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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1198673
審判番号 不服2007-8307  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-22 
確定日 2009-06-08 
事件の表示 特願2001-328976「錠剤の供給整列搬送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 8日出願公開、特開2003-128233〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成13年10月26日の出願であって、平成18年10月11日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月5日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年2月16日付けで拒絶査定がなされ、同年3月22日に同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年4月11日付けの手続補正書によって明細書を補正する手続補正がなされ、その後、平成20年12月24日付けで当審において書面による審尋がなされたものである。

第2.平成19年4月11日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成19年4月11日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正の内容
平成19年4月11日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成18年12月5日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(a)に示す請求項1ないし6の記載を、下記の(b)に示す請求項1ないし5と補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
小物物品を搬送しながら整列させる整列用搬送路と、
前記整列用搬送路の下流側に設けられた整列供給口を通過できずに排出された小物物品を受け取って前記整列用搬送路の上流側に戻す還元用搬送路とを、備えた小物物品の供給整列搬送装置において、
前記還元用搬送路を中央に挟み、その両側に前記整列用搬送路を対称に配設し、
前記両側の整列用搬送路は、夫々、ベルトにより小物物品を搬送し、搬送方向に対して斜めに遮るように形成された側壁により当該小物物品を前記還元用搬送路に隣接して内側の端縁に沿って整列させ、
前記排出される小物物品は、前記両側の整列用搬送路の夫々内側の端縁から落下して排出され、該整列用搬送路の間に形成された排出空間を経て、前記還元用搬送路に受け取られることを特徴とする小物物品の供給整列搬送装置。
【請求項2】
前記整列用搬送路は、上流側から下流側にかけて略水平に設けたこと特徴とする請求項1に記載の小物物品の供給整列搬送装置。
【請求項3】
前記整列用搬送路は、小物物品の上面を覆って小物物品の姿勢安定用の頂壁を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の小物物品の供給整列搬送装置。
【請求項4】
前記整列用搬送路は、後段に速度差をもたせて小物物品を受け渡すことを特徴とする請求項1?請求項3のいずれか1つに記載の小物物品の供給整列搬送装置。
【請求項5】
前記還元用搬送路は、前記整列用搬送路から後段への小物物品受け渡し部分において該整列用搬送路より下側に段差が付くように上流側から下流側に上昇傾斜させて配設したことを特徴とする請求項1?請求項4のいずれか1つに記載の小物物品の供給整列搬送装置。
【請求項6】
前記還元用搬送路は、ベルト上に搬送する小物物品のすべり止めを設けたことを特徴とする請求項1?請求項5のいずれか1つに記載の小物物品の供給整列搬送装置。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
錠剤を搬送しながら整列させる整列用搬送路と、
前記整列用搬送路の下流側に設けられた整列供給口を通過できずに排出された錠剤を受け取って前記整列用搬送路の上流側に戻す還元用搬送路とを、備えた錠剤の供給整列搬送装置において、
前記還元用搬送路を中央に挟み、その両側に隣接して前記整列用搬送路を対称に配設し、
前記両側の整列用搬送路は、夫々、ベルトにより錠剤を搬送し、搬送方向に対して斜めに遮るように形成された側壁により、当該錠剤を前記還元用搬送路側に寄せ、余剰の錠剤を該還元用搬送路に排出しながら、該錠剤を該整列用搬送路の内側の端縁に沿って前後の錠剤と接触した状態で1列に整列させて搬送し、その後、各錠剤を、所定の一定間隔で搬送方向に整列させるように、後段に速度差をもたせて受け渡し、
前記排出される錠剤は、前記両側の整列用搬送路の夫々内側の端縁から落下して排出され、該整列用搬送路の間に形成された排出空間を経て、前記還元用搬送路に受け取られることを特徴とする錠剤の供給整列搬送装置。
【請求項2】
前記整列用搬送路は、上流側から下流側にかけて略水平に設けたこと特徴とする請求項1に記載の錠剤の供給整列搬送装置。
【請求項3】
前記整列用搬送路は、錠剤の上面を覆って錠剤の姿勢安定用の頂壁を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の錠剤の供給整列搬送装置。
【請求項4】
前記還元用搬送路は、前記整列用搬送路から後段への錠剤受け渡し部分において該整列用搬送路より下側に段差が付くように上流側から下流側に上昇傾斜させて配設したことを特徴とする請求項1?請求項3のいずれか1つに記載の錠剤の供給整列搬送装置。
【請求項5】
前記還元用搬送路は、ベルト上に搬送する錠剤のすべり止めを設けたことを特徴とする請求項1?請求項4のいずれか1つに記載の錠剤の供給整列搬送装置。」(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)

2.本件補正の目的
特許請求の範囲に関する本件補正は、本件補正前の請求項4を削除して請求項の数を6から5に減少させるとともに、本件補正後の請求項1に関しては、本件補正前の(請求項1を引用していた)請求項4の内容を付加した上に、さらに発明特定事項を追加したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.本件補正の適否
上記2.で検討したように、請求項1についての本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、単に「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。

3-1.原査定の拒絶理由に引用された引用文献
3-1-1.特開平8-258959号公報(以下、「引用文献1」という。)
(1)引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0015】
【実施例】以下に本発明の具体的な実施例について図1?3に基づいて説明する。ここでは、前記整列搬送装置を錠剤の搬送に用いた一例について示した。図1(a),(b) は錠剤の外観検査装置等に錠剤を整列させ供給するための整列搬送装置全体の構成図で、図1(a) は整列搬送装置の平面図で、図1(b) は側面図である。
【0016】まず、整列用搬送路および還元用搬送路を構成する整列搬送装置を説明する。設置面であるベース上に直進搬送用の振動発生体4を設け、その振動発生体4の上面に振動板16を介して搬送路台2を搭載する。同様にして搬送路台2の搬送方向の下流側にも直進搬送用の振動発生体5上に振動板17を介した搬送路台3を設け、両搬送路台2,3の搬送路面が面一に揃うように位置合わせし、且つ、上流側から下流側に向けて下向きに所定角度に傾斜させ配設する。
【0017】一方、錠剤を蓄え、必要に応じて錠剤を下方に放出するホッパ1を搬送路台2の上方に配設する。また、前記搬送路台2および搬送路台3の搬送方向に直角な方向の中央部に還元用搬送路6を配設し、この還元用搬送路6の両側にそれぞれ搬送路台2に対しては整列用搬送路7a,7b が、搬送路台3に対しては整列用搬送路7c,7d を形成している。
【0018】ここにおいて、整列用搬送路7a,7b,7c,7d の搬送方向に直角方向の路面形状は還元用搬送路6側に向けて下向きに傾斜して形成している。そのため、整列用搬送路7a,7b,7c,7d で搬送される錠剤は、自重と振動により還元用搬送路6側の側壁8aおよび側壁8bに寄せられながら搬送される。次に、この整列搬送装置による錠剤の搬送方法について説明する。
【0019】まず、ホッパ1の下部から単位時間当たり一定量の錠材が連続して整列用搬送路7aおよび7bの入口部に供給される。ここでは一例として、片側の整列用搬送路7aを例に取り説明することにする。また、図2は図1(b) における整列用搬送路上流部のA-A断面である。整列用搬送路7aに供給された錠剤19は、図2に示すように路面が還元用搬送路6側を下側に傾斜しているために側壁8a側に寄せられ、その結果、錠剤19は側壁8a付近に寄せられる。
【0020】そして、整列用搬送路7a上の錠剤19は直進搬送用の振動発生体4によって振動しつつ、整列用搬送路7aの下流側で整列用搬送路7cに続く出口部へ搬送される。整列用搬送路7aの出口部に搬送された錠剤は、整列用搬送路7aから上面を面一に構成して位置合わせされた整列用搬送路7cに円滑に搬送される。次に、整列用搬送路7cに搬送された錠剤は、整列用搬送路7cの路面上方に設けられた頂壁10により側壁8a側の1列の錠剤に対して錠剤の上下の重なりが解除され、錠剤単体の高さに整列させられる。例えば高さより直径の方が大きい円柱状の錠剤であれば、錠剤の上面および下面を整列用搬送路に対してほぼ水平に整列させる。
【0021】さらに整列された錠剤を搬送し、整列用搬送路7cの中間部に設けられた排出部9aにより、側壁8aに接する錠剤以外を排出する。この排出方法を図3を用いて説明する。図3は図1(b) のB-B断面を示した図で、図中の錠剤12は整列用部材10により整列された錠剤で、錠剤13は錠剤12に隣接した位置で搬送されてきた錠剤である。整列用搬送路7bの幅はこの排出部9aにおいて錠剤1つ分の長さに縮小されている。これら排出部9aに搬送された錠剤は、整列用搬送路7cの側壁8aに接している錠剤12はそのまま搬送されるが、接していない錠剤13は整列できなかった錠剤として、整列用搬送路7cの排出部9aから落下させる。これにより、側壁8aに接している錠剤12のみ整列用搬送路7cの出口部へ搬送することができる。
【0022】このとき落下した錠剤13は、傾斜シュート板11の上面を滑りながら還元用搬送路6に導かれ、戻し搬送ベルト14上に載せられる。この戻し搬送ベルト14は搬送路台3側から搬送路台2側に搬送するようにモータ20により駆動されており、戻し搬送ベルト14に載せられた錠剤13は、整列用搬送路7a,7b の入口部に戻される。ここで、還元用搬送路の入口部は整列用搬送路の下流側に、また還元用搬送路の出口部は整列用搬送路の上流側に位置している。」(段落【0015】ないし【0022】)

(2)したがって、引用文献1には、次のような発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「錠剤12、13、19を搬送しながら整列させる整列用搬送路7a、7b、7c、7dと、
前記整列用搬送路7a、7b、7c、7dの下流側に設けられた出口部を通過できずに排出された錠剤12、13、19を受け取って前記整列用搬送路7a、7b、7c、7dの上流側に戻す還元用搬送路6とを、備えた錠剤12、13、19の整列搬送装置において、
前記還元用搬送路6を中央に挟み、その両側に隣接して前記整列用搬送路7a、7b、7c、7dを対称に配設し、
前記両側の整列用搬送路7a、7b、7c、7dは、夫々、振動する搬送路台2、3により錠剤12、13、19を搬送し、搬送方向に直角方向の路面形状が還元用搬送路6側に向けて下向きに傾斜して形成された前記整列用搬送路7a、7b、7c、7d及び側壁8a、8bにより、当該錠剤12、13、19を前記還元用搬送路6側に寄せ、余剰の錠剤12、13、19を該還元用搬送路6に排出しながら、該錠剤12、13、19を該整列用搬送路7a、7b、7c、7dの内側の端縁に沿って前後の錠剤12、13、19と接触した状態で1列に整列させて搬送し、
前記排出される錠剤12、13、19は、前記両側の整列用搬送路7c、7dの途中の排出部9a、9bから落下して排出され、該整列用搬送路7a、7b、7c、7dの間に形成された傾斜シュート板11の上部空間を経て、前記還元用搬送路6に受け取られる錠剤12、13、19の供給整列搬送装置。」

3-1-2.特開昭62-218329号公報(以下、「引用文献2」という。)
(1)引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「第3図は本発明の説明のための見取り図である。11は上が開放され、底に貯溜コンベア12が上に昇るように走行する貯溜ホッパで該貯溜ホッパ11の底を走行する貯溜コンベア12は図示しない駆動源に接続される。貯溜コンベア12の終端13は貯溜ホッパ11の上面よりも高位にあり、該貯溜コンベア12の終端13はローラ14に巻掛けられている。貯溜ホッパ11のローラ14側の開口からローラ14の上に至る間の貯溜コンベア12の両外側に被供給部品が脱落するのを防ぐ壁を付けることは本発明の趣旨を変えるものではない。該ローラ14の下方に移載コンベア15が設けられ、図示しない駆動源により回転される。該移載コンベア15の両外側に被供給部品の脱落を防止するための壁を設置することは本発明の趣旨を変えるものではない。該移載コンベア15の始端16はローラ14の外側にあり貯溜コンベア12の全巾の下方に儲られ(審決注:「設けられ」の誤記と認める。)貯溜コンベア12の内側に向かって昇るように傾斜している。移載コンベア15の終端17の下方には図示しない駆動源によって駆動される整揃コンベア18が設けられ、該整揃コンベア18の始端19は移載コンベア15の外側に位置している。該整揃コンベア18の上方には整揃壁21が図示しない部材により固定され、整揃コンベア18の上面は貯溜ホッパ11の上面よりも高位にある。該整揃コンベア18の貯溜ホッパ11に面した側と貯溜ホッパ11の整揃コンベア18に向いた側の上端とは、滑落壁22により隙間なく結合される。整揃コンベア18の終端20は次工程の機械と結合される。」(公報第2ページ右下欄下から6行目ないし第3ページ右上欄第5行)
(イ)「本発明の動作を第2図と第3図によって説明する。被供給部品は上方の開口から貯溜ホッパ11へ投入される図示しない駆動源によって貯溜コンベア12が駆動され、貯溜ホッパ11に投入された被供給部品は貯溜コンベア12に乗って貯溜コンベア12の終端13の方向に移動する。該貯溜コンベアは被供給部品が昇りになるように傾斜して設置されているので、被供給部品は少量ずつ終端13の方へ移動され貯溜コンベア12の始端の方の被供給部品は移動されて貯溜ホッパ11の最深部が空くので貯溜コンベア12の始端に近く貯溜された被供給部品は空いた部位にくずれ落て空隙を埋める。このようにして被供給部品は、少量ずつローラ14によって丸められた貯溜コンベアの終端13に達する。該貯溜コンベア12の終端13に達した被供給部品は、第2図に示すごとくローラ2、すなわちローラ14によって形成される貯溜コンベア12の終端13の半円筒状の丸みにより被供給部品はわずかな重心位置の変化により、1個または数個ずつ移載コンベア15の上に落下する。移載コンベア15は被供給部品の落下する割合に応じた速度で図示しない駆動源により駆動されているので、落下した被供給部品は直ちに移動され被供給部品は相互の間隔を広げなから移載コンベアの終端17の方向に移動される。移載コンベア15は始端16から終端17に向って昇りとなっていて、被供給部品は終端17に於て貯溜コンベア12の終端14と同じように被供給部品が重心位置の差によって分離されて、整揃コンベア18の上に落下する。整揃コンベア18は移載コンベア15よりも高速で図示しない駆動源により駆動されているので、被供給部品はその間隔を更に広げながら移動される。整揃コンベア18によって移動される被供給部品は整揃壁21によって整揃コンベア18の貯溜ホッパの側へ移動しながら終端20の方向に移動され、整揃壁21に設けた図示しない整揃のためのアタッチメントとの相互作用により所要の姿勢の被供給部品だけが被供給部品の形状と重心位置によって選択的に整揃される」(公報第3ページ左下欄下から3行目ないし同第4ページ左上欄第17行)
(ウ)第3図において、「整揃コンベア18」は、ベルトコンベアとして描かれている。

(2)したがって、引用文献2には、次のような発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「被供給部品を搬送しながら整列させる整揃コンベア18と、
前記整揃コンベア18の下流側に設けられた整揃壁21によって狭くされた出口を通過できずに排出された被供給部品を受け取って前記整揃コンベア18の上流側に戻す滑落壁22、貯留ホッパ11、貯留コンベア12及び移載シュート25とを、備えた被供給部品の供給機において、
前記整揃コンベア18は、ベルトにより被供給部品を搬送し、搬送方向に対して斜めに遮るように形成された整揃壁21により、当該被供給部品を前記滑落壁22、貯留ホッパ11、貯留コンベア12及び移載シュート25の側に寄せ、余剰の被供給部品を該滑落壁22に排出する被供給部品の供給機。」

3-1-3.特開平8-81045号公報(以下、「引用文献3」という。)
(1)引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0007】本発明は、上記した背景に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、上記した問題を解決し、縦横に並んだ状態で搬送される物品を、1個ずつ縦に並んだ状態で、しかも、その搬送姿勢を同じにすることが確実に行え、しかも好ましくは前後の物品を一定の距離以上離すことが確実にできる物品分離整列搬送装置を提供することにある。」(段落【0007】)
(イ)「【0013】
【実施例】以下、本発明に係る物品分離整列搬送装置の好適な実施例について、添付図面を参照にして詳述する。図1は、本発明の一実施例である搬送装置の全体を示している。同図に示すように、第1の搬送手段たる低速ベルトコンベア10の上に、多数の物品11が縦横に整列状態で、しかも隣接する物品11同士は接触した状態で配置され、所定速度で搬送される。なお、本例では、前後及び左右に隣接する物品11同士が接触しているが、本発明はこれに限ることなく、前後または左右のいずれか、或いは両方の物品同士が一定距離たけ離れているようになっていても良く、さらには、図示のように14×3個の物品11を一塊とし、係る物品の塊が前後に所定距離だけ離れて搬送されるようになっていても良い。さらに本例に置ける物品11は、略直方体状の菓子からなる。
【0014】低速ベルトコンベア10の下流側には、連続して第2搬送手段たる高速ベルトコンベア12が配置されている。そして、本例では、高速ベルトコンベア12は、4個のベルトコンベア(第1?第4ベルトコンベア12a?12d)から構成されている。そして、それら4つのベルトコンベア12a?12dの搬送速度は、いずれも同一速度とし、かつ低速ベルトコンベア10よりも高速度としている。さらに、搬送方向も同一とし、一直線状に連続して配置されている。
【0015】このように構成することにより、低速ベルトコンベア10上を移動する物品11のうち、最前の一列分が第1ベルトコンベア12aに移載されると、搬送速度の相違から、その一列分だけ高速に移動し、後続の低速ベルトコンベア10上の物品11から離反する。そして、横1列(本例では14個)に並んだ多数の物品11からなる物品群11′の状態で一定速度で搬送される。」(段落【0013】ないし【0015】)
(ウ)「【0041】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る物品分離整列搬送装置では、第1の搬送手段よりも第2の搬送手段の速度を高速にしたため、縦横に並んだ状態で搬送される物品の前後(縦方向)を分離でき、しかも、ストッパー手段とコンベア手段により、横一列にならんだ物品を、1個ずつ搬出することができる。よって、第2の搬送手段上では、縦に並んだ状態で、しかも、前後の物品を一定の距離以上離した状態で搬送することができる。」(段落【0041】)

(2)したがって、引用文献3には、次のような技術(以下、「引用文献3に記載された技術」という。)が記載されているものと認められる。
「物品を搬送しながら分離整列させる物品分離整列搬送装置において、各物品を、所定の一定間隔で搬送方向に整列させるように、後段に速度差をもたせて受け渡し」する技術
なお、上記技術は、平成20年12月24日付けで当審において書面によりなした審尋の前置報告書において提示した特開平6-305552号公報にも記載されているし、上記3-1-2.(1)イ)の「整揃コンベア18は移載コンベア15よりも高速で図示しない駆動源により駆動されているので、被供給部品はその間隔を更に広げながら移動される。」からみて、引用文献2にも、同様の技術が記載されているといえるから、そもそも、周知の技術ともいいうるものである。

3-2.対比・判断
3-2-1.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1における「錠剤12、13、19」は、それらの形状、構造及び機能等からみて、本願補正発明における「錠剤」に相当し、以下同様に、「整列用搬送路7a、7b、7c、7d」は「整列用搬送路」に、「出口部」は「整列供給口」に、「還元用搬送路6」は「還元用搬送路」に、「整列搬送装置」は「供給整列搬送装置」に、「傾斜シュート板11の上部空間」は「排出空間」に、それぞれ相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明1は、
「錠剤を搬送しながら整列させる整列用搬送路と、
前記整列用搬送路の下流側に設けられた整列供給口を通過できずに排出された錠剤を受け取って前記整列用搬送路の上流側に戻す還元用搬送路とを、備えた錠剤の供給整列搬送装置において、
前記還元用搬送路を中央に挟み、その両側に隣接して前記整列用搬送路を対称に配設し、
前記両側の整列用搬送路は、夫々、錠剤を搬送し、側壁により、当該錠剤を前記還元用搬送路側に寄せ、余剰の錠剤を該還元用搬送路に排出しながら、該錠剤を該整列用搬送路の内側の端縁に沿って前後の錠剤と接触した状態で1列に整列させて搬送し、
前記排出される錠剤は、前記両側の整列用搬送路から落下して排出され、該整列用搬送路の間に形成された排出空間を経て、前記還元用搬送路に受け取られる錠剤の供給整列搬送装置。」
である点で一致し、次の(1)ないし(3)の点において相違する。
(1)「整列用搬送路」において「錠剤」を搬送するのが、本願補正発明においては、「ベルト」であるのに対して、引用発明1においては、「振動する搬送路台2、3」である点(以下、「相違点1」という。)。
(2)本願補正発明においては、「前後の錠剤と接触した状態で1列に整列させて搬送し、その後、各錠剤を、所定の一定間隔で搬送方向に整列させるように、後段に速度差をもたせて受け渡し」されるのに対して、引用発明1においては、「前後の錠剤と接触した状態で1列に整列させて搬送」された後のことは不明である点(以下、「相違点2」という。)。
(3)「余剰の錠剤」を「整列用搬送路」から「還元用搬送路」に排出するに際して、本願補正発明においては、「搬送方向に対して斜めに遮るように形成された側壁により、当該錠剤を前記還元用搬送路側に寄せ」、その後、「余剰の錠剤」が「両側の整列用搬送路の内側の端縁から落下して排出され」るのに対して、引用発明1においては、「搬送方向に直角方向の路面形状が還元用搬送路6側に向けて下向きに傾斜して形成された整列用搬送路7a、7b、7c、7d及び側壁8a、8bにより、錠剤12、13、19を前記還元用搬送路6側に寄せ」、その後、「余剰の錠剤12、13、19」が「両側の整列用搬送路7c、7dの途中の排出部9a、9bから落下して排出され」る点(以下、「相違点3」という。)。

3-2-2.前記相違点についての検討
(1)前記相違点1について
「整列用搬送路」において被搬送物品を搬送するのを、本願補正発明のように、「ベルト」とすることは、引用発明2が備えている。
そして、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、前記相違点1に係る本願補正発明のように構成する程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。
なお、被搬送物品をベルトで搬送することは、周知である。
(2)前記相違点2について
上記3-1-3.(2)で検討したように、「物品を搬送しながら分離整列させる物品分離整列搬送装置において、各物品を、所定の一定間隔で搬送方向に整列させるように、後段に速度差をもたせて受け渡し」する技術は、引用文献3に記載された技術であり、しかも、周知技術ともいいうるものである。
そして、引用発明1において、周知技術ともいいうる引用文献3に記載された技術を適用することにより、前記相違点2に係る本願補正発明のように構成する程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。
(3)前記相違点3について
「搬送方向に対して斜めに遮るように形成された整揃壁21(本願補正発明における「側壁」に相当する。)により、被供給部品を滑落壁22、貯留ホッパ11、貯留コンベア12及び移載シュート25(本願補正発明における「還元用搬送路」に相当する。)側に寄せる」ことは、引用発明2が備えている。
そして、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、前記相違点3に係る本願補正発明のように構成する程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。
なお、特開平3-166116号公報には、(余剰の)偏平製品である「砂糖菓子2」を「振動コンベヤ8(本願補正発明における「整列用搬送路」に相当する。)」から「振動コンベヤ38(本願補正発明における「還元用搬送路」に相当する。)」に排出するに際して、「搬送方向に対して斜めに遮るように形成された側壁(当該公報の第1図及び第3図に注意されたい。)により」、当該偏平製品である「砂糖菓子2」を「振動コンベヤ8」側に寄せ、その後、当該偏平製品である「砂糖菓子2」が両側の「振動コンベヤ8」の内側の端縁から落下して排出されるようにすることが、記載されている。

3-2-3.まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術ともいいうる引用文献3に記載された技術に基いて、当業者が格別な困難性を伴うことなく容易に想到し発明しうる程度のものと認められ、しかも、本願補正発明は、全体構成でみても、引用発明1、引用発明2及び周知技術ともいいうる引用文献3に記載された技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

3-3.むすび
以上のように、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術ともいいうる引用文献3に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであって、請求項1に関する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


第3.本願発明について
1.手続の経緯及び本願発明
平成19年4月11日付けの手続補正は上記第2.のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、平成18年12月5日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、前記第2.の〔理 由〕1.の(a)に記載したとおりのものである。

2.引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開平8-258959号公報)、引用文献2(特開昭62-218329号公報)及び引用文献3(特開平8-81045号公報)の記載事項は、前記第2.の〔理 由〕3-1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.の〔理 由〕2.で検討したように、本願補正発明において追加された発明特定事項を省いたものに実質的に相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の〔理 由〕3.に記載したとおり、引用発明1、引用発明2及び周知技術ともいいうる引用文献3に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、引用発明2及び周知技術ともいいうる引用文献3に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術ともいいうる引用文献3に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-03 
結審通知日 2009-04-07 
審決日 2009-04-20 
出願番号 特願2001-328976(P2001-328976)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
P 1 8・ 575- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 良憲  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 森藤 淳志
中川 隆司
発明の名称 錠剤の供給整列搬送装置  
代理人 笹島 富二雄  

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