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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200520859 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1199515 |
審判番号 | 不服2006-26063 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-17 |
確定日 | 2009-06-26 |
事件の表示 | 平成10年特許願第83928号「水中油型乳化油脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月12日出願公開、特開平11-276106〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成10年3月30日の出願であって、平成18年1月16日付けの拒絶理由通知に対して、同年3月20日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、同年10月11日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月17日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。 第2 本願発明 本願発明は、平成18年3月20日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲における請求項1に記載される次のとおりのものである。 「乳化剤として、0.30重量%?1.00重量%のカルボキシル基を有する有機酸モノグリセリド、0.03重量%?0.25重量%のレシチン、及び0.05重量%?0.30重量%のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、かつ乳由来のタンパク質を含有する水中油型乳化油脂組成物であって、前記カルボキシル基を有する有機酸モノグリセリドが、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド及びジアセチル酒石酸モノグリセリドのうちの1種類又は2種類以上の混合物であることを特徴とする水中油型乳化油脂組成物。」(以下、「本願発明」という。) 第3 原査定の理由 原査定における拒絶の理由の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物である特開昭61-209562号公報(引用例1)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。 第4 当審の判断 1 刊行物について 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である特開昭61-209562号公報(引用例1)には、以下の事項が記載されている。 (1) 「組成重量百分率で油脂25?55%、タン白質0.5?6.0%および乳化剤を混合乳化して起泡性水中油型乳化組成物を製造するに当り、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル0.05?1.0%、レシチン0.05?0.50%およびジアセチル酒石酸モノグリセリド0.05?0.50%を使用し、得られた水中油型乳化脂を超高温加熱滅菌処理することを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物の製造方法。」(特許請求の範囲第1項) (2) 「つぎにこの発明のタン白質は主に牛乳、生クリーム、脱脂粉乳、カゼインソーダ、ホエーパウダー、ホエーチーズのような無脂乳固形分、卵白タン白質、大豆タン白質などの単一種類または2種以上を混合したものである。」(3頁左上欄13?17行) 2 引用発明 刊行物1には、 「組成重量百分率で油脂25?55%、タン白質0.5?6.0%および乳化剤を混合乳化して起泡性水中油型乳化組成物を製造するに当り、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル0.05?1.0%、レシチン0.05?0.50%およびジアセチル酒石酸モノグリセリド0.05?0.50%を使用し、得られた水中油型乳化脂を超高温加熱滅菌処理することを特徴とする起泡性水中油型乳化組成物の製造方法。」(摘示(1)) に関する発明が記載されているところ、かかる起泡性水中油型乳化組成物の製造方法により、対応する起泡性水中油型乳化組成物が得られることは明らかであること、及び組成重量百分率で表す「%」は「重量%」を意味すること、を考慮すると、刊行物1には、 「油脂25重量%?55重量%、タン白質0.5重量%?6.0重量%および乳化剤を混合乳化して得られる起泡性水中油型乳化組成物であって、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル0.05重量%?1.0重量%、レシチン0.05重量%?0.50重量%およびジアセチル酒石酸モノグリセリド0.05重量%?0.50重量%を使用し、得られた水中油型乳化脂を超高温加熱滅菌処理して得られる起泡性水中油型乳化組成物。」 の発明が記載されているということができる。 次に、「ジアセチル酒石酸モノグリセリド」は「カルボキシル基を有する有機酸モノグリセリド」であること、「水中油型乳化脂」及び「起泡性水中油型乳化組成物」は何れも「水中油型乳化油脂組成物」に対応すること、並びに起泡性水中油型乳化組成物の原料として「使用」するものは、得られた起泡性水中油型乳化組成物の中に「含有」されること、を考慮して、本願発明の記載ぶりに合わせると、刊行物1には、 「乳化剤として、0.05重量%?0.50重量%のカルボキシル基を有する有機酸モノグリセリド、0.05重量%?0.50重量%のレシチン、及び0.05重量%?1.0重量%のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、かつ、タンパク質0.5重量%?6.0重量%及び油脂25重量%?55重量%を混合乳化して得られる水中油型乳化油脂組成物であって、前記カルボキシル基を有する有機酸モノグリセリドがジアセチル酒石酸モノグリセリドであり、得られた水中油型乳化油脂組成物を超高温加熱滅菌処理して得られる、水中油型乳化油脂組成物。」 という発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 3 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、乳化剤の含有量に関して、ジアセチル酒石酸モノグリセリドについては、本願発明では「0.30重量%?1.00重量%」であるのに対し、引用発明では「0.05重量%?0.50重量%」であるから、両者は「0.30重量%?0.50重量%」で重複し、レシチンについては、本願発明では「0.03重量%?0.25重量%」であるのに対し、引用発明では「0.05重量%?0.50重量%」であるから、両者は「0.05?0.25重量%」で重複し、ポリグリセリン脂肪酸エステルについては、本願発明では「0.05重量%?0.30重量%」であるのに対し、引用発明では「0.05?1.0重量%」であるから、両者は「0.05重量%?0.30重量%」で重複する。 また、本願発明の水中油型乳化油脂組成物も、乳化剤等の原料を混合乳化して得られるものである。 そうすると、本願発明と引用発明は、 「乳化剤として、0.30重量%?0.50重量%のカルボキシル基を有する有機酸モノグリセリド、0.05重量%?0.25重量%のレシチン、及び0.05重量%?0.30重量%のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有し、かつタンパク質を含有する水中油型乳化油脂組成物であって、前記カルボキシル基を有する有機酸モノグリセリドが、ジアセチル酒石酸モノグリセリドである水中油型乳化油脂組成物。」 の点で一致するが、以下の点において一応相違すると認められる。 (1) タンパク質について、本願発明が「乳由来の」タンパク質と規定するのに対し、引用発明では「乳由来の」タンパク質であることは規定されていない点 (2) 水中油型乳化油脂組成物について、引用発明は更に「油脂25重量%?55重量%を含有する」と規定するのに対し、本願発明ではかかる規定はなされていない点 (3) 水中油型乳化油脂組成物について、引用発明は更に「得られた水中油型乳化油脂組成物を超高温加熱滅菌処理して得られる」ものとするのに対し、本願発明ではそのようなものである旨の規定はなされていない点 (以下、この一応の相違点を、それぞれ「相違点(1)」、「相違点(2)」及び「相違点(3)」という。) 4 相違点についての判断 (1) 相違点(1)について 刊行物1には、「この発明のタン白質は主に牛乳、生クリーム、脱脂粉乳、カゼインソーダ、ホエーパウダー、ホエーチーズのような無脂乳固形分」(摘示(2))と記載されているところ、ここにいう「牛乳、生クリーム、脱脂粉乳、カゼインソーダ、ホエーパウダー、ホエーチーズ」は、乳由来のタンパク質を含有するものであるから、引用発明におけるタンパク質は「乳由来の」タンパク質を含有する場合を包含している。 してみると、相違点(1)は実質的な相違点であるとは認められない。 (2) 相違点(2)について 本願明細書においては、 「本発明で用いる油脂は食用の油脂であれば動植物油脂のいずれでも構わない。例えば、動物油脂としては乳脂、ラード、牛脂、魚油等が挙げられ、また植物油脂としてはナタネ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、大豆油、サフラワー油、コーン油等が挙げられる。さらに、これらの油脂を化学的に処理した硬化油、エステル交換油、分別油のいずれでもよい。また、これらの油脂の2種以上を任意の割合で混合した油脂でもよい。乳化に際しては、最終製品中で、例えば20重量%?45重量%、好ましい下限としては30重量%、好ましい上限としては40重量%となるように油脂を配合することができる。」(段落【0009】) と記載されていることからみて、本願発明は「油脂20重量%?45重量%を含有する」態様を包含するものと認められる。 してみると、本願発明は「油脂20重量%?45重量%を含有する」態様を包含する点において引用発明と重複するので、相違点(2)は実質的な相違点であるとは認められない。 (3) 相違点(3)について 本願明細書においては、 「得られた水中油型乳化油脂組成物は通常の合成クリームと同様に取り扱うことができる。」(段落【0017】) とされているところ、「通常の合成クリーム」においては、殺菌または滅菌するために、水中油型乳化油脂組成物を超高温加熱滅菌処理することは周知である(必要なら、例えば、特開平7-255376号公報、特に段落【0010】参照。)から、本願発明においても、殺菌または滅菌するために、「得られた水中油型乳化油脂組成物を超高温加熱滅菌処理して得られる」ものとする態様を包含するものと認められる。 したがって、相違点(3)は実質的な相違点であるとは認められない。 5 結論 したがって、上記各相違点は実質的な相違点であるとは認められないので、本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 6 請求人の主張について 請求人は、審判請求書についての平成19年2月16日付け手続補正書の「(2-2-1)引用文献1との対比」の項目において、以下の主張をしている。 「本願発明は、『カルボキシル基を有する有機酸モノグリセリド』、『レシチン』、及び『ポリグリセリン脂肪酸エステル』の3つの成分を組合せて用いる場合に、これらの組成を、引用文献1では全く認識されていない『温度変化や振動を受けても増粘や固化しない』合成クリーム等として利用可能な水中油型乳化油脂組成物を得るために必要とされる範囲に特定している点で引用文献1と異なります。」 しかしながら、先に「3 対比」の項で述べたように、本願発明の「カルボキシル基を有する有機酸モノグリセリド」、「レシチン」、及び「ポリグリセリン脂肪酸エステル」という3つの成分の数的範囲は引用発明と重複しているので、かかる3つの成分の数的範囲において、本願発明と引用発明とが異なるものとは認められない。 (なお、請求人は「本願発明は、・・・引用文献1では全く認識されていない『温度変化や振動を受けても増粘や固化しない』合成クリーム等として利用可能な水中油型乳化油脂組成物を得るために必要とされる範囲に特定している」と主張しているが、刊行物1において「合成クリームに必要な性質」として「耐熱性(気温、室温などによる品温の上昇に耐える性質)や耐振性(輸送、運搬などの際の振動に耐える性質)」を挙げている(1頁右下欄14?20行)ように、温度変化や振動を受けても増粘や固化しない性質は合成クリームとして当然に求められるものである。) したがって、請求人の主張は前記の結論を左右するものではない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法29条1項3号の規定に該当し特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-04-20 |
結審通知日 | 2009-04-22 |
審決日 | 2009-05-11 |
出願番号 | 特願平10-83928 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A23L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉森 晃、上條 肇 |
特許庁審判長 |
唐木 以知良 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 坂崎 恵美子 |
発明の名称 | 水中油型乳化油脂組成物 |
代理人 | 石橋 政幸 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |
復代理人 | 太田 顕学 |
代理人 | 緒方 雅昭 |