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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1198514
審判番号 不服2007-25793  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-20 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 特願2003- 25650「盛立転圧管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月19日出願公開、特開2004-232433〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成15年2月3日の出願であって、平成19年8月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月20日に審判請求がなされたものである。

そして、その請求項1に係る発明は、平成19年6月22日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
盛土を転圧する振動ローラと、前記盛土の地盤特性を検出する特性検出手段と、前記地盤特性を検出すると同時に、前記振動ローラの位置情報を取得する位置測定手段と、前記地盤特性と前記位置情報とを組み合わせて情報処理を行う演算手段とを備え、前記情報処理の結果に基づいて転圧管理を行う転圧管理システムであって、
前記位置測定手段は、前記振動ローラの走行予定軌跡に沿って前記盛土に埋設配置され自己の位置情報を有する位置情報供給手段と、
前記振動ローラに設けられ前記位置情報供給手段の有する位置情報を読み取る位置情報読み取り手段と、を備え、
前記位置情報供給手段は、前記位置情報が記録された無線タグであり、
前記位置情報読み取り手段は、前記無線タグに記録されている情報を読み取る無線タグリーダであり、
前記地盤特性検出手段は、前記振動ローラに発生する振動加速度を検出する振動加速度検出手段を有し、前記振動加速度の周波数帯域を積分して得られた乱れ率に基づいて、前記地盤特性として、前記盛土の密度、剛性、沈下量、含水比、又は内部摩擦角のいずれかを検出することを特徴とする盛立転圧管理システム。」
(以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物に記載された発明
刊行物1:特開平2-261118号公報
刊行物2:特開2000-110111号公報
刊行物3:実願平1-49565号(実開平2-143608号)のマイクロフィルム

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物1には、図面とともに、以下の記載がある。
(1a)「(1)プレート上に振動機ないしは衝撃機を搭載し、プレートに対する接触面を面的に締固める締固め機を用い、この締固め機を移動させながら施工区域全域を締固める作業を複数回繰返すようにした盛土等の地盤締固め工法において;
予備試験により得られた締固め程度の標準施工データを記憶する記憶手段と、締固め機に設けた加速度センサーと、締固め機の駆動に伴う加速度センサーの検出値を元に現在の締固め程度を演算する演算手段とを備え;
この演算結果による現在の実施工データと、前記標準施工データを比較して、該当する実施工データを前記標準施工データを目標値としてこれを越えるように前記締固め機の作動を連続的に制御するようにしたことを特徴とする盛土等の地盤締固め工法における施工管理方法。」(特許請求の範囲)

(1b)「この発明は、締固め機を施工面に面的に振動ないしは衝撃を与えて接触しつつ移動させて、施工区域全域を締固める作業を複数回繰返すようにした盛土等の地盤締固め工法において、特に該当する施工位置の締固め程度を検出することにより、ほぼリアルタイムで施工の目標値を越えるように締固め機の作動を制御するようにした施工管理方法に関する。」(1頁右欄3?10行)

(1c)「前記牽引機1は第2図に示すように、無端軌道車であって、前記プレート式振動締固め機2に対して動力補給を行うためのジェネレータ3、駆動操作用のオペレータ室4を備え、このオペレータ室4内に演算制御部5および制御用操作パネル6が設けられている。またこの牽引機1には回転駆動軸に連繋してその走行位置を検出するためのロータリエンコーダ7が設けられている。」(3頁左下欄11?18行)

(1d)「前記演算制御部5はこの加速度計10および前記ロータリエンコーダ7からのデータを取り込み、現在施工している区画がどこであるか、および当該施工区画の締固め度合いを判定し、記録する作業と、標準施工データと当該施工区画における実施工データを操作パネル6に設けた表示部に表示させ、また最終締め固め完了時点で該当するレーンが規定の締固め程度に到達していない場合には再締固めの指示を行う等の処理を実行する。」(3頁右下欄6?14行)

(1e)「図において、演算制御部5は、前記ロータリエンコーダ7および加速度計10から得られたデータを処理するCPU本体12と、CPU本体12の入出力端に接続された第一、第二のICカード・リードライタ14.15と、各種キー16と、表示部17および主電源18メモリバックアップ用予備電源19を備えている。」(3頁右下欄17行?4頁左上欄3行)

(1f)「図においてCPU本体12はロータリエンコーダ7によって検出された該当するレーンの初期位置で加速度計10による測定を開始し、加速度計10によって得られたデータを元に現場密度の演算と締固め程度の達成度合いを演算し、表示部17のディスプレイ17aに表示するとともに、該当するレーンの標準施工データも平行して表示する・・・」(4頁右下欄17行?5頁左上欄4行)

以上の記載事項(1a)?(1f)から見て、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

「盛土を締固めるプレート式振動締固め機2と、該締固め機2に設けた加速度計10と、ロータリエンコーダ7と、加速度計10およびロータリエンコーダ7からのデータを取り込み、現在施工している区画がどこであるか判定し、加速度計10によって得られたデータを元に現場密度の演算と締固め程度の達成度合いを演算し、記録する演算制御部5とを備え、締固め機の作動を制御するようにした盛土等の地盤締固め工法における施工管理するシステム。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物2には、図面とともに、以下の記載がある。
(2a)「次に、ロール振動特性検出手段3について説明する。振動ローラによる路面の締固めが進むにつれて、路面がロール13(図2)に与える反力は、路面の締固め密度が大きくなるに従って大きくなる。したがって、路面の反力に対して相関関係を有するロール13の振動応答特性を検出すれば、路面の締固め度を定量的に把握することができる。
本実施形態では、このロール13の振動の応答特性をロール13の上下方向の加速度の値とし、図2に示すように、ロール13内に加速度センサ14を設置して検出している。これにより、締固めの進行に伴う路面からの反力の変化を加速度波形の乱れをもって評価できることになる。このロール13の上下方向の加速度における波形の乱れの程度とロール13が路面から受ける反力の値との相関性は極めて良好であることが実験で確認されており、非常に実用性の高いものである。
次に、本実施形態では、制御手段4をコントローラ15と波形処理プロセッサ16から構成している。波形処理プロセッサ16は、前記加速度センサ14が検出した加速度の波形の乱れから路面の締固め度指標値データを生成する。ここで締固め度指標値とは、路面の反力と相関するロール13の振動の応答特性のデータを演算処理して数値として表したものをいう。図4を基に、加速度センサ14を使用した場合の締固め度指標値データ生成のプロセスを説明する。図4(a),(b),(c)は、振動ローラRの前後進の繰り返しによる締固め進行状況の順に、すなわち路面の反力が小、中、大の状態を示しており、各上のグラフはロール13の上下方向の振動加速度の波形を、各下のグラフはそれらそれぞれの波形をフーリエ変換による周波数分解をした後の振動加速度の周波数特性を示している。図4(a)では加速度の波形は周波数S_(2)のみからなる正弦波形であり、路面の反力が大きくなるにしたがって、波形が乱れ、図4(b)では新たな周波数成分S_(4 ),S_(6) ,S_(8 )が加わり、図4(c)ではさらに新たな周波数成分S_(1) ,S_(3) ,S_(5 ),S_(7 )が加わることになる。今、周波数S_(2 )を基本周波数S_(n) とし、この基本周波数S_(n) よりも振動数の大きい周波数成分をS_(n+1) ,S_(n+2) ,…とすると、路面の締固め度指標値Xを求める式の一例として下記の式(1)を挙げることができる。
X=(S_(n+1) +S_(n+2) +…)/S_(n ) …式(1)
つまり、周波数S_(n+1) ,S_(n+2) ,…のスペクトル(周波数の振幅の大きさ)の合計値を、基本周波数S_(n) のスペクトル値で除した数値としたものである。」(段落【0012】?【0014】)

以上の記載事項(2a)から見て、刊行物2には、以下の発明が記載されているものと認められる。(以下、「刊行物2記載の発明」という。)
「ロール13に発生する振動の上下方向の加速度を検出する加速度センサ14を有し、加速度センサ14が検出した加速度の波形の乱れから路面の締固め度指標値データを生成する、即ちロール13の上下方向の振動加速度の波形をフーリエ変換による周波数分解し、基本周波数より大きい周波数成分の合計値を基本周波数のスペクトル値で除した数値を路面の締め固め度指標値Xとする制御手段」

(3)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物3には、図面とともに、以下の記載がある。
(3a)「車両などの移動体(以下、総称して車両という)を運行させる路面などの運行面(以下、総称して路面という)上の複数箇所に、当該位置の位置情報を伝達させる位置情報源を配設し、車両がこの位置情報源を通過することで、この位置情報源から路面上の当該位置の位置情報を車両で検知する車両位置検知装置において、
上記位置情報源として路面上に磁性体を配設する手段と、
この磁性体の配列により当該位置の位置情報を標記する手段と、
車両側に設けられる磁気変化を検知するための磁気センサとを備え、
上記位置情報源を上記車両が通過することによる磁気変化を上記磁気センサで検知し、当該位置の位置情報を検知することを特徴とする車両位置検知装置。」(実用新案登録請求の範囲)

4.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「加速度計10」が、本願発明の「振動加速度検出手段」に相当し、以下、「ロータリエンコーダ7」が「位置測定手段」に、「演算制御部5」が「演算手段」に、「盛土等の地盤締固め工法における施工管理するシステム」が「(盛立)転圧管理システム」にそれぞれ相当する。
また、刊行物1記載の発明の「盛土を締固めるプレート式振動締固め機2」と本願発明の「盛土を転圧する振動ローラ」は、「盛土を締固める振動締固め機」である点で共通している。
さらに、刊行物1記載の発明は、演算制御部5は、加速度計10によって得られたデータを元に現場密度の演算をしていることから、「加速度計10及び演算制御部5」が、本願発明の「地盤特性を検出する特性検出手段(地盤特性検出手段)」に相当する。

よって、両者は、
「盛土を締固める振動締固め機と、前記盛土の地盤特性を検出する特性検出手段と、前記地盤特性を検出すると同時に、前記振動締固め機の位置情報を取得する位置測定手段と、前記地盤特性と前記位置情報とを組み合わせて情報処理を行う演算手段とを備え、前記情報処理の結果に基づいて転圧管理を行う転圧管理システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
振動締固め機が、本願発明は盛土を転圧する振動ローラであるのに対し、刊行物1記載の発明は、盛土を締固めるプレート式振動締固め機である点。

(相違点2)
位置測定手段について、本願発明は、振動ローラの走行予定軌跡に沿って盛土に埋設配置され自己の位置情報を有する位置情報供給手段と、振動ローラに設けられ位置情報供給手段の有する位置情報を読み取る位置情報読み取り手段と、を備え、位置情報供給手段は、位置情報が記録された無線タグであり、位置情報読み取り手段は、無線タグに記録されている情報を読み取る無線タグリーダであるのに対し、刊行物1記載の発明は、ロータリエンコーダである点。

(相違点3)
地盤特性検出手段について、本願発明は、振動ローラに発生する振動加速度を検出する振動加速度検出手段を有し、振動加速度の周波数帯域を積分して得られた乱れ率に基づいて地盤特性を検出しており、また、地盤特性として、盛土の密度、剛性、沈下量、含水比、又は内部摩擦角のいずれかを検出しているのに対し、刊行物1記載の発明は、振動加速度検出手段を有し、現場密度の演算をしてはいるものの、地盤特性を検出する具体的方法は不明である点。

5.判断
相違点について検討する。
(相違点1について)
振動締固め機を振動ローラとすることは、例えば刊行物2にも開示されているように周知技術であり、この点を刊行物1記載の発明におけるプレート式振動締固め機の代わりに適用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2について)
上記刊行物3には、路面上の複数箇所に、位置情報源としての磁性体を配設し、車両側に磁気変化を検知するための磁気センサを備え、位置情報源を車両が通過することによる磁気変化を磁気センサで検知し、当該位置の位置情報を検知する車両位置検知装置が開示されている。一方、地中に埋設配置され、位置情報が記録された無線タグと、無線タグに記録されている情報を読み取る無線タグリーダからなる位置測定手段は、例えば、特開平3-292599号公報、特開2000-262号公報等に開示されているように、周知技術であり、刊行物1記載の発明における位置測定手段として、刊行物3記載の技術及び周知技術を適用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点3について)
本願発明と刊行物1記載の発明はいずれも盛土の締固め管理を行っている点で両者は共通しており、地盤の締固めの度合いを判断するために、刊行物1記載の発明に示された密度以外にも、剛性や沈下量、含水比、内部摩擦角を指標とすることは、これらの値が地盤の締固めの度合いと密接に関係していることを勘案すれば、当業者であれば当然認識することである。
一方、上記刊行物2には、ロール13に発生する振動の上下方向の加速度を検出する加速度センサ14を有し、加速度センサ14が検出した加速度の波形の乱れから路面の締固め度指標値データを生成する制御手段が開示されている。ここで、本願発明と刊行物2記載の技術は、いずれも振動応答特性の検出、即ち振動加速度の波形の乱れを周波数に基づいて検出して締固めの度合いを把握するものである点で共通しており、波形の乱れを検出する指標を算出する手法として、振動加速度の周波数帯域を積分する手法を選択することは、当業者が適宜決定する事項にすぎない。
よって、刊行物1記載の発明の地盤特性検出手段について、刊行物2記載の技術及び当業者が通常有する知識を勘案して、本願発明のような地盤特性の値を検出することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2乃至3の技術及び周知技術から予測することができる程度のことである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2乃至3の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-09 
結審通知日 2009-04-14 
審決日 2009-04-27 
出願番号 特願2003-25650(P2003-25650)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 苗村 康造郡山 順  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮崎 恭
草野 顕子
発明の名称 盛立転圧管理システム  
代理人 松倉 秀実  
代理人 遠山 勉  
代理人 遠山 勉  
代理人 遠山 勉  
代理人 松倉 秀実  
代理人 永田 豊  
代理人 永田 豊  
代理人 永田 豊  
代理人 松倉 秀実  

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