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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60L |
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管理番号 | 1198678 |
審判番号 | 不服2007-13771 |
総通号数 | 115 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-05-11 |
確定日 | 2009-06-08 |
事件の表示 | 特願2003-534223「内燃機関と結合された車両内の電気機器」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月17日国際公開、WO03/31218、平成17年 2月17日国内公表、特表2005-505229〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願の発明 本件出願(以下「本願」という。)は、2002年9月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年9月29日、ドイツ国)を国際出願日とする国際出願であって、平成19年2月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がされ、さらに、平成20年8月13日付けの当審拒絶理由通知書が通知されたものである。 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年12月12日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「内燃機関と結合された車両内の電気機器において、 電気機器(10)に対する第1の動作状態(Bw)を設定するかまたは該第1の動作状態と比較して該電気機器(10)の効率は低いがトルク形成が迅速な第2の動作状態(Bd)を設定する制御装置(11)と、 迅速なトルク設定を必要とする車両動作過程の前に通常設定されている該第1の動作状態(Bw)から該第2の動作状態(Bd)へ切り替える切替手段が設けられており、 切り替えを設定する制御信号は、変速機シフトアップ過程および/または内燃機関始動過程の前に前記切替手段の切替制御入力側へ供給され、 設定可能な時間にわたり、または迅速なトルク設定を必要とする個々の動作過程が完了するまで、該第2の動作状態(Bd)へ切り替える手段が設けられていることを特徴とする、 内燃機関と結合された車両内の電気機器。」 2.引用例 これに対して、当審の拒絶の理由に引用された特開平9-219906号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はモータ制御装置及び方法、特にモータへの電流供給路に設けられた電力変換機に対して制御信号を出力することによりモータへの供給電流を制御するモータ制御装置及び方法に関する。」 ・「【0029】また本発明の好適な一態様では、制御対象のモータは、エンジンに連結されてハイブリッドカーシステムを構成するように設けられており、前記回転数センサは前記エンジンに取り付けられたエンジン回転数センサであり、前記エンジン回転数センサからの入力情報を基に前記モータ回転数を検出する。」 ・「【0040】モータコントローラ31は、前述した従来技術と同様のベクトル制御回路13と、さらに高速直接トルク制御回路37を備えている。ベクトル制御回路13は、上記入力情報のうち、モータ電流Iu?Iwとクランク角センサの出力情報を入力され、これらの入力情報と磁束指令値Φ2*及びトルク指令値T*を基に前述の図7のベクトル制御によりインバータ7のスイッチング信号を生成する。また、高速直接トルク制御回路37は、モータ電流Iu?Iwとバッテリ電圧VBを入力され、これらの入力情報と磁束指令値Φ1*及びトルク指令値T*を基に、後述する高速直接トルク制御によりインバータ7のスイッチング信号を生成する。ベクトル制御回路13及び高速直接トルク制御回路37にて生成されたスイッチング信号は、それぞれ制御切替回路33へ出力される。」 ・「【0044】上記の制御切替回路33の切替は、具体的には、以下に説明するようなフライホイールM/Gシステムの運転状態に対応した制御回路の切替である。エンジン回転数がアイドリング回転数よりも低い状態とは、エンジン始動(すなわちシステム始動)のためのクランキング時の状態である。また、エンジン回転数がアイドリング回転数以上の状態とは、システム始動後の通常の運転状態である。本フライホイールM/Gシステムはモータゼネレータ3によりエンジン1のクランキングを行うように構成されており、本モータ制御装置は、モータゼネレータ3をクランキング時に高速直接トルク制御回路37にて制御し、システム始動後はベクトル制御回路13にて制御するように構成されている。」 ・「【0057】図5において初期状態は、エンジン1の始動前であってスタータ信号がオフである。この状態では、エンジン回転数は0であり、モータ制御切替信号は0である。従って切替制御回路33は、高速直接トルク制御回路37側に設定されている。そしてスタータ信号がオフからオンになると、本モータ制御装置は高速直接トルク制御によりモータゼネレータ3を制御し、モータゼネレータ3にエンジン1のクランキングを行わせる。 【0058】クランキング開始後、エンジン回転数がアイドリング回転数に達するまでは、モータ制御切替信号は0であり、モータゼネレータ3を高速直接トルク制御により制御する。エンジン回転数がアイドリング回転数に達すると、車両制御コントローラ11が、クランク角センサ15からの情報によりこのアイドリング回転数への到達を検出し、モータ制御切替信号を0から1とする。モータ制御切替信号の変化に応じて、切替制御回路33がベクトル制御回路13側に設定を切り替える。そして切替以後、本制御装置はベクトル制御によりモータゼネレータ3を制御する。」 ・「【0061】また高速直接トルク制御は、トルクの瞬時制御を行うのでトルク応答が早く、その早さの程度はベクトル制御の数倍である。従って低回転域で大負荷のモータ駆動が必要なクランキングを行うのに適した制御である。一方、ベクトル制御は、前述のように、軽負荷時に励磁電流を減らすなどして、高効率かつ制御性の高い運転を容易に行うことができる制御である。以上より本実施形態では、クランキングとエンジン始動後(アイドリング回転数以上)の運転状態において、それぞれの状態に適した良好なモータゼネレータ3の制御が行われる。」 ・図1には、切り替えを設定するモータ制御切替信号は、車両制御コントローラから制御切替回路のモータ制御切替信号入力側へ供給されることが示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「エンジンと結合されたハイブリッドカーシステムのモータにおいて、 モータに対するベクトル制御を設定するかまたは該ベクトル制御と比較して該モータの効率は低いがトルク応答が早い高速直接トルク制御を設定するモータコントローラと、 クランキングの前に通常設定されている該ベクトル制御から該高速直接トルク制御へ切り替える制御切替回路が設けられており、 切り替えを設定するモータ制御切替信号は、クランキングの前に前記制御切替回路のモータ制御切替信号入力側へ供給され、 システム始動まで、該高速直接トルク制御へ切り替える手段が設けられている エンジンと結合されたハイブリッドカーシステムのモータ。」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その機能・作用からみて、後者の「エンジン」が前者の「内燃機関」に相当し、以下同様に、「ハイブリッドカーシステムのモータ」が「車両内の電気機器」に、「ベクトル制御」が「第1の動作状態(Bw)」に、「トルク応答が早い高速直接トルク制御」が「トルク形成が迅速な第2の動作状態(Bd)」に、「モータコントローラ」が「制御装置(11)」に、「クランキング」が「迅速なトルク設定を必要とする車両動作過程」に、「制御切替回路」が「切替手段」に、「モータ制御切替信号」が「制御信号」にそれぞれ相当する。 また、前者の「変速機シフトアップ過程および/または内燃機関始動過程」とは、「変速機シフトアップ過程および内燃機関始動過程」、「変速機シフトアップ過程」または「内燃機関始動過程」のいずれかを択一的に選択したものであると解されるから、後者の「クランキングの前に制御切替回路のモータ制御切替信号入力側へ供給され」る構成は、前者の「変速機シフトアップ過程および/または内燃機関始動過程の前に切替手段の切替制御入力側へ供給され」る構成に相当する。 さらに、後者の「システム始動まで」は、前者の「設定可能な時間にわたり、または迅速なトルク設定を必要とする個々の動作過程が完了するまで」に相当する。 そうすると、両者は、 「内燃機関と結合された車両内の電気機器において、 電気機器に対する第1の動作状態を設定するかまたは該第1の動作状態と比較して該電気機器の効率は低いがトルク形成が迅速な第2の動作状態を設定する制御装置と、 迅速なトルク設定を必要とする車両動作過程の前に通常設定されている該第1の動作状態から該第2の動作状態へ切り替える切替手段が設けられており、 切り替えを設定する制御信号は、変速機シフトアップ過程および/または内燃機関始動過程の前に前記切替手段の切替制御入力側へ供給され、 設定可能な時間にわたり、または迅速なトルク設定を必要とする個々の動作過程が完了するまで、該第2の動作状態へ切り替える手段が設けられている、 内燃機関と結合された車両内の電気機器。」 の点で一致しており、両者の間に構成上の差異は存在しない。 したがって、本願発明は、引用例に記載された発明である。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-15 |
結審通知日 | 2009-01-16 |
審決日 | 2009-01-27 |
出願番号 | 特願2003-534223(P2003-534223) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(B60L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 片岡 弘之 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
米山 毅 仁木 浩 |
発明の名称 | 内燃機関と結合された車両内の電気機器 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |