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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A61H
管理番号 1199598
審判番号 無効2008-800089  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-05-14 
確定日 2009-06-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第4086820号発明「マッサージ機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4086820号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯・本件発明
(1) 本件特許第4086820号の請求項1?3に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という。)についての出願は、平成16年8月11日に出願され、平成20年2月29日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。
(2) これに対し請求人は、平成20年5月14日に本件無効審判を請求し、本件特許発明1及び2についての特許を無効とするとの審決を求めている。
(3) 本件特許発明1及び2は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「 【請求項1】
ハウジング内にモータを設け、該モータの回転軸の一端に回転部材を介してマッサージ部材を設け、
該回転部材は、該モータの回転軸に嵌着する嵌着部を具え、該嵌着部の一端は、水平方向に延伸して一方に重心部を形成し、他方に凸軸を形成するとともに、該嵌着部から該重心部に至る長さと、該嵌着部から該凸軸に至る長さをそれぞれ異なる長さにし、
該マッサージ部材は、上面にマッサージ面を形成し、底面側には該回転部材の凸軸を回動自在に支持する軸支部を形成し、該凸軸と軸支部とが相対的に回転し、かつ人体に接触するマッサージ部材のマッサージ面が偏心して回転するように構成することを特徴とするマッサージ機。
【請求項2】
前記マッサージ部材が、該モータの回転軸に対して偏心して設けられることを特徴とする請求項1に記載のマッサージ機。」

2 請求人の主張の概要
これに対して、請求人は、本件特許発明1及び2についての特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件特許発明1及び2は、本件出願前に国内で頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効とされるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。

[証拠方法]
甲第1号証:本件特許登録情報
甲第2号証:本件公報
甲第3号証:登録実用新案第3085673号公報
甲第4号証:特開2003-305098号公報
甲第5号証:特開2001-198170号公報
甲第6号証:特許第3347143号公報

3 被請求人の主張の概要
一方、被請求人は、本件特許発明1及び2は、いずれも本件出願前に国内で頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、無効とされるべきでない旨主張している。

4 甲第3号証及び甲第5号証の記載事項
(1)甲第3号証(登録実用新案第3085673号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「本体とされ、ケース、モータ、スイッチ、パワーサプライを具え、該モータが該ケース内に設置され、該モータが原動軸を具え、該原動軸が該ケースの対応する両側を貫通し、且つ該スイッチが該ケースの所定の位置に取り付けられて該モータと連接し、該パワーサプライが該ケースの別の所定の位置に取り付けられ、並びに該モータ及び該スイッチと連接する、上記本体と、
二つの振動体とされ、それぞれモータの原動軸の両端に取り付けられ、並びにそれぞれ連接手段、ウエイトブロック、軸受及び掌に握持される按摩体を具え、該連接手段の一端が該軸受内に進入し、反対のもう一端に円の中心から偏離した偏心孔が軸方向に凹設され、原動軸が挿入固定され、且つウエイトブロックが該連接手段の外周面に固定され、また、該軸受が該按摩体内に埋設され、これにより該按摩体が以上の構成要件により偏心振動運動を発生し、使用者が両手でそれぞれ按摩体を握持する時、振動作用により按摩機能を達成することを特徴とする、掌按摩機能を有する按摩機。」(【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】)
(イ)「これら振動体30はそれぞれ該モータ12の原動軸121の両端に取り付けられ、並びにそれぞれ連接手段31、ウエイトブロック32、軸受33及び按摩体34を具え、該連接手段31は略円柱状を呈し、その一端が該軸受33内に進入し、反対のもう一端に円の中心から偏離した偏心孔311が軸方向に凹設され、原動軸121が挿入され、且つ該連接手段31は外表面より径方向に貫通孔312が設けられて該偏心孔311に至り、該貫通孔312にボルト313が挿入されて該連接手段31と原動軸121が結合されて一体とされ、また、該ウエイトブロック32が該連接手段31の外周面に溶接されて、回転慣性量を増加し、該軸受33が按摩体34の中央部分に埋め込まれ、これにより按摩体34が軸受33により連接手段31と相対回転を発生し、且つ按摩体34が略半円球状を呈し、その周縁に軸方向に一つのフランジ341が延伸されて本体10の保護盤15に当接し、該原動軸121、連接手段31及びウエイトブロック32を被覆し、別に按摩体34の外表面に複数の凸粒342が凸設され、按摩効果を増加する。
図3、4に示されるように、パワーサプライ14を電源に繋ぎ、並びにスイッチ13を起動する時、該モータ12が運転して原動軸121を駆動し原動軸121に連帯して連接手段31が回転し、該原動軸121が該連接手段31の偏心孔311内に固定され、且つ按摩体34が軸受33により連接手段31に枢接され、ゆえにこれら按摩体34が連接手段31に駆動されて上下移動と左右の揺動の現象を発生する。これにより、モータ12の回転が速くなるほど、これら按摩体34の移動が速くなり、連続する不断の振動効果を発生し、且つウエイトブロック32が重くなるほど、その回転慣性量が大きくなり、振動効果もますます明らかとなる。」(段落【0008】?【0009】)

これら記載事項及び図面の記載からみて、甲第3号証には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
「モータがケース内に設置され、該モータが原動軸を具え、二つの振動体が、モータの原動軸の両端に取り付けられるとともに、連接手段、ウエイトブロック、軸受及び按摩体を具え、連接手段の一端が軸受内に進入し、反対のもう一端に偏心孔が軸方向に凹設され、原動軸が挿入固定され、ウエイトブロックが連接手段の外周面に固定され、按摩体の外表面に複数の凸粒が凸設され、軸受が按摩体内に埋設され、按摩体が軸受により連接手段と相対回転を発生するとともに、偏心振動運動を発生する按摩機。」

(2)甲第5号証(特開2001-198170号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ウ)「【発明の属する技術分野】本発明は、ベルトに振動を与えることにより、ベルトを当接させた患部にマッサージを与えるベルト式マッサージ機に関する。」(段落【0001】)
(エ)「【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、1は本体ケースで、本体ケース1内には振動発生源2が収納されている。振動発生源2は電動モータ4を備え、電動モータ4は本体ケース1内に複数の支持部材5を介して支持されている。電動モータ4はその両側にそれぞれ回転軸4a,4bが突出されている。
両回転軸4a,4bには、それぞれ回転部材6a,6bが一体回転可能に嵌着されており、回転部材6a,6bには、回転軸4a,4bから所定量偏心した位置にネジ孔8a,8bが形成されている。両回転部材6a,6bの両ネジ孔8a,8bは、180度位相が異なるようにその偏心方向が逆方向となるように形成されている。このネジ孔8a,8bには偏心軸10a,10bが螺入されている。また、回転部材6a,6bには、ネジ孔8a,8bと回転軸4a,4bを間にして180度反対側にバランスウエイト12a,12bが取り付けられている。」(段落【0008】?【0009】)
(オ)図2には、本実施形態の振動発生源の拡大断面が示されている。

5 本件特許発明1について
(1)対比
そこで、本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、その構造又は機能からみて、甲3発明の「ケース」は本件特許発明1の「ハウジング」に相当し、同様に「原動軸」は「回転軸」に、「按摩体」は「マッサージ部材」に、「連接手段」は「回転部材」に、「偏心孔」は「嵌着部」に、「ウエイトブロック」は「重心部」に、「按摩体の外表面」は「マッサージ面」に、「軸受」は「軸支部」に、「按摩機」は「マッサージ機」に、それぞれ相当している。
また、甲第3号証の図3等からみて、甲3発明においては原動軸の端部に連接手段を介して按摩体を設けているから、「モータの回転軸の一端に回転部材を介してマッサージ部材を設け」ているものであるとともに、軸受内に進入する連接手段の一端は凸軸状であることが示されているから、甲3発明の「連接手段の一端」は本件特許発明1の「凸軸」に相当する。
また、甲3発明において、按摩体が偏心振動運動を発生することから、連接手段に設けた偏心孔の軸心と軸受内に進入する連接手段の一端の軸心とは所定方向にずれていることは明らかである。そうすると、甲3発明の連接手段に設けた偏心孔も、その軸心に垂直な方向でみて所定方向にウエイトブロックと連接手段の一端を形成していると言えるから、本件特許発明1と対比すると、嵌着部の所定方向に重心部と凸軸を形成した点で共通している。
また、甲3発明においても、按摩体が軸受により連接手段と相対回転を発生するのであるから、連接手段の一端と軸受とが相対的に回転すると言うことができ、按摩体が偏心振動運動を発生するのであるから、按摩体の外表面すなわちマッサージ面が偏心して回転すると言うことができる。
また、甲3発明の按摩体も、所定面に按摩体の外表面を形成し、他の所定面に軸受を埋設しているから、本件特許発明1と対比すると、マッサージ部材は所定面にマッサージ面を形成し、他の所定面に軸支部を形成した点で共通している。
したがって、本件特許発明1の用語を用いて表現すると、両者は以下の一致点並びに相違点1及び相違点2を有する。
(一致点)
「ハウジング内にモータを設け、該モータの回転軸の一端に回転部材を介してマッサージ部材を設け、
該回転部材は、該モータの回転軸に嵌着する嵌着部を具え、該嵌着部の所定方向に重心部と凸軸を形成し、
該マッサージ部材は、所定面にマッサージ面を形成し、他の所定面に該回転部材の凸軸を回動自在に支持する軸支部を形成し、該凸軸と軸支部とが相対的に回転し、かつ人体に接触するマッサージ部材のマッサージ面が偏心して回転するように構成することを特徴とするマッサージ機。」
(相違点1)
本件特許発明1では、「嵌着部の一端は、水平方向に延伸して一方に重心部を形成し、他方に凸軸を形成するとともに、該嵌着部から該重心部に至る長さと、該嵌着部から該凸軸に至る長さをそれぞれ異なる長さにし」たのに対し、甲3発明では、「嵌着部の所定方向に重心部と凸軸を形成」するにとどまる点。
(相違点2)
本件特許発明1では、「マッサージ部材は、上面にマッサージ面を形成し、底面側には軸支部を形成し」たのに対し、甲3発明では、「マッサージ部材は、所定面にマッサージ面を形成し、他の所定面に軸支部を形成し」た点。

(2)当審の判断
(相違点1について)
甲第5号証には、上記4(2)の記載事項及び図2からみて、回転部材6a,6bの、回転軸4a,4bに嵌着される部分の一端側が延伸して一方にバランスウエイト12a,12bが取り付けられ、他方にネジ孔8a,8bが形成され、このネジ孔8a,8bには偏心軸10a,10bが螺入されており、回転軸4a,4bに嵌着される部分からバランスウエイト12a,12bに至る長さと、ネジ孔8a,8bに至る長さを明らかに異なる長さとした点が記載あるいは図示されている。
ここで、構造又は機能からみて、甲第5号証に記載された「回転軸4a,4bに嵌着される部分」は本件特許発明1の「嵌着部」に相当し、同様に「バランスウエイト12a,12b」は「重心部」に、「偏心軸10a,10b」は「凸軸」に、それぞれ相当しているから、本件特許発明1の用語を用いて表現すると、甲第5号証には、「嵌着部の一端は、延伸して一方に重心部を形成し、他方に凸軸を形成するとともに、該嵌着部から該重心部に至る長さと、該嵌着部から該凸軸に至る長さをそれぞれ異なる長さにし」た技術事項が記載されていると言える。
また、延伸方向についてはマッサージ機の配置により変化するものであるから、「水平方向に」延伸する点は実質的な相違点ではなく、適宜設定し得ることである。
そして、甲3発明の連接手段と甲第5号証に記載された回転部材6a,6bとはマッサージ機におけるモーターとマッサージ部材との間に介在する伝動機構である点で共通しているから、甲第5号証に記載された回転部材6a,6bに関する技術事項を甲3発明の連接手段に適用して、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到できたことである。
(相違点2について)
マッサージ部材の上下方向はマッサージ機の配置により変化するものであり、甲3発明においてもマッサージ面を上方向に配置すれば軸支部は底面側となるから、この点についても実質的な相違点ではなく、当業者が適宜設定し得ることである。
よって、甲3発明に基づいて相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項のように構成することも当業者が容易に想到できたことである。

そして、本件特許発明1による効果も、甲3発明及び甲第5号証に記載された発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

よって、本件特許発明1は甲3発明及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 本件特許発明2について
(1)対比
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項に加え、マッサージ部材が、該モータの回転軸に対して偏心して設けられる点を限定したものである。
しかしながら、甲3発明においても、按摩体が偏心振動運動を発生するものであって、上記5(1)において指摘したとおりモータの回転軸の軸心と一致する連接手段に設けた偏心孔の軸心と、マッサージ部材の軸心と一致する軸受内に進入する連接手段の一端の軸心とは所定方向にずれている、すなわち偏心して設けられることは明らかである。
そうすると、本件特許発明2と甲3発明とを対比した場合、上記5(1)の相違点1及び相違点2のみで相違し、他に相違点はない。

(2)当審の判断
そして、相違点1及び相違点2については上記5(2)で検討したとおりである。

また、本件特許発明2による効果も、甲3発明及び甲第5号証に記載された発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

よって、本件特許発明2は甲3発明及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおり、本件特許発明1及び2は、甲3発明及び甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1及び2についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-15 
結審通知日 2009-01-22 
審決日 2009-02-03 
出願番号 特願2004-234506(P2004-234506)
審決分類 P 1 123・ 121- Z (A61H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長屋 陽二郎  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 鈴木 洋昭
豊永 茂弘
登録日 2008-02-29 
登録番号 特許第4086820号(P4086820)
発明の名称 マッサージ機  
代理人 鈴木 征四郎  
代理人 中野 収二  

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