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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200517013 審決 特許
不服20061033 審決 特許
不服200626464 審決 特許
不服200524083 審決 特許
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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1198453
審判番号 不服2005-7335  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-25 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 平成11年特許願第134185号「枯草菌(Bacillussubtilis)の培養方法、該方法によって培養される微生物の培養物、該培養物由来の水溶性ビタミンK誘導体ならびに該微生物の培養物またはビタミンK誘導体を含む食品、飲料または飼料」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月 9日出願公開、特開2001- 175〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,特願平10-172019号(出願日,平成10年5月17日)(以下,「本願第1優先基礎出願」という。),および,特願平11-111364号(出願日,平成11年4月19日)(以下,「本願第2優先基礎出願」という。)に基づく国内優先権主張を伴い,平成11年5月14日に出願されたものであって,平成17年3月2日付で手続補正がなされ,同年3月22日付で拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月25日に拒絶査定に対する審判が請求され,当審より,平成21年1月8日付で拒絶理由が通知され,これに対し,同年3月13日付で意見書および手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1,5および6に係る発明は,平成21年3月13日付手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1,5および6に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである(以下,それぞれを「本願発明1」,「本願発明5」および「本願発明6」という)。

「【請求項1】 ビタミンK誘導体を含む菌体の培養方法において、
枯草菌(Bacillus subtilis)を培養し、
その後、600nmの吸光度で最大値を示した直後に前記微生物菌体を回収することを特徴とするビタミンK誘導体を含む菌体の培養方法。
【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載される培養方法によって培養された枯草菌(Bacillus subtilis)の培養物。
【請求項6】 請求項5に記載される枯草菌(Bacillus subtilis)の培養物由来の水溶性ビタミンK誘導体。」


第3 優先権主張について
本願は,特願平10-172019号(出願日,平成10年5月17日)(以下,「本願第1優先基礎出願」という。),および,特願平11-111364号(出願日,平成11年4月19日)(以下,「本願第2優先基礎出願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明に基づく国内優先権主張を伴う出願である。
本願発明1は,「枯草菌を培養し,その後,600nmの吸光度で最大値を示した直後に微生物菌体を回収すること」を発明特定事項とするものであるが,本願第1優先基礎出願の願書に添付した明細書又は図面には,そのような発明特定事項は記載されていないため,本願発明1について,第1優先基礎出願に基づく優先権は認められない。
請求項1の引用形式で記載される請求項5に係る発明である本願発明5,および,請求項5のさらなる引用形式で記載される請求項6に係る発明である本願発明6についても同様に,第1優先権基礎出願に基づく優先権は認められない。
したがって,本願発明1,本願発明5および本願発明6については,本願は,早くとも本願第2優先基礎出願の出願日である平成11年4月19日に出願されたものとして,特許法第29条の規定を適用する。


第4 引用例
1.引用例1
本願第2優先基礎出願の出願日前に頒布された刊行物である,薬理と臨床 8(6) p.631-635 (1998)(以下,「引用例1」という。)には,以下の記載がなされている。
(1)「納豆パウダー(KNP-001)は,株式会社納豆家族(福岡)の高力価納豆菌を用いて至適条件下で発酵,凍結乾燥後にパウダー化された薄黄色の製品である(図1,写真左)。」(第631頁右欄下から2行?第632頁左欄第2行)

(2)「また,このKNP-001中のMK-7はその約50%が水溶性のものであることが分かった。」(第633頁左欄第2?4行)

2.引用例3
本願第2優先基礎出願の出願日前に頒布された刊行物である,特開平11-32787号公報(以下,「引用例3」という。)には,以下の記載がなされている。
(1)「培養は,メナキノン-7の生産蓄積量が最大となる1?7日,好ましくは2?4日間行う。このように,バシルス ズブチリスに属するメナキノン-7生産菌を液体栄養培地に接種培養すると,メナキノン-7が,該微生物の菌体内部および菌体外部(すなわち培養濾液中)にそれぞれ蓄積された液体培養液を得る。」(段落【0016】?【0017】)

(2)「上記,有機溶媒の不存在下で脱水する方法としては,培養液をそのまままたは必要により目の粗い濾布などにより濾過して菌体(バシルスズブチリス)は含むけれど水不溶性の固形物は含まない濾液を得,これを以下の方法により脱水処理して目的のメナキノン-7含有物を得る。すなわち,(1)培養濾液を,分画分子量50,000の限外濾過膜を用いて透過処理し,該膜内に菌体および菌体外部のメナキノン-7含有物を捕獲回収する方法,(2)培養濾液を遠心分離して主として菌体を高濃度で含有する沈殿部分と清澄な液体部分とに分け,それぞれ,通常の乾燥処理によりメナキノン-7含有物を得る方法(略)などが挙げられる。」(段落【0019】)

(3)バチルスズブチリスMR-141または成瀬菌を48時間培養後,培養液を限外濾過および脱水し,10倍水道水で洗浄することで培地成分等不要物を除去した後,n-ヘキサンを添加して5分間振とうし,遠心およびHPLCによりメナキノン-7含有物を製造する。(段落【0028】?【0033】)


第5 特許法第29条第1項第3号
1.本願発明5
本願発明5は,請求項1?4のいずれかに記載される培養方法によって培養された枯草菌の培養物に係る発明であるところ,引用される請求項1は「600nmの吸光度で最大値を示した直後に前記微生物菌体を回収すること」を特徴とする培養方法に係る発明である。

ここで,平成21年3月13日付手続補正前の特許請求の範囲の請求項1および2の記載は,以下のとおりである。
「【請求項1】 枯草菌(Bacillus subtilis)を培養し、該微生物の菌体内で産生されたビタミンKが菌体外に放出される前で、菌体数が対数期から定常期に入る時期に該微生物菌体を回収することからなる枯草菌(Bacillus subtilis)の培養方法。
【請求項2】 前記回収の時期は、600nmの吸光度で最大値を示した直後である請求項1に記載の培養方法。」
請求項2は請求項1を引用して,その発明特定事項をより限定しているものであると認められ,上記記載からみて,「600nmの吸光度で最大値を示した直後」とは,「菌体数が対数期から定常期に入る時期」に相当するものであると認められる。
なお,本願の発明の詳細な説明には,「600nmの吸光度で最大値を示した直後に微生物菌体を回収」することについては,何ら記載されておらず,吸光度を指標として微生物菌体を回収することについては,段落【0030】に,「本発明において、枯草菌(Bacillus subtilis)菌体の回収時期は、上述したように、菌体内で産生されたビタミンKが菌体外に放出される前でなければならないが、好ましくは前記微生物の菌体数が対数期から定常期に入る時期である。また、特に枯草菌(Bacillus subtilis)が納豆菌(Bacillus subtilis natto)である際には、対数期から定常期に入る時期でかつナットウキナーゼが産生される前に菌体を回収することが好ましい。より具体的には、培養時間は培養温度及びpHや菌体の初期濃度等の培養条件および培養方法によって異なるものの、例えば、500ml容量の三角フラスコを用いて300mlの培養液(組成:1.5%ポリペプトン-S、1%グルコース、0.1%酵母エキス、pH7.2)中に雲南SL-001株を、5×106個/mlの初期濃度で接種して37℃で振盪培養(100rpm)を行った場合、0.5?4日間、好ましくは660nmでの吸光度で最大値を示した直後(1?2日間)である。」との記載がなされているのみである。但し,菌体数が対数期から定常期に入る時期とは,菌体が対数的な増殖を終えた時期であることは,本願出願日における技術常識であるとともに,菌体の増殖を調べる際に600nm程度の吸光度を指標とすることは,本願出願日における周知技術であることをも考慮すれば,上記認定のとおり,「600nmの吸光度で最大値を示した直後」とは,「菌体数が対数期から定常期に入る時期」であることは明らかである。

2.対比
上記「第4 1.」の記載からみて,引用例1には,約50%が水溶性であるMK-7を含む,至適条件下で発酵された納豆菌が記載されている。
本願発明5と引用例1に記載された発明を対比すると,引用例1の「発酵」,「納豆菌」および「約50%が水溶性であるMK-7」は,それぞれ,本願発明5の「培養」,「枯草菌」および「ビタミンK誘導体」に相当し,両者は,「ビタミンK誘導体を含む枯草菌を培養して回収された,ビタミンK誘導体を含む枯草菌の培養物」である点で一致するものであり,
本願発明5ではその菌体回収時期が「600nmの吸光度で最大値を示した直後」であることが特定されているのに対して,引用例1には菌体を回収する時期は記載されていない点で一応相違するものである。

3.判断
本願の第2優先基礎出願日当時,有用な物質を含む微生物の培養物を得るためには,微生物を最も増殖させた後に回収することが通常行われていると認められるところ,本願の明細書の記載および本願第2優先基礎出願日当時の技術常識を勘案しても,菌体の回収時期により得られる培養物が異なるものであるとはいえない。
したがって,引用例1には菌体回収時期が特定されていないことをもって,本願発明5が引用例1に記載された発明と異なるものであるとはいえない。

4.請求人の主張について
請求人は,平成21年3月13日付意見書において,引用されたいずれの引用文献にも,枯草菌を培養し,600nmの吸光度で最大値を示した直後に前記微生物菌体を回収することについては,開示又は示唆がないことを主張するのみで,本願発明に係る培養物という物自体に係る発明と,引用例1に記載される培養物という物自体に係る発明との違いについては,何ら具体的に説明していない。
したがって,請求人の意見書における主張をもって,本願発明5が引用例1に記載された発明と異なるものであるとはいえない。

5.小括
以上のとおりであるから,本願発明5は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものである。


第6 特許法第29条第2項
1.引用例1に記載された発明との対比・判断
(1)本願発明1
本願発明1と引用例1に記載された発明を対比すると,引用例1の「約50%が水溶性であるMK-7」,「納豆菌」および「発酵」は,本願発明1の「ビタミンK誘導体」,「枯草菌」および「培養」にそれぞれ相当し,両者は,「ビタミンK誘導体を含む枯草菌の培養方法」に係る発明である点で一致し,
本願発明1では600nmの吸光度で最大値を示した直後に菌体を回収することが特定されているのに対して,引用例1には培養を至適条件下で行うことが記載されているのみであり,菌体の回収時期については記載されていない点で相違するものである。

ここで,上記「第5 1.」に記載のとおり,本願発明1の「600nmの吸光度で最大値を示した直後」とは,「菌体数が対数期から定常期に入る時期」であると認められる。

発酵物から目的物質を製造する際に,菌体数が対数期から定常期に入る時期に菌体を回収することは,本願第2優先基礎出願日前における当該分野における周知技術であるところ(要すれば,特開昭63-105692号公報(以下,「引用例4」という。),特に第4頁左上欄下から2行?右上欄第3行,および,特開平1-86871号公報(以下,「引用例5」という。),特に第3頁左上欄第13?16行等参照),菌体数が対数期から定常期に入る時期とは,菌体が対数的な増殖を終えた時期であることは,本願第2優先基礎出願日前の技術常識であるとともに,菌体の増殖を調べる際に600nm程度の吸光度を指標とすることは,本願第2優先基礎出願日前周知技術である。
すると,引用例1に記載された発明において,枯草菌を至適条件下で培養後,600nm程度の吸光度を指標として,菌体数が対数期から定常期に入る時期に菌体を回収することは,当業者が上記引用例に記載された発明および周知技術に基づいて容易に想到し得るものである。
そして,本願発明1により,上記引用例に記載された発明および周知技術から予測しえない有利な効果が奏されたということもできない。
したがって,本願発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)本願発明5
請求項1に記載される培養方法によって培養された枯草菌の培養物に係る発明である本願発明5についても,上記「第6 1.(1)」と同様の理由により,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)本願発明6
本願発明6は,請求項5に記載される枯草菌の培養物由来の水溶性ビタミンK誘導体に係る発明である。
上記「第4 1.(2)」で摘記のとおり,引用例1に記載の培養物は,その約50%が水溶性であるMK-7を含むものであるところ,水溶性物質を抽出する方法やソックレー抽出法等も当該分野における周知技術であるから,上記「第6 1.(1)」に記載の方法で得られた培養物から水溶性のMK-7を得ようとすることも,当業者が適宜なしえる範囲内の事項である。
また,上記「第5 3.」に記載のとおり,本願発明5に係る培養物自体は,引用例1に記載された培養物と何ら異なるものではないから,引用例1に記載された培養物から水溶性のMK-7を得ようとすることも,当然,当業者が適宜なしえる範囲内の事項である。
そして,本願発明6により,上記引用例に記載された発明および周知技術から予測しえない有利な効果が奏されたとはいえない。

2.引用例3に記載された発明との対比
(1)本願発明1
上記「第4 2.」の記載からみて,引用例3には,バチルスズブチリスに属するメナキノン-7生産菌を培養後,培養液を限外濾過および脱水し,10倍水道水で洗浄することで培地成分等不要物を除去した後,n-ヘキサンを添加して5分間振とうし,遠心およびHPLCによりメナキノン-7含有物を製造したこと,および,培養は,メナキノン-7の生産蓄積量が最大となる1?7日,好ましくは2?4日間行うことが記載されている。

本願発明1と引用例3に記載された発明を対比すると,引用例3の「バチルスズブチリス」および「メナキノン-7含有物」は,本願発明1の「枯草菌」および「ビタミンK誘導体」に相当し,両者は,「ビタミンK誘導体を含む枯草菌を培養する方法」に係る発明である点で一致し,
本願発明1は600nmの吸光度で最大値を示した直後に菌体を回収するものであるのに対して,引用例3には培養をメナキノン-7の生産蓄積量が最大となる1?7日,好ましくは2?4日間行うことが記載されている点で相違するものである。

ここで,上記「第5 1.」に記載のとおり,本願発明1の「600nmの吸光度で最大値を示した直後」とは,「菌体数が対数期から定常期に入る時期」であると認められる。

引用例3に記載の,メナキノン-7の生産蓄積量が最大となる時期であり,1?7日,好ましくは2?4日後とは,本願第2優先基礎出願日当時の技術常識からみて,菌体数が対数期以降であることは明らかである。発酵物から目的物質を製造する際に,菌体数が対数期から定常期に入る時期に菌体を回収することは,本願第2優先基礎出願日前における当該分野における周知技術であるところ(要すれば,引用例4,特に第4頁左上欄下から2行?右上欄第3行,引用例5,特に第3頁左上欄第13?16行等参照),菌体数が対数期から定常期に入る時期とは,菌体が対数的な増殖を終えた時期であることは,本願第2優先基礎出願日前の技術常識であるとともに,菌体の増殖を調べる際に600nm程度の吸光度を指標とすることは,本願第2優先基礎出願日前周知技術である。
すると,引用例3に記載された発明において,600nm程度の吸光度を指標として,菌体数が対数期から定常期に入る時期に菌体を回収することは,当業者が上記引用例に記載された発明および周知技術に基づいて容易に想到し得るものである。
そして,本願発明1により,上記引用例に記載された発明および周知技術から予測しえない有利な効果が奏されたということもできない。
したがって,本願発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)本願発明5
請求項1に記載される培養方法によって培養された枯草菌の培養物に係る発明である本願発明5についても,上記「第6 1.(1)」と同様の理由により,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.請求人の主張について
請求人は,平成21年3月13日付意見書において,引用されたいずれの引用文献にも,枯草菌を培養し,600nmの吸光度で最大値を示した直後に前記微生物菌体を回収することについては,開示又は示唆がないことを主張するのみである。しかしながら,上記「第5 1.」で述べたとおり,600nmの吸光度で最大値を示した直後とは,菌体数が対数期から定常期に入る時期に他ならないから,請求人の意見書における主張をもって,特許法第29条第2項の拒絶理由が解消したとはいえない。


第7 むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項5に係る発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであり,また,本願の請求項1,5および6に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明および他の拒絶理由については検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-30 
結審通知日 2009-03-31 
審決日 2009-04-27 
出願番号 特願平11-134185
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
P 1 8・ 113- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森井 隆信  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 光本 美奈子
鈴木 恵理子
発明の名称 枯草菌(Bacillussubtilis)の培養方法、該方法によって培養される微生物の培養物、該培養物由来の水溶性ビタミンK誘導体ならびに該微生物の培養物またはビタミンK誘導体を含む食品、飲料または飼料  
代理人 飯塚 雄二  
代理人 飯塚 雄二  

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