銘板に透視窓部を設けることが記載されている。
そして、上記発明は、プラスチック成形銘板を形成する方法としても把握できることは明らかであるから、結局のところ、引用刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

「透明又は半透明の可撓性を有するプラスチックフィルム若しくはシ-トからなるスイッチ盤用生地部材の少なくとも片面に印刷表示層が形成され、該印刷表示層にスクリ-ン印刷により接着融解層が設けられた所望形状の積層材片であって、その所定の部位を、凸状隆起部として形成されているキ-スイッチ操作部、とする該積層材片を、ユーザが家電製品を操作できるように形成する段階と、
前記積層材片を射出成形金型内の所定位置に設置して射出成形樹脂部と接着接合し一体成形し、前記射出成形樹脂部には前記キ-スイッチ操作部の対応箇所に欠損窓孔が形成された、透視窓部が設けられたプラスチック成形銘板を形成する方法」

3-4.対比判断

1)本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「積層材片」、「キ-スイッチ操作部」及び「射出成形樹脂部」は、本件発明の「外観フィルム」、「ボタン」及び「コントロールパネル」に対応しているということができる。
また、引用発明における「積層材片を射出成形金型内の所定位置に設置して射出成形樹脂部と接着接合し一体成形し、」の段階においては、該積層材片に樹脂を射出しているといえる。
そして、以上のことを踏まえると、本件発明は、引用発明とは、
「ユーザが家電製品を作動できるように外観フィルムを形成する段階と、前記外観フィルムに樹脂を射出して前記外観フィルムと一体に前記コントロールパネルを形成する段階とからなる方法」の点で一致し、
以下の相違点A及びBにおいて相違していると認められる。

相違点A;引用発明は、「プラスチック成形銘板」、すなわち、本件発明でいう「外観フィルム」と「コントロールパネル」とからなる物を形成する方法であるのに対し、本件発明は、これら「外観フィルム」や「コントロールパネル」に関し、「外観フィルムが基板上に装着されるスイッチ及びボタンと連動可能にコントロールパネルを前記基板に装着させる段階からなる家電機器用コントロールパネル組立体の製造方法」としている点。
相違点B;本件発明は、「ユーザが家電製品の動作状態を把握できるように外観フィルムを形成する」点。

2)相違点Aについて検討する。
引用発明における「プラスチック成形銘板」は、概要、ユーザが家電製品を操作できるように形成された、キ-スイッチ操作部を有する積層材片と、射出成形樹脂部とから構成されているものであって、ユーザは、このキ-スイッチ操作部に触れ、これを介してキ-スイッチを操作し、結果として、家電製品を操作するものと認められ、上記「プラスチック成形銘板」は、キ-スイッチと組み合わせることにより、家電製品を操作するとの機能を果たすことは明らかであるし、積層材片は、キ-スイッチとキ-スイッチ操作部とが連動可能となるように構成されるものということができる。
そして、上記キ-スイッチは、何らかの基材に支持されていると解するのが自然であり、この基材を基板とし、この上に上記キ-スイッチを装着したものとすることは容易に設計できるものであるし、更に、上記キ-スイッチが「プラスチック成形銘板」の射出成形樹脂部側に配されることは明らかであるから、上記基板に上記射出成形樹脂部を装着させて、組立体に製造することも容易に設計できるものである。
してみると、引用発明における「積層材片」や「射出成形樹脂部」に関し、「積層材片が基板上に装着されるキ-スイッチ及びキ-スイッチ操作部と連動可能に射出成形樹脂部を前記基板に装着させる段階からなる組立体の製造方法」とすること、すなわち、相違点Aは、容易に為し得るということができる。

3)相違点Bについて検討する。
引用発明において、その「プラスチック成形銘板」は、透視窓部が設けられているのであるから、「積層材片」にも、透視窓部が設けられていることは明らかである。
その一方で、引用発明の「積層材片」は、印刷表示層を有するものであり、この印刷表示層につき、引用刊行物を詳しく見ると、ここには、先に「3-2」で摘示した記載Cが認められ、記載Cの【図4】には、上記印刷表示層として、「メニュー」、「予約」、「時」、「分」や、「タイマー」、「保温」などの文字が見て取れる。
そして、引用発明のプラスチック成形銘板は、先に「2)」で述べたように、ユーザにより家電製品の操作に用いられるものであって、上述したような文字が見て取れることを踏まえ、プラスチック成形銘板を形作る積層材片が上記透視窓部を有していることの意味について考察すると、該透視窓部は、何らかの表示装置に表示されている、上記「メニュー」等に関した事項を確認するために設けられていると解するのが自然であって、更に、文字として「保温」があり、家電製品が保温という動作状態にあることをも確認できるように、上記表示装置に表示するよう構成することは、容易に為し得るものといえる。
してみると、引用発明において、「ユーザが家電製品の動作状態を把握できるように透視窓部を有する積層材片を形成する」こと、すなわち、相違点Bは、容易に為し得るということができる。

3-5.まとめ
本件発明は、引用発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、原査定の拒絶理由は、相当である。

4.結び
原査定は、妥当である。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-25 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-21 
出願番号 特願2003-507839(P2003-507839)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就森林 克郎  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 青木 千歌子
山本 一正
発明の名称 家電機器用コントロールパネル組立体及びその製造方法  
代理人 篠崎 正海  
代理人 青木 篤  
代理人 島田 哲郎  
代理人 鶴田 準一  

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