ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06T 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06T |
---|---|
管理番号 | 1198377 |
審判番号 | 不服2007-33466 |
総通号数 | 115 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-12 |
確定日 | 2009-06-23 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 77348号「放射線デジタル画像処理システム、放射線デジタル画像処理装置及び放射線デジタル画像処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月 8日出願公開、特開平11-272851、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.本願発明 本願の請求項1?5に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1?5にその記載のあるとおりのものであるところ、本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 放射線撮影により得られる放射線デジタル画像データを処理する放射線デジタル画像処理装置において、 前記放射線デジタル画像データを入力する入力手段と、 1)放射線を被写体に照射し、その透過像である放射線画像を直接固体撮像素子を用いて撮像し、撮像された放射線画像に対応した前記放射線デジタル画像データを出力する放射線画像撮影装置、 2)輝尽性蛍光体シートに蓄積記録された放射線画像を読み取る放射線画像読取装置、 または 3)放射線を被写体に照射し、その透過像である放射線画像を蛍光板で受光し、該蛍光板の受光像を固体撮像素子によって放射線デジタル画像データに変換する放射線画像撮影装置、 の中から前記放射線デジタル画像データを出力した放射線撮影装置を設定する設定手段と、 前記設定手段により設定された前記放射線撮影装置で前記入力手段により入力された前記放射線デジタル画像データの放射線撮影時に、放射線の強度を検出するために用いたフォトセンサーの配置位置に対応した画像領域を指定するフォトセンサー領域指定手段と、 前記放射線デジタル画像データにおける被写体の画像領域を抽出する被写体領域抽出手段と、 前記フォトセンサー領域指定手段により指定された前記画像領域と前記被写体の画像領域が重なる領域の画素値に基づいて、画像処理に用いるための特徴量を算出する特徴量算出手段と、 前記特徴量算出手段により算出された前記特徴量として示される値が所定の値となるような変換特性を有する変換処理を、前記放射線デジタル画像データに対して行うための画像処理手段と、 を有することを特徴とする放射線デジタル画像処理装置。」 なお、他の請求項2ないし5に記載された発明は、次のとおりである。 【請求項2】 前記画像処理手段は、濃度変換カーブを示すデータを前記撮影部位に対応させて記憶しているルックアップテーブルを備え、前記判別手段により判別された前記撮影部位に応じて、前記ルックアップテーブルから前記濃度変換カーブを示すデータを読み出し、読み出された前記濃度変換カーブを示すデータを用いて前記放射線デジタル画像データに対して濃度変換処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の放射線デジタル画像処理装置。 【請求項3】 前記特徴量は、最大値、最小値、平均値、中央値及び最頻度値のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の放射線デジタル画像処理装置。 【請求項4】 複数の装置が互いに通信を可能に接続されてなる放射線画像用システムであって、請求項1?3のいずれか1項に記載の放射線デジタル画像処理装置の各機能を有することを特徴とする放射線デジタル画像処理システム。 【請求項5】 放射線撮影により得られる放射線デジタル画像データを処理する放射 線デジタル画像処理方法において、 前記放射線デジタル画像データを入力する入力工程と、 1)放射線を被写体に照射し、その透過像である放射線画像を直接固体撮像素子を用いて撮像し、撮像された放射線画像に対応した前記放射線デジタル画像データを出力する放射線画像撮影装置、 2)輝尽性蛍光体シートに蓄積記録された放射線画像を読み取る放射線画像読取装置、 または 3)放射線を被写体に照射し、その透過像である放射線画像を蛍光板で受光し、該蛍光板の受光像を固体撮像素子によって放射線デジタル画像データに変換する放射線画像撮影装置、 の中から前記放射線デジタル画像データを出力した放射線撮影装置を設定する設定工程と、 前記設定工程により設定された前記放射線撮影装置で前記入力工程により入力された前記放射線デジタル画像データの放射線撮影時に、放射線の強度を検出するために用いたフォトセンサーの配置位置に対応した画像領域を指定するフォトセンサー領域指定工程と、 前記放射線デジタル画像データにおける被写体の画像領域を抽出する被写体領域抽出工程と、 前記フォトセンサー領域指定工程により指定された前記画像領域と前記被写体の画像領域が重なる領域の画素値に基づいて、画像処理に用いるための特徴量を算出する特徴量算出工程と、 前記特徴量算出工程により算出された前記特徴量として示される値が所定の値となるような変換特性を有する変換処理を、前記放射線デジタル画像データに対して行うための画像処理工程と、 を有することを特徴とする放射線デジタル画像処理方法。 2.原審の拒絶の理由及び拒絶査定 (i)原審の拒絶の理由は次の通りである。 『(理由B) この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。 記 請求項2,3に記載された「放射線撮影装置に関する情報」は、発明の詳細な説明との対応箇所が不明瞭であり、発明の詳細な説明に記載された範囲以上の事項を含むものである。該記載に関する説明は、発明の詳細な説明の【0017】、【0020】、【0021】等に記載されていると認められるが、これらの箇所では「放射線撮影装置に関する情報」として「装置の種類」を利用することが記載されているだけであり、出願時の技術常識に照らしても、製造年月日等のその他の情報をも含み得る請求項2,3に係る発明まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 なお、上記のように、製造年月日等の情報を用いることは発明の詳細な説明には記載されておらず、また、本願でいう「装置の種類」とは具体的にどのようなものなのか不明瞭であるため(MRIやCTといったものであるすると、それらの装置自体と読み取る画像領域を対応付けることの技術的意味が不明である。)、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項2,3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。』 (ii)そして、原審の拒絶査定は次の通りである。 『この出願については、平成19年 8月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由Bによって、拒絶をすべきものです。 備考 出願人は、平成19年9月6日付け意見書において、引例のついていない請求項2の要素で補正前の請求項1を限定し、かつ、本願でいう『装置の種類』の技術的意味が明瞭となるように補正前の請求項1の記載を補正したことから、本願請求項1-8に係る発明は、特許を受けるべきものであると主張している。 確かに、装置の種類についての記載は明瞭であると認められるが、上記拒絶理由通知書の(理由B)において指摘した主な事項は、「請求項2,3に記載された「放射線撮影装置に関する情報」は、発明の詳細な説明との対応箇所が不明瞭であり、発明の詳細な説明に記載された範囲以上の事項を含むものである。該記載に関する説明は、発明の詳細な説明の【0017】、【0020】、【0021】等に記載されていると認められるが、これらの箇所では「放射線撮影装置に関する情報」として「装置の種類」を利用することが記載されているだけであり、出願時の技術常識に照らしても、製造年月日等のその他の情報をも含み得る請求項2,3に係る発明まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。」というものであって、手続補正書や意見書において、当該指摘に対する補正や説明が行われているとは認められない。すなわち、補正後の請求項1における「・・・の中から・・・放射線撮影装置の情報を設定する」という記載は不明瞭であって、特に放射線撮影装置の種類を設定しているのかどうかについて依然として不明瞭であるから、当該請求項における「放射線撮像装置の情報」という記載と補正前の「放射線撮影装置に関する情報」との相違が分からない。してみると、上記拒絶理由通知書の(理由B)が依然として解消されていないものと認められる(「放射線撮像装置の情報」という記載が、撮像装置の製造年月日等の本願の効果を奏さない情報全てを含み得るため。)。以上のことから、前記出願人の本願請求項1-8に係る発明は特許を受けるべきものであるという主張は採用できない。』 3.当審の判断 (i)判断に先立って、拒絶理由通知書の記載内容と拒絶査定の記載内容とを整理する。 先ず、原審の拒絶の理由の大要と拒絶の理由に対する出願人の対応(補正)について述べる。 平成19年8月10日付けの原審の拒絶理由通知書に記載された「理由B」の大要は、 『特許請求の範囲の請求項2,3に記載された「放射線撮影装置に関する情報」は、発明の詳細な説明の欄に記載された「装置の種類」よりも概念的に広く、製造年月日等のその他の情報をも含み得るものであり、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張するものである。また、本願でいう「装置の種類」とはどのようなものなのか不明瞭である。』 というものである。 これに対して、出願人は、拒絶の「理由A(法29条第2項)」に該当しない請求項2を削除すると共に、請求項1と2を併せて新たな請求項1となし、請求項3?9を繰り上げて請求項2?8とした。 そして、該補正を子細に述べれば、新請求項8は独立発明ではあるが、新請求項1が「装置発明」であるところをカテゴリを変えて「方法発明」としたものである。また、新請求項2?7は、直接又は間接的に新請求項1に記載された発明を引用する従属発明である。 上記のような出願人の補正に対し、原審は拒絶の査定をしたのであるが、その大要は、 『補正後の請求項1における「・・・の中から・・・放射線撮影装置の情報を設定する」という記載は不明瞭であるから、「放射線撮像装置の情報」という記載は、依然として発明の詳細な説明に開示されない事項である撮像装置の製造年月日等の情報すべてを含む。』 というものである。 (ii)原審の拒絶査定に対し、出願人は平成19年12月12日付けで審判を請求すると共に手続補正書を提出した。 本願補正発明(請求項1に係る発明)を再記すると、次の如くである。 「【請求項1】 放射線撮影により得られる放射線デジタル画像データを処理する放射線デジタル画像処理装置において、 前記放射線デジタル画像データを入力する入力手段と、 1)放射線を被写体に照射し、その透過像である放射線画像を直接固体撮像素子を用いて撮像し、撮像された放射線画像に対応した前記放射線デジタル画像データを出力する放射線画像撮影装置、 2)輝尽性蛍光体シートに蓄積記録された放射線画像を読み取る放射線画像読取装置、 または 3)放射線を被写体に照射し、その透過像である放射線画像を蛍光板で受光し、該蛍光板の受光像を固体撮像素子によって放射線デジタル画像データに変換する放射線画像撮影装置、 の中から前記放射線デジタル画像データを出力した放射線撮影装置を設定する設定手段と、 前記設定手段により設定された前記放射線撮影装置で前記入力手段により入力された前記放射線デジタル画像データの放射線撮影時に、放射線の強度を検出するために用いたフォトセンサーの配置位置に対応した画像領域を指定するフォトセンサー領域指定手段と、 前記放射線デジタル画像データにおける被写体の画像領域を抽出する被写体領域抽出手段と、 前記フォトセンサー領域指定手段により指定された前記画像領域と前記被写体の画像領域が重なる領域の画素値に基づいて、画像処理に用いるための特徴量を算出する特徴量算出手段と、 前記特徴量算出手段により算出された前記特徴量として示される値が所定の値となるような変換特性を有する変換処理を、前記放射線デジタル画像データに対して行うための画像処理手段と、 を有することを特徴とする放射線デジタル画像処理装置。」 (判断) 特許請求の範囲の請求項1,5に係る発明には、原審では不明瞭と認定されていた「放射線撮影装置に関する情報」または「放射線撮像装置の情報」という記載がない。 その代わりに、請求項1(本願補正発明)には、 「1)放射線を被写体に照射し、その透過像である放射線画像を直接固体撮像素子を用いて撮像し、撮像された放射線画像に対応した前記放射線デジタル画像データを出力する放射線画像撮影装置、 2)輝尽性蛍光体シートに蓄積記録された放射線画像を読み取る放射線画像読取装置、 または 3)放射線を被写体に照射し、その透過像である放射線画像を蛍光板で受光し、該蛍光板の受光像を固体撮像素子によって放射線デジタル画像データに変換する放射線画像撮影装置、 の中から前記放射線デジタル画像データを出力した放射線撮影装置を設定する設定手段」 との記載がなされており、 該記載によれば、放射線デジタル画像データを出力する装置は、 (1)「撮像された放射線画像に対応した放射線デジタル画像データを出力する放射線画像撮影装置」 (2)「輝尽性蛍光体シートに蓄積記録された放射線画像を読み取る放射線画像読取装置」 (3)「放射線画像撮影装置蛍光板の受光像を固体撮像素子によって放射線デジタル画像データに変換する放射線画像撮影装置」 の中のいずれかであり、この中の3つの装置の1つが選択・設定されることは明白である。 したがって、上記設定手段に係る記載は、発明の詳細な説明に開示されない事項である撮像装置の製造年月日等の情報すべてを含むとは解されない。 また、請求項1には、本願補正発明の放射線デジタル画像処理装置は、 (a)「前記設定手段により設定された前記放射線撮影装置で前記入力手段により入力された前記放射線デジタル画像データの放射線撮影時に、放射線の強度を検出するために用いたフォトセンサーの配置位置に対応した画像領域を指定するフォトセンサー領域指定手段」と、 (b)「前記放射線デジタル画像データにおける被写体の画像領域を抽出する被写体領域抽出手段」と、 (c)「前記フォトセンサー領域指定手段により指定された前記画像領域と前記被写体の画像領域が重なる領域の画素値に基づいて、画像処理に用いるための特徴量を算出する特徴量算出手段」と、 (d)「前記特徴量算出手段により算出された前記特徴量として示される値が所定の値となるような変換特性を有する変換処理を、前記放射線デジタル画像データに対して行うための画像処理手段」 とを有することが記載されており、例えば、(a)「フォトセンサー領域指定手段」は、設定手段により設定された(1)?(3)のいずれか1つの放射線撮影装置に応じて、放射線の強度を検出するために用いたフォトセンサーの配置位置に対応した画像領域を指定することが記載されている(他の(b)?(d)においても同様である。)から、原審が指摘する『「設定手段」と「フォトセンサー領域指定手段」との技術的関係が不明瞭である。』との不明確性はないというべきである。 なお、審判請求時直前の補正前の特許請求の範囲の記載に於いて、 不明瞭性を含むとされている「放射線撮影装置の情報」を、明細書に記載のある「放射線撮影装置の種類の情報」に書き換えなくても、当初明細書の特許請求の範囲には、初めから「設定手段により設定された発生源の種類に関する情報」(請求項1の記載参照。)という記載が既になされており、しかも特許請求の範囲の文言の解釈は、明細書の記載に照らしてなされるのであるから、「放射線撮影装置の情報」という記載が、特許法第36条の規定に格別違背するとするわけにはいかない。 したがって、上記「なお書き」を考慮せずとも(実際、本願発明は先に述べた如くに補正され本願補正発明となった。)、本願特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された発明は、特許法第36条に規定する要件に違背するわけではないから、特許を受けることができないということはない。 |
審決日 | 2009-06-10 |
出願番号 | 特願平10-77348 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G06T)
P 1 8・ 536- WY (G06T) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松野 広一、真木 健彦、脇岡 剛 |
特許庁審判長 |
原 光明 |
特許庁審判官 |
加藤 恵一 廣川 浩 |
発明の名称 | 放射線デジタル画像処理システム、放射線デジタル画像処理装置及び放射線デジタル画像処理方法 |
代理人 | 西山 恵三 |
代理人 | 内尾 裕一 |