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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1199569
審判番号 不服2007-22055  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-09 
確定日 2009-06-22 
事件の表示 特願2002-570304「車両のヘッドランプまたは他の車両機器を制御するための画像処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月12日国際公開、WO02/71487、平成16年12月24日国内公表、特表2004-538545〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2002年2月11日(パリ条約による優先権主張2001年3月5日、(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年5月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年4月3日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数のピクセルを含み、前記各ピクセルは、ピクセル上で受信された光量を示す信号を生成するように動作可能であるイメージアレイセンサと、
前記ピクセルからの前記信号をデジタル値に量子化するためのアナログ-デジタルコンバータと、
前記アナログ-デジタルコンバータからの前記デジタル値を格納するための複数の割り振られた記憶位置を含むメモリとを含み、
前記メモリにおける割り振られた記憶位置の数は前記イメージアレイセンサから読み取られたピクセルの数より少ない、車両機器を制御するための撮像システム。」

3.引用例
原査定の拒絶理由に引用された特開平10-105695号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像を光電的に撮像して該画像を表す画像信号を出力する撮像素子と、
該撮像素子が出力する画像信号の取込みおよび転送を行う画像取込装置と、
前記撮像素子を駆動する制御信号を出力する制御信号生成装置と、
前記画像信号の信号量が少なくなるように、前記画像取込装置および前記制御信号生成装置を制御する取込制御装置とを備えたことを特徴とする画像入力装置。
……
【請求項5】 前記取込制御装置が、前記画像を所定ラインずつ間引いて取り込むよう前記画像取込装置および前記制御信号生成装置を制御することを特徴とする請求項1記載の画像入力装置。」

(2)「【0011】
【発明の効果】本発明によれば、撮像素子により撮像される画像を表す画像信号の信号量が少なくなるようにしたため、画像信号を短時間で取込ことができ、これにより、画像のデータ数を少なくして画像の転送、読み出し時間を短縮できるとともに、画像の処理時間をも短縮することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。 図1は本発明の実施の形態に係る画像入力装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この実施の形態に係る画像入力装置は、撮像素子1と、制御信号生成装置2と、画像取込装置3と、取込制御装置4とからなる。……
【0013】制御信号生成装置2は、撮像素子1を制御するためのタイミング信号を受けて電圧変換や信号の合成を行い、撮像素子1の駆動信号を生成し制御するものである。画像取込装置3は、撮像素子1が出力するアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換し、不図示のプロセッサのデータ転送機能などによって画像処理装置などに画像信号の転送を行うものである。取込制御装置4は、不図示のプロセッサからの指令信号にしたがって撮像素子1を制御するためのタイミング信号を出力すると同時に、画像取込装置3を制御して画像信号を記憶装置などに出力させるものである。取込制御装置4には制御部5が設けられており、この制御部5により後述するような種々の制御を行うものである。以下、制御部5において行われる処理を第1?第4の実施の形態として説明する。」

(3)「【0015】図3に示すように、撮像素子1を構成するフレーム転送型CCDは、複数の素子がマトリクス状に外部からの入射光を受けるように配置され、入射光を電荷に変換する受光部6と、複数の素子がマトリクス状に外部からの入射光の影響を受けないように配置され、受光部6において発生した電荷を一時的に蓄える蓄積部7と、複数の素子がライン状に外部からの入射光の影響を受けないように配置され、蓄積部7に蓄えられた電荷を外部に信号として出力するライン転送部8とからなる。」

(4)「【0018】このようにして行われる処理により、画面の下部の領域の読み出しが行われなくなる。例えば、図4に示すように、画面の上端からKライン目までの画像信号の出力が行われ、(K+1)ライン以降の画像信号の出力は行われないこととなる。これにより、画面下部の不要部分を読み飛ばすことができ、取り込みに要する時間を短くするとともに、画像信号を記憶するために必要な画像メモリを少なくすることができる。また、画像信号の転送時間を短縮できるとともに、画像処理装置における画像の処理時間をも短縮できる。この際、画像の取り込みに要する時間は、1画面全部を取り込む場合に比べて、(1ラインの転送および読み出しに要する時間)×(読み飛ばすライン数)だけ短くなる。」

(5)「【0033】-第4の実施の形態-
次いで、本発明の第4の実施の形態について説明する。図12は第4の実施の形態において制御部5が行う処理を示すフローチャート、図13は第4の実施の形態における画像信号の取込状態を示す図である。なお、第4の実施の形態においては、図1に示す制御部5が、取り込み制御装置4がライン間引き制御機能を有する点が異なる。また、撮像素子1のCCDの構成は上記第1の実施の形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。さらに、図12の処理は図2におけるステップS2の後に行われる処理である。
……
【0037】この時、各ラインのライン転送を含まない読み出しに要する時間の合計は、(読み出すライン数)/(間引きしない場合のライン数)の割合に応じて減少する。例えば、図13に示すように、転送2および読み出しを一度行った後、転送2だけを2度繰り返すことにより、3ラインにつき1ライン読み出しを行うこととなり、出力だけの時間を1/3に減少することができる。したがって、ラインの間引き操作を行うことができ、取り込みに要する時間を短くすることができる。また、画像信号の転送時間を短縮できるとともに、画像の処理時間をも短縮できる。なお、本実施の形態においては、すべてのラインにおいて転送を行うように、ステップS39における第3の設定値が定められる。
【0038】なお、第4の実施の形態におけるライン間引き制御機能は、第1の実施の形態に示した下部不要領域読み飛ばし制御機能、または、第2の実施の形態に示した上部・下部不要領域読み飛ばし制御機能のいずれかと同時に、かつ、第3の実施の形態に示した左部・右部不要画素読み飛ばし制御機能とも同時に動作することができ、画像中の任意の矩形領域にラインの間引きを施しての画像の取り込みが可能となる。
【0039】ラインの間引きが必要になる場合について、自律運転車両を例にとって説明する。一台のCCDカメラで、高速道路等で白線認識を、市街地で標識認識を行う場合、白線認識には標識認識などと比較するとあまり高い解像度は必要とされない。そのため、白線認識を行う場合は、取り込みを行った後に、画像処理装置において間引きの処理を施して認識を行うことがある。本装置を用いて取り込み時に間引きを行うと、取り込みを短時間で行うことができ、さらに画像処理装置において間引きの処理を施すことも必要でなくなる。したがって、このような場合に、ラインの間引きを行うことが有効となる。」

したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「複数の素子がマトリクス状に外部からの入射光を受けるように配置され、入射光を電荷に変換して出力する撮像素子1と、
撮像素子1が出力するアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換し、該デジタル画像信号を記憶装置に出力させる画像取込装置3と、
前記撮像素子1を駆動する制御信号を出力する制御信号生成装置2と、
前記デジタル画像信号の信号量が少なくなるように画像を間引いて取り込むよう、前記画像取込装置3および前記制御信号生成装置2を制御する取込制御装置4とを備え、
前記デジタル画像信号を記憶するために必要なメモリを少なくすることができる自律運転車両の画像入力装置。」

4.対比
引用発明の「複数の素子がマトリクス状に外部からの入射光を受けるように配置され、入射光を電荷に変換して出力する撮像素子1」は、本願発明の「複数のピクセルを含み、前記各ピクセルは、ピクセル上で受信された光量を示す信号を生成するように動作可能であるイメージアレイセンサ」に対応する。
引用発明の「画像取込装置3」はピクセルからの信号をデジタル値に量子化する機能の点で、本願発明の「アナログ-デジタルコンバータ」と共通する。
引用発明の「画像取込装置3」は撮像素子1が出力するアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換し、該デジタル画像信号を記憶装置に出力するものであり、記憶装置がデジタル値を格納するための複数の割り振られた記憶位置を含むメモリであることは当然のことであるから、引用発明の「記憶装置」は、アナログ-デジタルコンバータからのデジタル値を格納する機能の点で、本願発明の「メモリ」と共通する。
引用発明の「前記デジタル画像信号を記憶するために必要なメモリを少なくすることができる」とは、イメージアレイセンサの複数の素子の数より、記憶装置に記憶されるデジタル値の数を少なくすることができることであるから、後述の相違点を除いて、本願発明の「前記メモリにおける割り振られた記憶位置の数は前記イメージアレイセンサから読み取られたピクセルの数より少ない」とする点と、メモリにおける割り振られた記憶位置の数はイメージアレイセンサが含むピクセルの数より少ない点で共通する。
また、引用発明は自律運転車両の画像入力装置であるから、車両機器を制御するための撮像システムといえる。

したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致する。

「複数のピクセルを含み、前記各ピクセルは、ピクセル上で受信された光量を示す信号を生成するように動作可能であるイメージアレイセンサと、
前記ピクセルからの前記信号をデジタル値に量子化するためのアナログ-デジタルコンバータと、
前記アナログ-デジタルコンバータからの前記デジタル値を格納するための複数の割り振られた記憶位置を含むメモリとを含み、
前記メモリにおける割り振られた記憶位置の数は前記イメージアレイセンサが含むピクセルの数より少ない、車両機器を制御するための撮像システ
ム。」

また次の点で相違する。

相違点
本願発明は、「前記メモリにおける割り振られた記憶位置の数は前記イ
メージアレイセンサが含むピクセルの数より少ない」とする点が、「前記メモリにおける割り振られた記憶位置の数は前記イメージアレイセンサから読み取られたピクセルの数より少ない」とするものであるのに対して、引用発明では、「前記デジタル画像信号の信号量が少なくなるように画像を所定ラインずつ間引いて取り込むよう、前記画像取込装置3および前記制御信号生成装置2を制御する取込制御装置4とを備え、前記デジタル画像信号を記憶するために必要なメモリを少なくすることができる」とするものである点。

5.相違点に対する判断
本願発明が「前記メモリにおける割り振られた記憶位置の数は前記イメージアレイセンサが含むピクセルの数より少ない」とするために行う具体的な処理について、その実施例において一例として次の記載がなされている。
「【0039】
もう1つの実施形態では、イメージを受信中であるとき、選択されたピクセルのみがメモリ106に格納される。たとえば、自動ヘッドランプ制御システムでは、非常に高い解像度のイメージを有することが必要でない可能性がある。CIFフォーマットセンサなど、標準の規格品のイメージセンサを使用中である場合、適切に機能するシステムを生成するために必要とされるよりはるかに多数のピクセルが存在する可能性がある。イメージ全体を格納するために十分なメモリを含むことによってシステムのコストを増大させるのではなく、ピクセルが受信されるときにそのいくつかを廃棄することによってメモリ要件を低減することができる。簡素な実施態様では、これは単に受信されたn番目のピクセルのみを格納することを含むことができ、ただしnは、センサの解像度、および十分な性能を達成するために実際に必要とされたピクセルの数に依存する数である。CIFセンサnを、たとえば3にすることができる。別法として、n個のピクセルを平均してより小さいイメージを生成することができる。これは垂直および水平方向において起こる可能性があり、n×nピクセルを単一の値に平均することができる。」
上記の「受信されたn番目のピクセルのみを格納する」処理が間引きであることは明らかであり、「少ない」とするための処理として間引きを用いる点で引用発明と格別の相違はない。
また、撮像装置から出力された信号に対して間引きや縮小の処理を行うことは、例えば下記の周知例のように周知のことである。
引用例にも上記(5)の段落【0039】のように、記撮像素子1を駆動する制御信号により間引かれた撮像信号を出力する「取り込み時に間引きを行う」のではない、「画像処理装置において間引きの処理を施して認識を行うこと」も記載されている。画像処理装置において間引きの処理を施して認識を行う場合には、撮像素子1から撮像信号を取り込む時間が短縮されないとしても、間引きの処理を施してから認識を行うのであるから、認識を行う対象の画像を記憶するために必要なメモリを少なくできることにかわりはないし、間引きの処理を施した画像の認識を行うのであるから、間引きされていない高解像度の画像を認識する場合に比べて、認識の画像処理が短縮できるものといえる。
したがって、引用発明において、「前記デジタル画像信号の信号量が少なくなるように画像を所定ラインずつ間引いて取り込むよう、前記画像取込装置3および前記制御信号生成装置2を制御する取込制御装置4とを備え、前記デジタル画像信号を記憶するために必要なメモリを少なくすることができる」とする点を、撮像素子1から読み取られた信号に対して間引きの処理を施すものとすることは、少なくとも、画像信号を記憶するために必要なメモリを少なくできるとともに、その後の画像処理が短縮できることから技術的意義のあることであり、周知技術を用いてそのようにすることで、本願発明の実施例として示された「受信されたn番目のピクセルのみを格納する」ような読み取られた信号に対する間引きと同様の処理とすることに困難な点はないから、相違点を本願発明の「前記メモリにおける割り振られた記憶位置の数は前記イメージアレイセンサから読み取られたピクセルの数より少な
い」と同様のものとすることにも困難な点はないといえる。

周知例1.特開平9-107541号公報
CCDカメラ1から出力されるアナログ画像データをA/Dコンバータ2によりディジタル画像データに変換し、このディジタル画像データから所定ラインの画像データを間引き、ライン画像データを出力する間引きスイッチ3と、間引きスイッチ3より入力されるライン画像データを記憶するラインメモリ4からなる画像処理による移動体カウント装置が示されている。
(図1等)

周知例2.特開平11-164287号公報
カメラからのビデオ信号である入力Ri?Ri+7のうち選択可能なものをアナログ・デジタル変換器16に供給し、その結果生じるデジタルビデオ信号を水平方向及び垂直方向にスケール(大きさを調整)して所望サイズの映像(例えば、スクリーン大、1/4サイズ、1/9サイズ)を生成する回路18に供給し、このスケールされた映像がフレームメモリ20に記憶される監視システムが示されており、複数のカメラの映像を表示させるため、スケールして縮小することによりフレームメモリ20に記憶されるデジタルビデオ信号のデータ量を少なくするものである。
(図2等)

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-29 
結審通知日 2009-01-30 
審決日 2009-02-10 
出願番号 特願2002-570304(P2002-570304)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 原 光明
廣川 浩
発明の名称 車両のヘッドランプまたは他の車両機器を制御するための画像処理システム  
代理人 富田 博行  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小野 新次郎  
代理人 西山 文俊  
代理人 社本 一夫  
代理人 小林 泰  

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