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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1199540
審判番号 不服2006-9792  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-12 
確定日 2009-06-24 
事件の表示 特願2001-259431「環状ウレタンの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 5日出願公開、特開2003- 64062〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年8月29日に特許出願されたものであって、拒絶理由通知に応答して平成17年6月13日付けで手続補正書と平成17年6月14日付けで意見書が提出されたが、平成18年4月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年5月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年6月12日付けで手続補正がなされたものであり、その後、前置報告書を用いた審尋に応答して平成20年10月17日付け回答書が提出されたものである。

2.平成18年6月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年6月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の概略
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
補正前(平成17年6月13日付け手続補正書参照)の
「【請求項1】 アミノアルコールと二酸化炭素を原料とし、二酸化炭素が300kg/cm^(2)までの圧力範囲(但し、50kg/cm^(2)以下及び71kg/cm^(2)以下を除く。)及びハロゲン化化合物を使用しない条件で、脱水縮合剤の存在下で反応させることを特徴とする環状ウレタンの製造方法。」を、
補正後の
「【請求項1】 アミノアルコールと二酸化炭素を原料とし、二酸化炭素が300kg/cm^(2)までの圧力範囲で200℃までの温度範囲の高温高圧の二酸化炭素(但し、臨界点未満の二酸化炭素を除く。)の条件で、有機ハロゲン化合物を使用しない条件で、脱水縮合剤の存在下で反応させることを特徴とする環状ウレタンの製造方法。」(以下、同項記載の発明を「本願補正発明」という。)
とする補正を含むものである。

(2)補正の可否
上記補正によって、
(A)但し書きについて、「(但し、50kg/cm^(2)以下及び71kg/cm^(2)以下を除く。)」から「(但し、臨界点未満の二酸化炭素を除く。)」と補正され、
(B)新たに、「200℃までの温度範囲の高温高圧」との限定が付され、
(C)「ハロゲン化化合物を使用しない条件」が、「有機ハロゲン化合物を使用しない条件で」と補正された。

そこで、先ず(A)の点を検討する。
本願補正発明で用いる二酸化炭素の圧力と温度について、本願の願書に最初に添付した明細書(以下、「本願当初明細書」ともいう。)の記載を検討すると、次の記載がある。
(H-i)「【請求項6】二酸化炭素が1kg/cm^(2)乃至300kg/cm^(2)の圧力範囲で製造を行うことを特徴とする請求項1乃至5の製造方法。
【請求項7】反応温度が10℃以上であることを特徴とする請求項1乃至6の製造方法。」
(H-ii)「【0037】アミノアルコールと二酸化炭素は容易に反応するため、本発明に用いる二酸化炭素の圧力条件は加圧下、常圧下あるいは減圧下の何れの条件で用いても環状ウレタンを製造可能である。但し、2級アミノ基、3級アミノ基を有するアミノアルコールは塩基性が弱く、二酸化炭素と反応しにくい場合があり、二酸化炭素圧力を上げると、収率が向上する。但し、余りに圧力を上げすぎると収率が下がる傾向が認められ、300kg/cm^(2)以上の圧力下で製造を行うのは好ましくない。本発明では、通常は二酸化炭素の圧力が1kg/cm^(2)乃至300kg/cm^(2)の圧力範囲で適宜圧力条件を変えることで効率良く製造ができるが、好ましくは1kg/cm^(2)乃至250kg/cm^(2)の圧力範囲で、より好ましくは1kg/cm^(2)乃至200kg/cm^(2)の圧力範囲で、及び最も好ましくは1kg/cm^(2)乃至150kg/cm^(2)の圧力範囲で実施するのが良い。
(H-iii)【0038】 本発明の製造方法では、反応温度は10℃以上であれば特に限定せずにアミノアルコールから環状ウレタンを良好に製造することが出来る。製造時の温度条件は使用するアミノアルコールの性質により適宜設定でき、好ましくは10℃乃至200℃の温度範囲で、より好ましくは20℃乃至150℃の温度範囲で、及び最も好ましくは30℃乃至100℃の温度範囲で反応させることができる。なお、100℃以上ではカルボジイミドが分解する場合があるので、100℃以下で製造を行うのが好ましい。」
(H-iv)実施例に関し、実施例1,2,3では40℃及び100kg/cm^(2)、実施例4では40℃及び1?250kg/cm^(2)、実施例5では10?100℃及び100kg/cm^(2)、実施例6では80℃及び100kg/cm^(2)で実施されていて、実施例4において「結果は表3に示され、30分の短時間反応における4-フェニル-2-オキサゾリジノンの収率は、例えば二酸化炭素の圧力がそれぞれ常圧(1kg/cm^(2))では35.5%、38kg/cm^(2)では47.8%及び84kg/cm^(2)ではは51.6%であり、常圧から84kg/cm^(2)の圧力範囲では35.5?51.6%の間で高くなっていく傾向を示した。圧力が90kg/cm^(2)では26.2%、140kg/cm^(2)では32.1%、200kg/cm^(2)では20.6%、250kg/cm^(2)では10.2%であり、二酸化炭素圧力が90kg/cm^(2)をこえると収率が若干低下していく傾向が認められる。」と、実施例5において「結果は表4に示され、得られた4-フェニル-2-オキサゾリジノンの収率は高い温度範囲で良好な結果が得られており、70℃の30分の短時間反応で83.5%の最高値を示した。」とされている(段落【0044】?【0056】参照)
(H-v)「【0057】【発明の効果】 本発明は、二酸化炭素とアミノアルコールを反応させ、脱水縮合剤としてカルボジイミドを使用することで、10℃以上の温度範囲、1kg/cm^(2)乃至300kg/cm^(2)の圧力範囲及び短時間で効率的に環状ウレタンを製造することが出来る。・・・」

これらの記載からみて、「二酸化炭素が300kg/cm^(2)までの圧力範囲で200℃までの温度範囲の高温高圧の二酸化炭素」を用いることは、説明されているが、二酸化炭素の臨界点については全く記載されておらず、臨界点を境に技術的意義が異なるものであることは、何ら言及されていない。
したがって、(A)の点の「(但し、臨界点未満の二酸化炭素を除く。)」との補正は、本願の願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

なお、審判請求理由において請求人は、次のように主張している。
「そこで、本出願人は、今回の手続補正書において、「通常の二酸化炭素」の場合を全て除外する訂正をして本願発明の主題事項を明確化する補正をした。
すなわち、本願発明の反応は、「二酸化炭素が圧力79kg/cm^(2)以上300kg/cm^(2)までの圧力範囲で温度32℃以上200℃以下の高温高圧の二酸化炭素の反応系」で行われるものであることを必須要件として付加する補正をした。
二酸化炭素の圧力が「79kg/cm^(2)以上」であることは、本願明細書段落0053の表3の記載を根拠としており、また、温度が「32℃以上」であることは、段落0055の表4の記載を根拠としているものである。
二酸化炭素の臨界点は、圧力が75.2kg/cm^(2)で、温度が31.1℃であり、それ以上の高温高圧条件では、「通常の二酸化炭素」ではなく、「超臨界二酸化炭素流体」となり、「通常の二酸化炭素」と全く別の反応系が形成される。これらの超臨界二酸化炭素流体については、最も早くても1980年後半以降に研究されてきた新しい技術であり、そのことは、引用文献1、2には、超臨界二酸化炭素流体については何も記載されていないことからも明らかである。引用文献1の記載において、「二酸化炭素の圧力を高めに設定してみることは当業者が容易に成し得たことである」という判断が成立する余地のあるのは「通常の二酸化炭素」の場合であって、反応条件及び反応設備が全く異なる「超臨界二酸化炭素流体」の場合には、成立する余地は全くないものと考えるのが、当技術分野における技術常識である。
しかして、原査定では、・・・中略・・・。
また、本願明細書の表3を見ると、超臨界二酸化炭素条件下(79kg/cm^(2)以上)での反応は、圧力71kg/cm^(2)以下である条件下の反応に比較して、収率等において、この反応系では高い傾向になることがわかる。これは、表3の限られた反応条件下でも、超臨界では、そのような高い傾向が得られることを示したものであり、少なくとも、超臨界での効果の高さを示すものとして、本願発明の内容と矛盾するものではない。」と主張している。
また、前置報告書を用いた審尋に応答して、平成20年10月17日付け回答書において、次のように主張している。
「一般に、二酸化炭素は、臨界点近傍で、その物性が大きく変化することが知られており(審判請求理由補正書に添付した文献参照)、当技術分野において、二酸化炭素を使用する場合は、臨界点以上の超臨界流体と、臨界点以下の通常の二酸化炭素流体を使い分けることが技術常識とされていることから、本願発明において、用いる二酸化炭素として、その効果に応じて、臨界点以下の二酸化炭素流体と臨界点以上の二酸化炭素とを区分して使用することはきわめて通常のことであります。 そして、「通常の二酸化炭素」と「臨界点以上の二酸化炭素」とに区分される「二酸化炭素」の中から、引用文献1で使用している「通常の二酸化炭素」であって、かつ本願発明において、当初明細書の表3、表4の記載からみて、圧条及び温度条件との兼ね合いで、明らかに効果が劣ると認められる「通常の二酸化炭素」である、臨界点未満の二酸化炭素を使用しないことは、「二酸化炭素」を取り扱う当業者にとって自明の事項であるものと解されます。
しかも、二酸化炭素の臨界点(圧力が75.2kg/m^(2)、温度が31.1℃)は、当業者にとって自明のものであります。
したがって、上記補正は、引用文献1で用いている「通常の二酸化炭素」を除外し、かつ、本願発明において、圧力及び温度の負荷量と、収率との関係から、余り効率の良くないと認められる範囲を除くために、「二酸化炭素」の条件として、臨界点未満の二酸化炭素を使用しないこと、そのために、効果の低い、と認められる圧力が71kg/cm^(2)以下(表3)と、温度が32℃以下(表4)の条件の場合を除外することは、当業者における自明の事項の範囲内のことであり、当初明細書に記載された事項の範囲においてしたものであると認められるべきものです。」

しかし、本願当初明細書を検討しても、臨界点未満の二酸化炭素を除くことやその結果臨界点以上の二酸化炭素を使用することは、言及されていない。
なるほど、臨界点を境に二酸化炭素の物性が大きく変化することは知られているが、それを意識しているのであれば、何らかの説明が本願当初明細書に記載されていてしかるべきである。それにもかかわらず、本願当初明細書には、それを窺がい知ることができる記載は全くない。
更に、請求人は、表3、または表3と表4のデータをみれば、通常の二酸化炭素(臨界点未満の二酸化炭素)では、臨界点以上の二酸化炭素に比べて効果が劣ることから、臨界点未満の二酸化炭素を使用しないことは自明な事項である旨を主張している。しかし、表3と表4を検討しても、臨界点以下の圧力である12kg/cm^(2)のときに収率が44.9%,38kg/cm^(2)のときに収率が47.8%であるのに対し、臨界点を超える圧力である79kg/cm^(2)のときに収率が47.8%、84kg/cm^(2)のときに収率が51.6%と同程度であるものの、90kg/cm^(2)のときに収率が26.2%、200kg/cm^(2)のときに収率が20.6%と臨界点を超える圧力の場合の方が収率が劣っていることも明白に読み取れるのであるから、臨界点を境に収率が向上するか否かは不明であると言うしかないのであり、前記請求人の主張が失当であることは明白である。

また、(C)の点については、使用しない条件について、「ハロゲン化化合物を使用しない条件」を「有機ハロゲン化合物を使用しない条件で」と、形式的には広くしたのであるから、即ち、有機以外の(即ち無機の)ハロゲン化化合物を使用してもよいことになるから、拡張といえる。それが実質的な拡張であるか、更に検討を要するが、上記検討の如く、(A)の点で本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、更なる検討は要しないものである。

(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たしていないため、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年6月12日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12にかかる発明は、平成17年6月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 アミノアルコールと二酸化炭素を原料とし、二酸化炭素が300kg/cm^(2)までの圧力範囲(但し、50kg/cm^(2)以下及び71kg/cm^(2)以下を除く。)及びハロゲン化化合物を使用しない条件で、脱水縮合剤の存在下で反応させることを特徴とする環状ウレタンの製造方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前の刊行物である特開昭57-42678号公報(以下、「引用例」という。)には、次のことが記載されている。なお、下線は当審で付与した。
(i)「1 一般式

(式中のR_(1),R_(2),R_(3)及びR_(4)はたがいに同一又は異なり、それぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基であるが、あるいはその中のいずれか2個が連結してアルキレン基を形成しうるものであり、R_(5)は水素原子又はアルキル基である)
で表されるアミノアルコールを、溶媒中、カルボジイミドの存在下で二酸化炭素と反応させることを特徴とする、一般式

(式中のR_(1),R_(2),R_(3),R_(4)及びR_(5)は、前記と同じ意味をもつ)
で表される2-オキサゾリジノン化合物の製法。
2 第三級アミンの存在下で行う特許請求の範囲第1項記載の製法。」(【特許請求の範囲】参照)
(ii)「これらの製造方法の中で、アミノアルコールと二酸化炭素とを反応させる方法(米国特許2,975,187号明細書)は、入手が容易で取り扱いやすい原料を用いること、反応が比較的容易に進行することなどの利点があり、工業的製法として注目されているが、高温、高圧下というか酷な条件下で行わなければならない上に、収率が低いという欠点がある。」(第2頁左上欄1?9行参照)
(iii)「本発明者らは、このような従来法の欠点を克服し、穏和な条件下で収率よく2-オキサゾリジノン化合物を製造しうる方法を開発するために鋭意研究を重ねた結果、溶媒中カルボジイミドの存在下で反応を行わせることにより、比較的穏やかな条件のもとでも高収率で目的化合物を得ることができることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。」(第2頁左上欄10?17行参照)
(iv)「二酸化炭素は、通常ボンベから供給されるが、常圧から50Kg/cm^(2)の圧力、好ましくは数Kg/cm^(2)から20Kg/cm^(2)の圧力で供給される。
反応温度は、常温から約250℃の範囲であるが、好ましくは50?150℃の範囲である。
反応時間は、低温では2時間以上要するが、100℃付近では2時間で十分である。」(第2頁右下欄末行?第3頁左上欄6行参照)
(v)「実施例1
エタノールアミン6.1g(0.10モル)、トリエチルアミン11.4g(0.11モル)、ジシクロヘキシルカルボジイミド22.7g(0.11モル)及びジオキサン100mlを上下かくはん式300mlオートクレーブに入れ、二酸化炭素の初圧10Kg/cm^(2)において60℃で2時間反応させた。反応混合物から生成したジシクロヘキシル尿素をろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。その残留分を水に溶解、冷却して固形分を分離した。水溶液から水を減圧で留去し、その残留分を冷メタノールで洗浄すると6.4gの粗2-オキサゾリジノンを得た。エタノールアミンに対する収率は74%である。これをクロロホルムから再結晶すると、融点88?89℃の2-オキサゾリジノンの純品を得た。・・」(第3頁右上欄3?19行参照)
(vi)「実施例4
エタノールアミン6.1g、ジシクロヘキシルカルボジイミド22.7g、トリエチルアミン11.4g及びアセトニトリル100mlからなる混合物を二酸化炭素の初圧36Kg/cm^(2)において100℃で2時間反応させた。実施例1と同様に処理して粗2-オキサゾリジノンを6.7g(エタノールアミンに対する収率は77%)を得た。」(第3頁左下欄13行?末行参照)

これらの記載によれば、引用例には、
「アミノアルコールを、溶媒中、カルボジイミドの存在下で二酸化炭素と反応させることを特徴とする、2-オキサゾリジノン化合物の製法。」
の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)対比、判断
そこで、本願発明と引用例発明を対比する。
(a)本願発明では、「環状ウレタン」として「2-オキサゾリジノン化合物」を具体例(本願明細書段落【0029】参照)として示し、且つ実施例でも製造している(例えば実施例1,実施例4,5参照)。そうすると、引用例1発明の「2-オキサゾリジノン化合物」は、本願発明の「環状ウレタン」である「「2-オキサゾリジノン化合物」そのものである。
(b)引用例1発明の「カルボジイミド」は、本願発明の脱水縮合剤である「カルボジイミド」そのものである。

してみると、両発明は、
「アミノアルコールと二酸化炭素を原料とし、カルボジイミド(脱水縮合剤)の存在下で反応させることによる、2-オキサゾリジノン化合物の製造方法。」
の点で一致し、次の相違点1,2で相違する。
<相違点>
1.本願発明が、「二酸化炭素が300kg/cm^(2)までの圧力範囲(但し、50kg/cm^(2)以下及び71kg/cm^(2)以下を除く。)」との反応条件を採用するのに対し、引用例発明ではそのように特定していない点
2.本願発明が、「ハロゲン化化合物を使用しない条件」を採用するのに対し、引用例発明ではそのように特定していない点

そこで、これらの相違点について検討する。
<相違点1>について
先ず、「但し、50kg/cm^(2)以下及び71kg/cm^(2)以下を除く。」との記載の意味を検討すると、本願当初明細書に記載のない表現ではあるが、但し書きで「50kg/cm^(2)以下を除く」及び「71kg/cm^(2)以下を除く」との二重の限定をしているものと認められるから、実質的に「但し、71Kg/cm^(2)以下を除く」と解すれば足りるものといえる。
なお、補正に際し提出された意見書(平成17年6月14日付け)には、(イ)「71Kg/cm^(2)以下を除く補正の根拠は、本願明細書に記載の実施例4の表3に記載のデータに基づくものであり、二酸化炭素の圧力が71Kg/cm^(2)以下の場合を除くものである。」との主張があり、その数行下に(ロ)「本願請求項1では、引用文献1と重なると認められる圧力50Kg/cm^(2)以下を除く補正をした。」との主張があって、いずれの条件も「以下を除く」との主旨で、二重の限定であると認められることから、前記当審の認定は、出願人(請求人)の意図と一致するものである。

次に、引用例発明の温度と圧力の反応条件を検討すると、「二酸化炭素は、通常ボンベから供給されるが、常圧から50Kg/cm^(2)の圧力、好ましくは数Kg/cm^(2)から20Kg/cm^(2)の圧力で供給される。反応温度は、常温から約250℃の範囲であるが、好ましくは50?150℃の範囲である。」(摘示(iv)参照)と説明されていて、実施例では例えば、10Kg/cm^(2),60℃(実施例1)、36Kg/cm^(2),100℃(実施例4)などの反応条件で実施されている。
してみると、引用例発明の上記条件は、少なくとも「300kg/cm^(2)までの圧力範囲」で二酸化炭素を用いることは満たされているものの、「但し、50kg/cm^(2)以下及び71kg/cm^(2)以下を除く。」との点では一致していない。

そこで、この一致していない点について更に検討する。
引用例発明では、上記のとおり常圧から50Kg/cm^(2)の圧力で二酸化炭素を供給することが記載されていて、それ以上の圧力については言及されていない。
しかし、一般に圧力を上げるほど気体の反応媒体への溶解性が高まり、即ち溶媒中の濃度が高まるため、反応速度が上昇する可能性が大きくなると期待されるから、より高圧を採用することは適宜検討される事項といえ、引用例に記載された圧力より更に圧力を高めてその効果の程度を検討することは格別の創意工夫を要するものとはいえない。
しかも、本願明細書に記載された実施例、特に表3を検討しても、圧力が71Kg/cm^(2)以下の低い場合の収率(例えば、12kg/cm^(2)のときに収率が44.9%,38kg/cm^(2)のときに収率が47.8%)と、71Kg/cm^(2)を超える場合の収率(例えば、79kg/cm^(2)のときに収率が47.8%、84kg/cm^(2)のときに収率が51.6%、90kg/cm^(2)のときに収率が26.2%、200kg/cm^(2)のときに収率が20.6%)を対比しても、収率が向上する場合もあれば、低下する場合もあって、ばらついた結果が得られているから、71Kg/cm^(2)の圧力を超えると収率が格別優れたものとなるとは解し得ない。
なお、本願明細書の表3をみて収率等において超臨界では高い傾向があると請求人は主張するが、前記検討のとおりそのように解すべき理由はなく、かかる主張は受けいれることができない。

よって、引用例発明において、反応圧力に関し「但し、50kg/cm^(2)以下及び71kg/cm^(2)以下を除く。」とすることは、当業者が容易に想到し得たものであり、そのような除く記載によって格別予想外の作用効果を奏しているとは認められない。

なお、審判請求人は、「71kg/cm^(2)以下を除く」ことは、通常の二酸化炭素を除き、超臨界状態の二酸化炭素を使用することを意味するものである旨を主張する。
しかし、超臨界状態の二酸化炭素は、臨界点31.1℃且つ7.38MPa(75.2kg/cm^(2))を超える必要があるところ、71kg/cm^(2)以下を除いたところで、臨界点に届いておらず、また、温度についての限定もないことから、それらの点で必ずしも臨界点を超えるものではない。結局のところ、単に「71Kg/cm^(2)以下を除く」ことによっては、そもそも通常の二酸化炭素と超臨界状態の二酸化炭素を分けるものではないから、前記請求人の主張は、その前提において失当であり、採用できない。
仮に、超臨界状態の二酸化炭素を用いる場合を検討したところで、従来二酸化炭素を用いた反応系において、超臨界状態の二酸化炭素を利用することは適宜行われていた(例えば、特開2001-46093号公報の請求項1,6、特開平11-335372号公報の請求項1,段落【0007】、特開平6-345710号公報の請求項1,段落【0008】、特開2000-319247号公報など参照)ものであるから、そのような超臨界状態を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであり、その採用によって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。
なお、本願発明は、反応温度を限定していないが、実施例の大部分は40℃で行なわれ、実施例5(表4)では、10℃?100℃の範囲で実施されている。これに対し、引用例発明では、好ましくは50?150℃の範囲とされ、例えば実施例1では60℃、実施例4では100℃で実施されていることから、両者の反応温度に実質的な差異はないと認められる。

<相違点2>について
引用例を検討しても、2-オキサゾリジノン化合物の製造において、ハロゲン化化合物を使用した形跡は認められない。
よって、相違点2は、実質的に相違するものではない。

したがって、本願発明は、引用例発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-17 
結審通知日 2009-04-22 
審決日 2009-05-11 
出願番号 特願2001-259431(P2001-259431)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (C07D)
P 1 8・ 121- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中木 亜希  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 星野 紹英
弘實 謙二
発明の名称 環状ウレタンの製造方法  
代理人 須藤 政彦  
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