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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1198479
審判番号 不服2006-24613  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-31 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 特願2002-224932「抗う蝕性飲料」拒絶査定不服審判事件〔平成16年3月4日出願公開、特開2004-65011〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年8月1日の出願であって、平成18年2月3日付けで拒絶の理由が通知されたのち同年4月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月12日付けで拒絶の理由が通知されたのち同年7月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月31日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成20年6月30日付けで審尋が通知され、同年8月7日付けで回答書が提出され、その後、平成21年1月6日付けで当審から拒絶理由が通知されたのち同年3月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願に係る発明は、平成21年3月5日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲における請求項1?5に記載されたとおりのものであって、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「0.001重量%?15重量%のハイドロキシアパタイト(ただし、クエン酸(又はその塩)含有液、又は蛋白質又はペプチド中で超音波処理により表面処理してなるハイドロキシアパタイトを除く)と、0.001重量%?10重量%の甘味料と、有機酸とを含有し、ハイドロキシアパタイト無添加の場合のアルカリ消費量が1.0ml 0.1N KOH以上であることを特徴とする抗う蝕性飲料。」

第3 当審で通知した拒絶理由の概要
平成21年1月6日付けで当審より通知した拒絶理由の概要は、補正前の本願の請求項1?6に係る発明は、本願出願前に頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

刊行物1:国際公開第00/13531号パンフレット
刊行物2:特開平9-289877号公報
刊行物3:特開平8-319224号公報


第4 刊行物に記載された事項
1 刊行物1:国際公開第00/13531号パンフレット
国際公開第00/13531号パンフレット(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。(訳は当審による。)
1-a 「要約
一般に安定化剤、増粘剤および乳化剤として使用される粘度調整ポリマー物質の使用であって、特にフルーツ飲料のような酸性飲料や口腔洗浄剤のような口腔ヘルスケア製品のための経口投与用の酸性組成物中で用いられる歯牙侵蝕阻害剤であって、その組成物の有効pHが4.5以下であるもの。」
1-b 「今回、安定化、乳化及び/又は増粘特性を有する天然及び合成ポリマー物質を、酸性食料品及び口腔ヘルスケア組成物に加えることによって、一般にこのような製品により発生する、歯のエナメル質からのカルシウム及びリン酸塩の損失による歯の侵蝕が減少されるということが見いだされた。」(2頁4?7行)
1-c 「本発明の組成物中で使用されるのに適当な粘度調整ポリマー物質は、アルギン酸塩、ローカストビーンガム、ゲランガム、グアガム、アラビアガム、トラガカンス、カラギーナン、アカシアガム、キサンタンガム、ペクチン、セルロース誘導体、及び食品や他の口腔用組成物の分野で用いられる他の天然又は半合成ポリマー物質などがあり、これらの一又はそれ以上の混合物を含んでいる。適当な合成非ポリサッカライド粘度調整ポリマーはポリビニルピロリドン(PVP)である。」(2頁末行?3頁7行)
1-d 「本発明は、有利に酸性組成物、特に食料品、中でも天然又は酸性物質を添加した飲料に用いるために用いられる。そのような酸組成物は、有機及び/又は無機の酸を含有してもよく、アスコルビン酸のようなビタミンが補強されていてもよい。好ましい酸性物質は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、酢酸及び酒石酸並びにそれらの混合物のような飲料に適した酸を包含する。」(4頁25?30行)
1-e 「飲料のような食料品は甘くされていないか、又は天然の糖、サッカリン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル若しくは当業者に知られている他の甘味料のような合成甘味料で甘味が付けられていても良い。」(5頁19?21行)
1-f 「低濃度のカルシウムを、好適にはアルカリ塩の形で使用することにより、更なる利点が生じる。カルシウムが存在すると、調合物の緩衝能力は酸の部分的な中和によって低下し、それによって口腔内に残っている酸残査を唾液がより迅速に中和することを可能にする。
カルシウムが存在するときには、その絶対的な濃度は、存在する酸の種類及び濃度によって変化するので、重要ではない。カルシウムはどのような適した形態でも加えることができるが、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム又はギ酸カルシウムのような可溶性塩、若しくは組成物に対して香りを減じることのないような他の何れの塩も有用である。カルシウム含量は酸性物質のモル濃度に対するモル単位で計算するのが好ましい。カルシウムは酸性物質1モル当たり0.8モルまでの量で存在していてもよい。酸に対するカルシウムのモル比率は、果実を主成分とする飲料製品の場合、0.01ないし0.75であり、0.05ないし0.6までが良く、典型的には0.1ないし0.5である。」(5頁末行?6頁15行)
1-g 「実施例1
およそ以下の処方である市販の可飲飲料(pH3.5)を、キサンタンガムを加えずに調製した対照飲料と比較して試験した。
成分 量
オレンジジュース 110L
クエン酸 3.8Kg
アセスルファムK 0.74Kg
アスパルテーム 0.72Kg
アスコルビン酸 0.29Kg
オレンジ香味料 0.4L
キサンタンガム(ケルトロール T) 0.34Kg
水を1000Lまで

平らな歯牙のエナメル質部分を37℃の温度で4時間試験溶液にさらす、以下で詳述するインビトロでの手順により、二つの飲料のエナメル質を溶かす能力について試験した。試験中に損失したエナメル質の深さを物理的に測定することで侵蝕能を評価した。増粘剤のない対照飲料では4時間にわたる曝露時間で16μmのエナメル質損失が見られたのに対し、キサンタンガムを加えた飲料は1μmのエナメル質損失であった。」(8頁14行?9頁1行)
1-h 「実施例3
クエン酸溶液を脱イオン水で調製し、0.1M水酸化ナトリウム溶液でpH3.8に調整した。カルシウムを炭酸カルシウムの形で加え、及び/又はキサンタンガムをケトロールTとして加えた。実施例1で記載された4時間のインビトロでの手順に従って、全ての溶液を試験した。
結果

」(10頁5?12行)
1-i 「クレーム
1 経口投与用酸性組成物中の歯牙侵蝕阻害剤としての粘度調製ポリマー物質の使用であって、その組成物の有効pHが4.5以下である、粘度調整ポリマー物質の使用。
・・・
4 組成物の有効pHが2.0?4.5である請求項1ないし3のいずれか一つに記載の使用。
5 酸性物質がクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、リン酸、酢酸又はそれらの混合物を含む請求項1ないし4のいずれか一つに記載の使用。
6 カルシウムが酸1モル当たり0.8モルまでの量で組成物内にあるように、酸性組成物がカルシウム化合物を含有する請求項1ないし5のいずれか一つに記載の使用。
7 カルシウム源が可溶性カルシウム塩である請求項6記載の使用
8 酸性組成物が飲料又は飲料を調製するための液体又は固体濃縮物である請求項1ないし7のいずれか一つに記載の使用。」(19頁1?27行)

2 刊行物2:特開平9-289877号公報
特開平9-289877号公報(原審における拒絶理由の引用文献3。以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。
2-a 「【請求項1】 ヒドロキシアパタイトをクエン酸(又はその塩)含有液、又は蛋白質又はペプチドで表面処理してなることを特徴とするカルシウム補強剤。
【請求項8】 請求項1?請求項7のいずれか1項に記載のカルシウム補強剤を固体製品、練り製品及び/又は液状製品に添加してなることを特徴とするカルシウム補強食品。」(特許請求の範囲、請求項1及び請求項8)
2-b 「オステオポローシスを防ぐには、成長期において骨量を可能な限り大きくし、骨量の減少期に、減少した骨量を増加させる方法が望まれているが、食品からの摂取に依存する方法、あるいは薬剤に依存するなどの方法がある。薬剤では、カルシトニン及びビタミンDが現在主要部分が占めており、カルシウム強化食品も多く出されているのが現状である。現想的には日常の食生活において必要量を摂取することが望まれ、食品へのカルシウム強化が積極的になされているのが現状であるが、カルシウムの素材、添加方法、安定性などの問題がある。
食品への応用の場合、主として炭素カルシウムなどを添加補強している場合が多い。しかし、特に液状食品の場合には、添加した炭酸カルシウムが粒子サイズによって沈降したり、増加量によってはかなりの白濁を呈したり、また、液状に懸濁させた場合、苦みを呈する等の問題点がある。このように、炭酸カルシウムを食品に応用することに際しては、これらの問題を解決できなければ商品価値を低下させてしまうことになる。」(段落【0003】?【0004】)
2-c 「そこで、これら問題点を解決するための検討をおこなった。先ず、添加するカルシウム源として、味を呈さないこと、水中での分散が安定することが望ましい。日常的に摂取している食品の中でカルシウム含量の多いものとして、乳製品があげられるが、欧米と比較しその摂取量は少ないのが現状である。乳製品を除いて、カルシウム摂取に良いと言われるものに魚が有り、特に小魚の摂取が良いと言われている。この小魚の骨に存在するカルシウムが重要である。骨の成分としてはリン酸カルシウムがあり、これは即ち、ヒドロキシアパタイトである。そこでヒドロキシアパタイトをカルシウム源と考え、水中の分散安定化が可能であれば、炭酸カルシウムの利用において問題となっている種々の課題を解決する事ができる。ヒドロキシアパタイトは、医薬品分野においても薬剤の担持に利用されようとしており、また歯磨きの中にも添加され、その安全性にも心配がなく、生物学的利用性も高いと言われている。そこでヒドロキシアパタイトの超微粒子を利用する点に着目した。
たしかにヒドロキシアパタイトは苦味を呈することはもちろんないし、味自体を呈することがないため、経口投与用カルシウム補強剤の成分としては非常にすぐれているが、微粒子状にしても水中においては二次凝集を呈し、沈降する。そのため、分散安定化処理の必要を認めた。
そこで、ヒドロキシアパタイトの分散安定化を可能とすることができる物質を検索した結果、クエン酸(又はその塩)又はカゼインホスホペプチド(以下、CPPということもある)などのペプチド又はアルブミンなどの蛋白質でヒドロキシアパタイトの微粒子を表面処理し、これを水中に投じたところ、長期間に亘って沈降現象が認められず、苦味はもとより格別の呈味も認められないという有用な新知見を得た。」段落【0008】?【0010】)
2-d 「ヒドロキシアパタイト(Ca_(10)(PO_(4))_(6)(OH)_(2))は、水酸化カルシウムその他カルシウム化合物の水懸濁液にリン酸(塩)溶液を添加する等常法にしたがって製造することができ、合成されたヒドロキシアパタイト(結晶)から、遠心分離その他常法にしたがって目的とする超微粒子を分別すればよい。また、市販品も使用可能である。」(段落【0012】)
2-e 「本発明のカルシウム補強剤は、飲食品、特定保健用飲食品、健康飲料、健康食品、栄養食品その他各種タイプの飲食品として用いることができるほか、カルシウム強化剤として各種の飲食品に添加使用することができる。また、カルシウム強化、カルシウム補強等の目的で、医薬品としても使用することができる。
飲食品タイプとして使用する場合は、クエン酸(又はその塩)又は蛋白質で処理したヒドロキシアパタイトを有効成分とし、これ(その処理物)をそのまま、使用したり、他の食品ないし食品成分と併用したりして適宜常法にしたがって使用できる。本有効成分を用いる本発明に係る組成物は、固体状(粉末、顆粒状その他)、ペースト状、液状ないし懸濁液のいずれでもよいが、甘味料、酸味料、ビタミン剤その他ドリンク剤製造に常用される各種成分を用いて、健康ドリンクに製剤化すると好適である。」(段落【0017】?【0018】)
2-f 「【実施例9】密栓蓋付きの容器に、水を2L入れ、更にCPP 80g及び実施例1で製造したヒドロキシアパタイト20gを加えた後、超音波処理を3分間行い、CPPでコーティングしたヒドロキシアパタイト(液状製品)を製造した。更にこれを減圧下濃縮して、1/2濃縮物を製造した。そして更にこれを凍結乾燥して乾燥粉末を製造した。」(段落【0055】)
2-g 「【実施例10】糖類150g、蜂蜜15g、アスコルビン酸1g、クエン酸0.5g、香料適量に、実施例9で製造した液状製品を加えて1kgとし、これを95℃で20分間殺菌し、100mlずつ無菌的にビンに充填して、飲食品タイプの健康ドリンクを製造した。」(段落【0056】)

3 刊行物3:特開平8-319224号公報
特開平8-319224号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。
3-a 「【請求項1】 液状化リン酸カルシウム系化合物を0.01?30重量%含有することを特徴とする口腔用組成物。
・・・
【請求項3】 さらにリン酸カルシウム系化合物粉末を含有する請求項1記載の口腔用組成物。」(特許請求の範囲)
3-b 「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、エナメル質の再石灰化効果、歯の美白効果及び抗菌効果に優れた口腔用組成物を提供することにある。」(段落【0004】)
3-c 「本発明の口腔用組成物は、上記のような液状化リン酸カルシウム系化合物の他に、リン酸カルシウム系化合物粉末を含有することができる。この粉末で用いられるリン酸カルシウム系化合物としては、Ca/P比が1.0?2.0のものであれば各種のものを使用することができるが、ハイドロキシアパタイト、ハロゲン化アパタイト等の各種のアパタイト、リン酸第一カルシウム、リン酸第二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウムなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。これらのうち、アパタイト類が好ましい。」(段落【0012】)
3-d 「これらのリン酸カルシウム系化合物粉末は、細菌やウイルスに対する吸着作用を示すため、口腔内細菌やウイルスを吸着除去することができ、また、歯磨き剤では汚れを物理化学的に吸着除去できるので、効果的に歯を清浄にすることができる。これらの効果を有効に発揮するためには、リン酸カルシウム系化合物粉末は、1?10μmの粒径を有するものが好ましく、また、1?10重量%の範囲で配合されるのが好ましく。」(段落【0013】)

第5 当審の判断
1 刊行物1に記載された発明
刊行物1には
「1 経口投与用酸性組成物中の歯牙侵蝕阻害剤としての粘度調製ポリマー物質の使用であって、その組成物の有効pHが4.5以下である、粘度調整ポリマー物質の使用。
・・・
5 酸性物質がクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、リン酸、酢酸又はそれらの混合物を含む請求項1ないし4のいずれか一つに記載の使用。
6 カルシウムが酸1モル当たり0.8モルまでの量で組成物内にあるように、酸性組成物がカルシウム化合物を含有する請求項1ないし5のいずれか一つに記載の使用。
7 カルシウム源が可溶性カルシウム塩である請求項6記載の使用
8 酸性組成物が飲料又は飲料を調製するための液体又は固体濃縮物である請求項1ないし7のいずれか一つに記載の使用。」(摘示1-i)
という発明が記載されており、また、以下の事項も記載されている。
・「本発明は、有利に酸性組成物、特に食料品、中でも天然又は酸性物質を添加した飲料に用いるために用いられる。そのような酸組成物は、有機及び/又は無機の酸を含有してもよく、アスコルビン酸のようなビタミンが補強されていてもよい。好ましい酸性物質は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、酢酸及び酒石酸並びにそれらの混合物のような飲料に適した酸を包含する。」(摘示1-d)
・「飲料のような食料品は甘くされていないか、又は天然の糖、サッカリン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル若しくは当業者に知られている他の甘味料のような合成甘味料で甘味が付けられていても良い。」(摘示1-e)
・「実施例1
およそ以下の処方である市販の可飲飲料(pH3.5)を、キサンタンガムを加えずに調製した対照飲料と比較して試験した。
成分 量
オレンジジュース 110L
クエン酸 3.8Kg
アセスルファムK 0.74Kg
アスパルテーム 0.72Kg
アスコルビン酸 0.29Kg
オレンジ香味料 0.4L
キサンタンガム(ケルトロール T) 0.34Kg
水を1000Lまで」(摘示1-g)

してみると、刊行物1には、
「粘度調整ポリマー物質と、カルシウム化合物と、甘味料と、有機酸とを含有する飲料。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「カルシウム化合物と、甘味料と、有機酸とを含有する飲料。」
の点で一致するが、以下の点において一応相違すると認められる。
(1) カルシウム化合物と、甘味料と、有機酸以外に、本願発明では「粘度調整ポリマー物質」を用いないのに対し、引用発明では「粘度調整ポリマー物質」を用いる点
(2) カルシウム化合物の種類について、本願発明では「ハイドロキシアパタイト(ただし、クエン酸(又はその塩)含有液、又は蛋白質又はペプチド中で超音波処理により表面処理してなるハイドロキシアパタイトを除く)」と規定しているのに対し、引用発明ではそのような規定がなされていない点
(3) カルシウム化合物を用いる量について、本願発明では「0.001重量%?15重量%」と規定しているのに対し、引用発明ではそのような規定がなされていない点
(4) 甘味料の量について、本願発明では「0.001重量%?10重量%」と規定しているのに対し、引用発明ではそのような規定がなされていない点
(5) 本願発明では、飲料について、「ハイドロキシアパタイト無添加の場合のアルカリ消費量が1.0ml 0.1N KOH以上である」と規定しているのに対し、引用発明ではそのような規定がなされていない点
(6) 飲料について、本願発明では「抗う蝕性」と規定しているのに対し、引用発明ではそのような規定がなされていない点
(以下、上記の各相違点を、それぞれ項の番号に応じて「相違点(1)」などという。)

3 相違点についての判断
(1) 相違点(1)について
刊行物1のクレーム1には「経口投与用酸性組成物中の歯牙侵蝕阻害剤としての粘度調製ポリマー物質の使用」に関する発明が記載されている(摘示1-i)ところ、刊行物1の実施例3及びそれに示された表には、「4時間後のエナメル質損失」の程度が、粘度調製ポリマー物質であるキサンタンガムとカルシウム化合物である炭酸カルシウムとは同程度であること、すなわち、歯牙侵蝕阻害剤としての作用効果が粘度調製ポリマー物質とカルシウム化合物とは同程度あること、が示されている(摘示1-h)。
また、「消費者には食品添加物のない、または少ない食品がアピールする」ことは周知である(例えば、特表平11-504523号公報8頁7行参照。)。
してみると、歯牙侵蝕阻害剤としての作用効果と食品添加物についての消費者へのアピール度などを勘案して、「粘度調整ポリマー物質」を用いないようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。

(2) 相違点(2)について
刊行物1には「カルシウムはどのような適した形態でも加えることができるが、炭酸カルシウム、・・・、リン酸カルシウム、・・・のような可溶性塩、若しくは組成物に対して香りを減じることのないような他の何れの塩も有用である。」(摘示1-f)と記載されている。
また、刊行物2には、炭酸カルシウムは「液状に懸濁させた場合、苦みを呈する等の問題点がある。」(摘示2-b)のに対し、「ヒドロキシアパタイトは苦味を呈することはもちろんないし、味自体を呈することがないため、経口投与用カルシウム補強剤の成分としては非常にすぐれている」(摘示2-c)ことが記載されており、またヒドロキシアパタイトを表面処理してなるものと、甘味料に相当する糖類及び蜂蜜と、有機酸に相当するクエン酸とを含有する飲食品タイプの健康ドリンクが示されている(摘示2-g)。
さらに、刊行物3には、ハイドロキシアパタイト等のリン酸カルシウム系化合物粉末は、「細菌やウイルスに対する吸着作用を示すため、口腔内細菌やウイルスを吸着除去することができ、・・・効果的に歯を清浄にすることができる。」(摘示3-d)ことが記載されている。
してみると、ハイドロキシアパタイトは刊行物1にカルシウムとして例示されているリン酸カルシウムの一種であること、ハイドロキシアパタイトは、刊行物2に記載されているように、炭酸カルシウムのように苦味を呈することがない飲食品タイプの健康ドリンクに含有される成分として用い得ることが知られていること、及びハイドロキシアパタイトは、刊行物3に記載されているように、「細菌やウイルスに対する吸着作用を示すため、口腔内細菌やウイルスを吸着除去することができ、・・・効果的に歯を清浄にすることができる。」ことも知られていること、などを考慮して、ハイドロキシアパタイトをカルシウム化合物として用いることは当業者が容易に想到し得ることである。

(3) 相違点(3)について
引用発明が記載されていると認められる刊行物1の請求項6(クレーム)には「カルシウムが酸1モル当たり0.8モルまでの量で組成物内にあるように、酸性組成物がカルシウム化合物を含有する請求項1ないし5のいずれか一つに記載の使用。」(摘示1-i)という発明が記載されている。
そこで、刊行物1の実施例1の飲料に、刊行物1の請求項6に記載されるカルシウムの量でハイドロキシアパタイトを添加する場合のカルシウム含有量を算出すると、実施例1には、1000L中に酸としてクエン酸を3.8Kg含有する可飲飲料の例が記載されている(摘示1-g)ところ、クエン酸は1モルが192.1gでありハイドロキシアパタイトは1モルが約1005gであることを考慮すると、刊行物1の実施例1の可飲飲料の場合には、カルシウム化合物であるハイドロキシアパタイトは約15.9Kg(注.1005×0.8×(3800÷192.1)≒15900)までの量で飲料中にあることができることになる。
そして、オレンジジュースは概ね比重が1.05である(http://www.famic.go.jp/public_relations_magazine/kouhoushi/question_and_answer_of_food/qa51.html)ことを考慮すると、刊行物1の実施例1の可飲飲料の場合には、概ね1.5重量%(注.15.9÷(1000×1.05)×100≒1.5)までの量でハイドロキシアパタイトを飲料中に含有することができることになる。
してみると、刊行物1の実施例1におけるカルシウム化合物を用いる量は本願発明で規定するカルシウム化合物を用いる量と重複しているから、相違点(3)は実質的な相違点であるとは認められない。
また、消費者の嗜好や用途などに応じて数値範囲を最適化又は好適化することは当業者が日常業務として行うことであるから、カルシウム化合物を用いる量について「0.001重量%?15重量%」と規定することは当業者が容易に想到し得ることである。

(4) 相違点(4)について
刊行物1の実施例1には、1000L中に甘味料であるアセスルファムK及びアスパルテームを、それぞれ0.74Kg及び0.72Kg含有する可飲飲料の例が記載されている(摘示1-g)。
そして、先に(3)で述べたように、オレンジジュースは概ね比重が1.05であることを考慮すると、刊行物1の実施例1では約0.14重量%(注.(0.74+0.72)×100÷(1000×1.05)≒0.14)の甘味料を用いていることになる。
してみると、刊行物1の実施例1で用いている甘味料の量は本願発明で規定する甘味料の量の範囲内であるから、相違点(4)は実質的な相違点であるとは認められない。
また、消費者の嗜好や用途などに応じて数値範囲を最適化又は好適化することにより、甘味料の量について「0.001重量%?10重量%」と規定することは当業者が容易に想到し得ることである。

(5) 相違点(5)について
刊行物1には
「低濃度のカルシウムを、好適にはアルカリ塩の形で使用することにより、更なる利点が生じる。カルシウムが存在すると、調合物の緩衝能力は酸の部分的な中和によって低下し、それによって口腔内に残っている酸残査を唾液がより迅速に中和することを可能にする。・・・カルシウムはどのような適した形態でも加えることができるが、炭酸カルシウム、・・・リン酸カルシウム、・・・のような可溶性塩・・・も有用である。」(摘示1-f)
と記載されている。
また、刊行物1の実施例3(特に表)には、0.3%w/vのクエン酸溶液により4時間後に7.6μmのエナメル質が損失するのに対し、カルシウムを0.3(Ca/CaMHモル比)加えたものは0.3%w/vのクエン酸溶液により4時間後に5.4μmのエナメル質が損失することが記載されている(摘示1-h)ところ、歯牙表面のエナメル質はハイドロキシアパタイトよりなることが周知である(例えば、特開2000-128752号公報の段落【0004】参照。)ことを考慮すると、これは
「歯牙表面のエナメル質を構成するハイドロキシアパタイトがクエン酸により溶解するためにエナメル質は損失するが、クエン酸溶液中にカルシウムを加えると、加えたカルシウムによりクエン酸が部分的に中和され、その結果歯牙表面のエナメル質の損失の程度は減少する。」
ことを示している。
してみると、刊行物1においては「組成物の有効pHが2.0?4.5である」(摘示1-i)というようにかなり高い酸性を有する飲料を使用対象としていること、先に(2)で述べたように、ハイドロキシアパタイトは刊行物1にカルシウムとして例示されているリン酸カルシウムの一種であるので、飲料中の有機酸がカルシウムであるハイドロキシアパタイトにより部分的に中和されることにより、引用発明においては、ハイドロキシアパタイト無添加の場合のアルカリ消費量が高くなることは予想し得ることであること、及びアルカリ消費量が高い飲料の方が(アルカリ消費量が低い飲料に比べて)歯牙表面のエナメル質を損失しやすいため、歯牙表面のエナメル質の損失を防止する必要性が高いこと、などを考慮して、消費者の嗜好や用途などに応じて数値範囲を最適化又は好適化することにより、飲料について、「ハイドロキシアパタイト無添加の場合のアルカリ消費量が1.0ml 0.1N KOH以上である」と規定することは当業者が容易に想到し得ることである。

(6) 相違点(6)について
本願発明において、「抗う蝕性」という文言の技術的意義は一義的に明確に理解することができないので、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することにする。
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がなされている。
・「【従来の技術】
う蝕の発生には、口腔内の微生物、特にストレプトコッカス・ミュータンスが産生する酵素・グルコシルトランスフェラーゼが関与する。すなわち、飲食物中のショ糖のうち口腔内に残ったものがグルコシルトランスフェラーゼの作用によって水不溶性かつ付着性の強いグルカンに変化し、それが口腔内微生物と共に歯の表面に付着して歯垢を形成する。そして、歯垢内の微生物が食物中の糖を代謝して酸を作り、この酸が歯のエナメル質を脱灰し侵食する。これがう蝕である。口腔内では唾液の緩衝作用により口腔内pHをもとのpHに戻すことが知られている。しかしながら、飲食物によっては、緩衝作用により本来のpHに戻す時間が異なる。すなわち飲食物の持つ飲料中の酸量、すなわち、アルカリ消費量により異なることが知られている。」(段落【0002】)
・「一般に、歯の溶解度は、pH5.0以下になると急激に増加し、pH3.5ではpH4.5のときの5倍になるといわれている。一般に市販されている飲料のpHは2.5?7.0である。飲料のpHは飲料による歯の直接脱灰においては重要な指標となる。
一方、市販されている飲料のアルカリ消費量は0.009?14ml 0.1N KOHである。アルカリ消費量は口腔内の唾液pHの回復時間に影響を与える。従って、飲料pHが低くかつアルカリ消費量の高い飲料がう蝕発病リスクの高い飲料と言える。」(段落【0003】)
・「【発明が解決しようとする課題】
飲料によるう蝕リスクを低減するには、飲料のアルカリ消費量を低減することが有効な手段であるが、飲料のアルカリ消費量を低減させるための方法については、未だ満足すべき効果を有する方法は見出されていない。」(段落【0005】)
・「【課題を解決するための手段】
本発明は、ハイドロキシアパタイトに代表されるリン酸カルシウム微粒子を添加することを特徴とする、う蝕予防性飲料を提供するものである。」(段落【0006】)
・「本発明者らは、アルカリ消費抑制効果を有し、かつ、人体に対して無害即ち有害な作用を有さない物質を見出すべく鋭意研究を行った結果、ハイドロキシアパタイトに代表されるリン酸カルシウム微粒子が優れたアルカリ消費抑制効果を有することを見出し、本発明を完成するにいたった。」(段落【0007】)
・「また、本発明のアルカリ消費抑制飲料には、ストレプトコッカス・ミュータンスが産生する酸自体を抑える目的として、抗う蝕性砂糖を利用することが可能である。」(段落【0022】)
・「実施例2及び比較例2、実施例3及び比較例3等、それぞれ同種の飲料の実施例及び比較例に関するpH値及びアルカリ消費量の測定結果においても同様の効果が見られる。このように、リン酸カルシウム微粒子を飲料に配合することによって、飲料のアルカリ消費量を低減するのに効果的であることがわかる。」(段落【0035】)
以上の記載によれば、「抗う蝕性」とは「飲料のアルカリ消費量を低減することにより、口腔内での唾液の緩衝作用により短時間で口腔内pHをもとのpHに戻して、酸による歯のエナメル質を脱灰し侵食する作用を抑える性質」のことであると認められる。
そして、刊行物1には
「低濃度のカルシウムを、好適にはアルカリ塩の形で使用することにより、更なる利点が生じる。カルシウムが存在すると、調合物の緩衝能力は酸の部分的な中和によって低下し、それによって口腔内に残っている酸残査を唾液がより迅速に中和することを可能にする。」(摘示1-f)
と記載されており、また、先に(5)で述べたように、刊行物1の実施例3(特に表)は
「歯牙表面のエナメル質を構成するハイドロキシアパタイトがクエン酸により溶解するためにエナメル質は損失するが、クエン酸溶液中にカルシウムを加えると、加えたカルシウムによりクエン酸が部分的に中和され、その結果歯牙表面のエナメル質の損失の程度は減少する。」
ことを示している。
してみると、カルシウム化合物を含む引用発明の飲料は「抗う蝕性」のものであるということができるから、相違点(6)は実質的な相違点であるとは認められない。

(7) 効果について
しかも、本願発明が上記各相違点に基づき格別顕著な技術的効果を奏し得たものとは認められない。
すなわち、本願発明の効果は「リン酸カルシウム微粒子を飲料に配合することによって、飲料のアルカリ消費量を低減するのに効果的であること」(段落【0035】)であるが、先に「(5) 相違点(5)について」で述べたように、ハイドロキシアパタイトは刊行物1にカルシウムとして例示されているリン酸カルシウムの一種であるので、飲料中の有機酸がカルシウムであるハイドロキシアパタイトにより部分的に中和されることにより、引用発明においては、ハイドロキシアパタイト無添加の場合のアルカリ消費量が高くなることは予想し得ること、言い換えると、ハイドロキシアパタイトを飲料に配合することによって、飲料のアルカリ消費量を低減できることは予想し得ること、である。
また、本願明細書のその他の記載をみても、本願発明が上記各相違点により格別顕著な技術的効果を奏し得たものとは認められない。

4 結論
以上のとおり、上記各相違点は、当業者が容易に想到し得るものであるか又は実質的な相違点であるとは認められないものであり、また、本願補正発明が上記各相違点により格別顕著な効果を奏するものとも認められないから、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

5 請求人の主張について
請求人は、平成21年3月5日付けの意見書において、概略、以下の主張をしている。
(1) 相違点aについて(審決注.「相違点a」は本審決における「相違点(1)」に対応する。)
刊行物1においては、実施例3を含むすべての実施例において炭酸カルシウムの効果しか示されておらず、その他のカルシウム塩については単に列挙されているだけであるので、この実施例3及びそれに示された表から、『歯牙侵蝕阻害剤としての作用効果が粘度調製ポリマー物質とカルシウム化合物とは同程度あること』といった、カルシウム化合物すべてが粘度調整ポリマーと同等の作用効果を有するとの認定はいきすぎたものである。(2.(2)2)-1)
(2) 相違点bについて(審決注.「相違点b」は本審決における「相違点(2)」に対応する。)
摘示1-fにおいて例示されているカルシウム塩は、具体的な化合物名であり、リン酸カルシウムは、具体的な化合物である第三リン酸カルシウム(リン酸三カルシウム)[Ca_(3)(PO_(4))_(2)]を意味する(化学大辞典9 第798頁 「りんさんカルシウム」の項:参考資料)と解するのが普通の解釈であるから、『ハイドロキシアパタイトは、刊行物1にカルシウムとして例示されているリン酸カルシウムの一種である』とする認定は当を得たものではない。(2.(2)2)-2)
(3) 相違点eについて(審決注.「相違点e」は本審決における「相違点(5)」に対応する。)
本発明では、アルカリ消費量が非常に高い飲料に限定しているのに対し、刊行物1に示されるリン酸カルシウム(第三リン酸カルシウム,リン酸三カルシウム)については、刊行物1ではその効果について明らかにされていないが、本件明細書には、
「例えば、リン酸カルシウム微粒子のCa/Pモル比が1.0に近ければ、リン酸水素カルシウムが含まれる割合が多く、Ca/Pモル比が1.5に近ければ、リン酸三カルシウムが含まれる割合が多く、Ca/Pモル比が1.6以上あれば、ハイドロキシアパタイトの割合が多くなる傾向にある。従って、アルカリ消費量が0.5ml 0.1N KOH未満の飲料については、Ca/Pモル比が1.0以上のリン酸カルシウム微粒子を使用することができ、アルカリ消費量が0.5?1.0ml 0.1N KOHまでの飲料については、Ca/Pモル比が1.5以上のリン酸カルシウム微粒子を使用することが好ましく、アルカリ消費量が1.0ml 0.1N KOH以上の飲料については、Ca/Pモル比が1.6以上のリン酸カルシウム微粒子を使用することが好ましい。」(段落[0013])と記載されており、リン酸カルシウム(リン酸三カルシウム)を用いた場合には、アルカリ消費量が0.5?1.0ml 0.1N KOHまでの飲料について使用することが好ましいとされているので、例えば、乳酸飲料の如きアルカリ消費量が1.0ml 0.1N KOH以上の飲料については有効な抗う蝕効果を期待しにくいことが示唆されている。(2.(2)2)-3)
(以下、上記の各主張を、それぞれ項の番号に応じて「主張(1)」などという。)

しかしながら、主張(1)については、摘示1-hからみて、粘度調製ポリマー物質であるキサンタンガムとカルシウム化合物である炭酸カルシウムとは歯牙侵蝕阻害剤としての作用効果が同程度あることが理解できること、刊行物1では、クレームの6において「カルシウムが酸1モル当たり0.8モルまでの量で組成物内にあるように、酸性組成物がカルシウム化合物を含有する請求項1ないし5のいずれか一つに記載の使用。」(摘示1-i。下線は当審による。)と記載されていることからみて、刊行物1の実施例3における炭酸カルシウムはカルシウム化合物の例として用いられていることが明らかであること、及び刊行物1では、「カルシウムはどのような適した形態でも加えることができる」(摘示1-f)と記載した上で、炭酸カルシウムとその他のカルシウム化合物とを同列に扱って記載していること、などを勘案すると、相違点(1)において、「刊行物1の実施例3及びそれに示された表には、『4時間後のエナメル質損失』の程度が、粘度調製ポリマー物質であるキサンタンガムとカルシウム化合物である炭酸カルシウムとは同程度であること、すなわち、歯牙侵蝕阻害剤としての作用効果が粘度調製ポリマー物質とカルシウム化合物とは同程度あること、が示されている(摘示1-h)。」とした認定判断に誤りはない。
主張(2)については、例えば、刊行物2には「骨の成分としてはリン酸カルシウムがあり、これは即ち、ヒドロキシアパタイトである。」(3頁3欄10?12行)と記載されており、また、ヒドロキシアパタイトは「安定なリン酸カルシウムで人体の骨や歯の主成分として良く知られている。」(特開平6-277673号公報3頁3欄24?25行)のであるから、「ハイドロキシアパタイトは刊行物1にカルシウムとして例示されているリン酸カルシウムの一種である」とした認定判断に誤りはない。
(なお、本願明細書をみても、本願発明においてはヒドロキシアパタイトをリン酸カルシウムの一種として扱っている(例えば、段落【0006】、【0007】、及び実施例1など。)ことからみて、請求人の主張は本願明細書の記載と相矛盾するものである。)
主張(3)については、そもそも本願明細書の記載事項が容易想到性についての阻害要因となることはないし、しかも、請求人の主張は、前記「(2) 相違点bについて」と同様に、「リン酸カルシウムは第三リン酸カルシウム(リン酸三カルシウム)[Ca_(3)(PO_(4))_(2)]を意味する」旨の主張を前提とするものであるところ、先に主張(2)について述べたように、ヒドロキシアパタイトはリン酸カルシウムとして良く知られているので、請求人の主張は前提において誤りである。
したがって、請求人主張は、何れも上記4の判断を左右するものではない。

第6 結語
以上のとおり、本願は、その余の請求項に係る発明について判断するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-09 
結審通知日 2009-04-13 
審決日 2009-04-27 
出願番号 特願2002-224932(P2002-224932)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子田村 明照小柳 正之  
特許庁審判長 唐木 以知良
特許庁審判官 原 健司
橋本 栄和
発明の名称 抗う蝕性飲料  
代理人 廣田 雅紀  

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