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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1199679
審判番号 不服2006-6478  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-06 
確定日 2009-06-25 
事件の表示 特願2003-317444「排気装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月31日出願公開、特開2005- 83286〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成15年9月9日に出願されて、平成17年8月26日に手続補正書が提出されて特許請求の範囲及び明細書が補正され、平成17年10月4日付けで拒絶理由が通知され、平成17年12月12日に意見書及び手続補正書が提出されて特許請求の範囲及び明細書が補正されたが、平成18年2月28日付けで拒絶査定がなされ、平成18年4月6日に同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成18年4月21日に手続補正書が提出されて特許請求の範囲及び明細書の補正がなされたものであって、その後、平成20年7月10日付けで当審において書面による審尋がなされ、平成20年9月16日に前記審尋に対する回答書が提出されたものである。

第2.平成18年4月21日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成18年4月21日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正の内容
平成18年4月21日付けの手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成17年12月12日付けの手続補正書により補正された)下記の(2)に示す請求項1ないし5を下記の(1)に示す請求項1ないし5と補正するものである。(なお、下線は補正箇所を示す。)

(1)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
エンジンから後方へ延出した排気系後部のマフラを自動二輪車のリヤカウルの後部内で後輪上方に配置した排気装置において、前記マフラから車体上方に指向したブラケットを立設させ、当該ブラケットにより前記マフラをシートレールに固定すると共に、前記マフラの後端面を後部が細くなったカップ状の樹脂製のマフラリヤカバーで覆い、前記マフラを扁平形状とし、かつ前記マフラを先細り形状に形成して、後方に向かって絞られた車体後部に外観上連続させたことを特徴とする排気装置。
【請求項2】
前記シートレールの内方に前記ブラケットが接することを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記マフラの上部を金属製のマフラプロテクタで覆うことを特徴とする請求項1記載の排気装置。
【請求項4】
前記マフラと車体フレームのピボットプレートの間の空間に存在する排気管に、排気制御弁を配設したことを特徴とする請求項1記載の排気装置。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記マフラの車幅方向に左右一対設けられたものであることを特徴とする請求項1記載の排気装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
エンジンから後方へ延出した排気系後部のマフラを自動二輪車のリヤカウルの後部内で後輪上方に配置した排気装置において、前記マフラから車体上方に指向したブラケットを立設させ、当該ブラケットにより前記マフラをシートレールに固定すると共に、前記マフラの後端面を後部が細くなったカップ状の樹脂製のマフラリヤカバーで覆うことを特徴とする排気装置。
【請求項2】
前記シートレールの内方に前記ブラケットが接することを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記マフラの上部を金属製のマフラプロテクタで覆うことを特徴とする請求項1記載の排気装置。
【請求項4】
前記マフラと車体フレームのピボットプレートの間の空間に存在する排気管に、排気制御弁を配設したことを特徴とする請求項1記載の排気装置。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記マフラの車幅方向に左右一対設けられたものであることを特徴とする請求項1記載の排気装置。」

2.補正の適否
[理由1]
(1)当審の判断
本件補正は、本件補正前の請求項1の「マフラ」について、本件補正後の請求項1の「前記マフラを扁平形状とし、かつ前記マフラを先細り形状に形成して、後方に向かって絞られた車体後部に外観上連続させた」なる発明特定事項を追加するものを含んでいる。
かかる発明特定事項の追加、特に、「前記マフラを扁平形状とし」なる事項の追加によって、発明が解決しようとする課題について、本件補正前の「外観品質を向上できると共に造形上の自由度を確保でき、更には冷却性能を向上できる排気装置を提供する」(本件明細書段落【0003】)に対して、少なくとも「消音効果を高める」こと(本件明細書段落【0055】)が追加されている。そして、かかる追加された課題は、本件補正前の請求項1ないし5に記載された発明が解決しようとする課題を概念的に下位にしたものでも同種のものでもないから、本件補正前の請求項1ないし5に係る発明と本件補正後の請求項1ないし5に係る発明は、解決しようとする課題が同一であるとはいえない。
よって、本件補正は、本件補正前の請求項1ないし5の発明特定事項を限定的に減縮したものとは認められず、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲を減縮することを目的としたものではない。
さらに、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号、第3号又は第4号に規定される請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。

(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

[理由2]
仮に、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲を減縮することを目的としたものに該当するとした場合、本件補正により補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて検討する。

(1)引用刊行物
1)特開2001-180561号公報(以下、「引用刊行物1」という。)
2)特開2001-73758号公報(以下、「引用刊行物2」という。)
3)特開平10-95379号公報(以下、「引用刊行物3」という。)
4)実願平1-4183号(実開平2-79179号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物4」という。)
5)特許第2723311号公報(平成10年3月9日発行。以下、「引用刊行物5」という。)
6)「オートバイ 2002年12月号」(モーターマガジン社、平成14年11月6日に独立行政法人工業所有権情報館・研修館が受入。)(以下、「引用刊行物6」という。)

(2)当審の判断1
1)引用刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用刊行物1には、次の事項が記載されている。(なお、下線は引用箇所等を特に明示するために当審で付した。)

ア.「【0007】本発明は、上記問題点を解決するべくなされたものであり、排気マフラー取付部におけるレイアウト性の向上とコンパクト化を図るとともに、部品点数と組立工数を削減することのできる自動二輪車の排気マフラー取付装置を提供することを目的とする。」(公報段落【0007】)

イ.「【0015】
【発明の実施形態】以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る排気マフラー取付装置が適用された自動二輪車の一例を示す左側面略図である。
【0016】この自動二輪車1は、図示しない車体フレームの前方下部にエンジン2が搭載され、エンジン2の前面から延出するエキゾーストパイプ3が一旦下方に湾曲してから例えば車体右側に湾曲し、さらに後方に湾曲して後端に排気マフラー4が接続されている。
【0017】排気マフラー4は車体前後方向に延びる略円筒状に形成され、車体の右側方、かつ後輪5の上方に配設されている。そして、本発明に係る排気マフラー取付装置7により、排気マフラー4が車体フレームに取り付けられる。排気マフラー取付装置7は次のように構成される。
【0018】まず、排気マフラー4の中間部上面には、上方に延びるマフラーステー8が突設されている。図2および図3に示すように、このマフラーステー8は、例えば2枚の板金材からなるステープレート8a,8bが背中合わせに固着されて貫通孔8cが穿設されており、その下端に設けられた固着片8d,8eが排気マフラー4の外周面に固着されている。
【0019】一方、車体フレーム側にはマフラーブラケット9が設けられている(図2、図3参照)。このマフラーブラケット9は、例えば車体フレームから延出する板状のブラケットプレート9aの一側面に環状のブラケットカラー9bを固着して厚みを増したものであり、貫通孔状の保持孔9cが形成されている。」(公報段落【0015】?【0019】)

ウ.「【0023】こうして、マフラーブラケット9とマフラーステー8は、クッション部材10を介してマフラー固定ボルト11とナット14により締着され、クッション部材10の弾性により排気マフラー4が車体フレーム(マフラーブラケット9)に対して防振的に取り付けられる。」(公報段落【0023】)

エ.上記イ.の記載及び特に図1からみて、引用刊行物1には、エンジン2から延出するエキゾーストパイプ3が後方に湾曲して後端に排気マフラー4が接続される排気装置が記載されていることが分かる。

オ.上記イ.及びエ.並びに特に図1からみて、引用刊行物1には、エンジン2から車体前後方向に延びる排気マフラー4を自動二輪車1の車体の右側方かつ後輪5の上方に配設した排気装置が記載されていることが分かる。

上記ア.ないしオ.及び図1ないし3の記載によれば、引用刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「エンジン2からエキゾーストパイプ3が後方に湾曲して後端に車体前後方向に延びる排気マフラー4を自動二輪車1の車体の右側方かつ後輪5の上方に配設した自動二輪車1の排気装置において、前記排気マフラー4から上方に延びるマフラーステー8を突設させ、当該マフラーステー8により排気マフラー4を車体フレームに取り付けたと共に、前記排気マフラー4を略円筒状に形成した排気装置。」(以下、「引用刊行物1記載の発明」という。)

2)対比・判断
本願補正発明と引用刊行物1記載の発明とを対比すると、引用刊行物1記載の発明の「エンジン2からエキゾーストパイプ3が後方に湾曲して後端に」は、その機能又は構成からみて、本願補正発明の「エンジンから後方へ延出した排気系後部の」に相当する。同様に、引用刊行物1記載の発明の「排気マフラー4」は、本願補正発明の「マフラ」に、「自動二輪車1」は「自動二輪車」に、「排気マフラー4から上方に延びるマフラーステー8を突設させ」は「マフラから車体上方に指向したブラケットを立設させ」に、「マフラーステー8により排気マフラー4を車体フレームに取り付けた」は「ブラケットにより前記マフラをシートレールに固定する」に、それぞれ相当する。
また、引用刊行物1記載の発明の「車体の右側方かつ後輪5の上方」は、「後輪上方」という限りにおいて、本願補正発明の「リヤカウルの後部内で後輪上方」に相当する。

してみると、両者は、
「エンジンから後方へ延出した排気系後部のマフラを自動二輪車の後輪上方に配置した自動二輪車の排気装置において、前記マフラから車体上方に指向したブラケットを立設させ、当該ブラケットにより前記マフラをシートレールに固定する排気装置。」の点で一致し、以下のア.ないしウ.の点で相違する。

ア.本願補正発明では、「マフラの後端面を後部が細くなったカップ状の樹脂製のマフラリヤカバーで覆っている」のに対して、引用刊行物1記載の発明では、その様な構成を備えていない点(以下、「相違点1」という。)。

イ.マフラの配設位置に関して、本願補正発明では、「リヤカウルの後部内で後輪上方」であるのに対して、引用刊行物1記載の発明では、「車体の右側方かつ後輪5の上方」である点(以下、「相違点2」という。)。

ウ.マフラの形状に関して、本願補正発明では、「扁平形状とし、かつ先細り形状に形成して、後方に向かって絞られた車体後部に外観上連続させ」ているのに対して、引用刊行物1記載の発明では、「略円筒状に形成し」ている点(以下、「相違点3」という。)。

そこで、上記各相違点1ないし3について検討する。
・相違点1について
引用刊行物2の段落【0023】、【0024】、図1、図7及び図8等の記載からみて、引用刊行物2には、「マフラー本体5の後端部を後部が細くなった円筒状の合成樹脂材料によって形成したキャップ12で覆っている」こと(以下、「引用刊行物2の記載事項1」という。)が記載されていると認められる。ここで、引用刊行物2の記載事項1の「マフラー本体5の後端部」は、その機能又は構成からみて、本願補正発明の「マフラーの後端面]に相当し、同様に、「円筒状」は「カップ状」に、「合成樹脂材料によって形成した」は「樹脂製の」に、「キャップ12」は「マフラリアカバー」に、それぞれ相当する。してみると、引用刊行物2の記載事項1は、「マフラの後端面を後部が細くなったカップ状の樹脂製のマフラリヤカバーで覆っている」と換言できるものであるから、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項に相当するものである。
そして、当業者であれば、引用刊行物1記載の発明において、引用刊行物2の記載事項1を採用し、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、容易に想到し得ることである。

・相違点2について
自動二輪車のマフラをリヤカウルの後部内で後輪上方に配置することは、例えば、引用刊行物3(「左右排気管26、26」及び「サイドカバー34」を参照。)、引用刊行物4(「消音器18」及び「リアカウル15」を参照。)、引用刊行物5(「消音器16」及び「リアカウル12」を参照。)及び引用刊行物6(「サイレンサー(マフラー)」及び「Rフェンダー」を参照。)に示されるように、本願出願時点で周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である。
そして、当業者であれば、引用刊行物1記載の発明において、周知技術1を採用し、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、容易に想到し得ることである。

・相違点3について
本願補正発明において、マフラを扁平形状としたのは、本願明細書の例えば段落【0055】に記載されるように「通過する排気の通過経路を車幅方向でより長く確保して消音効果を高めるようにすると共に車幅方向を大きくすることで消音効果に影響が大きい容積を確保しながらも、その前後長を短くできるように」することを目的とするものと解され、また、マフラを先細り形状に形成して、後方に向かって絞られた車体後部に外観上連続させているのは、本願明細書の段落【0061】や審判請求理由等の記載からみて、外観品質の向上を目的とするものと解される。
他方、マフラを幅広に形成して容量等を確保する手法は、例えば、引用刊行物5の第6欄第43ないし48行に「リアカウル12をシート11よりも幅広に形成し、このリアカウル12内に消音器16を配設するとともに、この消音器16をリアカウル12の内面に沿う形状としたから、…消音器16の幅寸法の拡大が図られ、この結果、消音器16の大容量化が可能となる。」と記載されているように、本願出願時点で周知の技術(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、当業者であれば、引用刊行物1記載の発明において、周知技術2を採用してマフラを幅広に形成することは容易になし得ることであり、その際に、消音性能のみならず外観品質にも配慮して具体的な形状を検討し、例えば、引用刊行物6の第70ページ最上段右側の写真及び第71ページ最上段右側の写真にみられるように、マフラを扁平形状とし、かつ先細り形状に形成して、後方に向かって絞られた車体後部に外観上連続させているようにすることは、当業者が適宜なし得る設計的な事項に過ぎないものである。
よって、当業者であれば、引用刊行物1記載の発明において、周知技術2に基づいて、相違点3に係る本願補正発明のように特定することは、容易に想到し得ることである。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用刊行物1記載の発明、引用刊行物2の記載事項1、周知技術1及び周知技術2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

以上から、本願補正発明は、引用刊行物1記載の発明、引用刊行物2の記載事項1、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)当審の判断2
1)引用刊行物6の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である引用刊行物6には、「CBR600RR」と称される自動二輪車の写真とともに次の事項が記載されている。

ア.「バンク角の確保と車体のスリム化を両立したアップマフラーはRフェンダーを貫通するセンター出し。で、サイレンサーはテールカウル直下にレイアウトされる。」(引用刊行物6の第67ページ上段写真中に記載されている。)

イ.「アップサイレンサーの採用で、車体の極限レベルでのスリム化に成功。このスリム化、乱流を生みにくく、空力的にも優れている。」(引用刊行物6の第69ページ最上段右側の写真中に記載されている。)

ウ.「ミッションのメインシャフト位置の上昇、スターターギアのACジェネレータ後方への移設などにより、エンジンは思い切ったコンパクト化に成功。」(引用刊行物6の第71ページ最上段右側の写真中に記載されている。)

エ.上記ア.及びウ.の記載、第67ページ最下段右側の写真(車体色が黄色のもの)、第69ページ最上段右側の写真(特にリアビュー)、第70ページの最上段右側の写真及び第71ページの最上段右側の写真からみて、引用刊行物6に記載された自動二輪車(CBR600RR)の排気装置は、「エンジンから後方へ延出した排気系後部のサイレンサー(マフラー)をテールカウルの直下で後輪上方に配置」していることが分かる。

オ.第66ページ中段左右の写真(車体色が黄色のもの)、第69ページ最上段右側の写真(特にリアビュー)及び第70ページ最上段右側の写真からみて、引用刊行物6に記載された自動二輪車(CBR600RR)の排気装置は、「サイレンサー(マフラー)の後端面を後部が細くなったカバーで覆」われていることが分かる(第70ページの写真はカバーを外したものと認められる。)。

カ.第70ページ最上段右側の写真及び第71ページ最上段右側の写真からみて、引用刊行物6に記載された自動二輪車(CBR600RR)の排気装置は、「サイレンサー(マフラー)を扁平形状とし、かつサイレンサー(マフラー)を先細り形状に形成している」ことが分かる。さらに、第67ページ最下段右側の写真及び第69ページ最上段右側(特にリアビュー)の写真も併せてみると、引用刊行物6に記載された自動二輪車(CBR600RR)のサイレンサー(マフラー)は、「後方に向かって絞られた車体後部に外観上連続させた」ものであることが分かる(このことは、上記イ.の記載からも分かる。)。

上記ア.ないしカ.及び各写真の記載によれば、引用刊行物6には、次の発明が記載されていると認められる。

「エンジンから後方へ延出した排気系後部のサイレンサー(マフラー)を自動二輪車のテールカウルの直下で後輪上方に配置した排気装置において、前記サイレンサー(マフラー)の後端面を後部が細くなったカバーで覆い、前記サイレンサー(マフラー)を扁平形状とし、かつ前記サイレンサー(マフラー)を先細り形状に形成して、後方に向かって絞られた車体後部に外観上連続させた排気装置。」(以下、「引用刊行物6記載の発明」という。)

2)対比・判断
本願補正発明と引用刊行物6記載の発明とを対比すると、引用刊行物6記載の発明の「サイレンサー(マフラー)」は、その機能又は構成からみて、本願補正発明の「マフラ」に相当し、同様に、「テールカウルの直下」は「リヤカウルの後部内」に相当する。
また、引用刊行物6記載の発明の「マフラの後端面を後部が細くなったカバーで覆い」は、「マフラの後端面を後部が細くなったカバーで覆い」という限りにおいて、本願補正発明の「マフラの後端面を後部が細くなったカップ状の樹脂製のマフラリヤカバーで覆い」に相当する。

してみると、両者は、
「エンジンから後方へ延出した排気系後部のマフラを自動二輪車のリヤカウルの後部内で後輪上方に配置した排気装置において、前記マフラの後端面を後部が細くなったカバーで覆い、前記マフラを扁平形状とし、かつ前記マフラを先細り形状に形成して、後方に向かって絞られた車体後部に外観上連続させた排気装置。」の点で一致し、以下のア.及びイ.の点で相違する。

ア.マフラの取付けに関して、本願補正発明では、「マフラから車体上方に指向したブラケットを立設させ、当該ブラケットによりマフラをシートレールに固定する」のに対して、引用刊行物6記載の発明では、取付け方法が明らかではない点(以下、「相違点4」という。)。

イ.カバーに関して、本願補正発明では、「カップ状の樹脂製」であるのに対して、引用刊行物6記載の発明では、カップ状であること及び樹脂製であることが明らかではない点(以下、「相違点5」という。)。

そこで、上記各相違点4及び5について検討する。
・相違点4について
マフラから車体上方に指向したブラケットを立設させ、当該ブラケットによりマフラをシートレールに固定することは、例えば、引用刊行物1(「マフラーステー8」及び「車体フレーム」を参照。)及び引用刊行物3(「ブラケット板(第1ブラケット)52」及び「シートレール8」を参照。)に示されるように、本願出願時点で周知の技術(以下、「周知技術3」という。)である。
そして、当業者であれば、引用刊行物6記載の発明において、周知技術3を採用し、上記相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、容易に想到し得ることである。

・相違点5について
引用刊行物2の段落【0023】、【0024】、図1、図7及び図8等の記載からみて、引用刊行物2には、「キャップ12を円筒状の合成樹脂材料によって形成したこと」(以下、「引用刊行物2の記載事項2」という。)が記載されていると認められる。ここで、引用刊行物2の記載事項2の「キャップ12」は、その機能又は構成からみて、本願補正発明の「マフラリアカバー」に相当し、同様に、「円筒状」は「カップ状」に、「合成樹脂材料によって形成した」は「樹脂製の」に、それぞれ相当するから、引用刊行物2の記載事項2は、上記相違点6に係る本願補正発明の発明特定事項に相当するものである。
そして、当業者であれば、引用刊行物6記載の発明において、引用刊行物2の記載事項2を採用し、上記相違点5に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、容易に想到し得ることである。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用刊行物6記載の発明、周知技術3及び引用刊行物2の記載事項2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

以上から、本願補正発明は、引用刊行物6記載の発明、周知技術3及び引用刊行物2の記載事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上の[理由1]又は[理由2]のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、又は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1. 本願発明
上記第2.のとおり、平成18年4月21日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年8月26日付けの手続補正及び平成17年12月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、上記第2.1.(2)に記載したとおりである。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である上記刊行物1(特開2001-180561号公報)の記載事項は、上記第2.2.[理由2](2)1)に記載したとおりである。

3.当審の判断
本願発明は、前記第2.2.[理由2]で検討した本願補正発明の「前記マフラを扁平形状とし、かつ前記マフラを先細り形状に形成して、後方に向かって絞られた車体後部に外観上連続させた」なる発明特定事項を有しないものに実質的に相当する。
そうすると、本願発明を特定する事項を全て含んだものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.[理由2]「(2)当審の判断1」に記載したとおり、引用刊行物1記載の発明、引用刊行物2の記載事項1、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用刊行物1記載の発明、引用刊行物2の記載事項1、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1記載の発明、引用刊行物2の記載事項1、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-22 
結審通知日 2009-04-24 
審決日 2009-05-11 
出願番号 特願2003-317444(P2003-317444)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正浩  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 森藤 淳志
金澤 俊郎
発明の名称 排気装置  
代理人 志賀 正武  
代理人 西 和哉  
代理人 青山 正和  
代理人 高橋 詔男  
代理人 村山 靖彦  
代理人 鈴木 三義  

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