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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G |
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管理番号 | 1199268 |
審判番号 | 不服2007-34859 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-27 |
確定日 | 2009-06-19 |
事件の表示 | 特願2002-105119「プラグイン分岐構造」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月24日出願公開、特開2003-304626〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成14年4月8日の出願であって、平成19年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成19年12月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成20年1月9日に手続補正がなされたものである。 II.平成20年1月9日付けの手続補正についての却下の決定 [補正却下の結論] 平成20年1月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】異相導体間及び最外側の導体と側板との間を絶縁する絶縁セパレータと、 該絶縁セパレータに添って配設された導電性部材と、 該絶縁セパレータ及び該導電性部材を一括締着する締着具とを、 複数の導体を収納するバスダクトに設置して分岐部を構成し、 該分岐部に分岐用端子を有する分岐装置を配設して分岐可能であるプラグイン分岐構造であって、 少なくとも、該導電性部材若しくは該分岐用端子の何れか一方がバネ力を有し、該バネ力によって、且つ該導体の上端縁よりも上方位置で該導電性部材と該分岐用端子を電気的に接続可能であると共に、 該分岐部に於けるバスダクトの導体に該締着具に対応する深さの切欠凹部を設け、該切欠凹部に該締着具を配設することを特徴とするプラグイン分岐構造。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「少なくとも、該導電性部材若しくは該分岐用端子の何れか一方がバネ力を有し、該バネ力によって、該導電性部材と該分岐用端子を電気的に接続可能であると共に、」を「少なくとも、該導電性部材若しくは該分岐用端子の何れか一方がバネ力を有し、該バネ力によって、且つ該導体の上端縁よりも上方位置で該導電性部材と該分岐用端子を電気的に接続可能であると共に、」と限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例の記載事項 原査定の平成19年4月20日付け拒絶理由で引用した特開2000-308242号公報(以下「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。 a:「【請求項1】所定間隔で複数配設した絶縁セパレータの各間に、接続すべきバスダクトの導体端部を挿入して互いに接続し、該絶縁セパレータの両側から締着具で一括締着するバスダクト接続部において、該導体端部相互の接続部分に分岐用端子の受入接続部を形成して、該受入接続部が位置する開放面をカバー部材で覆い、該カバー部材に該受入接続部への対応箇所に該分岐用端子を挿入可能な開口部を形成できるノックアウト部が設けられていることを特徴とするバスダクト接続部。」 b:「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、オフィスビルなどで電気幹線路を構成するバスダクトの接続部に係り、特に分岐回路を取り出す際に使用する、絶縁被覆導体密着形又は相間縮小形など各相一括締め付け式のバスダクト接続部に関する。」 c:「【0008】例えば、接続すべきバスダクト相互の同相導体端部を導電性接続部材に添った状態で向かい合わせて接続し、或いは接続すべきバスダクト相互の同相導体端部を重ね合わせて直接若しくは導電性接続部材を介して接続するもので、異相導体端部間及び最外側導体端部とその外側に設けたダクト側板継ぎ板との間に絶縁セパレータを介在し、これらに絶縁スリーブに挿通した締着具を貫通させる等により一括緊締するバスダクト接続部において、同相導体端部相互の接続部分に分岐用端子の受入可能な受入接続部を形成して、受入接続部が位置する分岐に対応した開放面をカバー部材で覆い、カバー部材には受入接続部への対応箇所において、分岐が必要なときに少なくとも分岐用端子を挿入可能な大きさの開口部を形成できるノックアウト部が設けられているものである。」 d:「【0014】本発明のバスダクト接続部の具体例を図1乃至図6に示す。図1はバスダクト接続部の分解斜視図、図2はカバー部材を取り外した非カバー状態のバスダクト接続部を示す一部切断平面図、図3はプラグイン分岐用開口部が開口状態であるバスダクト接続部を示す平面図、図4はプラグイン分岐用開口部が開口状態であるカバー部材を示す斜視図、図5はバスダクト接続部と分岐用ボックスをプラグイン分岐用端子で接続した状態を示す正面図、図6はバスダクト接続部と分岐用ボックスをプラグイン分岐用端子で接続した状態の要部を示す一部切断正面図である。 【0015】バスダクト接続部1には、図1及び図2に示すように、所定間隔をあけて板形の絶縁セパレータ2が四つ等複数配設され、両側に位置する絶縁セパレータ2の外側にダクト側板継ぎ板3が配設されており、絶縁セパレータ2の相互間には絶縁セパレータ2に添って、例えば二枚の導電性接続部材4が設けられている。絶縁セパレータ2及び導電性接続部材4の略中央には略方形の挿通孔2a、4aがそれぞれ形成され、挿通孔2a、4aには絶縁スリーブ5が挿通されている。更に、ダクト側板継ぎ板3及び挿通される絶縁スリーブ5の略中心には、締着具であるボルト6aを挿通するためのボルト挿通孔3a、5aが形成されている。 【0016】絶縁セパレータ2、ダクト側板継ぎ板3、導電性接続部材4は、絶縁スリーブ5のボルト挿通孔5aにボルト6aを挿通するなど、ボルト6aやナット6b等の締着具によって予め仮締着されており、バスダクト7を接続していないときにも仮組みされたユニットになっている。 【0017】接続すべきバスダクト7の端部には、所定間隔で板形の導体端部8が三つ等複数設けられ、導体端部8の両外側にはバスダクト側板9が配設されている。対向するバスダクト7を相互に接続する際には、各導体端部8を各絶縁セパレータ2間に設けられた二枚の導電性接続部材4間に絶縁スリーブ5の近傍まで挿入し、同相導体端部8同士を導電性接続部材4を介して電気的に接続すると共に、バスダクト側板9を両ダクト側板継ぎ板2の外側面に接触するように位置させる。このとき、絶縁セパレータ2によって、異相の導体端部8間及び最外側の導体端部8とダクト側板継ぎ板3との間は絶縁される。そして、バスダクト側板9を外側から皿ばね6cを押すように、皿ばね6cを介して孔3a、5aにボルト6aを挿入し、ナット6bで締め付けて一括本締着することでバスダクト7相互を接続する構成である。 【0018】また、対向して接続すべき一方のバスダクト7の導体端部8と他方のバスダクト7の導体端部8との間で且つ導電性接続部材4間には、後述する分岐用ボックス12等のプラグイン分岐用端子13が挿入できるように受入接続部として分岐用空隙10が形成され、分岐用空隙10に挿入されたプラグイン分岐用端子13は、両側に位置する導電性接続部材4で狭持され分岐されることとなる。」 e:「【0022】プラグイン分岐用開口部11aが形成されたカバー部材11を元のバスダクト接続部1の位置に取り付けることにより、プラグイン分岐用開口部11aを有する状態でバスダクト接続部1が得られ、バスダクト7の接続が完了する。そして、図5及び図6に示すように、プラグイン分岐用開口部11aから分岐ボックス12等のプラグイン分岐用端子13を挿入すると、プラグイン分岐用端子13が導電性接続部材4間に差し込まれて狭持され、プラグイン分岐用端子13と導電性接続部材4が電気的に接続されることになる。」 上記記載から引用例1には、 「異相導体間及び最外側の導体と側板との間を絶縁する絶縁セパレータと、 該絶縁セパレータに添って配設された導電性部材と、 該絶縁セパレータ及び該導電性部材を一括締着する締着具とを、 複数の導体を収納するバスダクトに設置して分岐部を構成し、 該分岐部に分岐用端子を有する分岐装置を配設して分岐可能であるプラグイン分岐構造。」が記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。 また、同じく原査定の拒絶理由で引用した特公昭51-15592号公報(以下「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。 f:「1 扁平断面を有する導体1の中間分岐部に、ほぼ90°の開き角で側縁に開口する分岐導体挿入用V形切欠部2を設けると共にそのV形切欠部2の底部にボルト挿通溝3を設け、かつ導体1における前記中間分岐部の側面には導電接続板4を当接して、前記ボルト挿通孔3および導電接続板4に挿通したボルト5により導体1と導電接続板4とを締付固定したことを特徴とする導体分岐接続部構造。」(特許請求の範囲、第1?6図) g:「この発明によれば、導体1における分岐部にはV形切欠部2およびボルト挿通孔3が設けられているだけであつて、分岐部の導体は分断されることなく一側部が一体になつて連続しており、しかも分岐部の導体側面には、導電接続板4が当接されてボルト5により締付固定されているので、短絡電磁力などに対する機械的強度が大きく、そのため特別な補強手段を用いる必要がなく、また後日、導体から電力を分岐する必要がある場合は、単にボルト5を弛めて分岐導体18の端部を導体1におけるV形切欠部2に挿入して、両者を同一平面内で突合わせ接触させた状態でボルト5を緊締するだけでよいので、分岐作業を著しく容易にかつ迅速に行なうことができると共に絶縁処理も簡単に行なうことができ、さらに分岐容量が小さいときは、V形切欠部2の開口部の巾よりも小さい巾の分岐導体を単に直角に切断して用いることができ、また分岐容量が導体1と同程度に大きい場合は、導体1とほぼ同じ巾の分岐導体の両隅部を45°の角度で切断してV形切欠部内に挿入することができ、したがつて任意容量の電力を容易に分岐することができる等の効果が得られる。」(第2頁第4欄第6?27行) また、特公昭49-044388号公報(以下「引用例3」という)には、以下の事項が記載されている。 h:第1図?第6図には、バスダクトの接続装置において、分岐用端子の接続位置としていくつかのパターンが記載されており、特に、第5図では、導体の端縁よりも外方の位置で導電性部材と分岐用端子が電気的に接続されている。 3.対比 引用発明と本願補正発明を対比すると、両者は次の点で一致する。 異相導体間及び最外側の導体と側板との間を絶縁する絶縁セパレータと、 該絶縁セパレータに添って配設された導電性部材と、 該絶縁セパレータ及び該導電性部材を一括締着する締着具とを、 複数の導体を収納するバスダクトに設置して分岐部を構成し、 該分岐部に分岐用端子を有する分岐装置を配設して分岐可能であるプラグイン分岐構造 そして、両者は次の点で相違する。 (相違点1) 本願補正発明においては、少なくとも、導電性部材若しくは分岐用端子の何れか一方がバネ力を有し、バネ力によって、且つ導体の上端縁よりも上方位置で導電性部材と分岐用端子を電気的に接続可能であるのに対し、引用発明は、導電性部材と該分岐用端子を電気的に接続可能であるが、その接続手段と位置が異なっている点。 (相違点2) 本願補正発明においては、分岐部に於けるバスダクトの導体に締着具に対応する深さの切欠凹部を設け、切欠凹部に締着具を配設するのに対し、引用発明は、そのような構成を有していない点。 4.相違点についての判断 (1)相違点1について。 バスダクトの分岐路を、バネ力による電気的な接続によって形成することは周知の技術事項であり、(例えば、特開平11-262142号公報、特開2001-313102号公報)。このような構成とすることは当業者が容易になし得ることにすぎない。 また、導電性部材と分岐用端子を電気的に接続する位置に関して、接続導体の端縁よりも外側の位置で接続導体片と分岐用端子を電気的に接続することは、例えば引用例3の記載事項hに記載されているように公知の事項であって、本願補正発明のように導体の上端縁よりも上方位置で導電性部材と分岐用端子を電気的に接続可能とすることに何ら困難性は認められない。 (2)相違点2について。 本願補正発明では、分岐部に於けるバスダクトの導体に締着具に対応する深さの切欠凹部を設け、切欠凹部に該締着具を配設しているが、引用例2には、分岐接続部に於けるバスダクトの導体1に、ボルト5に対応する深さのボルト挿通溝3を有したV形切欠部2設け、該V形切欠部2の該ボルト挿通溝3に該ボルト5を配設する構成が記載されている。 そして、切欠部の大きさは種々の事情により変更し得るものであって(記載事項g)、締着具に対応する深さとすることは、当業者が適宜定め得る設計事項にすぎない。 そして、出願人が主張する効果についても何ら格別のものとは認められない。 したがって、本願補正発明は、引用例1?3に記載されたもの及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.上記補正却下された後の本願発明について 1.本願発明の記載事項 平成20年1月9日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成19年6月4日付け手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】異相導体間及び最外側の導体と側板との間を絶縁する絶縁セパレータと、 該絶縁セパレータに添って配設された導電性部材と、 該絶縁セパレータ及び該導電性部材を一括締着する締着具とを、 複数の導体を収納するバスダクトに設置して分岐部を構成し、 該分岐部に分岐用端子を有する分岐装置を配設して分岐可能であるプラグイン分岐構造 であって、 少なくとも、該導電性部材若しくは該分岐用端子の何れか一方がバネ力を有し、該バネ 力によって該導電性部材と該分岐用端子を電気的に接続可能であると共に、 該分岐部に於けるバスダクトの導体に該締着具に対応する深さの切欠凹部を設け、該切 欠凹部に該締着具を配設することを特徴とするプラグイン分岐構造。」 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は前記II.2に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記II.1で検討した本願補正発明の「少なくとも、該導電性部材若しくは該分岐用端子の何れか一方がバネ力を有し、該バネ力によって、且つ該導体の上端縁よりも上方位置で該導電性部材と該分岐用端子を電気的に接続可能であると共に、」が「少なくとも、該導電性部材若しくは該分岐用端子の何れか一方がバネ力を有し、該バネ力によって、該導電性部材と該分岐用端子を電気的に接続可能であると共に、」となるものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記II.4に記載したとおり、引用例1?3に記載されたもの及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、導体の上端縁よりも上方位置で該導電性部材と該分岐用端子を電気的に接続可能である点を含まない本願発明は引用例1?2に記載されたもの及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4..むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1?2に記載されたもの及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本件審判の請求は成り立たない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-04-16 |
結審通知日 | 2009-04-22 |
審決日 | 2009-05-08 |
出願番号 | 特願2002-105119(P2002-105119) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02G)
P 1 8・ 575- Z (H02G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 片岡 功行 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
金丸 治之 中川 真一 |
発明の名称 | プラグイン分岐構造 |
代理人 | 元井 成幸 |
代理人 | 高橋 隆二 |