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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1198462
審判番号 不服2006-4348  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-09 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 特願2002-279853「印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月15日出願公開、特開2004-114453〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年9月25日の出願であって、拒絶理由通知を受けて平成17年8月18日付けで手続補正書が提出されたが、平成18年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月9日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月10日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2.平成18年4月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年4月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲は、平成17年8月18日付けの手続補正書に記載されるとおりの
「 【請求項1】
記録媒体に印刷する印刷手段と、印刷部数を記憶する印刷部数記憶手段と、前記印刷部数記憶手段に記憶される印刷部数に基づいて、前記印刷手段に印刷させる印刷制御手段とを備える印刷装置において、
前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更するときに操作される部数変更入力手段と、
前記印刷手段の印刷動作を中断させるときに操作される印刷中断入力手段と、
前記印刷手段の印刷動作中に、前記印刷中断入力手段が操作されずに、前記部数変更入力手段が操作された場合には、前記印刷手段の印刷動作が継続されている状態で、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更可能とし、前記印刷中断入力手段が操作された後に、前記部数変更入力手段が操作された場合には、前記印刷手段の印刷動作が中断されている状態で、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更可能とする印刷部数変更手段とを備えていることを特徴とする、印刷装置。
【請求項2】
前記印刷制御手段は、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数が変更された結果、その変更後の印刷部数がすでに印刷されている部数以下となった場合に、印刷部数が変更されたときに前記印刷手段が印刷動作中であった部に対する前記印刷手段の印刷動作が終了するまで、前記印刷手段の印刷動作を終了させないことを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
記録媒体に印刷する印刷手段と、印刷部数を記憶する印刷部数記憶手段と、前記印刷部数記憶手段に記憶される印刷部数に基づいて、前記印刷手段に印刷させる印刷制御手段とを備える印刷装置において、
前記印刷手段の印刷動作中に、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更可能とする印刷部数変更手段を備え、
前記印刷制御手段は、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数が変更された結果、その変更後の印刷部数がすでに印刷されている部数以下となった場合に、印刷部数が変更されたときに前記印刷手段が印刷動作中であった部に対する前記印刷手段の印刷動作が終了するまで、前記印刷手段の印刷動作を終了させないことを特徴とする、印刷装置。」
から、平成18年4月10日付けの手続補正書に記載されるとおりの
「 【請求項1】
記録媒体に印刷する印刷手段と、印刷部数を記憶する印刷部数記憶手段と、前記印刷部数記憶手段に記憶される印刷部数に基づいて、前記印刷手段に印刷させる印刷制御手段とを備える印刷装置において、
前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更するときに操作される部数変更入力手段と、
前記印刷手段の印刷動作を中断させるときに操作される印刷中断入力手段と、
前記印刷手段の印刷動作中に、前記印刷中断入力手段が操作されずに、前記部数変更入力手段が操作された場合には、前記印刷手段の印刷動作が継続されている状態で、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更可能とし、前記印刷中断入力手段が操作された後に、前記部数変更入力手段が操作された場合には、前記印刷手段の印刷動作が中断されている状態で、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更可能とする印刷部数変更手段とを備え、
前記印刷制御手段は、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数が変更された結果、その変更後の印刷部数がすでに印刷されている部数以下となった場合に、頁毎に印刷部数分連続して印刷する印刷方式を実行しているときは、頁毎に変更後の印刷部数分連続して印刷し、頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式を実行しているときは、印刷部数が変更されたときに前記印刷手段が印刷動作中であった部に対する前記印刷手段の印刷動作が終了するまで、前記印刷手段の印刷動作を終了させないことを特徴とする、印刷装置。
【請求項2】
記録媒体に印刷する印刷手段と、印刷部数を記憶する印刷部数記憶手段と、前記印刷部数記憶手段に記憶される印刷部数に基づいて、前記印刷手段に印刷させる印刷制御手段とを備える印刷装置において、
前記印刷手段の印刷動作中に、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更可能とする印刷部数変更手段を備え、
前記印刷制御手段は、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数が変更された結果、その変更後の印刷部数がすでに印刷されている部数以下となった場合に、頁毎に印刷部数分連続して印刷する印刷方式を実行しているときは、頁毎に変更後の印刷部数分連続して印刷し、頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式を実行しているときは、印刷部数が変更されたときに前記印刷手段が印刷動作中であった部に対する前記印刷手段の印刷動作が終了するまで、前記印刷手段の印刷動作を終了させないことを特徴とする、印刷装置。」
に補正された。

2.補正の目的
まず、本件補正による補正後の請求項2が、補正前のどの請求項に対応しているか検討する。
補正後の請求項2は、「印刷中断入力手段」なる発明特定事項を備えていないのに対して、補正前の請求項1,2は「印刷中断入力手段」なる発明特定事項を備え、補正前の請求項3は「印刷中断入力手段」なる発明特定事項を備えていない。
そして、本件補正が増項補正でなく、適正な補正であるならば、補正後の請求項2は、「印刷中断入力手段」を備えている補正前の請求項3と対応することになる。
そこで、補正前の請求項3を補正後の請求項2とする補正について検討するに、この補正によって、「頁毎に印刷部数分連続して印刷する印刷方式を実行しているときは、頁毎に変更後の印刷部数分連続して印刷し、頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式を実行しているときは、」との構成が付加されており、補正前の請求項3に記載される「印刷部数が変更されたときに前記印刷手段が印刷動作中であった部に対する前記印刷手段の印刷動作が終了するまで、前記印刷手段の印刷動作を終了させない」とするのは、「頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式を実行しているとき」であることを限定し、他の印刷方式である「頁順に印刷部数分連続して印刷する印刷方式」を実行しているときは、「頁毎に変更後の印刷部数分連続して印刷」することを限定したものである。
したがって、補正後の請求項2は、補正前の請求項3に対応しており、その補正の目的は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮に該当している。

次に、本件補正による補正後の請求項1が、補正前のどの請求項に対応しているか検討するに、前記したように補正後の請求項2が補正前の請求項3に対応することから、補正後の請求項1は、補正前の請求項1または2のいずれかに対応していることになる。
そして、補正後の請求項1が補正前の請求項1に対応し、補正前の請求項2が削除されたと仮定すると、補正前後で「前記印刷制御手段は、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数が変更された結果、その変更後の印刷部数がすでに印刷されている部数以下となった場合に、頁毎に印刷部数分連続して印刷する印刷方式を実行しているときは、頁毎に変更後の印刷部数分連続して印刷し、頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式を実行しているときは、印刷部数が変更されたときに前記印刷手段が印刷動作中であった部に対する前記印刷手段の印刷動作が終了するまで、前記印刷手段の印刷動作を終了させない」という事項が付加され、補正後の請求項1が補正前の請求項2に対応し、補正前の請求項1が削除されたと仮定すると、補正前後で「頁毎に印刷部数分連続して印刷する印刷方式を実行しているときは、頁毎に変更後の印刷部数分連続して印刷し、頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式を実行しているときは、」との事項が付加され、前者は、補正前の請求項1に記載の印刷制御手段について限定しているものであり、後者は、補正後の請求項2と同等の限定をしたものである。
したがって、補正後の請求項1が補正前の請求項1,2のいずれに対応しているにしても、その補正の目的は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定される請求項の削除、及び、同第2号に規定される特許請求の範囲の減縮に該当する。

本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むことから、補正後の請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下で検討する。

3.刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本件の出願前に頒布された特開2002-171368号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

(ア)「【0055】画像形成装置1の中央部には感光体4が矢印方向に回転自在に支持されており、この感光体4には、例えば、所定電圧に印加された導電性ブラシ等の帯電器5が接触可能に設けられており、帯電器5により感光体4の表面は所定電圧に帯電される。そして、感光体4に、制御部50から出力される画像データに基づいて変調された画像光を、遮光性のケース70に覆われた光走査装置6から照射し、感光体4上に静電潜像を形成する。現像槽7は感光体4の表面に現像剤を供給し、静電潜像を現像剤画像に顕像化する。
【0056】感光体4の回転に先立って給紙ローラ12の回転によって給紙カセット10内の記録紙Pが一枚ずつ用紙搬送路内に給紙される。給紙された記録紙Pは、搬送ローラ12によりレジストローラ13へ搬送される。記録紙Pは前端部をレジストローラ13に当接した状態で停止しており、所定のタイミングで回転し記録紙Pを感光体4方向へ導く。そして記録紙Pの表面に、感光体4に担持された現像剤画像を転写器8により転写し、転写された記録紙Pは定着ローラ14を通過する間に加熱及び加圧される。これにより現像剤画像が溶融して記録紙Pの下面に固着する。現像剤画像が固着された記録紙Pは排紙ローラ15により搬送され、そして多段の排紙トレイ11(111,112,...11n...)に排出される。」(段落【0055】?【0056】)
(イ)「操作パネル等の入力部51からユーザにより画像形成すべき枚数または部数である初期設定値が入力された場合、MPU53は初期設定値をRAM55に記憶すると共に、記憶部54に記憶した画像データを逐次読み出して光学走査装置6へ出力する。」(段落【0057】)
(ウ)「一方画像形成中に枚数または部数の変更を希望する場合は増減設定値ボタン51c(増加設定値ボタン)、51d(減少設定値ボタン)を操作し、変更を希望する枚数を入力して、部数変更ボタン51eを操作する。部数変更ボタン51eに係る信号が入力された場合、増減設定値ボタン51cまたは51dにより入力された値をMPU53に対し出力する。MPU53は割り込み処理を禁止し、入力された増減設定値をRAM55に格納し、表示部51aの第2表示部512にその値を表示する。」(段落【0060】)
(エ)「【0063】図4は画像形成の種類を模式的に示した説明図である。図4に示すとおり、画像形成には以下の3タイプが存在する。図4(a)は、単数頁から構成される原稿Mを複数枚数印刷する場合の説明図である。この場合の印刷方法を、以下では単頁印刷という。単頁印刷では、画像形成後の画像はトレイ111に積層されて排出される。
【0064】図4(b)は複数(n)頁から構成される原稿Mを、希望する部数ソートして印刷する場合の説明図である。この場合の印刷を以下では、ソート印刷という。ソート印刷により印刷された画像は、図1における排紙トレイ111に1部、112に1部,...というように、一部ずつ積層された状態で排出される。
【0065】図4(c)は、複数(n)頁から構成される原稿Mを希望する枚数ずつ画像形成を行う場合の説明図である。この場合の印刷方法を、以下ではグループ印刷という。グループ印刷により印刷された画像は、図1における排紙トレイ111に第1頁が希望枚数排出され、トレイ112に第2頁が希望枚数排出され、トレイ11nには第n頁が希望枚数排出される。このように各排紙トレイ111,112...には各頁順に、積層されて排出される。」(段落【0063】?【0065】)
(オ)「【0069】図5(b)は、ユーザが枚数または部数の減少を希望し、減少設定値ボタン51dを操作した場合の説明図である。減少設定値を受け付けた場合、第1段階に示すように第1表示部511には残設定値「28」が、第2表示部512に減少設定値「-5」が、第3表示部513に受け付け後の残設定値「23」が、それぞれ表示される。そして、1枚または1部の画像形成の進行に伴い、MPU53はRAM55に格納した受け付け時の残設定値及び受け付け後の残設定値を減算し、そして減算後の値をそれぞれ第1表示部511及び第3表示部513に表示する。なお、第2表示部512の減少設定値はそのままにしておく。以上のように画像形成毎に処理を進め、MPU53はRAM55に格納した受け付け後の残設定値が「0」になった時点で画像形成処理を終了する。」(段落【0069】)
(カ)「【0088】ステップS104において増減設定値が増加設定値でないと判断した場合(ステップS104でNO)、すなわち増減設定値が減少設定値であると判断した場合、画像形成を実行し(ステップS106)、残設定値を1減算する。すなわち、残設定値(i-k)-1を算出する(ステップS118)。また受け付け後の残設定値(i-k)+pから1を減算する(ステップS118)。そして、それぞれ減算した残設定値及び受け付け後の残設定値をRAM55に格納する。
【0089】そして第1表示部511に減算後の残設定値(i-k)を表示し、第2表示部512に減算していない減少設定値pを表示し、さらに第3表示部513に減算後の受け付け後の残設定値(i-k)+pをそれぞれ表示する(ステップS119)。そして、排紙トレイ11(k+R)へその形成画像1部を排出する(ステップS1110)。なお、Rについては上述したとおり初期値1の整数カウンタである。
【0090】そして、受け付け後の残設定値(i-k)+pが0であるか否かを判断する(ステップS1111)。0でないと判断した場合(ステップS1111でNO)、Rをインクリメントして(ステップS1112)、ステップS106へ移行し、画像形成を再度実行する。なお、画像形成が実行された場合、排紙トレイ11(k+R)、すなわち一段上のトレイに形成後の画像が一部排出される。
【0091】ステップS1111で受け付け後の残設定値が0であると判断した場合(ステップS1111でYES)、全ての必要部数を形成し終えたので処理を終了する。」(段落【0088】?【0091】)
(キ)「【0093】実施の形態2
実施の形態2はグループ印刷に関する。図14は実施の形態2に係る入力部51及び表示部51aを示す模式図である。図において516は、画像形成を行う対象原稿Mの総ページ数を表示する液晶ディスプレイ等の第6表示部である。図の例は総頁「30」の原稿Mを示す。画像形成が開始されると、現在印刷中の頁数が第5表示部515に表示される。図の例では、第12頁について画像形成が行われている。MPU53は第5表示部515に表示してある現在印刷中の頁数から1減算して、その値を第4表示部514に表示する。なお図の例では、1減算した11頁が表示される。なお、図に示す如く第1頁を併記して表示しても良い。
【0094】第12頁の画像形成中に減少設定値を受け付けた場合、すでに第1頁から第11頁までについては、減少前の設定値により余剰が生じている。第4表示部514は、その余剰が発生している頁数を表示する。これにより、画像形成終了後、ユーザは容易に余剰が生じている頁を認識できる。そして、実施の形態1の、図5第4段階で示すように増減設定値を減少させずに表示させているので、余剰頁に加えて、余剰枚数も把握でき、ユーザが余剰分を取り除く際の負担を大幅に軽減することが可能となる。」(段落【0093】?【0094】)

A.前記記載(ア)には、画像形成装置内に設けられた感光体等の各部材によって、画像形成装置が記録紙に印刷を行うことが記載されており、印刷を行う各部材を総称して「画像形成手段」ということができる。
B.前記記載(イ)には、ユーザにより画像形成すべき部数が入力された場合に、その値をRAM55に記憶すること、MPU53によって画像形成の指示が行われることが記載されており、刊行物1に記載の画像形成装置は、ユーザにより入力される画像形成すべき部数を記憶するRAM55と、前記RAM55に記憶される部数に基づいて、前記画像形成手段に印刷させるMPU53とを備えているといえる。
C.前記記載(ウ)には、画像形成中に部数の変更を希望する場合に、増減設定値ボタン51c,51dを操作して、入力された増減設定値をRAM55に格納することが記載されており、刊行物1に記載の画像形成装置は、画像形成中にRAM55に記憶されている部数を変更可能とする増減設定値ボタン51c,51dを備えているといえる。
D.前記記載(キ)には、グループ印刷を実行するときに、減少設定値を受け付けた場合について記載されており、具体例として、総頁数30頁の画像形成が行われるときの第12頁の画像形成中に減少設定値を受け付けた場合に、すでに印刷済みの第1頁?第11頁については、減少前の設定値で印刷されているので余剰が生じることが記載されている。この記載によると、減少設定値を受け付ける前の減少前設定値から、減少設定値を受け付けた後の減少後設定値に変更することで、既に印刷済みの頁については余剰が生じるというのであるから、減少設定値を受け付けた後は、各頁の印刷部数が減少後設定値の部数になっていると解することができる。
さらに、前記記載(エ)によると、グループ印刷とは、同一の頁を希望する枚数ずつ画像形成する印刷方式であることから、前記具体例における第1?11頁については、既に減少前設定値の数の印刷がされており、第12頁以降については、減少後設定値の数の印刷がされており、変更後の部数が既に印刷されている部数以下となっていると解することができる。
そして、MPU53が画像形成を行うための制御を行うことは明らかであるから、MPU53は、RAM55に記憶されている部数が変更された結果、その変更後の部数がすでに印刷されている部数以下となった場合に、グループ印刷を実行しているときは、頁毎に変更後の部数分連続して印刷するものであるということができる。

したがって、前記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「記録紙に印刷する画像形成手段と、ユーザにより入力される画像形成すべき部数を記憶するRAM55と、前記RAM55に記憶される部数に基づいて、前記画像形成手段に印刷させるMPU53とを備える画像形成装置において、
前記画像形成手段の画像形成中に、前記RAM55に記憶されている部数を変更可能とする増減設定値ボタン51c,51dを備え、
前記MPU53は、前記RAM55に記憶されている部数が変更された結果、その変更後の部数がすでに印刷されている部数以下となった場合に、グループ印刷を実行しているときは、頁毎に変更後の部数分連続して印刷する画像形成装置。」(以下「刊行物1記載の発明」という。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本件の出願前に頒布された特開2002-185668号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

(ク)「【0004】また、画像記録動作中での停止操作に関しては、緊急の事態が発生して画像記録の停止操作をすると、その時点で画像記録動作は直ちに停止するようになっている。
【0005】このため、図10に示すように、例えば3枚の原稿画像を5部記録している最中において、3部目の2枚目の画像記録終了時点で停止操作がなされて画像記録動作が停止した場合、既に完了している2部目までの出力画像は有効に利用し得るものとなるが、中途半端に出力された画像(3部目の2枚の出力画像)は利用価値のないものとなり、この分の記録紙が無駄となり問題であった。」(段落【0004】?【0005】)
(ケ)「【0044】この発明において、制御部Eは、画像読み取り部Bによって複数枚の原稿画像を順次読み取り、画像データを記憶部Gに格納した後、画像記録部Cにおいて設定部Aによって予め設定された複数部数の画像記録動作を行っている間に、設定部Aによって画像記録動作の停止操作がなされた場合、即座に画像記録動作を停止することなく、部数の切れ目まで画像記録動作を継続させた後に停止するように制御している。
【0045】例えば3枚の原稿を、当初の予定で部単位毎に5部画像形成しようとする場合、原稿から読み取られた画像データが記憶部Gに格納され、該記憶部Gから所定順序で画像データを読み出すことにより、図6に示すように、頁1、頁2、頁3、頁1、頁2、頁3、…という具合に部単位毎に画像記録が開始される。この間に、例えば緊急の割り込み作業等の発生により、3部目の第1頁目の画像記録動作がなされた時点でストップキーが押下されて停止操作がなされても、その時点で直ちに画像記録動作を停止せず、部数の切れ目まで(この場合は3部目の第3頁目終了まで)は画像記録動作を継続させる。
【0046】図7にこの制御フローを示す。まず、画像読み取り部Bに原稿がセットされ、所定の入力設定がなされた後、コピースタートボタンが押下されると(S10)、画像読み取り部Bによって所定の読み取り動作が実施され(S11)、読み取られた画像データが記憶部Gに一旦格納され、画像記録部Cにおいて当初設定された指示に従って画像記録動作が行われる(S12)。
【0047】次いで、この画像記録動作の間に設定部Aにおいて、ストップキーが押下されて停止操作がなされたか否かを判断し(S13)、その結果、停止操作がなされたと判断された場合、制御部Eにおいて部数区切りを判定し(S14)、部数の切れ目まで画像記録動作を継続させる。
【0048】一方、S13において停止操作がなされなかったと判断された場合には、当初設定された指示に基づいて画像記録動作を行い、動作完了の後終了する(S17)。
【0049】従って、この発明によれば、複数部数の画像記録動作の途中で停止操作がなされた場合でも、その停止操作がなされた時点での部数の切れ目まで画像記録動作が継続した後に停止するため、従来のように中途半端に出力される画像がなくなり、記録紙の無駄をなくすことができる。」(段落【0044】?【0049】)

E.前記記載(ケ)には、頁1、頁2、頁3、頁1、頁2、頁3、…のように部単位毎に画像記録を行うことが記載され、画像記録動作中に停止操作がなされた場合でも、部単位の途中で画像記録動作を停止することなく、部単位の切れ目まで画像形成動作を継続させることで、中途半端に出力された画像をなくすことができる旨記載されている。
そして、頁1、頁2、頁3、頁1、頁2、頁3、…のように部単位毎に画像記録を行うことを、本願補正発明の記載に倣って「頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式」ということができる。

したがって、前記記載及び図面を含む刊行物2全体の記載から、刊行物2には、以下の事項が開示されていると認められる。
「頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式で印刷するときに、画像記録動作中に停止操作がなされた場合でも、部単位の途中で画像記録動作を停止することなく、部単位の切れ目まで画像形成動作を継続させることで、中途半端に出力された画像をなくすことができる点。」

4.本願補正発明と刊行物1記載の発明との対比
a.刊行物1記載の発明の「記録紙」は、本願補正発明の「記録媒体」に相当する。
b.刊行物1の前記記載(ア)から、刊行物1記載の発明の「画像形成」とは、電子写真記録方式の記録装置を用いて記録することである。一方、本願の発明の詳細な説明の段落【0001】に、「本発明は、レーザプリンタなどの印刷装置に関する。」と記載されているように、本願補正発明の「印刷」も、電子写真記録方式の記録装置を用いて記録することである。
そして、刊行物1記載の発明の「画像形成」が本願発明の「印刷」に相当することから、刊行物1記載の発明の「画像形成手段」、「画像形成装置」、「画像形成中」は、本願補正発明の「印刷手段」、「印刷装置」、「印刷動作中」にそれぞれ相当する。
c.刊行物1記載の発明の「ユーザにより入力される画像形成すべき部数」及び「部数」は、本願補正発明の「印刷部数」に相当しており、それにともない、刊行物1記載の発明の「ユーザにより入力される画像形成すべき部数を記憶するRAM55」、「前記RAM55に記憶される部数に基づいて、前記画像形成手段に印刷させるMPU53」、「前記画像形成手段の画像形成中に、前記RAM55に記憶されている部数を変更可能とする増減設定値ボタン51c,51d」は、本願補正発明の「印刷部数を記憶する印刷部数記憶手段」、「前記印刷部数記憶手段に記憶される印刷部数に基づいて、前記印刷手段に印刷させる印刷制御手段」、「前記印刷手段の印刷動作中に、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更可能とする印刷部数変更手段」に相当する。
d.刊行物1の前記記載(エ)、特に、段落【0065】の記載から、刊行物1記載の発明の「グループ印刷」とは、同一の頁を希望する枚数ずつ画像形成する印刷方式であるから、本願補正発明の「頁毎に印刷部数分連続して印刷する印刷方式」に相当する。

したがって、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、
「記録媒体に印刷する印刷手段と、印刷部数を記憶する印刷部数記憶手段と、前記印刷部数記憶手段に記憶される印刷部数に基づいて、前記印刷手段に印刷させる印刷制御手段とを備える印刷装置において、
前記印刷手段の印刷動作中に、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更可能とする印刷部数変更手段を備え、
前記印刷制御手段は、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数が変更された結果、その変更後の印刷部数がすでに印刷されている部数以下となった場合に、頁毎に印刷部数分連続して印刷する印刷方式を実行しているときは、頁毎に変更後の印刷部数分連続して印刷する印刷装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
本願補正発明では、「前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数が変更された結果、その変更後の印刷部数がすでに印刷されている部数以下となった場合」に、「前記印刷制御手段は、・・・頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式を実行しているときは、印刷部数が変更されたときに前記印刷手段が印刷動作中であった部に対する前記印刷手段の印刷動作が終了するまで、前記印刷手段の印刷動作を終了させない」と特定されているのに対して、刊行物1記載の発明では、そのような特定を有しない点。

5.判断
<相違点について>
刊行物1に記載の「ソート印刷」および刊行物2に記載の「頁1、頁2、頁3、頁1、頁2、頁3、…のように部単位毎に画像記録を行うこと」は、本願補正発明の「頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式」に相当しており、以下では簡単のために「ソート印刷」ということとする。

刊行物1の前記記載(エ)には、画像形成装置はグループ印刷とソート印刷の両方の印刷モードを備えることが記載されており、さらに、刊行物1の前記記載(オ)及び前記記載(カ)には、ソート印刷において、ユーザが部数の減少を希望して減少設定値ボタン51dを操作することで、初めに設定した部数を画像形成途中で減らすことができることについても記載されているものの、なるほど、刊行物1には、本願補正発明の構成である「前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数が変更された結果、その変更後の印刷部数がすでに印刷されている部数以下となった場合」を想定した記載は見当たらない。
しかしながら、ソート印刷時であって、刊行物1に記載される減少設定値ボタン51dを用いて部数を変更する場合に、変更する部数の範囲は特に制限されていないことから、変更後の部数が既に印刷されている部数以下となることは容易に想定されることである。そして、その場合に、変更後の部数について印刷は既に終了しているのであるから、部数の変更が確定したときに画像形成処理を終了させようとすることも容易に想定されることである。
そこで、ソート印刷を行っている場合における画像形成処理の終了タイミングについて検討するに、1つの部の印刷途中で印刷が終了しないように、印刷を1つの部の途中で終了させないようにすることは、周知技術である。
例えば、刊行物2には、前記したとおりの「頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式で印刷するときに、画像記録動作中に停止操作がなされた場合でも、部数の切れ目で停止することなく、部数の切れ目まで画像形成動作を継続させることで、中途半端に出力された画像をなくすことができる点」が記載されている。また、同様のことが、特開2000-39812号公報の段落【0027】には、「なお、設定変更画面29にて訂正された処理条件は、現在処理中であるセットの次のセット以降の処理から有効になることになる。」と記載され、特開2002-127511号公報の段落【0008】には、「また従来の印刷装置では、ジョブの複数部数印刷中に印刷部数を間違えたことに気付いたり、印刷部数を削減したい場合には、希望の部数終了時にタイミングよくキャンセル操作を実行しなければならない。さもないと必要な部数の途中で印刷が終わってしまったり、不要な部数の途中まで出力されてしまう。」と記載され、同公報の段落【0032】には、「また二部目以降のキャンセル処理では、ソート処理を含む後処理モードのみキャンセルし、印刷そのものは続ける。この場合、二部目以降の途中で印刷がキャンセルされる訳ではないので、用紙が無駄になることはない。」と記載され、さらに、特開2001-322765号公報の段落【0326】?【0327】には、「さて、ソート処理の途中である場合にも常に前述の満載の検知により画像形成を停止させると、ソート処理途中のシート束がスタックトレイ18に積載されることとなり、このソート処理途中のシート束を取り除くことは、積載シートの取り扱いが煩雑になる虞があった。・・・一束の画像形成処理が成終了したか否かを判断し(ステップS103)、一束の画像形成が終了していなければ、画像形成を停止せずにそのまま継続するよう構成している。このように構成したことにより、満載検知によってスタックトレイ18からシート束を取り除いた際でも、ソート処理途中のシート束がなく、取り回しが簡便となる。」と記載されている。
してみれば、刊行物1から想定されるソート印刷の場合の画像形成処理を終了させるタイミングとして、刊行物2等に記載される前記周知技術を適用することで、部数の切れ目までは印刷処理を継続させて、部数の切れ目で終了させるように設計することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
よって、刊行物1記載の発明に、刊行物2等に記載される周知技術を適用して、本願補正発明に係る前記相違点の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物1記載の発明、及び、刊行物2等に記載される周知技術から当業者が予測できる程度のものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明、及び、刊行物2等に記載される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成18年4月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成17年8月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載される事項により特定されるとおりであり、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「記録媒体に印刷する印刷手段と、印刷部数を記憶する印刷部数記憶手段と、前記印刷部数記憶手段に記憶される印刷部数に基づいて、前記印刷手段に印刷させる印刷制御手段とを備える印刷装置において、
前記印刷手段の印刷動作中に、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数を変更可能とする印刷部数変更手段を備え、
前記印刷制御手段は、前記印刷部数記憶手段に記憶されている印刷部数が変更された結果、その変更後の印刷部数がすでに印刷されている部数以下となった場合に、印刷部数が変更されたときに前記印刷手段が印刷動作中であった部に対する前記印刷手段の印刷動作が終了するまで、前記印刷手段の印刷動作を終了させないことを特徴とする、印刷装置。」

2.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本件の出願前に頒布された刊行物1、2及びその記載事項は、前記「第2.平成18年4月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.刊行物」の「(1)」及び「(2)」に記載したとおりである。

3.本願発明に対する判断
本願発明は、前記「第2.平成18年4月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の目的」で示した本願補正発明から、「印刷部数が変更されたときに前記印刷手段が印刷動作中であった部に対する前記印刷手段の印刷動作が終了するまで、前記印刷手段の印刷動作を終了させない」とするのは、「頁順に連続して印刷部数分印刷する印刷方式を実行しているとき」であるとする限定と、他の印刷方式である「頁順に印刷部数分連続して印刷する印刷方式」を実行しているときは、「頁毎に変更後の印刷部数分連続して印刷」するとの限定を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.平成18年4月10日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「5.判断」に記載したとおり、刊行物1記載の発明、及び、刊行物2等に記載される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明、及び、刊行物2等に記載される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1記載の発明、及び、刊行物2等に記載される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-08 
結審通知日 2009-04-14 
審決日 2009-04-27 
出願番号 特願2002-279853(P2002-279853)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 徹弥  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅藤 政明
菅野 芳男
発明の名称 印刷装置  

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