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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16G
管理番号 1198615
審判番号 不服2008-17203  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-04 
確定日 2009-06-11 
事件の表示 特願2006-302021「シールチェーン」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月22日出願公開、特開2008-116014〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯の概要
本願は、平成18年(2006年)11月7日の出願であって、平成20年6月9日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対して、請求人より平成20年7月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書、特許請求の範囲及び図面について手続補正がなされたものである。

2.平成20年7月4日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年7月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本願補正発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
一対の外リンクプレートのピン孔にピンの両端部を嵌入固定した外リンクと、ローラを遊嵌したブシュの両端部を一対の内リンクプレートのブシュ孔から突出させて嵌入固定した内リンクとが、前記ブシュに遊嵌させたピンにより連結されているとともに、前記ピンと同軸的に配置した弾性リングと該弾性リングの外側に配置して前記外リンクプレートの対向面に圧接させた鋼製シールリングとで構成されるシール機構が、前記外リンクプレートと内リンクプレートとの対向面の間に配置されているシールチェーンにおいて、
前記鋼製シールリングが、前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて縮径する断面直線状で環状の傾斜内周面と前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて拡径する断面直線状で環状の傾斜外周面とを備え、
前記弾性リングが、前記内リンクプレートから突出したブシュの両端部に形成させて前記鋼製シールリングの傾斜内周面にほぼ平行な面を有する断面凹状で環状の傾斜外周端面と前記環状の鋼製シールリングの傾斜内周面との間に保持されているとともに、
前記内リンクプレートが外リンクプレートに接近する際につぶれる弾性リングの断面変形量が、前記内リンクプレートが外リンクプレートに接近する移動量より小さくなっていることを特徴とするシールチェーン。」
と補正された。(なお、下線は、当審において補正箇所の対比の便のために付与したものである。)

上記特許請求の範囲の請求項1に係る補正は、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載に基づき、「鋼製シールリング」について「前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて縮径する断面直線状で環状の傾斜内周面と前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて拡径する断面直線状で環状の傾斜外周面とを備え、」(下線部)と構成を限定するとともに、「弾性リング」について「前記内リンクプレートから突出したブシュの両端部に形成させて前記鋼製シールリングの傾斜内周面にほぼ平行な面を有する断面凹状で環状の傾斜外周端面と前記環状の鋼製シールリングの傾斜内周面との間に保持されている」(下線部)と構成を限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物の記載事項
<刊行物1>
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平5-22016号(実開平6-76218号)のCD-ROM(以下、「刊行物1」という。)には、「ローラチェーン」に関して、下記の事項ア及びイが図面(特に、図4参照)とともに記載されている。
ア;「【従来の技術】
この種高荷重用のローラチェーンは、図3の(イ)(ロ)に示す如く、一対の内側リンクプレート1と一対の外側リンクプレート2の各端部同士を順次ピン3にて連結し、該各ピン3の外周に、外側リンクプレート2の間隙に対応するブッシュ4を、内側リンクプレート1のピン孔を貫通させて嵌設すると共に、該ブッシュ4の外周に、内側リンクプレート1の間隔に対応するローラ5を設け、且つ上記ピン3に、一端から内部を通り外周面に達する給油路6を設けて、ピン3とブッシュ4との間の摺動部に、グリース等の潤滑油が供給される潤滑部8を形成し、更に、上記内側リンクプレート1と外側リンクプレート2との間で上記ブッシュ4の端部外周にシール7を装着し、上記ピン3とブッシュ4との間の潤滑部8からの潤滑油の漏れが防止されるようにしてある。3aはピン3の一端側に延長形成したバケット等の取付部を示す。
上記シール7は、図4に拡大して示す如く、内周面をテーパ面9aとしたシールリング9と、該シールリング9のテーパ面9aに当接させるようにしたOリング10とからなり、上記Oリング10がブッシュ4の端部外周縁に形成したテーパ面4aに、又、上記シールリング9の一側面9bが外側リンクプレート2の内側面にそれぞれ当接するように配置した構成としてある。」(第4頁7行?24行;段落【0002】及び【0003】参照)

イ;刊行物1の図4からみて、シールリング9の上面は内側リンクプレート1側から外側リンクプレート2側に向けて拡径するテーパ面として形成されていることが見てとれるものである。

刊行物1に記載された上記記載事項ア及びイからみて、刊行物1には下記の発明が記載されているものと認めることができるものである。

【刊行物1に記載された発明】
「一対の外側リンクプレート2のピン孔にピン3の両端部を連結した外リンクと、ローラ5を遊嵌したブッシュ4の両端部を両端部を一対の内側リンクプレート1のピン孔を貫通させて嵌設した内リンクとが、前記ブッシュ4に遊嵌させたピン3により連結されているとともに、前記ピン3と同軸的に配置した(図4参照)Oリング10と該Oリング10の外側に配置して前記外側リンクプレート2の対向面に当接させたシールリング9とで構成されるシール7が、前記外側リンクプレート2と内側リンクプレート1との対向面の間に配置されているローラチェンにおいて、
前記シールリング9が、前記内側リンクプレート1側から外側リンクプレート2側に向けて縮径する環状のテーパ面9a前記内側リンクプレート1側から外側リンクプレート2側に向けて拡径する環状のテーパ面(図4参照)とを備え、
前記Oリング10が、前記内側リンクプレート1から突出したブッシュ4の端部外周縁に形成させて前記シールリング9のテーパ面9aにほぼ平行な環状のテーパ面4aと前記環状のシールリング9のテーパ面9aとの間に保持されている、ローラチェーン。」

(3)対比・判断
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、各部材の奏する機能からみて、刊行物1に記載された発明の「ローラチェーン」は本願補正発明の「シールチェーン」に相当し、以下同様に、「一対の内側リンクプレート1」は「一対の内リンクプレート」に、「一対の外側リンクプレート2」は「一対の外リンクプレート」に、「ピン3」は「ピン」に、「ブッシュ4」は「ブシュ」に、「ローラ5」は「ローラ」に、「シール7」は「シール機構」に、「シールリング9」は材料は不明ではあるが「シールリング」に、「Oリング10」は「弾性リング」に相当するものと認めることができるものである。
また、刊行物1の図4の記載を参酌すれば、刊行物1に記載された発明の「シールリング9」の内周面は、内側リンクプレート1側から外側リンクプレート2側に向けて縮径する環状のテーパ面9a(傾斜内周面)とされており、「シールリング9」の外周面は、内側リンクプレート1側から外側リンクプレート2側に向けて拡径する環状のテーパ面(傾斜外周面)とされるものであり、さらに、ブッシュ4の端部外周縁に形成される「テーパ面4a」は、上記テーパ面9aとほぼ平行な環状のテーパ面(傾斜外周端面)に形成されているものと認めることができるものである。

したがって、本願補正発明の用語を使用すると、両者は、
「一対の外リンクプレートのピン孔にピンの両端部を嵌入固定した外リンクと、ローラを遊嵌したブシュの両端部を一対の内リンクプレートのブシュ孔から突出させて嵌入固定した内リンクとが、前記ブシュに遊嵌させたピンにより連結されているとともに、前記ピンと同軸的に配置した弾性リングと該弾性リングの外側に配置して前記外リンクプレートの対向面に圧接させたシールリングとで構成されるシール機構が、前記外リンクプレートと内リンクプレートとの対向面の間に配置されているシールチェーンにおいて、
前記シールリングが、前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて縮径す環状の傾斜内周面と前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて拡径する環状の傾斜外周面とを備え、
前記弾性リングが、前記内リンクプレートから突出したブシュの両端部に形成させて前記シールリングの傾斜内周面にほぼ平行な環状の傾斜外周端面と前記環状のシールリングの傾斜内周面との間に保持されている、シールチェーン。」
で一致しており、下記の点で相違している。

相違点1;本願補正発明では、「シールリング」が「鋼製シールリング」であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、「シールリング9」がどのような材料で形成されているか不明である点。

相違点2;本願補正発明では、「鋼製シールリング」が、「前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて縮径する断面直線状で環状の傾斜内周面と前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて拡径する断面直線状で環状の傾斜外周面とを備え」、また、「ブシュの両端部」が「前記鋼製シールリングの傾斜内周面にほぼ平行な面を有する断面凹状で環状の傾斜外周端面」に形成されているものであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、「シールリング9」はその内周面と外周面は共にテーパ面として形成されているものであるが、本願補正発明のように「断面直線状」であるかどうか不明であり、また、「ブッシュ4」の「端部外周縁」はテーパ面4aに形成されるものであるが、本願補正発明のように「断面凹状」であるかどうか不明である点。

相違点3;本願補正発明では、「前記内リンクプレートが外リンクプレートに接近する際につぶれる弾性リングの断面変形量が、前記内リンクプレートが外リンクプレートに接近する移動量より小さくなっている」ものであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、内側リンクプレート1が外側リンクプレート2に接近する際につぶれるOリング10の断面変形量について、本願補正発明のように「内側リンクプレート1が外側リンクプレート2に接近する移動量より小さくなっている」ものであるか不明である点。

上記相違点1ないし相違点3について検討した結果は、次のとおりである。
《相違点1について》
本願補正発明において「シールリング」を「鋼製シールリング」としたことの技術的意義について検討しても、弾性リングをつぶすことができると共に、外リンクプレートの対向面に圧接させる機能を有する材料として「シールリング」に普通に採用されている所望の「鋼材」を選択したにすぎないものであって、格別な技術的意義を認めることができないものである。
一方、刊行物1に記載された発明でも、「シールリング9」の材質としては、Oリング10をつぶすことができると共に、外側リンクプレート2の対向面に当接(圧接)させることができる材料であれば格別限定されるものではなく、上記周知の所望の「鋼材」を採用することを妨げる格別の事情は認めることができないものである。
してみると、当業者であれば、刊行物1に記載された発明の「シールリング9」を本願出願前「シールリング」の材料として普通に採用されている所望の「鋼材」により形成して、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、適宜採用することができる程度の事項であって、格別創意を要することではない。

《相違点2について》
本願補正発明において鋼製シールリングの傾斜内周面及び傾斜外周面を断面直線状としたことの技術的意義について検討しても、傾斜内周面及び傾斜外周面をテーパ面として普通に知られている「断面直線状」としたにすぎないものであって、格別な技術的意義を認めることができないものである。また、ブシュの両端部に形成する傾斜外周端面を「断面凹状」としたことの技術的意義について検討しても、「断面凹状」とした形状が本願の図3等から見てとることができるにとどまるものであって、格別な技術的意義を認めることができないものである。
一方、刊行物1に記載された発明においても、「シールリング9」は、内周面及び外周面のうち、内周面が所望の「テーパ面9a」とされれば十分なものであって、内周面及び外周面の具体的な形状については格別限定されるものではなく、また、ブッシュ4の両端部外周縁に形成する「テーパ面4a」もOリング10との当接面が「テーパ面」とされていれば十分なものであって、刊行物1の図4には、本願補正発明でいうところの「断面凹状」のテーパ面4aを見てとることができるものであるから、該「テーパ面4a」を所望の「断面凹状」に形成することも、当業者であれば適宜採用することができる程度の設計的事項にすぎないものである。
してみれば、刊行物1に記載された上記記載事項ア、イ及び図4を知り得た当業者であれば、刊行物1に記載された発明の「シールリング9」の内周面に形成する「テーパ面9a」として、鋼材の成形性等を考慮して本願出願前普通に採用されている「直線状のテーパ面」形状を採用すると共に、「シールリング9」の外周面についても同様の「直線状のテーパ面」形状を採用し、さらに、ブッシュ4の両端部外周縁部に形成する「テーパ面4a」については、所望の「断面凹状のテーパ面」(刊行物1の図4参照;テーパ面4a部分が断面凹状とされていることが見てとれる。)として、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは必要に応じて容易に想到することができる程度の事項であって、格別創意を要することではない。

《相違点3について》
本願補正発明において、「前記内リンクプレートが外リンクプレートに接近する際につぶれる弾性リングの断面変形量が、前記内リンクプレートが外リンクプレートに接近する移動量より小さくなっている」との技術的事項は、「弾性リングが、内リンクプレートから突出したブシュの両端部に形成させて鋼製シールリングの傾斜内周面にほぼ平行な面を有する断面凹状で環状の傾斜外周端面と環状の鋼製シールリングの傾斜内周面との間に保持されている」ことから生じる自明の技術的事項にすぎないものである。
そして、刊行物1に記載された発明でも、「Oリング10」は、内側リンクプレート1から突出したブッシュ4の両端外周縁に形成されるシールリング9のテーパ面9aにほぼ平行な面を有する「テーパ面4a」と前記シールリング9の「テーパ面9a」との間に保持されているものであるから、本願補正発明と同様に、「内側リンクプレート1が外側リンクプレート2に接近する際につぶれるOリング10の断面変形量が、前記内側リンクプレート1が外側リンクプレート2に接近する移動量より小さくなっている」ことは、そのOリング10の配置構成から生じる自明の技術的事項にすぎないものである。
してみると、相違点3は実質的な相違点とは認めることができないものである。

また、本願補正発明の効果について検討しても、刊行物1に記載された発明及び本願出願前周知の事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

ところで、請求人は、審判請求書中において、
「引用文献1(上記刊行物1)に記載された発明では、図4を参照する限り、「シールリング9」の「テーパ面9a」を「断面湾曲状」とすることで「Oリング(弾性リング)10」の抜け止めを行いつつ「ブッシュ4の端部外周縁に形成したテーパ面4a」とほぼ平行な形状としているものと思われるが、このような「弯曲断面形状」の「テーパ面9a」は形状が複雑となり、「シールリング」を「鋼製シールリング」とした場合は特に製造コストが高くなるとともに、精度が低くなりシール性能が劣るという問題がある。
これに対し、本願請求項1に係る発明(本願補正発明)は、弾性リングの抜け止めは「ブシュの両端部」の「環状の傾斜外周面」を「断面凹状」とすることで機能させ、「シールリンク」が上記『発明特定事項1』を備えることにより形状を簡素化され、「鋼製シールリング」であっても安価で高精度に製造可能であり、シール性能を向上させることができるという格別の効果を奏するものである。
そして、一般的には平成20年3月5日付け拒絶理由通知書における拒絶理由で付記されたように「シールリングを鋼製とした点は、当業者が適宜なし得ること」ではあるが、引用文献1に記載も示唆もない本願の『発明特定事項1』のように「シールリング」の「傾斜内周面」を「断面直線状」という形状とすることと「鋼製」とすることの相乗効果として前述のような効果が顕著に発揮されるものであって、一般的な「シールリングを鋼製」とする着想のみで『発明特定事項1』の「鋼製シールリング」が適宜なし得るものではない。」(平成20年7月4日付け審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】の「[1]本願発明と引用文献に記載された発明の対比・検討」の「(2)本願発明の進歩性について」の項参照)旨主張している。

しかしながら、刊行物1に記載された発明でも、「シールリング9」の材質については、格別限定されるものではなく、本願出願前シールリングに採用されている各種の材質(鋼材を含む)を採用することができるものであって、「鋼製シールリング」を選択することが当業者であれば適宜採用することができる程度の事項であることは、上記《相違点1について》の項で検討したとおりである。
また、「シールリング9」の環状の内周面に形成する「テーパ面9a」は「テーパ面」であれば十分なものであって、その「テーパ面9a」として本願出願前普通に知られている「断面直線状のテーパ面」を採用することを阻害する格別の事情も認めることができないものである。
そうすると、「テーパ面9a」として本願出願前普通に知られている「断面直線状のテーパ面」を採用することが、当業者であれば格別創意を要することでないことは、《相違点2について》の項で検討したとおりである。
さらに、本願補正発明の効果について検討しても、当業者であれば予測することができる程度のものであって、請求人が主張するような相乗的な効果は認めることができないものである。
よって、請求人の上記審判請求書中での主張は採用することができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明(本件補正後の請求項1に係る発明)が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成20年7月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年3月19日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
一対の外リンクプレートのピン孔にピンの両端部を嵌入固定した外リンクと、ローラを遊嵌したブシュの両端部を一対の内リンクプレートのブシュ孔から突出させて嵌入固定した内リンクとが、前記ブシュに遊嵌させたピンにより連結されているとともに、前記ピンと同軸的に配置した弾性リングと該弾性リングの外側に配置して前記外リンクプレートの対向面に圧接させた鋼製シールリングとで構成されるシール機構が、前記外リンクプレートと内リンクプレートとの対向面の間に配置されているシールチェーンにおいて、
前記鋼製シールリングが、前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて縮径する環状の傾斜内周面と前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて拡径する環状の傾斜外周面とを備え、
前記弾性リングが、前記内リンクプレートから突出したブシュの両端部に形成させて前記鋼製シールリングの傾斜内周面にほぼ平行な環状の傾斜外周端面と前記環状の鋼製シールリングの傾斜内周面との間に保持されているとともに、
前記内リンクプレートが外リンクプレートに接近する際につぶれる弾性リングの断面変形量が、前記内リンクプレートが外リンクプレートに接近する移動量より小さくなっていることを特徴とするシールチェーン。」

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平5-22016号(実開平6-76218号)のCD-ROM(上記刊行物1)の記載事項は、前記「2.(2)引用刊行物の記載事項」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の構成から「鋼製シールリング」について「前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて縮径する断面直線状で環状の傾斜内周面と前記内リンクプレート側から外リンクプレート側に向けて拡径する断面直線状で環状の傾斜外周面とを備え、」(下線部)との構成を省くとともに、「弾性リング」について「前記内リンクプレートから突出したブシュの両端部に形成させて前記鋼製シールリングの傾斜内周面にほぼ平行な面を有する断面凹状で環状の傾斜外周端面と前記環状の鋼製シールリングの傾斜内周面との間に保持されている」(下線部)との構成を省いたものに実質的に相当するものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに構成を限定したものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も実質的に同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、刊行物1に記載された発明及び本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-08 
結審通知日 2009-04-14 
審決日 2009-04-27 
出願番号 特願2006-302021(P2006-302021)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16G)
P 1 8・ 121- Z (F16G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 常盤 務
藤村 聖子
発明の名称 シールチェーン  
代理人 津野 孝  
代理人 河合 厚夫  
代理人 藤本 信男  
代理人 三宅 正之  

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