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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1198522
審判番号 不服2007-31298  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-20 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 特願2007-127658「定着ユニットおよび画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月 9日出願公開、特開2007-199747〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
本願は、平成16年9月30日(優先権主張平成16年7月12日)に出願した特願2004-285845号の一部を平成19年5月14日に新たな特許出願としたものであって、同年7月10日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月21日付けで明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたが、同年10月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月20日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。
さらに、平成20年3月21日付けで審査官により作成された前置報告書について、同年12月8日付けで審尋がなされたところ、審判請求人から平成21年1月13日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成19年11月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年11月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「 画像形成装置に備えられ、搬送されてくる記録媒体上に転写されたトナー画像を定着する定着ユニットにおいて、
トナー画像が転写された記録媒体を加熱定着する加熱ローラ及び当該加熱ローラに対向して設けられ記録媒体を前記加熱ローラ側へと押圧する加圧ローラを備え、
前記加熱ローラの長手方向両端は、当該加熱ローラの少なくとも一部を覆うユニットカバーに回動可能に支持されるとともに、
前記加圧ローラは、その長手方向両端が一対の支持部材に回動可能に軸支され、かつ全体が前記ユニットカバーに覆われることなく開放されており、
前記一対の支持部材は、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向上流側において前記ユニットカバーに回動可能に支持され、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向下流側において一端が前記ユニットカバーに係止された弾性体の他端が係止され、
前記加圧ローラは、前記弾性体の復元力により、前記加熱ローラ側へと付勢される
ことを特徴とする定着ユニット。」
から
「 画像形成装置に備えられ、搬送されてくる記録媒体上に転写されたトナー画像を定着する定着ユニットにおいて、
トナー画像が転写された記録媒体を加熱定着する加熱ローラ及び当該加熱ローラに対向して設けられ記録媒体を前記加熱ローラ側へと押圧する加圧ローラを備え、
前記加熱ローラの長手方向両端は、当該加熱ローラの少なくとも一部を覆うユニットカバーに回動可能に支持されるとともに、
前記加圧ローラは、その長手方向両端が一対の支持部材に回動可能に軸支され、かつ全体が前記ユニットカバーに覆われることなく前記画像形成装置の底面側に向けて開放されており、
前記一対の支持部材は、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向上流側において前記ユニットカバーに回動可能に支持され、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向下流側において一端が前記ユニットカバーに係止された弾性体の他端が係止され、
前記加圧ローラは、前記弾性体の復元力により、前記加熱ローラ側へと付勢される
ことを特徴とする定着ユニット。」
に補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「加圧ローラ」が「全体が前記ユニットカバーに覆われることなく開放されて」いる点に関して、「全体が前記ユニットカバーに覆われることなく前記画像形成装置の底面側に向けて開放されて」と限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
(刊行物1について)
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-287973号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

ア.「【請求項1】 ヒートローラと、このヒートローラに対し付勢手段で付勢されて押圧される加圧ローラとを有する定着手段を備えた画像形成装置において、 前記加圧ローラの軸線方向と平行な装置の面に開閉可能なカバーを設けるとともに、このカバーと前記加圧ローラとの間に、カバーを開いた際に前記付勢力に抗して加圧ローラをヒートローラから離間させる離間機構を設けたことを特徴とする画像形成装置。」

イ.「【0004】この発明の目的は、以上のような問題を解決し、定着手段に詰まった記録材を容易に取り除くことができる画像形成装置を提供することにある。」

ウ.「【0016】図2は、定着ユニット60と、前面カバー80と、離間機構70とを示す概略的な側面図、図3は定着ユニット60を示す斜視図、図4は定着ユニット60の分解斜視図である。これらの図に示すように、定着ユニット60は左右の一対のユニットフレーム63,63と、このフレーム63,63に軸受け部材61a、61a(図4参照)を介して回転可能に支持されたヒートローラ61と、前記フレーム63,63に対して軸受け部材62a、62a(図4参照)および加圧レバー64,64を介して回転可能かつ回動可能に支持された加圧ローラ62と、定着器カバー65とを有している。
【0017】図3,図4に示すように、ヒートローラ61は、その軸受け部材61aを介し、フレーム63の支持穴63aで支持されている。加圧ローラ62は、その軸受け部材62aが加圧レバー64の把持部64aで把持されている。加圧レバー64,64は、上記把持部64aで加圧ローラ62の両端を把持した状態で、フレーム63に設けられた軸63bにより回動可能に支持されている。図2に示すように、フレーム63と加圧レバー64との間には、付勢手段である引っ張りバネ66(図4参照)が設けられている。この引っ張りバネ66の張力によって、加圧レバー64は図2において軸63b回りに時計方向へ付勢されており、この付勢力によって加圧ローラ62がヒートローラ61に対して圧接されている。引っ張りバネ66による圧接力は非常に強く、1本の引っ張りバネ66で20Kg程度、2本で40Kg程度の圧接力が得られる。なお、図2,図4において、63cはフレーム63側のバネ掛け部、64bは加圧レバー64側のバネ掛け部である。加圧レバー64の一端には、後述すする離間機構70における第3リンク73と当接可能なピン64cが設けられている。」

エ.図1、図3として、




オ.図2、図4、図6として、




上記の事項をまとめると、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)

「左右の一対のユニットフレーム63,63と、このフレーム63,63に軸受け部材61a、61aを介して回転可能に支持されたヒートローラ61と、前記フレーム63,63に対して軸受け部材62a、62aおよび加圧レバー64,64を介して回転可能かつ回動可能に支持された加圧ローラ62と、定着器カバー65とを有し、
フレーム63と加圧レバー64との間には、付勢手段である引っ張りバネ66が設けられ、該引っ張りバネ66の張力によって、加圧レバー64は軸63b回りに付勢され、この付勢力によって加圧ローラ62がヒートローラ61に対して圧接されている、定着ユニット60。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
まず、刊行物1発明における「定着ユニット60」、「ヒートローラ61」、「加圧ローラ62」、「加圧レバー64,64」、「引っ張りバネ66」は、それぞれ、本願補正発明における「(画像形成装置に備えられ、搬送されてくる記録媒体上に転写されたトナー画像を定着する)定着ユニット」、「加熱ローラ」、「加圧ローラ」、「一対の支持部材」、「弾性体」に相当する。
また、刊行物1発明における「左右の一対のユニットフレーム63,63」は、「軸受け部材61a、61aを介して(ヒートローラ61を)回転可能に支持」するものであるから、刊行物1発明における「左右の一対のユニットフレーム63,63」及び「定着器カバー65」は、本願補正発明における「ユニットカバー」に相当する。
そして、刊行物1発明における「軸受け部材62a、62a」は、本願補正発明における「前記一対の支持部材は、・・・前記ユニットカバーに回動可能に支持され」る構成に相当し、刊行物1発明における「フレーム63と加圧レバー64との間には、付勢手段である引っ張りバネ66が設けられ、該引っ張りバネ66の張力によって、加圧レバー64は軸63b回りに付勢され、この付勢力によって加圧ローラ62がヒートローラ61に対して圧接されている」構成は、本願補正発明における「該前記加圧ローラは、前記弾性体の復元力により、前記加熱ローラ側へと付勢される」構成に相当する。
さらに、刊行物1発明における「軸受け部材62a、62aおよび加圧レバー64,64を介して回転可能かつ回動可能に支持された加圧ローラ62」(加圧ローラ)は、「その長手方向両端が一対の支持部材に回動可能に軸支され」るものであり、図面(上記摘記事項エ.オ.)を参照すれば、「定着器カバー65」に覆われていないから、「全体がユニットカバーに覆われていない」構成を有している。
したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「 画像形成装置に備えられ、搬送されてくる記録媒体上に転写されたトナー画像を定着する定着ユニットにおいて、
トナー画像が転写された記録媒体を加熱定着する加熱ローラ及び当該加熱ローラに対向して設けられ記録媒体を前記加熱ローラ側へと押圧する加圧ローラを備え、
前記加熱ローラの長手方向両端は、当該加熱ローラの少なくとも一部を覆うユニットカバーに回動可能に支持されるとともに、
前記加圧ローラは、その長手方向両端が一対の支持部材に回動可能に軸支され、かつ全体が前記ユニットカバーに覆われておらず、
前記一対の支持部材は、前記ユニットカバーに回動可能に支持され、一端が前記ユニットカバーに係止された弾性体の他端が係止され、
前記加圧ローラは、前記弾性体の復元力により、前記加熱ローラ側へと付勢される、定着ユニット。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]:加圧ローラに関して、本願補正発明においては、「全体が前記ユニットカバーに覆われることなく前記画像形成装置の底面側に向けて開放されて」いるのに対し、刊行物1発明においては、ユニットカバーに覆われていないものの、画像形成装置の底面側に向けて開放されている構成を有しない点。

[相違点2]:一対の支持部材の支持位置、係止位置に関して、本願補正発明においては、「前記一対の支持部材は、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向上流側において前記ユニットカバーに回動可能に支持され、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向下流側において一端が前記ユニットカバーに係止された弾性体の他端が係止され」るのに対し、刊行物1発明においては、記録媒体搬送方向が逆で、「前記一対の支持部材は、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向下流側において前記ユニットカバーに回動可能に支持され、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向上流側において一端が前記ユニットカバーに係止された弾性体の他端が係止され」る点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
まず、「画像形成装置の底面側に向けて開放されて」いるとの構成については、画像形成装置内の定着ユニットの設置位置、記録媒体の搬送経路、及び、ジャム処理のための開閉カバーの設置位置に依存することは、自明の事項である。
そして、画像形成装置内の定着ユニットの設置位置、記録媒体の搬送経路、ジャム処理のための開閉カバーの設置位置といった事項は、当業者が画像形成装置を設計する際に適宜決定できる事項である。
また、加圧ローラが「画像形成装置の底面側に向けて開放されて」いる構成も、原審の審査官が前置報告書に示した、特開平5-197302号公報、特開平7-72757号公報に示されるとおり、従来周知のものである。
したがって、加圧ローラが「画像形成装置の底面側に向けて開放されて」いるとの構成を採用する程度のことは、当業者が適宜為し得たことである。

(相違点2について)
相違点2に関して、請求人は、「また、上記本願の(b)の構成を備えることにより、ユニットカバーを小型化しても、引用文献1のように複雑な構成を採ることなく紙詰まりにも対処しやすくなります。
ここで、引用文献1のように、加圧ローラの回動軸よりも下流側に支持部材が回動可能の保持された場合、仮に加圧ローラの回転がしにくくなり加熱ローラに対する摩擦力が大きくなると加圧ローラの巻き込みによって加圧ローラの加熱ローラに対する押圧力が強くなり、紙詰まりがひどくなる恐れがあります。一方、本願発明のように支持部材が記録媒体搬送方向の上流側において回動可能に保持されるという本願特有の構成を備えることによって、加圧ローラが回転しにくくなったとしても加圧ローラが加熱ローラに対して押圧力を強めることも避けることができるという、引用文献1に比べて有利な効果を奏することができます。」(平成19年9月21日付け意見書)と主張しているとおり、相違点2に係る構成は、紙詰まりに対処しやすくすることを目的とするものである。
しかしながら、記録媒体搬送方向に対して、加圧ローラをどちらの方向に回動可能とするかは、開閉するカバーと定着ユニットとの位置関係と、紙詰まり処理のしやすさに基づいて決定されるべき事項であるから、当業者が適宜決定できる事項である。
また、「前記一対の支持部材は、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向下流側において前記ユニットカバーに回動可能に支持され、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向上流側において一端が前記ユニットカバーに係止された弾性体の他端が係止され」る構成も従来周知といえる。(必要ならば、原審の審査官が提示した、特開2003-140482号公報に加えて、特開平7-225528号公報、図5等、参照。)
してみると、上記相違点2は、当業者が適宜為し得たことである。

(本願補正発明が奏する効果に関して)
そして、請求人は、「加圧ローラが回転しにくくなったとしても加圧ローラが加熱ローラに対して押圧力を強めることも避けることができる」とも主張しているが、「加圧ローラが回転しにくくなった」場合には、「支持部材が記録媒体搬送方向の上流側において回動可能に保持される」構成の有無にかかわらず、紙詰まりが発生しやすくなるのであるから、格別有利な効果を有するものでもない。
したがって、上記相違点1及び2によって本願補正発明が奏する効果も、刊行物1に記載された事項から予測し得る程度のものであって、格別とはいえない。

(5)請求人の主張(平成19年11月20日付け審判請求書)
平成19年11月20日付け審判請求書の請求の理由において、請求人は、
「引用文献1には、審査官殿がご指摘のように加圧ローラ62の長手方向両端は、一対の加圧レバー64に回動可能に軸支されています。また、定着器カバー65、フレーム63,63がヒートローラ61の軸方向における一面、両端部を覆っています。
一方、審査官殿は、「そして、引用文献1に記載の発明では、加圧ローラ62は、その両端部がフレーム63、63に覆われているが、その他の部分は覆われておらず、開放されていると認められる。」とご認定されています。
しかしながら、引用文献1の図2および図5を見る限り、加圧ローラ62の前面カバー80側には、皿状のカバーが図示されており、加圧ローラ62の前面カバー80側が解放されているとの指摘については強い疑義があります。
定着器は、樹脂からなるトナーを溶融するため、一般的に200℃近い温度に昇温されます。そのため、ユーザが用紙のジャム処理のために同図5に示すように開閉カバー80を開けたとしても当業者であれば高温となった加圧ローラ62をユーザ側に露出させるとは考えられず、加圧ローラ62等に直接触れないように同図2や図5に示される皿状のカバーを当然設けると想定されます。
したがって、引用文献1においては、定着器の加圧ローラ側を開放すること自体を想定することが出来ない以上、加圧ローラ62が開放されているとは認められません。 」、及び、
「本願請求項1の発明と引用文献1とを対比すると、引用文献1には、上記したように本願発明の特徴である「加圧ローラが、その長手方向両端が一対の支持部材に回動可能に軸支され、かつ全体が前記ユニットカバーに覆われることなく画像形成装置の底面側に向けて開放されている」ことについて開示されているとは認められません。
また、引用文献1においては、加圧ローラ62側に皿状のカバーを配する以上、それを支えるためにフレーム63が加圧ローラ62まで覆う長さとなり、フレーム63の加熱ローラを覆う部分以外の部分を取り除くことが出来ません。すなわち、引用文献1は、ユニットカバーの加熱ローラを覆う部分以外を取り除くことができないという阻害要因を有しています。」(下線は、当審にて付与した。)と主張している。
上記主張について、検討する。
まず、上記(4)で検討したとおり、刊行物1発明において、「定着器カバー65」は、図面の記載から明らかなとおり、「加圧ローラ62」を覆っていないことから、「前記加圧ローラは、・・・全体が前記ユニットカバーに覆われておらず」で、本願補正発明と一致する。
そして、加圧ローラを覆う部材(皿状のカバー)を設けるか否か、すなわち、加圧ローラが覆われているか、それとも開放されているかは、用紙のジャム処理のための開閉カバーと、定着ユニットとの位置関係にも依存し、加圧ローラがジャム処理時にユーザの手の触れない位置にあるのであれば、加圧ローラを覆う部材は不要であることは自明の事項である。
また、前述のとおり、前記特開平5-197302号公報、前記特開平7-72757号公報などにも、加圧ローラの下部を覆う部材がない構成が開示されていることからも、加圧ローラを覆う部材を設けるか否かは、開閉カバーと定着ユニットとの位置関係も含めて、当業者が適宜決定できる事項である。
さらに、刊行物1(引用文献1)に関して、「ユニットカバーの加熱ローラを覆う部分以外を取り除くことができない」とも主張するが、刊行物1の図4,図7には、皿状のカバーは何ら記載されておらず、皿状のカバーがなくとも、「定着器カバー65」と「左右の一対のユニットフレーム63」とでユニットを構成可能であることは明らかであるから、この主張は当を得たものとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(6)まとめ
以上のように、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成19年11月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成19年9月21日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであり、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 画像形成装置に備えられ、搬送されてくる記録媒体上に転写されたトナー画像を定着する定着ユニットにおいて、
トナー画像が転写された記録媒体を加熱定着する加熱ローラ及び当該加熱ローラに対向して設けられ記録媒体を前記加熱ローラ側へと押圧する加圧ローラを備え、
前記加熱ローラの長手方向両端は、当該加熱ローラの少なくとも一部を覆うユニットカバーに回動可能に支持されるとともに、
前記加圧ローラは、その長手方向両端が一対の支持部材に回動可能に軸支され、かつ全体が前記ユニットカバーに覆われることなく開放されており、
前記一対の支持部材は、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向上流側において前記ユニットカバーに回動可能に支持され、前記加圧ローラの回動軸よりも記録媒体搬送方向下流側において一端が前記ユニットカバーに係止された弾性体の他端が係止され、
前記加圧ローラは、前記弾性体の復元力により、前記加熱ローラ側へと付勢される
ことを特徴とする定着ユニット。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記第2.2.(1)ア.?オ.で示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記第2.2.で検討した本願補正発明から、「加圧ローラ」が「全体が前記ユニットカバーに覆われることなく前記画像形成装置の底面側に向けて開放されて」いる点のうち、「前記画像形成装置の底面側に向けて」を削除したものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-25 
結審通知日 2009-04-07 
審決日 2009-04-20 
出願番号 特願2007-127658(P2007-127658)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 勝見宮崎 恭  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 大森 伸一
山下 喜代治
発明の名称 定着ユニットおよび画像形成装置  

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