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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1199266
審判番号 不服2007-29898  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-02 
確定日 2009-06-19 
事件の表示 特願2005-100760「画像通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月19日出願公開、特開2006-287300〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成17年3月31日の出願であって、平成19年6月22日付け拒絶理由通知に対して平成19年8月17日付けで手続補正がなされ、これに対して平成19年9月27日に拒絶査定がされたものであり、これに対して平成19年11月2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明の認定

本願の発明は、平成19年8月17日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項14までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、下記のとおりである。

【請求項1】
ネットワークの通信回線品質を検査する検査手段と、
前記検査手段で知得した通信回線品質と、所望の送信先端末と自身とが共通に保有する符号化復号化能力の中で最も圧縮率の高い符号化方式と、最終的に選択する符号化方式とが予め関連付けられた符号化方式選択表に基づいて画像データの符号化方式を選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された符号化方式で画像データを符号化する符号化手段と、
前記符号化手段で符号化された画像データを、前記ネットワークを通じて所望の送信先端末へ送信する送信手段と
を有する ことを特徴とする画像通信装置。
(以下、これを「本願発明」という。)

3.引用刊行物記載の発明

原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1(特開昭60-199267号公報)には、以下(ア)から(エ)に示す事項が記載されている。

(ア)「1次元データ圧縮手段、および2次元データ圧縮手段を有するファクシミリ装置において、プロトコル確立時に否定応答を受信した場合、自動的に前記1次元データ圧縮手段を選択する手段を設けたことを特徴とするファクシミリ装置。」(特許請求の範囲(1))

(イ)「本発明の目的は、上記のような従来技術の問題点を解決し、回線の状態に応じた適切なデータ圧縮方式を自動的に選択し、画像乱れを迅速に改善するよう構成したファクシミリ装置を提供することにある。 」
(第2頁上左欄7行?第11行)

(ウ)「制御部1は被呼局からのDIS信号により被呼局の機能を識別し、その結果、被呼局が2次元圧縮手段により符合化された画情報を受信する機能を有しているときは、まず、データ圧縮手段選択信号aによりデータ圧縮部2のモードを伝送効率の良い2次元圧縮モードとし、さらに、伝送速度選択信号bによりモデム4を高速のモデムレートに設定し、被呼局へモード設定命令のDCS信号を送出する(204、205)。」
(第2頁上右欄第10行?第18行)

(エ)「次に、設定したモデムレートにより試験データを送出し、データ伝送エラー率を調べる(206)。データ伝送エラー率が規定値より低く、被呼局からの応答信号が肯定応答の場合は、読取部3からの画情報を2次元圧縮手段により符号化し、符号化された画情報を当該モデムレートにより網制御装置5を介して送出する(207、208、209)。データ伝送エラー率が規定値より高く、被呼局からの応答信号が否定応答の場合は、モードを再設定する。すなわち、データ圧縮部2のモードを1次元圧縮モード、モデム4のモデムレートを前回より低速のモデムレートとし、DCS信号を送出した後(207、208、210)、再度試験データを送出する。」
(第2頁上右欄第19行?下左欄第12行)

(オ)「制御部1は、1頁分の画情報を送出し終ると、送出すべき画情報が複数頁か否かを判断し、複数頁の場合はその旨を表わすMPS信号を送出する(211、216)。複数頁でない場合は、通信終了を表わすEOP信号を送信し、その応答を受信した後、呼解除を表わすDCN信号を送出し回線を切断する(212、213、214、215)。」
(第2頁下左欄第13行?第19行)

(カ)「上記MPS信号に対する応答信号が肯定応答の場合は、そのままのモードで画情報を送出し続ける(216、217、218、209)。
(第2頁下左欄最下行?上右欄第2行)

したがって、これらを総合すれば、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1には、次の(キ)なる発明が記載されている。(以下、「引用発明」という。)

[引用発明]
(キ)制御部1は被呼局からのDIS信号により被呼局が2次元圧縮手段による符号化された画情報を受信する機能を有しているかを識別し、有しているときは、データ圧縮部2のモードを伝送効率の良い2次元圧縮モードに設定し、
次に、設定したモデムレートにより試験データを送出し、回線の状態によるデータ伝送エラー率を調べ、
データ伝送エラー率が規定値より低い場合には、読取部からの画情報を2次元圧縮符号化により符号化し、設定されたモデムレートで送信し、
データ伝送エラー率が規定値より高い場合には、1頁分の画情報を1次元圧縮モード、低速のモデムレートとして再度試験データを送出し、
送出すべき画情報が複数頁でない場合は呼解除をして回線を切断し、
送出すべき画情報が複数頁の場合は、そのままのモードで画情報を送信し続ける、
符号化された画情報を、回線を通じて被呼局へ送出するファクシミリ装置。

4.本願発明と引用発明との対比

引用発明における「ファクシミリ装置」は「画像通信装置」であって、引用発明と本願発明は、回線の状態に応じた適切なデータ圧縮方式を自動的に選択し、画像劣化(乱れ)を解決する目的において共通する。
「回線」は「ネットワーク」と等価であり、引用発明における「被呼局」は本願発明における「送信先端末」に相当する。
引用発明における「画情報」「データ圧縮部のモード」は本願発明における「画像データ」「符号化方式」に相当する。「データ伝送エラー率」は「通信回線品質」に相当する。
そして、引用発明における「被呼局からのDIS信号により被呼局が2次元圧縮手段による符号化された画情報を受信する機能を有しているかを識別し、有しているときは、データ圧縮部2のモードを伝送効率の良い2次元圧縮モードに設定」する「制御部1」は「所望の送信先端末と自身とが共通に保有する符号化復号化能力の中で最も圧縮率の高い符号化方式」を選択する「選択手段」と等価である。

また、「データ伝送エラー率」と「通信回線品質」は同じことを意味し、引用発明における「設定したモデムレートにより試験データを送出し、回線の状態によるデータ伝送エラー率を調べ」ることは、本願発明における「ネットワークの通信回線品質を検査」することに相当する。

そして、引用発明に
おける「再度送出される試験データ」とは、送出すべき画情報が1頁の場合該試験データをもって送信を終了するものであり、複数頁の場合には制御部は「そのままのモードで画情報を送出し続ける」ものであるから、「再度送出される試験データ」とは称されているものの、送出すべき画像データ(画情報)自体でもある。

したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、次の(ク)の点で一致し、(ケ)及び(コ)の点で相違がある。

[一致点]
(ク)ネットワークの通信回線品質を検査する検査手段と、
前記検査手段で知得した通信回線品質と、所望の送信先端末と自身とが共通に保有する符号化復号化能力の中で最も圧縮率の高い符号化方式とに基づいて最終的に選択する画像データの符号化方式を決定する手段と、
前記選択手段で選択された符号化方式で画像データを符号化する符号化手段と、
前記符号化手段で符号化された画像データを、前記ネットワークを通じて所望の送信先端末へ送信する送信手段と
を有する
ことを特徴とする画像通信装置。

[相違点]
(ケ)最終的に選択する符号化方式を決定する手段が、本願発明では「検査手段で知得した通信回線品質と、所望の送信先端末と自身とが共通に保有する符号化復号化能力の中で最も圧縮率の高い符号化方式と、最終的に選択する符号化方式とが予め関連付けられた符号化方式選択表」に基づいて行われる選択手段であるのに対し、引用発明では、そのような選択表は有せず、符号化方式を単に圧縮率の低い圧縮モードに変更する手段である点。

(コ)本願発明が、回線のモデムレートを考慮していないのに対し、引用発明は、符号化モード(符号化方式)を変更する際に併せてモデムレートを低速にする変更を同時に行っている点。

5.相違点の判断

上記相違点(ケ)について検討する。

本願発明における「検査手段で知得した通信回線品質と、所望の送信先端末と自身とが共通に保有する符号化復号化能力の中で最も圧縮率の高い符号化方式と、最終的に選択する符号化方式とが予め関連付けられた符号化方式選択表」とは、表現として必ずしも明確ではないが、図4に示されているような、「通信回線品質」と「共通に保有する符号化復号化能力の中で最も圧縮率の高い符号化方式」により「最終的に選択する符号化方式」を決定するルールを定めた表であることは明らかである。

引用発明は、そのような表は用いてはいないものの、伝送データエラー率(すなわち通信回線品質)に対する規定値との比較で「最終的に選択する符号化方式」が決定されるものであるから、「通信回線品質」と「共通に保有する符号化復号化能力の中で最も圧縮率の高い符号化方式」により、「最終的に選択する符号化方式」が決定している点では本願発明と相違しない。

そうすると、本願発明と引用発明は、同様の判断をしているのであって、両者の違いは、その判断に際し、予め作成されている表を用いて処理を選択しているか、試験データの送出の結果を受けて最終的な符号化方式に決定されるかの違いであるということができる。

一方、一般に、あるルールに基づいて条件判断をし、判断に基づいて最終的な処理を決定する場合に実行される手法としては、順次条件を変更して適合する条件のものを最終的な決定とする手法か、条件と処理の対応を予め求めて対応表(あるいは演算式)を作成し、これにより処理を選択して最終的な決定とする手法の何れかである。
両者の違いは、処理の度に毎回試験して処理を決めるか、前もって試験した結果をその後の処理においても用いるかの違いであって、何れの手法も周知である。
総処理数が少ない場合に前者が用いられ、総処理数が多い場合に後者が用いられることが多く、通常、表(あるいは演算式)を作成する過程が余分に加わるコストと、表を用いることの利点との見合いで決定される。

してみれば、上記本願発明と引用発明の相違点は、この手法の違いであって、周知の2つの手法の内、何れの手法を用いるかは必要に応じて決定すべき要素であって、引用発明において、予め試験した結果を表にしておき、処理の際、すなわち画像データの送信の際に、その表に基づいて符号化方式を選択することは、当業者が容易に想考し得ることである。

なお、あるルールに基づいて条件判断をし、判断に基づいて最終的な処理を決定する場合に実行される手法として、条件と処理の対応を予め求めて対応表(あるいは演算式)を作成し、これにより処理を選択して最終的な決定とすることの周知例を示す刊行物として、例えば、特開平11-313048号公報、実願昭62-189419号(実開平1-93876号)のマイクロフィルムが挙げられる。
特開平11-313048号公報の段落0048には、「まず、送信側装置と受信側装置との間で呼接続の開始時にお互いの能力交換(どのような符号化器、復号器を持っているなど)を行っておく。そして、複数のメディア情報の送信が開始されると、通信制御部13で検出された通信路10の伝送帯域(通信路情報)に応じて、符号化制御部16がテーブル23を参照して伝送帯域に応じたメディア情報毎の符号化方式を符号化部11に指示する。」と記載されており、検出された通信路情報(すなわち、ある条件)によりテーブル(すなわち、選択表)を参照して符号化方式(処理内容)を選択する手法が示されている。

相違点(コ)について検討する。

モデムレートを変更するのは、モデムレートを変更することが可能な場合であって、かつ、モデムレートが通信回線品質に影響すると考える場合である。
モデムレートの変更ができない場合、あるいは、モデムレートが通信回線品質に影響しないと考えるのであれば、モデムレートを考慮する必要はないのであって、モデムレートを変更する構成は、特殊な場合の付加条件に他ならない。
本願発明は、そのような特殊な条件を想定せず、そのような構成を省力した単なる上位概念の構成というだけのことである。

引用発明は、モデムレートを変更することの有無に関係なく、符号化方式を変更することのみで成立する技術思想を有しており、特に必要でない条件、構成を省略することは単なる設計的事項に他ならない。

なお、審判請求人は審判請求書(平成20年1月16日提出の手続補正書)において、「(3)本願発明と引用発明との対比」として次の主張をしている。
「原審審査官殿の拒絶の主旨は、「引用文献1に記載の技術では、被呼局ファクシミリ装置が2次元圧縮手段により符号化された画情報を受信する機能を有している場合、本願で言う暫定符号化方式が2次元圧縮方式で、通信開始時に最初に送出する高速モデムレートによる試験データの、1)データ伝送エラー率が規定値より低くて被呼局から応答信号が肯定応答の場合、選択される符号化方式は2次元圧縮方式、2)データ伝送エラー率が規定値より高くて被呼局からの応答信号が否定応答の場合、選択される符号化方式は1次元圧縮方式ということは、1)高速モデムレートOK-2次元圧縮方式-2次元圧縮方式、2)高速モデムレートNG-2次元圧縮方式-1次元圧縮方式、という符号化方式選択表に相当する」と思量する。
しかしながら、引用文献1に記載の技術では、被呼局ファクシミリ装置が2次元圧縮手段により符号化された画情報を受信する機能を有している場合に、デフォルトで2次元圧縮方式を選択し、試験データを送出し、上記2)の場合、モデムレートを前回より低速に再設定して試験データを送出する。更にモデムレートを前回より低速に再設定して試験データを送出することを繰り返して通信回線品質が確定する場合でも、符号化方式は1次元圧縮方式で固定である。言い換えれば通信回線品質を知得して、その回線品質と、送信先端末と自身とが共通に保有する符号化復号化能力の中で最も圧縮率の高い符号化方式と、最終的に選択する符号化方式とが予め関連付けられた符号化方式選択表に基づいて復号化方式を選択しているとは言えない。」

しかしながら、該主張は、その文面から明らかなように、あくまで「2)」の場合についての主張であって、「1)」の場合において正答な主張ではない。
また、上述したように、モデムレートの変更を発明を構成する要件としないことが設計的事項として判断されるから、モデムレートの変更の処理の詳細な差異について引用発明を分析すること自体が意味をなさない主張である。
よって、審判請求人の該主張は認めることができない。

6.相違点の判断についての付記

本願発明と引用発明の相違点についての判断は前項のとおりであるが、本願発明の実施例と引用発明との相違についても判断しておく。

本願発明の実施例では符号化方式として、JBIG、MMR、MR、MHの4種を想定しているのに対して、引用発明の実施例では、2次元符号化方式(すなわちMR)と1次元符号化方式の2種しか想定していない。
しかしながら、MRより圧縮率の高い符号化方式としてMMR、JBIGは周知の方式であり、この2種をも加えて想定すること自体は設計的事項にすぎない。
そして、引用発明において4種の符号化方式を想定した場合に、引用発明は、データ伝送エラー率が規定値より低くなるまで符号化方式を順次変更して試験データを送出することになる。
これに対し、本願発明は表を用い、表に基づいて選択された符号化方式を用いることで、データを繰り返し送出することがないという効果を奏するものであるが、これは表を用いること自体から当然予測される効果であって、画像データを圧縮して符号化する場合における特別の効果ではない。
したがって、仮に本願発明が、その実施例の如く、暫定符号化方式として4種(少なくとも3以上)の符号化方式を想定することが必須構成要件であるとしても、上記判断は左右されるものではない。

7.むすび

以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2から請求項14に係る各発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-07 
結審通知日 2009-04-14 
審決日 2009-04-27 
出願番号 特願2005-100760(P2005-100760)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 庸介  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 畑中 高行
原 光明
発明の名称 画像通信装置  
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