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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 H04H 審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H04H 審判 一部無効 特174条1項 H04H |
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管理番号 | 1199596 |
審判番号 | 無効2008-800188 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2008-09-29 |
確定日 | 2009-06-22 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3399496号発明「情報供給方法と情報供給システム及び情報読出装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3399496号の請求項1、4及び7に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 平成8年7月2日 出願 平成15年2月21日 設定登録(特許第3399496号) 平成20年9月29日 無効審判請求書 平成20年12月12日 答弁書 平成21年4月9日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成21年4月9日 口頭審理陳述要領書(請求人) 平成21年4月14日 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人) 平成21年4月23日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人) 平成21年4月23日 口頭審理陳述要領書(3)(被請求人) 平成21年4月23日 口頭審理 第2.本件発明 本件特許の請求項1、4及び7に係る発明は、特許権の設定登録時の明細書又は図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1、4及び7に記載された次のとおりのもの(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明4」及び「本件発明7」という。)と認められる。 (本件発明1) 「 【請求項1】 一つのデータ入力部に入力されたデータを書込可能な書込領域を備えた記憶手段を用い、 前記一つのデータ入力部に入力された一連に再生される映像情報又は音声情報の一つに対応する一連のデータを、前記書込領域に端末への送信用のデータとして読出可能な記憶データとして記憶されるように書き加えながら、その書込領域に書き込まれている前記記憶データを、その記憶データが書き込まれている書込領域中の任意の複数の位置の各々から端末への送信用のデータとして読み出して、複数の端末に送信する情報供給方法。」 (本件発明4) 「 【請求項4】 一つのデータ入力部に入力されたデータを書込可能な書込領域を備えた記憶手段を設け、 前記一つのデータ入力部に入力された一連に再生される映像情報又は音声情報の一つに対応する一連のデータを、前記書込領域に端末への送信用のデータとして読出可能な記憶データとして記憶されるように書き加えながら、その書込領域に書き込まれている前記記憶データを、その記憶データが書き込まれている書込領域中の任意の複数の位置の各々から端末への送信用のデータとして読み出して、複数の端末に送信する情報供給システム。」 (本件発明7) 「 【請求項7】 一つのデータ入力部に入力されたデータを書込可能な書込領域を備えた記憶手段を、 前記一つのデータ入力部に入力された一連に再生される映像情報又は音声情報の一つに対応する一連のデータを、前記書込領域に端末への送信用のデータとして読出可能な記憶データとして記憶されるように書き加えながら、その書込領域に書き込まれている前記記憶データを、その記憶データが書き込まれている書込領域中の任意の複数の位置の各々から端末への送信用のデータとして読み出し可能に設けてある情報読出装置。」 第3.当事者の主張及び証拠方法 1.請求人の主張の趣旨及び証拠方法 (1)請求人の主張の趣旨 (ア)本件発明1、4及び7は、特許法第29条第1項第3号乃至同条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (イ)本件発明1、4及び7は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内ではない補正をされた発明に対して特許されたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定した要件を満たしていないので、特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。 (ウ)本件発明1、4及び7は、特許法第36条第6項第1,2号に規定した要件を満たしていないので、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 (2)証拠方法 甲第1号証:登録実用新案第3006191号公報 甲第2号証:特開平7-111629号公報 甲第3号証:特開平7-212737号公報 甲第4号証:“Video Server Architecture Supporting Real-Time Input and Immediate Playback”, Hideki Sakamoto, Akira Uemori, Hiroshi Sugiyama, Kazutoshi Nishimura, Multimedia Japan 96 2.被請求人の主張の趣旨 被請求人は、答弁書において、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、本件発明1、4及び7は、特許法第29条第1項第3号乃至同条第2項の規定に違反して特許されたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定した要件を満たしており、特許法第36条第6項第1,2号に規定した要件を満たしているから、本件発明1、4及び7を無効とすべきとする請求人の主張は根拠がない旨主張する。 第4.請求理由の概要 1.無効理由1 本件発明1、4及び7は、甲第1号証に記載された発明と実施的に同一乃至同発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第1項第3号乃至同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 2.無効理由2 本件発明1、4及び7は、甲第2号証に記載された発明と実施的に同一乃至同発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第1項第3号乃至同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 3.無効理由3 本件発明1、4及び7は、甲第3号証に記載された発明と実施的に同一乃至同発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第1項第3号乃至同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 4.無効理由4 本件発明1、4及び7は、甲第4号証に記載された発明と実施的に同一乃至同発明に基づいて当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第1項第3号乃至同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 5.無効理由5 本件発明1、4及び7の「任意の」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされた補正ではない。 よって、特許法第17条の2第3項の規定に違反している。 6.無効理由6 本件発明1、4及び7の「任意の」は、発明の詳細な説明において十分に裏付けされておらず、且つ不明確である。 よって、特許法第36条第6項第1,2号の規定に違反している。 第5.当審の判断 1.無効理由5についての判断 出願当初の明細書の段落番号【0054】に「現在時刻TRにおいてタイムスロットnで情報蓄積メモリ2から読出映像データVDnの読み出しを開始する映像データの位置である読出開始位置を、その書込映像データVBの書込開始時刻TSからその位置の映像データが情報蓄積メモリ2へ書き込まれる時までの経過時間TCn(n=1?63、以下同じ)として表現し、」と記載されている。 出願当初の明細書の段落番号【0055】に「そして、端末装置Eは、要求する映像情報の送信開始位置を読出開始位置TCn として所定の一定時間単位、例えば10秒単位で指定するように決められており、」と記載されている。 出願当初の明細書の段落番号【0074】に「 前記「読出開始処理」では、図15のフローチャートに示すように、読出開始位置TCn に対応する位置の映像データが書き込まれている書込用のアドレスデータADM0をその読出開始位置TCn のアドレスデータADMnとして、読出開始データDGn で指示されている読出タイムスロットnに対応するn番地の増加データメモリ3Aに「1」を、アドレスデータメモリ3Bに「ADMn-1」を夫々書き込んだ後(#131)、」と記載されている。 したがって、読出開始位置TCnのアドレスデータADMnに関して、アドレスデータメモリ3Bに「ADMn-1」が書き込まれるのであり、端末装置Eが、読出開始位置TCnを、所定の一定時間単位、例えば10秒単位で指定するようになっている。 したがって、読出開始位置TCnについては、所定の一定時間単位ではあるが、端末装置が読み出しの開始を希望する位置を指定することができるようになっている。この状態は、「その書込領域に書き込まれている前記記憶データを、その記憶データが書き込まれている書込領域中の任意の位置の各々から端末への送信用のデータとして読み出している。」といえる。 よって、本件発明1、4及び7の「任意の」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされた補正である。 したがって、請求人の主張する無効理由5には、理由がない。 なお、請求人は、審判請求書第56頁第2-9行において、「なお、出願当初明細書には、「図4(c) に示すようにその書込映像データVBの書き込みが終了すると、任意の読出開始位置TCn から複数の読出映像データVDn を多重に読み出すことができる」と記載されている(甲6、段落0078)。この記載は、書き込みが終了した後に「任意の」の位置から読み出すという趣旨であって、「書き加えながら」(すなわち、「一連のデータをその全部のを記憶手段に書き込み終えるまで待つことなく」(甲5、段落0011)、「任意の」位置から読み出すことを意味するものではない。」と主張している。 しかし、出願当初明細書の段落番号【0078】には、「図4(b) に示すように、その書込映像データVBを書き込みながら、その情報蓄積メモリ2に既に書き込んだ記憶映像データVCから、読出開始位置TCn が異なる複数の読出映像データVDn を多重に読み出すことができ、」と記載されているから、出願当初明細書の段落番号【0078】の「図4(c) に示すようにその書込映像データVBの書き込みが終了すると、任意の読出開始位置TCn から複数の読出映像データVDn を多重に読み出すことができる。」は、詳しく記述すれば、「図4(b) のように、書込映像データVBの全てが未だ書き込まれていない状態では、書き込み済みの記憶映像データVCの任意の位置から読み出すことができるものの、未書き込みの書込映像データVBの位置から読み出すことはできないが、図4(c) に示すようにその書込映像データVBの書き込みが終了すると、書込映像データVBの全ての任意の読出開始位置TCn から複数の読出映像データVDn を多重に読み出すことができる。」という意味であることは明らかである。したがって、図4(b) の状態において、書込映像データVBを書き込みながら、その情報蓄積メモリ2に既に書き込んだ記憶映像データVCの任意の複数の読出開始位置TCn から複数の読出映像データVDn を読み出すことができる。 よって、請求人の上記主張は採用することができない。 2.無効理由6についての判断 上記「1.無効理由1についての判断」で示したように、出願当初の明細書の記載によれば、読出開始位置TCnについては、所定の一定時間単位ではあるが、端末装置が読み出しの開始を希望する位置を指定することができるようになっている。 この状態は、「その書込領域に書き込まれている前記記憶データを、その記憶データが書き込まれている書込領域中の任意の位置の各々から端末への送信用のデータとして読み出している。」といえる。 したがって、「任意の」は、「端末装置の使用者が希望する位置ならどこでも」という意味で使用されていることは、明らかである。 したがって、本件発明1、4及び7の「任意の」は、発明の詳細な説明において十分に裏付けられており、且つ明確である。 したがって、請求人の主張する無効理由6には、理由がない。 3.無効理由1についての判断 (1)甲第1号証記載の発明 甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)段落番号【0015】 「例えば、メモリバッファが、約10分のビデオデータ、典型的に、約60ないし100メガバイトを記憶する場合に、多数の顧客が同時に典型的に2時間の映画の任意の部分を見れるようにするのに、せいぜい12個のメモリバッファしか必要とされない。」 (イ)段落番号【0017】 「図1には、需要時ビデオを提供するシステムが示されている。このシステムは、広い地域にわたって分布した場所に置かれた顧客構内装置(CPE)10と、1つ以上の集中需要時ビデオシステム20と、通信ネットワーク30とを備えている。一般に、ビデオは、需要時ビデオシステム20からネットワーク30を経てCPE10へ転送される。」 (ウ)段落番号【0021】 「顧客コマンドは、ビデオサービスに対する需要である。ビデオがCPE10へ転送される間に、顧客コマンドは、既知の放送或いはケーブルTVサービスでは一般に使用できないリバース(逆転)、フォワード(前進)及びポーズ(休止)といったVCR式の制御機能を含むことができる。更に、ビデオの部分全体をスキップさせるための後方ジャンプ又は前方ジャンプのような更に複雑な機能としての顧客コマンドもサポートされる。」 (エ)段落番号【0091】 「キャッシュを読み取る(再生する)レートが書き込みのレートと同じである場合には、FILL-POINTER310及びPLAY-POINTER320が一般にほぼ同じレートで進まねばならないことを理解されたい。」 (オ)段落番号【0094】 「図8を参照して、サーバセグメントキャッシュ24の特定構造を詳細に説明する。サーバセグメントキャッシュ24は、セグメントキャッシュメモリブロック300と、キャッシュコントローラ700と、書き込みコントローラ700と、対応する数のポート80に接続された複数の読み取りコントローラ720とを備えている。」 (カ)段落番号【0095】 「書き込みコントローラ710は、放送流がパケット110の形態のデータ信号を通信するようにアクティブとなったときに、ライン39を経てビデオサーバ22のパケットコントローラ70の1つに接続される。書き込みコントローラは、可動FILL-POINTER310により指定されたメモリ位置においてキャッシュメモリブロック300へビデオデータを書き込むためにライン711によってセグメントキャッシュメモリブロック300に接続される。」 (キ)段落番号【0096】 「読み取りコントローラ720の各々は、関連するPLAY-POINTER320により指定されたメモリ位置においてセグメントキャッシュメモリブロック300からビデオデータを読み取るためにライン721によってセグメントキャッシュメモリブロック300へ接続される。」 (ク)段落番号【0098】 「即ち、セグメントキャッシュメモリブロック300に記憶されたビデオデータは、たとえこのセグメントキャッシュメモリブロック300のビデオデータが単一のパケットコントローラ70によりFILL-POINTER310によって指示された位置に書き込まれたものであっても、多数の顧客によって視聴される。」 (ケ)段落番号【0119】 「表示シーケンスを変更するコマンドは、フォワード(前進)、リバース(逆転)、ジャンプ、等を含む。公知の需要時ビデオサービスでは一般に使用できないジャンプコマンドは、顧客が本質的にビデオのいかなる時間位置からでも視聴を開始できるようにする。」 したがって、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されている。 「サーバセグメントキャッシュ24は、セグメントキャッシュメモリブロック300と、書き込みコントローラ700と、対応する数のポート80に接続された複数の読み取りコントローラ720とを備えており、 書き込みコントローラ700は、可動FILL-POINTER310により指定されたメモリ位置においてキャッシュメモリブロック300へビデオデータを書き込み、 読み取りコントローラ720の各々は、関連するPLAY-POINTER320により指定されたメモリ位置においてセグメントキャッシュメモリブロック300からビデオデータを読み取り、 キャッシュを読み取るレートが書き込みのレートと同じである場合には、FILL-POINTER310及びPLAY-POINTER320が一般にほぼ同じレートで進み、 セグメントキャッシュメモリブロック300に記憶されたビデオデータは、たとえこのセグメントキャッシュメモリブロック300のビデオデータが単一のパケットコントローラ70によりFILL-POINTER310によって指示された位置に書き込まれたものであっても、顧客構内装置(CPE)10に転送され、多数の顧客によって視聴される需要時ビデオシステム20。」 (2)一致点・相違点 甲第1号証記載の発明のキャッシュメモリブロック300には、書き込みコントローラ700が、可動FILL-POINTER310により指定されたメモリ位置においてビデオデータを書き込んでいるから、甲第1号証記載の発明のキャッシュメモリブロック300は、本件発明4の「一つのデータ入力部に入力されたデータを書込可能な書込領域を備えた記憶手段」に相当する。 甲第1号証記載の発明の顧客構内装置(CPE)10が、本件発明4の端末に相当する。 甲第1号証記載の発明では、「読み取りコントローラ720の各々」と記載されているから、読み取りコントローラ720が複数存在していることが明らかである。 甲第1号証記載の発明では、キャッシュを読み取るレートが書き込みのレートと同じである場合には、FILL-POINTER310及びPLAY-POINTER320が一般にほぼ同じレートで進むから、書き込みコントローラ700によるキャッシュメモリブロック300への書き込みと、読み取りコントローラ720によるキャッシュメモリブロック300からの読み取りとは同時に進行する。すなわち、キャッシュメモリブロック300は、書き込みながら、読み取られている。 甲第1号証記載の発明では、複数の読み取りコントローラ720が、関連するPLAY-POINTER320により指定されたメモリ位置においてセグメントキャッシュメモリブロック300からビデオデータを読み取っており、読み取られたビデオデータは、多数の顧客に送信されるから、甲第1号証記載の発明では、本件発明4のように、「前記一つのデータ入力部に入力された一連に再生される映像情報又は音声情報の一つに対応する一連のデータを、前記書込領域に端末への送信用のデータとして読出可能な記憶データとして記憶されるように書き加えながら、その書込領域に書き込まれている前記記憶データを、その記憶データが書き込まれている書込領域中の複数の位置の各々から端末への送信用のデータとして読み出して、複数の端末に送信」している。 したがって、本件発明4と甲第1号証記載の発明の一致点・相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「一つのデータ入力部に入力されたデータを書込可能な書込領域を備えた記憶手段を用い、 前記一つのデータ入力部に入力された一連に再生される映像情報又は音声情報の一つに対応する一連のデータを、前記書込領域に端末への送信用のデータとして読出可能な記憶データとして記憶されるように書き加えながら、その書込領域に書き込まれている前記記憶データを、その記憶データが書き込まれている書込領域中の複数の位置の各々から端末への送信用のデータとして読み出して、複数の端末に送信する情報供給システム。」である点。 [相違点] 本件発明4では、「端末への送信用のデータとして、書込領域中から読み出す位置の各々」が「任意」であるのに対して、甲第1号証記載の発明では、「端末への送信用のデータとして、書込領域中から読み出す位置の各々」が「任意」であるのか否か不明である点。 (3)相違点の検討 甲第1号証の段落番号【0015】に「多数の顧客が同時に典型的に2時間の映画の任意の部分を見れるようにする」と記載されている。顧客が視聴する部分は、PLAY-POINTER320により指定されたメモリ位置であるから、上記段落番号【0015】の「多数の顧客が同時に典型的に2時間の映画の任意の部分を見れるようにする」という記載は、甲第1号証記載の発明において「複数のPLAY-POINTER320が任意のメモリ位置を指定するようにする」ということを意味している。 また、甲第1号証の段落番号【0021】に「更に、ビデオの部分全体をスキップさせるための後方ジャンプ又は前方ジャンプのような更に複雑な機能としての顧客コマンドもサポートされる。」と記載されている。したがって、甲第1号証記載の発明の需要時ビデオシステム20では、顧客コマンドとしてジャンプコマンドがサポートされている。 また、甲第1号証の段落番号【0119】に「ジャンプコマンドは、顧客が本質的にビデオのいかなる時間位置からでも視聴を開始できるようにする。」と記載されている。ビデオのいかなる時間位置からでも視聴を開始できるようにするためには、PLAY-POINTER320をいかなる位置にでも設定することが必要であり、PLAY-POINTER320をいかなる位置にでも設定することは、PLAY-POINTER320の設定位置が任意であることを示している。 甲第1号証記載の発明において、「複数のPLAY-POINTER320が任意のメモリ位置を指定するようにする」ことは、本件発明4の「書込領域中の任意の複数の位置の各々からデータとして読み出す」ことに相当する。したがって、上記相違点については、甲第1号証の段落番号【0015】、【0021】及び【0119】の記載から、容易に想到できたことである。 したがって、本件発明4は、甲第1号証記載の発明及び甲第1号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件発明1及び本件発明7は、本件発明4の末尾の「端末への送信用のデータとして読み出して、複数の端末に送信する情報供給システム」を、「端末への送信用のデータとして読み出して、複数の端末に送信する情報供給方法」または「端末への送信用のデータとして読み出し可能に設けてある情情報読出装置」と変更しただけのものであるから、本件発明4と同様に、甲第1号証記載の発明及び甲第1号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、被請求人は、答弁書の第13頁第1-10行において、甲第1号証に関し、 「(1-2)PLAY-POINTER320が指示する読み取り位置について 「【0089】 最初に、セグメントキャッシュメモリブロック300が放送流に割り当てられたときには、FILL-POINTER310及びPLAY-POINTER320が両方ともセグメントキャッシュメモリブロック300の開始点の位置を指す。しかしながら、以下で説明するように、セグメントキャッシュメモリブロック300の最初の充填は、通常は、データの読み取りよりも高いレートで行われる。」 つまり、PLAY-POINTER320は、ビデオデータの読み取り開始時には、セグメントキャッシュメモリブロック300の開始点の位置を指示することが記載されている。」と主張している。 しかし、甲第1号証の段落番号【0089】の「最初に、セグメントキャッシュメモリブロック300が放送流に割り当てられたとき」には、顧客構内装置(CPE)10からPLAY-POINTER320の位置についての指示が未だないので、取りあえずデフォルト位置としてセグメントキャッシュメモリブロック300の開始点にセットしているだけのことである。 したがって、甲第1号証の段落番号【0089】の記載は、ビデオデータの読み取り開始時間に、PLAY-POINTER320がセグメントキャッシュメモリブロック300の開始点の位置を指示していることを示すものではない。 また、被請求人は、口頭弁論陳述要領書(3)の第2頁第12-14行に「セグメントキャッシュメモリブロック300からのビデオセグメント200の読み出しは、セグメントキャッシュメモリブロック300の開始点の位置から開始される。」(この記載の内容は、答弁書の第13頁第8-10行の記載の内容と同じである。)と記載しており、この記載に基づき、口頭弁論陳述要領書(3)の第2頁第15-23行において、甲第1号証に関して、「ユーザの視聴開始位置が仮に「任意」であるとすれば、ユーザの開始位置がビデオセグメント単位で「任意」であること」を導出している。 そして、被請求人は、口頭弁論陳述要領書(3)の第3頁第17-25行において、甲第1号証に関して、「ビューウインドウの数、つまりビデオセグメントの数を120にすれば、選択されたビデオの視聴を開始するのに、せいぜい1分待機するだけでよいこと」を示している。 しかし、甲第1号証の段落番号【0015】には「1つの利点として、セグメントを記憶するのに単一の比較的サイズの小さいメモリしか必要とされなくても、非常に大勢の顧客が、選択されたビデオの種々の部分を同時に見ることができる。例えば、メモリバッファが、約10分のビデオデータ、典型的に、約60ないし100メガバイトを記憶する場合に、多数の顧客が同時に典型的に2時間の映画の任意の部分を見れるようにするのに、せいぜい12個のメモリバッファしか必要とされない。」と記載されており、甲第1号証の発明者は、「12個という少ないメモリバッファの数で足りることが、甲第1号証の発明の利点である。」と考えていることが、示唆されている。また、甲第1号証の段落番号【0079】には、「ビューウインドウの数を24に固定すること」及び「24のみのウインドウでは、顧客は、選択されたビデオの視聴を開始するのに、せいぜい、5分待機するだけでよいこと」が記載されており、「特集映画の長さを2時間と一定にすると、ビューウインドウの数と待機時間とは、反比例の関係にある。ビューウインドウの数が12の時の待機時間10分より待機時間を短くするには、ビューウインドウの数を12から増加させる必要がある。しかし、5分という待機時間は、許容できる待機時間である。したがって、ビューウインドウの数が24、待機時間が5分という組み合わせが最適であるので、ビューウインドウの数を24に固定する。」と甲第1号証の発明者が考えていることが、示唆されている。 とすれば、甲第1号証の段落番号【0079】の24というビューウインドウの数を120に増やすことは、「少ないメモリバッファの数で足りる」という甲第1号証の発明の利点を失う行為であり、甲第1号証が想定した事項であるとはいえない。したがって、甲第1号証の段落番号【0079】の24というビューウインドウの数を120に増やすことは、甲第1号証に記載された事項の範囲内とはいえない。したがって、甲第1号証におけるビューウインドウの数は24であって、被請求人がいうところの「ユーザの開始位置がビデオセグメント単位で「任意」である」とは、甲第1号証では「ユーザの開始位置が5分単位で「任意」である」ということになる。「ユーザの開始位置が5分単位で「任意」である」という状態は、常識的に考えれば、「ユーザの開始位置が「任意」である」とはいえない。 被請求人の口頭弁論陳述要領書(3)の第2頁第15行において、「ユーザの視聴開始位置が仮に「任意」であるとすれば、」としている。しかし、甲第1号証の段落番号【0015】の「多数の顧客が同時に典型的に2時間の映画の任意の部分を見れる」及び【0119】の「顧客が本質的にビデオのいかなる時間位置からでも視聴を開始できる」という記載から、甲第1号証においては、「仮に」でなく事実、ユーザの視聴開始位置が「任意」であるのである。このことは、被請求人の口頭弁論陳述要領書の第3頁第10行において「「視聴の開始位置が任意であること」が、」と、被請求人も認めていることである。なぜ、その「ユーザの視聴開始位置が「任意」であること」に矛盾することが前段落のように演繹的に導出されたのかを考えれば、背理法の論理から、口頭弁論陳述要領書(3)第2頁第12-14行に記載されている、そもそもの前提事項が誤っているということが結論づけられる。 したがって、甲第1号証については、「セグメントキャッシュメモリブロック300からのビデオセグメント200の読み出しは、セグメントキャッシュメモリブロック300の開始点の位置から開始される。」と理解すべきではなく、「セグメントキャッシュメモリブロック300からのビデオセグメント200の読み出しは、セグメントキャッシュメモリブロック300の任意の位置から開始できる。」と理解すべきである。 また、甲第1号証の【0081】に「従って、ビューウインドウ内のいずれの部分にビデオを再位置設定するいずれのコマンドに対しても、直ちに応答を与えることができる。」と記載されている。もし、セグメントキャッシュメモリブロック300からのビデオセグメント200の読み出しが、セグメントキャッシュメモリブロック300の開始点の位置から開始されるのであれば、ビューウインドウ内のいずれの部分にビデオを再位置設定することは不可能である。したがって、甲第1号証については、「セグメントキャッシュメモリブロック300からのビデオセグメント200の読み出しが、セグメントキャッシュメモリブロック300の任意の位置から開始される」と理解する外ない。 なお、甲第1号証の段落番号【0081】の「従って、ビューウインドウ内のいずれの部分にビデオを再位置設定するいずれのコマンドに対しても、直ちに応答を与えることができる。」という記載における「直ちに」について、「どれくらいの時間か分からず、5分後に応答があっても「直ちに」といえるかもしれない。」という意見があるかもしれないが、ビデオへのコマンドに対する応答が5分後であれば、常識的に言って「直ちに」であるとはいえない。 4.無効理由3についての判断 (1)甲第3号証記載の発明 甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (サ)段落番号【0020】 「図1において、1は全体としてデータ伝送装置を示し、電話回線LINより受信者から送られてくる受信要求に応じて映画番組等の所望の番組情報を各受信者に提供し得るようになされている。 データ伝送装置1は、番組ライブラリ2から得られる番組情報S_(R1)、S_(R2)、……、S_(R(k-1))、S_(Rk)をスイツチヤ3を介して第1の送出部群4を構成する複数の送出部4A_(1) 、4A_(2) 、……、4A_(L-1) 、4A_(L) に選択的に供給する。」 (シ)段落番号【0021】 「スイツチヤ3は、k個の入力とL個の出力からなる(k×L)のマトリツクススイツチヤでなり、番組ライブラリ2から送られた番組情報S_(R1)?S_(Rk)を、番組制御部5からの制御信号S2に応じて選択的に送出部4A_(1) ?4A_(L) に出力する。」 (ス)段落番号【0022】 「各送出部4A_(1) ?4A_(L) は、1つの入力チヤンネルと(n+1)個の出力チヤンネルを有する。また各送出部4A_(1) ?4A_(L) は大容量の記憶装置を有し、入力した番組情報を一旦記憶装置に記憶し、これを番組送出制御部6からの制御信号S3に基づいて読み出して出力するようになされている。」 (セ)段落番号【0029】 「ここで第1の送出部群4の各送出部4A_(1) ?4A_(L) 及び第2の送出部群10の各送出部10A_(1) ?10A_(m) は、図3に示すように構成されている。 すなわち送出部4A_(1) ?4A_(L) 及び10A_(1) ?10A_(m) は、スイツチヤ3又は7からの番組情報を入力インターフエース20を介してバツフアメモリ21に入力する。 送出部4A_(1) ?4A_(L) 及び10A_(1) ?10A_(m) は、バツフアメモリ21の出力を、記録再生用のインターフエース22を介して記録再生部23により所定の記録媒体に記録することができると共に、同時に出力インターフエース24を介して複数の出力チヤンネルから出力することもできるようになされている。」 (ソ)段落番号【0034】 「また記録再生部23は、記録媒体に番組ライブラリ2からの番組情報又は別の送出部4A_(1) ?4A_(L) 、10A_(1) ?10A_(m) からの番組情報を記録しながら、時間差のある番組情報を各受信者に送出することもできるようになされている。 この場合記録再生部23は、図5に示すように、単位時間をn個のタイムスロツトに分割し、このうち(n-1)個のタイムスロツトで記録データを読み出すと共に、残りの1つのタイムスロツトで番組ライブラリ2又は別の送出部4A_(1) ?4A_(L) 、10A_(1) ?10A_(m) からの番組情報を記録する。」 (タ)段落番号【0062】 「さらに上述の実施例においては、各受信者に割り当てられたタイムスロツト毎に、受信者の要求時間に応じた位置から記録データを読み出すことにより、全ての受信者に対して番組情報を先頭から提供する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、受信者から途中から番組情報を見たい要求があつた場合には、これに応じて読出し位置を選択すれば、各受信者の希望に応じた位置から番組情報を提供することができる。」 したがって、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲第3号証記載の発明」という。)が記載されている。 「電話回線LINより受信者から送られてくる受信要求に応じて映画番組等の所望の番組情報を各受信者に提供し得るようになされているデータ伝送装置1であって、 該データ伝送装置1は、番組ライブラリ2から得られる番組情報SR_(1)、SR_(2)、……、S_(R(k-1))、S_(Rk)をスイツチヤ3を介して第1の送出部群4を構成する複数の送出部4A_(1) 、4A_(2) 、……、4A_(L-1) 、4A_(L) に選択的に供給し、 スイツチヤ3は、番組ライブラリ2から送られた番組情報S_(R1)?S_(Rk)を、番組制御部5からの制御信号S2に応じて選択的に送出部4A_(1) ?4A_(L) に出力し、 各送出部4A_(1) ?4A_(L) は、1つの入力チヤンネルと(n+1)個の出力チヤンネルを有し、また大容量の記憶装置を有し、入力した番組情報を一旦記憶装置に記憶し、これを番組送出制御部6からの制御信号S3に基づいて読み出して出力するようになされており、 送出部4A_(1) ?4A_(L) 及び10A_(1) ?10A_(m) は、スイツチヤ3又は7からの番組情報を入力インターフエース20を介してバツフアメモリ21に入力し、 送出部4A_(1) ?4A_(L) は、バツフアメモリ21の出力を、記録再生用のインターフエース22を介して記録再生部23により所定の記録媒体に記録することができると共に、同時に出力インターフエース24を介して複数の出力チヤンネルから出力することもできるようになされており、 記録再生部23は、記録媒体に番組ライブラリ2からの番組情報又は別の送出部4A_(1) ?4A_(L)からの番組情報を記録しながら、時間差のある番組情報を各受信者に送出することもできるようになされており、 この場合記録再生部23は、単位時間をn個のタイムスロツトに分割し、このうち(n-1)個のタイムスロツトで記録データを読み出すと共に、残りの1つのタイムスロツトで番組ライブラリ2又は別の送出部4A_(1) ?4A_(L) からの番組情報を記録する データ伝送装置1。」 (2)一致点・相違点 甲第3号証記載の発明では、スイツチヤ3は、番組ライブラリ2から送られた番組情報S_(R1)?S_(Rk)を、制御信号S2に応じて選択的に送出部4A_(1) ?4A_(L) に出力し、各送出部4A_(1) ?4A_(L) は、1つの入力チヤンネルを有しており、送出部4A_(1) ?4A_(L) 及び10A_(1) ?10A_(m) は、スイツチヤ3又は7からの番組情報を入力インターフエース20を介してバツフアメモリ21に入力し、送出部4A_(1) ?4A_(L) は、バツフアメモリ21の出力を、記録再生用のインターフエース22を介して記録再生部23により所定の記録媒体に記録するから、甲第3号証記載の発明では、スイツチヤ3からの番組情報S_(R1)?S_(Rk)が、1つの入力チヤンネルを経由して送出部4A_(1) ?4A_(L)の入力インターフエース20を介してバツフアメモリ21に入力され、バツフアメモリ21の出力は、記録再生用のインターフエース22を介して記録再生部23により所定の記録媒体に記録される。 したがって、甲第3号証記載の発明には「1つの入力チヤンネルに入力されたデータを書込可能な所定の記録媒体を備えた記録再生部23」が開示されている。 したがって、甲第3号証記載の発明の「1つの入力チヤンネル」、「所定の記録媒体」「記録再生部23」が、各々、本件発明4の「一つのデータ入力部」、「書込領域」、「記憶手段」に相当する。 甲第3号証記載の発明の各受信者が、それぞれ、映画番組等の所望の番組情報を受信し、表示するための端末を有していることは自明である。 甲第3号証記載の発明では、記録再生部23が、単位時間をn個のタイムスロツトに分割し、このうち(n-1)個のタイムスロツトで記録データを読み出すと共に、残りの1つのタイムスロツトで番組ライブラリ2又は別の送出部4A_(1) ?4A_(L) からの番組情報を記録し、読み出した時間差のある番組情報を各受信者に送出しているから、甲第3号証記載の発明のデータ伝送装置1は、「一つのデータ入力部に入力された一連に再生される映像情報又は音声情報の一つに対応する一連のデータを、前記書込領域に端末への送信用のデータとして読出可能な記憶データとして記憶されるように書き加えながら、その書込領域に書き込まれている前記記憶データを、その記憶データが書き込まれている書込領域中の複数の位置の各々から端末への送信用のデータとして読み出して、複数の端末に送信する情報供給システム」であるといえる。 したがって、本件発明4と甲第3号証記載の発明の一致点・相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「一つのデータ入力部に入力されたデータを書込可能な書込領域を備えた記憶手段を設け、 前記一つのデータ入力部に入力された一連に再生される映像情報又は音声情報の一つに対応する一連のデータを、前記書込領域に端末への送信用のデータとして読出可能な記憶データとして記憶されるように書き加えながら、その書込領域に書き込まれている前記記憶データを、その記憶データが書き込まれている書込領域中の複数の位置の各々から端末への送信用のデータとして読み出して、複数の端末に送信する情報供給システム。」である点。 [相違点] 本件発明4は、「端末への送信用のデータとして、書込領域中から読み出す位置の各々」が「任意」であるのに対して、甲第3号証記載の発明では、「端末への送信用のデータとして、書込領域中から読み出す位置の各々」が「任意」であるのか否か不明である点。 (3)相違点の検討 甲第3号証の段落番号【0062】に「本発明はこれに限らず、受信者から途中から番組情報を見たい要求があつた場合には、これに応じて読出し位置を選択すれば、各受信者の希望に応じた位置から番組情報を提供することができる。」と記載されている。 受信者が希望する見たい要求に応じた読出し位置は、どこになるのか予測できないから、「任意」であるといえる。 したがって、甲第3号証記載の発明において、「端末への送信用のデータとして、書込領域中から読み出す位置の各々」を「任意」とすることは、甲第3号証の段落番号【0062】の記載から、容易に想到できたことである。 したがって、本件発明4は、甲第3号証記載の発明及び甲第3号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件発明1及び本件発明7は、本件発明4の末尾の「端末への送信用のデータとして読み出して、複数の端末に送信する情報供給システム」を、「端末への送信用のデータとして読み出して、複数の端末に送信する情報供給方法」または「端末への送信用のデータとして読み出し可能に設けてある情情報読出装置」と変更しただけのものであるから、本件発明4と同様に、甲第3号証記載の発明及び甲第3号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、被請求人は、答弁書の第24頁第16-20行において、甲第3号証に関し、「つまり、記録再生部23は、バッファメモリ21から入力された番組情報を1つのタイムスロットで記録しながら、(n-1)個のタイムスロットで記録データを読み出す機能を有していること、及び、読み出し位置を選択すれば、各受信者の希望に応じた番組情報を提供できる旨が記載されているが、その機能を実現するための具体的な構成は一切記載されていない。」と主張している。 被請求人は、答弁書の第25頁の図1のような記録再生部の構成を仮定して説明しているが、「本件発明4が、甲第3号証記載の発明及び甲第3号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであること」を、上記機能を実現するための構成を何ら特定することなく示すことが、具体的に上述したように可能である。 したがって、「上記機能を実現するための具体的な構成が、甲第3号証に一切記載されていない。」ということが仮に事実であったとしても、該事実は、「本件発明4が、甲第3号証記載の発明及び甲第3号証記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるか否か」に何ら影響を及ぼさない。 また、第1回口頭審理調書の「陳述の要領」の被請求人の2に「被請求人提出の、平成21年4月23日付け口頭審理陳述要領書(3)の第5頁図1の記録再生装置3は、書き込み中には読み出せないものを想定しているので、記録再生部5として書き込み中にも読み出しが行えるように、複数個の記録再生装置3(3a,3b,3c…………)が用意されている。」と記載されている。したがって、記録再生装置3として、書き込み中にも読み出せるものを使えば、記録再生装置3は一つの記録再生装置3aで済み、複数個の記録再生装置3(3a,3b,3c…………)を用意する必要はないのである。 甲第3号証の段落番号【0030】には、「実施例の場合、記録媒体としては例えば映画1本分の番組情報を記録可能な光磁気デイスクが用いられており、記録再生部23としてはこの光磁気デイスクに番組情報を記録することができると共に高速再生が可能なデイスク記録再生装置が用いられている。」と記載されており、甲第3号証の段落番号【0034】には、「この場合記録再生部23は、図5に示すように、単位時間をn個のタイムスロツトに分割し、このうち(n-1)個のタイムスロツトで記録データを読み出すと共に、残りの1つのタイムスロツトで番組ライブラリ2又は別の送出部4A_(1) ?4A_(L) 、10A_(1) ?10A_(m) からの番組情報を記録する。」と記載されている。 記録媒体として映画1本分の番組情報を記録可能な光磁気デイスクを用い、甲第3号証の段落番号【0034】の記載のように、単位時間をn個のタイムスロツトに分割し、このうち(n-1)個のタイムスロツトで記録データを読み出すと共に、残りの1つのタイムスロツトで番組ライブラリ2又は別の送出部4A_(1) ?4A_(L) 、10A_(1) ?10A_(m) からの番組情報を記録するようにすれば、人間の感覚からすれば、光磁気デイスクに書き込み中にも読み出していると感じる。したがって、甲第3号証の段落番号【0030】及び【0034】の記載から判断すれば、被請求人提出の平成21年4月23日付け口頭審理陳述要領書(3)の第5頁図1のように、複数個の記録再生装置3(3a,3b,3c…………)を用意する必然性はなく、単一の記録再生装置3aで記録再生部5が構成されていると考えるのが適切である。単一の記録再生装置3aで記録再生部5が構成されていれば、図1中のデータ入力部1の数も1となることは自明である。 被請求人の口頭弁論陳述要領書(3)の第5頁第3-5行に、「甲第3号証の「入力チャンネル」に入力されたデータを書込可能な領域は、「複数のデータ入力部に入力されたデータを書込可能な領域である」と記載されている。 しかし、上述したように、甲第3号証の記録再生部23が、被請求人の口頭弁論陳述要領書(3)の第5頁図1のように、複数個の記録再生装置3(3a,3b,3c…………)を用意したものと考える必然性はない。光磁気デイスクを用い、甲第3号証の段落番号【0034】の記載のように時分割動作させれば、人間の感覚からすれば、光磁気デイスクに書き込み中にも読み出していると感じるのであるから、単一の記録再生装置3aで記録再生部23が構成されていると考えるのが相当である。したがって、「甲第3号証の「入力チャンネル」に入力されたデータを書込可能な領域は、「単一のデータ入力部に入力されたデータを書込可能な領域である」とするのが相当である。 第6.むすび 以上のとおりであるから、無効理由2及び無効理由4について検討するまでもなく、本件発明1、4及び7についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2009-05-11 |
出願番号 | 特願平8-192814 |
審決分類 |
P
1
123・
55-
Z
(H04H)
P 1 123・ 537- Z (H04H) P 1 123・ 121- Z (H04H) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 聡史 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
篠塚 隆 清水 稔 |
登録日 | 2003-02-21 |
登録番号 | 特許第3399496号(P3399496) |
発明の名称 | 情報供給方法と情報供給システム及び情報読出装置 |
代理人 | 渡辺 光 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 中村 佳正 |
代理人 | 高石 秀樹 |