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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1198496
審判番号 不服2007-5134  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-16 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 特願2002-198444「圧縮着火式内燃機関の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月 5日出願公開、特開2004- 36595〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年7月8日の出願であって、平成18年9月22日付けで拒絶理由が通知され、同年11月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成19年1月16日付けで拒絶査定がなされ、同年2月16日に同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書を補正する手続補正がなされ、その後、平成20年11月19日付けで当審において書面による審尋がなされ、それに対して、平成21年1月14日に回答書が提出されたものである。

2.平成19年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年2月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
平成19年2月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「内燃機関に供給される混合気を自己着火により燃焼室内で燃焼させる圧縮着火式内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
当該検出された前記内燃機関の運転状態に応じて、燃焼ガスの残留量を決定する燃焼ガス残留量決定手段と、
当該決定された燃焼ガスの残留量に基づき、燃焼後に燃焼ガスの一部を前記燃焼室内に残留させる燃焼ガス残留手段と、
前記燃焼室内に新気を過給する過給手段と、
前記決定された燃焼ガスの残留量が所定値以上のときに、前記自己着火を行うために前記過給手段による過給を実行すべきであると判定する過給実行判定手段と、
当該過給実行判定手段により前記過給を実行すべきであると判定されたときに、前記過給手段により前記燃焼室内に新気を過給させる過給制御手段と、
を備えることを特徴とする圧縮着火式内燃機関の制御装置。」(平成18年11月21日付け手続補正)
から
「内燃機関に供給される混合気を自己着火により燃焼室内で燃焼させる圧縮着火式内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
当該検出された内燃機関の運転状態に応じて、燃焼ガスの残留量を決定する燃焼ガス残留量決定手段と、
当該決定された燃焼ガスの残留量に基づき、燃焼後に燃焼ガスの一部を前記燃焼室内に残留させる燃焼ガス残留手段と、
前記燃焼室内に新気を過給する過給手段と、
前記検出された内燃機関の運転状態に応じて、限界燃焼ガス残留量を設定する限界燃焼ガス残留量設定手段と、
前記決定された燃焼ガスの残留量が前記設定された限界燃焼ガス残留量以上のときに、前記自己着火を行うために前記過給手段による過給を実行すべきであると判定する過給実行判定手段と、
当該過給実行判定手段により前記過給を実行すべきであると判定されたときに、前記過給手段により前記燃焼室内に新気を過給させるとともに、前記決定された燃焼ガスの残留量が大きいほど、前記過給手段による過給圧力をより大きな値に設定する過給制御手段と、
を備えることを特徴とする圧縮着火式内燃機関の制御装置。」
へと補正された。(以下、本件補正後の請求項1に係る発明を「本願補正発明」という。なお、下線は補正個所を示す。)

[新規事項追加禁止違反について]
上記補正により、「前記検出された内燃機関の運転状態に応じて、限界燃焼ガス残留量を設定する限界燃焼ガス残留量設定手段」の事項が追加されたが、当該事項については、本件出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつ、これらから自明な事項でもない。
なお、本件出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、「この限界EGR量は、・・(略)・・、一定の所定値(例えば30%)に設定してもよいし、要求負荷TEおよびエンジン回転数NEに応じた値を実験により設定してもよい。」(段落【0037】)と記載されているだけである。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[目的要件違反について]
上記補正は、本件補正前の請求項1における「所定値以上」を「前記設定された限界燃焼ガス残留量以上」と補正すると共に、「前記検出された内燃機関の運転状態に応じて、限界燃焼ガス残留量を設定する限界燃焼ガス残留量設定手段を備える」事項を追加する補正(以下、「上記補正A」という。)を含むものである。ここで、発明の詳細な説明の段落【0037】には、
「具体的には、このステップ55では、ステップ4で決定された内部EGR量が限界EGR量以上であるか否かを判別する。この答がYESで、内部EGR量≧限界EGR量のときには、前記ステップ9以降に進み、過給機12による過給を実行し、この答がNOで、内部EGR量<限界EGR量のときには、前記ステップ6以降に進み、過給を停止する。この限界EGR量は、内部EGR量が多いために自己着火に必要な新気量が自然吸気だけでは足りなくなるような内部EGR量の限界値であり、一定の所定値(例えば30%)に設定してもよいし、要求負荷TEおよびエンジン回転数NEに応じた値を実験により設定してもよい。」(下線は、当審で付与した。)
とあるから、本件補正前の「所定値」は「一定の所定値(例えば30%)」を指称するものと解される。これに対し、本件補正後の「限界燃焼ガス残留量」は、内燃機関の運転状態に応じて設定されるものであるから、通常、複数の値を指称するものと解される。そうすると、上記補正Aは、特許請求の範囲の拡張若しくは変更をもたらすものであり、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえない。
また、上記補正Aは、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[独立特許要件違反について]
上記[目的要件違反について]で検討したように、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としない上記補正Aを含むものであるが、仮に、本件補正が、全体として、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としているとして、以下に検討する。

36条4項違反について>
発明の詳細な説明の段落【0037】における「要求負荷TEおよびエンジン回転数NEに応じた値を実験により設定してもよい。」の記載は、不明りょうである。すなわち、一定の所定値(例えば30%)が設定されるのか、要求負荷TEおよびエンジン回転数NEに応じて複数の値が設定されるのか、いずれであるのか不明りょうである。
したがって、本件出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

36条6項1号違反について>
特許請求の範囲の【請求項1】には、「前記検出された内燃機関の運転状態に応じて、限界燃焼ガス残留量を設定する限界燃焼ガス残留量設定手段」について記載されているが、発明の詳細な説明及び図面には、この点について記載されていない。
発明の詳細な説明及び図面には、「この内部EGR量は、・・(略)・・、一定の所定値(例えば30%)に設定してもよいし、要求負荷TEおよびエンジン回転数NEに応じた値を実験により設定してもよい。」(段落【0037】)と記載されているだけである。
したがって、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論の通り決定する。

3.本願発明について
平成19年2月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成18年11月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「内燃機関に供給される混合気を自己着火により燃焼室内で燃焼させる圧縮着火式内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
当該検出された前記内燃機関の運転状態に応じて、燃焼ガスの残留量を決定する燃焼ガス残留量決定手段と、
当該決定された燃焼ガスの残留量に基づき、燃焼後に燃焼ガスの一部を前記燃焼室内に残留させる燃焼ガス残留手段と、
前記燃焼室内に新気を過給する過給手段と、
前記決定された燃焼ガスの残留量が所定値以上のときに、前記自己着火を行うために前記過給手段による過給を実行すべきであると判定する過給実行判定手段と、
当該過給実行判定手段により前記過給を実行すべきであると判定されたときに、前記過給手段により前記燃焼室内に新気を過給させる過給制御手段と、
を備えることを特徴とする圧縮着火式内燃機関の制御装置。」(再掲)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第02/14665号(国際公開日;2002年(平成14年)2月21日。以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「本実施形態による圧縮着火式内燃機は、点火装置を用いた火花点火燃焼と、ピストン圧縮によって混合気を自己着火させる圧縮着火燃焼とを切り換えて運転することができるものである。」(第6頁14ないし16行)
(イ)「ECU1には、圧縮着火式内燃機関を搭載した車両を運転するドライバの意図を検出するドライバ意図検出手段として、アクセル開度検出装置2aおよびブレーキ踏力検出装置2bの出力値が、逐次取り込まれている。また、ECU1には、車両走行状態を検出する車両走行状態検出手段として、車速検出装置2cの出力値が、逐次取り込まれている。さらに、ECU1には、機関運転条件を検出する機関運転状態検出手段として、エアフローセンサ5,吸気管圧センサ8,機関冷却水温センサ24,空燃比センサ22,触媒12の後ろに設置されている触媒後排温センサ23やクランク角センサ4からの出力値が、逐次取り込まれている。」(第7頁3ないし10行、図1)
(ウ)「本実施形態における特徴的な構成は、圧縮着火式内燃機関において、吸気弁19aおよび排気弁19bの可変バルブ機構15a,15b及び吸入空気量調整装置7を備え、機関の運転状態に応じて、ECU1が可変バルブ機構15a,15b及び吸入空気量調整装置7を制御するようにしたものである。」(第8頁3ないし6行、図1)
(エ)「火花点火燃焼時、排気弁のリフト量は、図中実線Ex1で示すようになっており、そのバルブリフト量の最大値は、L1とする。・・(略)・・。
一方、圧縮着火燃焼時、排気弁19bのバルブリフト量は、図中点線Ex2で示すようになっており、そのバルブリフト量の最大値は、可変バルブ機構15bによって、火花点火燃焼時に比べて小さい値L2に制御される。・・(略)・・。
即ち、本実施形態においては、排気ポート14と燃焼室16の通路面積、すなわち排気開口面積を狭くすることによって排気を所定量だけ閉じ込め、自己着火に必要な熱量を、排気の持つエンタルピにより、確保するようにしている。ここで、内部EGRが持つ総熱エネルギは、内部EGR量そのものと、理論空燃比(例えばガソリンの場合は空燃比14.7付近)による燃焼時をピークとする排ガス温度の双方によって定義されるため、圧縮着火に必要な熱量確保のために、エアフローセンサ5の出力値と、空燃比センサ22の出力値を元に、バルブリフト量Lを調整するようにする。」(第11頁9ないし25行、図1,図4)
(オ)「圧縮着火燃焼時、排気弁19bのバルブリフト量は、図中点線Ex3で示すようになっており、そのバルブリフト量の最大値は、火花点火燃焼時と同じく、リフト量L1としている。しかし、可変バルブ機構15bによって、排気弁19bの開時間をT3としている。排気弁19bの開時間T3は、図4に示した火花点火燃焼時の排気弁の開時間T1に比べて小さい値となるように制御する。・・(略)・・。
即ち、本実施形態においては、排気ポート14と燃焼室16の通路面積、すなわち排気開口面積を狭くすることによって排気を所定量だけ閉じ込め、自己着火に必要な熱量を、排気の持つエンタルピにより、確保するようにしている。ここで、内部EGRが持つ総熱エネルギは、内部EGR量そのものと、理論空燃比(例えばガソリンの場合は空燃比14.7付近)による燃焼時をピークとする排ガス温度の双方によって定義されるため、圧縮着火に必要な熱量確保のために、エアフローセンサ5の出力値と、空燃比センサ22の出力値を元に、排気弁の開時間T3を調整するようにする。」(第12頁12ないし26行、図1,図5)
(カ)「本実施形態では、吸入空気量調整装置として、図1にも示したスロットル7に加えて、過給空気流量制御装置32を備えている。過給空気流量制御装置32は、スロットル7の上流に設けられた過給機32aと、この過給機32aの上流とと下流を接続するバイパス流路32bと、このバイパス流路32bの中に設けられたバルブ32cとから構成される。過給機32aは、ECU1によって過給圧を制御される。バルブ32cは、ECU1によって開度を制御され、バイパス流路32b中を流れる吸入空気流量を制御する。
機関運転条件が高負荷高回転の場合、燃焼室16内の混合気温度を制御するために内部EGRを利用すると、要求される吸入空気量が通常のスロットル7の制御だけでは不足する場合がある。そこで、過給空気流量制御装置32を、スロットル7の上流側に設けて、ドライバ意図、車両走行状態および機関運転条件に応じてECU1が制御することにより、吸入空気量を制御することができる。
圧縮初期の燃焼室内圧力と圧縮着火時期の関係は、燃焼室内圧力が高いと着火時期を早めることができ、また、燃焼室内圧力が低いと着火時期が遅くなる。そこで、ECU1によって、過給空気量制御装置32を制御することにより、機関の圧縮着火時期を制御することができる。
本実施形態によれば、高負荷・高速条件のような場合でも、要求される空気量を供給可能となるとともに、圧縮着火時期の制御も可能となる。」(第33頁20行ないし第34頁8行、図29)

上記記載事項(ア)ないし(カ)から、引用例には、次の(A)及び(B)の事項がそれぞれから分かる。
(A)上記記載事項(ア)?(オ)から、
「ピストン圧縮によって混合気を自己着火させる圧縮着火式内燃機関の制御装置であって、機関運転条件を検出するエアフローセンサ5、吸気管圧センサ8、機関冷却水温センサ24、空燃比センサ22、触媒後排温センサ23及びクランク角センサ4と、エアフローセンサ5の出力値と空燃比センサ22の出力値を元に、圧縮着火に必要な熱量確保のために、排気弁19bのバルブリフト量L若しくは開時間T3を調整するようにし、当該調整されたバルブリフト量L若しくは開時間T3に基づき、バルブリフト量若しくは開時間を制御する可変バルブ機構15bとを備える」事項
(B)上記記載事項(カ)から、
「ピストン圧縮によって混合気を自己着火させる圧縮着火式内燃機関の制御装置であって、過給機32aとバイパス流路32bとバルブ32cとから構成される過給空気流量制御装置32と、機関運転条件が高負荷高回転の場合、燃焼室16内の混合気温度を制御するために内部EGRを利用すると、要求される吸入空気量が通常のスロットル7の制御だけでは不足する場合があるので、ドライバ意図、車両走行状態および機関運転条件に応じて過給空気流量制御装置32を制御することにより吸入空気量を制御し、要求される空気量を供給可能とするECU1とを備える」事項

そうすると、引用例には、
「ピストン圧縮によって混合気を自己着火させる圧縮着火式内燃機関の制御装置であって、
機関運転条件を検出するエアフローセンサ5、吸気管圧センサ8、機関冷却水温センサ24、空燃比センサ22、触媒後排温センサ23及びクランク角センサ4と、
エアフローセンサ5の出力値と空燃比センサ22の出力値を元に、圧縮着火に必要な熱量確保のために、排気弁19bのバルブリフト量L若しくは開時間T3を調整するようにし、
当該調整されたバルブリフト量L若しくは開時間T3に基づき、バルブリフト量若しくは開時間を制御する可変バルブ機構15bと、
過給機32aとバイパス流路32bとバルブ32cとから構成される過給空気流量制御装置32と、
機関運転条件が高負荷高回転の場合、燃焼室16内の混合気温度を制御するために内部EGRを利用すると、要求される吸入空気量が通常のスロットル7の制御だけでは不足する場合があるので、ドライバ意図、車両走行状態および機関運転条件に応じて過給空気流量制御装置32を制御することにより吸入空気量を制御し、要求される空気量を供給可能とするECU1と、
を備える圧縮着火式内燃機関の制御装置。」
の発明(以下、「引用例に記載された発明」という。)が記載されている。
(2)本願発明と引用例に記載された発明の対比
本願発明と引用例に記載された発明を対比すると、引用例に記載された発明における「ピストン圧縮によって混合気を自己着火させる」は、その技術的意義からみて、本願発明における「内燃機関に供給される混合気を自己着火により燃焼室内で燃焼させる」に相当し、以下同様に、「機関運転条件を検出するエアフローセンサ5、吸気管圧センサ8、機関冷却水温センサ24、空燃比センサ22、触媒後排温センサ23及びクランク角センサ4」は「内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段」に、「エアフローセンサ5の出力値と空燃比センサ22の出力値を元に」は「当該検出された前記内燃機関の運転状態に応じて」に、「圧縮着火に必要な熱量確保のために、排気弁19bのバルブリフト量L若しくは開時間T3を調整するようにし」は「燃焼ガスの残留量を決定する燃焼ガス残留量決定手段」に、「当該調整されたバルブリフト量L若しくは開時間T3に基づき」は「当該決定された燃焼ガスの残留量に基づき」に、「バルブリフト量若しくは開時間を制御する可変バルブ機構15b」は「燃焼後に燃焼ガスの一部を前記燃焼室内に残留させる燃焼ガス残留手段」に、「過給機32aとバイパス流路32bとバルブ32cとから構成される過給空気流量制御装置32」は「前記燃焼室内に新気を過給する過給手段」に、「ECU1」は「前記過給手段により前記燃焼室内に新気を過給させる過給制御手段」に、それぞれ相当する。
してみると、本願発明及び引用例に記載された発明は、
「内燃機関に供給される混合気を自己着火により燃焼室内で燃焼させる圧縮着火式内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
当該検出された前記内燃機関の運転状態に応じて、燃焼ガスの残留量を決定する燃焼ガス残留量決定手段と、
当該決定された燃焼ガスの残留量に基づき、燃焼後に燃焼ガスの一部を前記燃焼室内に残留させる燃焼ガス残留手段と、
前記燃焼室内に新気を過給する過給手段と、
前記過給手段により前記燃焼室内に新気を過給させる過給制御手段と、
を備える圧縮着火式内燃機関の制御装置。」
の点で一致し、次の[相違点]でのみ相違している。
[相違点]
本願発明においては、「決定された燃焼ガスの残留量が所定値以上のときに、自己着火を行うために過給手段による過給を実行すべきであると判定する過給実行判定手段を備え、当該過給実行判定手段により前記過給を実行すべきであると判定されたときに、前記過給手段により前記燃焼室内に新気を過給させる」のに対し、引用例に記載された発明においては、「機関運転条件が高負荷高回転の場合、燃焼室16内の混合気温度を制御するために内部EGRを利用すると、要求される吸入空気(新気)量が通常のスロットル7の制御だけでは不足する場合があるので、ドライバ意図、車両走行状態および機関運転条件に応じて過給空気流量制御装置32を制御することにより吸入空気量を制御し、要求される空気量を供給可能とする」点。

(3)当審の判断
上記[相違点]について、以下に検討する。
ディーゼルエンジンや火花点火式エンジンにおいて、「燃焼ガスの残留量が比較的多いために、燃焼室に供給される新気量が不足し、失火を生じる」ということは、当該技術分野の技術常識である。
そうすると、引用例に記載された発明において、「ドライバ意図、車両走行状態および機関運転条件に応じて過給空気流量制御装置32を制御する」のに換えて、「燃焼室に供給される新気量が不足しないように、燃焼ガスの残留量に応じて過給空気流量制御装置32を制御する」ようにし、もって、上記[相違点]に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-09 
結審通知日 2009-04-14 
審決日 2009-04-27 
出願番号 特願2002-198444(P2002-198444)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (F02B)
P 1 8・ 121- Z (F02B)
P 1 8・ 561- Z (F02B)
P 1 8・ 575- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 粟倉 裕二  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 森藤 淳志
金澤 俊郎
発明の名称 圧縮着火式内燃機関の制御装置  
代理人 高橋 友雄  

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