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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M |
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管理番号 | 1199256 |
審判番号 | 不服2006-11279 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-06-02 |
確定日 | 2009-06-19 |
事件の表示 | 特願2002- 17020「無線電話」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月27日出願公開、特開2002-281138〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯・本願発明 本願は、1997年2月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年2月26日、1996年4月25日、英国)を国際出願日とする出願である特願平9-529914号の一部を、平成14年1月25日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、当審で提出された平成20年11月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「主本体に取り付けられた複数のキーを含むキーパッドおよび上記複数のキーが隠される第1位置と上記複数のキーが露出される第2位置との間を長手方向にスライド移動するように取り付けられた延長部分を有するハウジングと、 上記延長部分が上記第1位置、上記第2位置及び上記第1位置と上記第2位置との間の少なくとも1つの中間位置にある状態でハンドセットをオフフック状態に入れるよう動作できる処理手段と、を備え、さらに、 上記主本体は上記処理手段に電気的に接続された導電性の突設部を備え、 上記延長部分は、マイクロホンと、上記マイクロホンに電気的に接続される導電性のトラックであって、上記第1位置,上記第2位置及びこれらの中間位置のいずれの位置においても上記導電性突設部と接触せしめるべく、上記長手方向へ延びて配置された導電性のトラックと備える、 無線ハンドセット。」 第2.引用発明 A.これに対して、当審において平成20年8月29日付けで通知した拒絶理由に引用された、実願平5-36177号(実開平7-7285号)のCD-ROM(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 イ.「【0007】 【作用】 受話器を備えた携帯電話機本体に対して、送話器を備えた覆いをスライド可能に取り付けたので、送話器と受話器との間の距離を任意に設定することが可能となり、最適な両者間距離を選択することが可能となる。」(4頁5行?9行) ロ.「【0009】 【実施例】 以下、本考案の一実施例につき図1から図3を参照して詳細に述べる。図において、少なくとも受話器3、表示器5、電気回路(図示しない)及びテンキー等のスイッチ類7を備えた本体1に対して、少なくともスイッチ類7部分を覆い隠す大きさを有し、送話器4を備えた覆い2がスライド可能に取り付けられている。すなわち、図1(c)に示されように、覆い2は本体1の両側面に設けられたレール(溝)構造によってスライド可能である。 【0010】 図1(a)及び(b)は、それぞれ携帯電話機の不使用時の状態を示す側面及び上面図を示す。使用を希望する場合には、図1(b)に矢印で示す方向に覆い2を引っ張ると図2(a)及び(b)に示すようにスイッチ類7が露出し使用可能状態となる。 【0011】 図3に示すように、覆い2に備えられた送話器4には棒状導体8が接続され、その他方端は本体内部の電気回路(図示しない)の送話器用出力線とスライド可能な電気的接触が保たれている。従って、覆い2を引き出す引き出し距離に応じて、送話器4と受話器3との間の距離は可変となる。この棒状導体8は図3(b)に示すように両端に沿って2本設けても良く、片側に2本並べて設けても良い。」(4頁13行?5頁3行) ここで、図2(b)において図示されるように配置されたテンキー等のスイッチ類7は、「複数のキーを含むキーパッド」と称することのできるものである。 また、図1は、複数のキーが隠される位置に覆い2がスライド移動した状態を示し、図2は、複数のキーが露出される位置に覆い2がスライド移動した状態を示しているが、それぞれの状態に対応する覆い2の位置を「第1位置」、「第2位置」と称すると、覆い2は本体1に対して、複数のキーが隠される第1位置と複数のキーが露出される第2位置との間を長手方向にスライド移動するように取り付けられていると言える。 また、本体1と覆い2とは、総称するとハウジングと言い得るものである。 また、上記摘記事項ロ.の【0010】には「覆い2を引っ張ると図2(a)及び(b)に示すようにスイッチ類7が露出し使用可能状態となる。」という記載があるが、技術常識を鑑みると「使用可能状態」には発着信をして通話ができる状態を含むから、そのためにオフフック状態にできるようにされていることは明らかである。そうすると、引用例1の携帯電話機には、少なくともキーが露出される第2位置に覆い2がある状態で、オフフック状態に入れるよう動作できる処理手段が備えられていると認められる。 また、上記摘記事項ロ.の【0011】によれば、送話器4からの音声信号は送話器用出力線を介して電気回路に送られているが、技術常識を鑑みると、携帯電話機において送話器から入力された音声信号は所定の処理がされるから、本体1には音声信号処理手段が当然に備えられており、音声信号伝達のために電気回路の送話器用出力線と電気的に接続されていると考えられる。 また、上記摘記事項ロ.の【0011】、及び、図3によれば、覆い2に備えられた送話器4と棒状導体8とが電気的に接続されていること、及び、棒状導体8は覆い2の長手方向へ延びて配置されていることは明らかである。さらに、上記摘記事項イ.の「受話器を備えた携帯電話機本体に対して、送話器を備えた覆いをスライド可能に取り付けたので、送話器と受話器との間の距離を任意に設定することが可能となり、最適な両者間距離を選択することが可能となる。」という記載、及び、上記摘記事項ロ.の【0011】の、棒状導体8の他方端は「本体内部の電気回路(図示しない)の送話器用出力線とスライド可能な電気的接触が保たれている」という記載によれば、覆い2がどのような位置にある時も棒状導体8と送話器用出力線との電気的接触が保たれていると解釈できるが、これは、覆い2が第1位置、上記第2位置及びこれらの中間位置のいずれの位置にある時も、棒状導体8が送話器用出力線と接触せしめるべく配置されているものと考えられる。 また、携帯電話機は携帯可能であることから、無線通信方式であることは明らかであり、また図面を参照するとハンドセットの形状であることも明らかである。 したがって、これらの記載事項によると、引用例1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「本体1に取り付けられた複数のキーを含むキーパッドおよび上記複数のキーが隠される第1位置と上記複数のキーが露出される第2位置との間を長手方向にスライド移動するように取り付けられた覆い2を有するハウジングと、 上記覆い2が上記第2位置にある状態でハンドセットをオフフック状態に入れるよう動作できる処理を行う手段と、を備え、さらに、 上記本体1は音声信号処理手段に電気的に接続された送話器用出力線を備え、 上記覆い2は、送話器4と、上記送話器4に電気的に接続される棒状導体8であって、上記第1位置,上記第2位置及びこれらの中間位置のいずれの位置においても上記送話器用出力線と接触せしめるべく、上記長手方向へ延びて配置された棒状導体8と備える、 無線ハンドセット。」 B.また、当審において平成20年8月29日付けで通知した拒絶理由に引用された、実願平5-30670号(実開平7-7284号)のCD-ROM(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 ハ.「【0013】 【作用】 上記構成に係る無線電話機によると、蓋部を筐体本体に回動可能に取り付ける可動部を有するタイプの電話機、つまり、折り畳み型であるから、小形化が可能である。また、前記蓋部により覆われる部分以外の位置に着信応答用及び発信用のキーを設けているため、着信に対し、蓋が閉じられているままで応答可能であり、更に、前記送話器が、前記蓋が閉じた状態において、外部に露出しているので、蓋が閉じられているままで通話可能である。」(8頁2行?9行) ニ.「【0015】 【実施例】 以下、添付図面を参照して、本考案の実施例に係る無線電話機を説明する。各図面において、同一の符号を付した構成要素は同一のものであるので重複する説明を省略する。図1には本発明の一実施例に係る携帯無線電話機が示されている。この携帯無線電話機は、本体50と蓋6により構成され、本体50と蓋6とは可動部を構成するヒンジ9により接続されている。本体50は概ね縦長の直方体をなし、上部表面が下部表面に比べてやや突出しており、上部表面に設けられている受話器1を耳に適切に当てやすくしてある。本体50の頭部上面からはアンテナ18が突出して設けられている。本体50の筐体の内、やや前面に突出した上部表面から下部上面に移る位置には、入力に係る電話番号等が表示されるLCD等の表示器3が設けられている。蓋6の左上部の角部は切り欠かれており、蓋6の右下端の隅には穴5が穿設されている。上記切り欠かれた部分からは、本体50に設けられている発着信キー4が覗くように構成され、また、上記穴5の対応する本体50の表面には、送話器2が設けられている。蓋6を開けると図1(b)に示されるように蓋6に隠されていたキーパッドスイッチにより構成されるダイヤルキーその他のキー34が現れる。この様に構成されているため、蓋6をした状態(図1(a))でも穴5を通して送話器2に音声を入力できるようになっている。また、蓋6をした状態でもLCDからなる表示器3が見え、発着信キー4を操作することができるようになっている。」(8頁15行?9頁5行) ここで、上記摘記事項ニ.及び、図面の記載を参酌すると、筐体本体には複数のキーを含むキーパッドが取り付けられていることは明らかである。 また、閉じられた状態の蓋の位置を「第1位置」、キーが現れた状態の蓋の位置を「第2位置」と称すると、第1位置、第2位置のいずれにおいても発着信キーを操作して応答可能であること、すなわちオフフック状態に入れられることは明らかであり、さらにそのように動作できる処理手段を備えていることも自明である。 したがって、これらの記載事項によると、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「筐体本体に取り付けられた複数のキーを含むキーパッドおよび上記複数のキーが隠される第1位置と上記複数のキーが露出される第2位置との間を回動するように取り付けられた蓋を有し、 上記蓋が上記第1位置、上記第2位置にある状態で無線電話機をオフフック状態に入れるよう動作できる処理手段を備えた無線電話機。」 第3.対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「送話器用出力線」は、「導電体」である点で、本願発明の「導電性の突設部」ないし「導電性突設部」と一致している。 また、引用発明1の「送話器4」は、本願発明の「マイクロホン」に相当している。 また、引用発明1の「棒状導体8」は、送話器4(マイクロホン)に電気的に接続されており、第1位置、第2位置及びこれらの中間位置のいずれの位置においても上記送話器用出力線(導電体)と接触せしめるべく、覆い2の長手方向へ延びて配置されたものであるから、本願発明の「導電性のトラック」と一致している。 また、引用発明1の「本体1」と「覆い2」は、複数のキーを含むキーパッドが取り付けられた「本体1」と、複数のキーが隠される第1位置と上記複数のキーが露出される第2位置との間を長手方向にスライド移動するように「本体1」に取り付けられた「覆い2」とによってハウジングが構成され、さらに「本体1」には送話器用出力線(導電体)が備えられ、「覆い2」には棒状導体8(導電性のトラック)が備えられているから、本願発明の「主本体」と「延長部分」にそれぞれ一致している。 したがって、両者は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「主本体に取り付けられた複数のキーを含むキーパッドおよび上記複数のキーが隠される第1位置と上記複数のキーが露出される第2位置との間を長手方向にスライド移動するように取り付けられた延長部分を有するハウジングと、 上記延長部分が上記第2位置にある状態でハンドセットをオフフック状態に入れるよう動作できる処理手段と、を備え、さらに、 上記主本体は導電体を備え、 上記延長部分は、マイクロホンと、上記マイクロホンに電気的に接続される導電性のトラックであって、上記第1位置,上記第2位置及びこれらの中間位置のいずれの位置においても上記導電体と接触せしめるべく、上記長手方向へ延びて配置された導電性のトラックと備える、 無線ハンドセット。」 (相違点1) 「処理手段」に関し、本願発明ではハンドセットをオフフック状態に入れるよう動作できる位置が、「第1位置、第2位置及び第1位置と第2位置との間の少なくとも1つの中間位置」であるのに対し、引用発明1では「第2位置」である点。 (相違点2) 「導電体」に関し、本願発明では「処理手段に電気的に接続」されているのに対し、引用発明1では「音声信号処理手段に電気的に接続」されている点。 (相違点3) 「導電体」に関し、本願発明では「導電性の突設部」ないし「導電性突設部」であるのに対し、引用発明1では「送話器用出力線」であって形状が特定されていない点。 第4.当審の判断 まず、上記相違点1について検討する。 引用発明1と引用発明2とは、共に携帯電話機である点で技術分野が共通する。よって、引用発明1に引用発明2を適用して、延長部分が主本体の複数のキーを隠す第1位置にある状態で、処理手段がハンドセットをオフフック状態に入れるよう動作できるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。また、引用例1は任意の位置に覆いをスライドさせて使用できるようにしたものであるから(引用例1の【0007】参照)、第1位置と第2位置との間の中間位置においても同様にオフフック状態に入れるよう動作できるようにすることも、当然の技術的事項である。 なお、請求人は、引用発明1では覆い2が閉じられた状態は不使用時の状態であり、また覆い2を閉じることにより誤動作を防止しているのであるから、これに反することになる引用発明2の適用は想到し得ない旨を主張する。しかし、蓋や覆いを閉じた状態では完全に使用できないようにすると、着信応答する操作に時間がかかり、それによる問題が発生することは容易に予想できることである(例えば、引用例2の【0008】等を参照)。よって、引用発明2の適用により、覆いを閉じたときには少なくとも一部のキーを隠して操作をできなくすることで、隠されたキーの誤操作を防止すると共に着信以外には使用しない状態としつつ、その状態で速やかに着信応答ができるようにオフフック状態に入れる動作ができるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことと認められる。 次に、上記相違点2について検討する。 本願発明においては、導電性突設部と処理手段とが接続されているが、導電性突設部は導電性のトラックを介してマイクロホンと接続されるものであるため、結局、マイクロホンと処理手段とが接続されていることになる。しかし、マイクロホンと処理手段との接続が、本願発明に記載されている、ハンドセットをオフフック状態に入れるという処理手段の動作にどのように関与するかは、発明の詳細な説明を参酌しても不明である。ここで、技術常識を勘案すると、マイクロホンから入力された音声信号には所定の処理がなされるが、マイクロホンと処理手段とが接続されてマイクロホンから入力された音声信号が処理手段に送られるのであれば、本願発明においては、処理手段が音声信号処理機能をさらに備えているか、処理手段を中継して音声信号処理を行う手段に音声信号が送られているものと解釈することができる。そうすると、本願発明も音声信号処理を行う手段に電気的接続がなされていることとなり、引用発明1との間に実質的な差違が認められない。 一方、オフフック状態に入れる処理を行う手段と、音声信号処理手段とを1つの処理手段として構成することは、適宜設計的に定められることである。 したがって、導電体が「処理手段に電気的に接続」されているという構成にすることは、当業者であれば適宜なし得たことと認められる。 次に、上記相違点3について検討する。 接触部分の形状をどのようにするかは、適宜設計的に定められることである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測できる程度のものである。 第5.むすび したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-16 |
結審通知日 | 2009-01-23 |
審決日 | 2009-02-03 |
出願番号 | 特願2002-17020(P2002-17020) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉村 博之、鶴谷 裕二 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
小宮 慎司 萩原 義則 |
発明の名称 | 無線電話 |
代理人 | 川守田 光紀 |