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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1199693
審判番号 不服2006-19778  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-07 
確定日 2009-06-25 
事件の表示 平成11年特許願第261436号「図面管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月30日出願公開、特開2001- 84268〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

特許願 平成11年 9月16日
出願審査請求書 平成15年 4月 7日
拒絶理由通知書 平成18年 4月10日(平成18年 4月18日発送)
意見書 平成18年 6月19日
手続補正書 平成18年 6月19日
拒絶査定 平成18年 7月31日(平成18年 8月 8日発送)
審判請求書 平成18年 9月 7日
手続補正書 平成18年10月10日
審尋 平成20年 8月11日(平成20年 8月12日発送)
回答書 平成20年10月 6日
補正の却下の決定
平成20年10月21日(平成20年11月 4日送達)
拒絶理由通知書 平成20年10月21日(平成20年10月28日発送)
意見書 平成21年 1月 5日
手続補正書 平成21年 1月 5日
拒絶理由通知書(最後)
平成21年 1月14日(平成21年 1月20日発送)
意見書 平成21年 3月17日
手続補正書 平成21年 3月17日




第2 平成21年3月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔結論〕

平成21年3月17日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕

1.補正内容

平成21年1月14日付けの拒絶理由通知書(最後)に対応して行われた、平成21年3月17日付けの手続補正(以下、「本件第2補正」という)は、特許請求の範囲を補正するものであって、
本件第2補正前の特許請求の範囲第1項(平成21年1月5日付けの手続補正書に記載された特許請求の範囲第1項)、すなわち、

「 【請求項1】
下水道配管内の上方に留金具によって所定間隔毎に吊るされて敷設された複数本の光ファイバーと、前記複数本の光ファイバーに順次試験光を送り反射光のレベルを定期的に測定した測定波形と異常点までの距離情報を検知する光ファイバー監視装置と、前記光ファイバー監視装置から前記反射光レベル測定波形と異常点距離情報を伝送される中央監視装置とを備え、前記中央監視装置は、前記光ファイバーを含む施設図面をディジタル情報として格納するファイル装置と、前記ファイル装置に格納されている施設図面情報をみ出して表示するディスプレイ装置と、前記ファイル装置から施設図面情報を検索する図面検索手段と、前記光ファイバー監視装置から伝送されてくる前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と異常点距離情報を異常発生日時と共に入力し、前記図面検索手段により検索された該当施設図面上における前記光ファイバーの異常点位置を検索して、軽異常と予め設定する閾値によって検知された異常情報を前記ファイル装置に格納する異常登録手段と、前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と正常状態における反射光レベル測定波形の損失差によって軽異常の発生回復を判断し前記光ファイバーの撓みや曲がりによる劣化を診断する劣化診断手段と、異常発生した光ファイバーの異常点位置と劣化程度を前記ディスプレイ装置に表示する表示編集手段とを具備し、前記表示編集手段は前記下水道配管の水量増大によって前記留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断するための前記光ファイバー番号のリストを作成表示することを特徴とする図面管理装置。」

であったものを、本件第2補正後の特許請求の範囲第1項、すなわち、

「 【請求項1】
下水道配管内の上方に留金具によって所定間隔毎に吊るされて敷設された複数本の光ファイバーと、前記複数本の光ファイバーに順次試験光を送り反射光のレベルを定期的に測定した測定波形と異常点までの距離情報を検知する光ファイバー監視装置と、前記光ファイバー監視装置から前記反射光レベル測定波形と異常点距離情報を伝送される中央監視装置とを備え、前記中央監視装置は、前記光ファイバーを含む施設図面をディジタル情報として格納するファイル装置と、前記ファイル装置に格納されている施設図面情報を読み出して表示するディスプレイ装置と、前記ファイル装置から施設図面情報を検索する図面検索手段と、前記光ファイバー監視装置から伝送されてくる前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と異常点距離情報を異常発生日時と共に入力し、前記図面検索手段により検索された該当施設図面上における前記光ファイバーの異常点位置を検索して、軽異常と予め設定する閾値によって検知された異常情報を前記ファイル装置に格納する異常登録手段と、前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と正常状態における反射光レベル測定波形の損失差によって軽異常が正常に戻ったことを判断し前記光ファイバーの撓みや曲がりによる劣化を診断する劣化診断手段と、異常発生した光ファイバーの異常点位置と劣化程度を前記ディスプレイ装置に表示する表示編集手段とを具備し、前記表示編集手段は、前記下水道配管の水量増大による満管流水時の流水による前記光ファイバーの撓みや曲がりの振れによって一時的な損失増大であるかを判断するための前記光ファイバー番号のリストを作成表示することを特徴とする図面管理装置。」

に補正するものである。

つまり、本件第2補正は、

(本件第2補正事項1)
「前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と正常状態における反射光レベル測定波形の損失差によって軽異常の発生回復を判断し前記光ファイバーの撓みや曲がりによる劣化を診断する劣化診断手段」を、
本件第2補正によって、
「前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と正常状態における反射光レベル測定波形の損失差によって軽異常が正常に戻ったことを判断し前記光ファイバーの撓みや曲がりによる劣化を診断する劣化診断手段」に補正すること、

(本件第2補正事項2)
「前記表示編集手段は前記下水道配管の水量増大によって前記留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断するための前記光ファイバー番号のリストを作成表示する」ことを、
本件第2補正によって、
「前記表示編集手段は、前記下水道配管の水量増大による満管流水時の流水による前記光ファイバーの撓みや曲がりの振れによって一時的な損失増大であるかを判断するための前記光ファイバー番号のリストを作成表示する」ことに補正すること、

を含むものである。



2.本件第2補正事項1の判断(その1)

(1)
本出願当初明細書には、

「 【0006】
【発明が解決しようとする課題】
下水道管内に敷設される光ケーブルは、降雨により下水道管内が満水になると振れたり留金具の外れにより撓みにより光の減衰度が大きくなる。光の減衰度が大きと異常と判断することになる。しかし、降雨が止むと光ファイバーが正常に戻ることがある。
【0007】
従来技術では光ファイバー監視装置からの異常情報により直ちに異常発生と判断し、異常の原因、履歴、劣化の度合いが判断できず、断線故障が発生して始めて保守することとなる。
【0008】
本発明は上記点に対処してなされたもので、その目的とするところは、光ファイバーの異常点位置に基いて劣化診断を行い保守の必要な光ファイバーを特定することのできる図面管理装置を提供することにある。」

及び、

「 【0026】
雨水の増大や洪水により留金具608が外れ、光ファイバーが点線で示す光ファイバー609のように撓わんで損失が多くなったり,劣化、摩擦により断線することもある。断線するまでには、下水管渠606内の満管流水時などによる光ファイバーの撓わみや曲げによる損失の一時的な増大や成端箱など中間接続点でのコネクタの接触不良による損失が現れる。」

と記載されていることから、下水管渠内の満管流水時などによる光ファイバーの撓わみや曲げ(本願の特許請求の範囲に記載された「軽異常」に対応。)に関する判断を行う必要があることが開示されているといえる。

そこで、当該軽異常に関する判断を如何なる技術により行っているのかについて検討すると、本出願当初明細書又は図面には、

「 【0029】
光ファイバー監視装置211を構成する光ファイバー測定処理部131は複数本の光ファイバーの芯線と接続しており、定期的に複数本の光ファイバー順次測定する。光ファイバー測定処理部131は測定した結果を監視制御部132に伝送する。
【0030】
監視制御部132は、測定結果を解析し損失値が閾値より大きい場合や途中で測定不能になっている場合などには異常として検知し、異常度、障害点の距離情報、損失値、測定波形、発生日時等を通信装置210を介してCPU201に伝送する。
【0031】
光ファイバー監視装置211で測定した結果が正常状態では図6(a)のようになる。損失値が予め設定した閾値より大きい図6(a)の場合には、その損失が発生している距離を異常点距離とし損失値とともに異常情報とする。
【0032】
また、図6(c)のように途中で測定不能となっている場合にも、その損失が発生している距離を異常点距離とし損失値とともに異常情報とする。」

と記載されているように、測定結果を解析し損失値が閾値より大きい場合や途中で測定不能になっている場合などに「異常」(但し、「軽異常」か否かを弁別する技術は開示されていない。)が「発生」したと判断することは開示されているとはいえるものの、
軽異常状態から非異常状態に変化したか否かを判断すること、すなわち、「軽異常が正常に戻ったこと」を判断することは開示されていない。

したがって、「前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と正常状態における反射光レベル測定波形の損失差によって軽異常が正常に戻ったことを判断し前記光ファイバーの撓みや曲がりによる劣化を診断する劣化診断手段」を備えることは、本出願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。


(2)
以上のことから、本件第2補正事項1は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(以下、単に「特許法第17条の2第3項」という。)の規定に違反する。



3.本件第2補正事項1の判断(その2)

(1)
本件第2補正事項1は、請求項の数を減少させるものではないので、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下、単に、「特許法第17条の2第4項」という。)第1号に規定された「請求項の削除」を目的とするものに該当しない。


(2)
本件第2補正事項1は、
「軽異常の発生回復を判断」(すなわち、軽異常の「発生」と「回復」を判断)することから、
「軽異常が正常に戻ったことを判断」(すなわち、軽異常の「回復」のみを判断)することに補正するよって、
軽異常の「発生」を判断するという限定を解除しているのであるから、
特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当しない。


(3)
本件第2補正前の「軽異常の発生回復を判断」という記載には誤記はないのであるから、本件第2補正事項1は、特許法第17条の2第4項第3号に規定された「誤記の訂正」を目的とするものに該当しない。


(4)
本件第2補正前の「軽異常の発生回復を判断」という記載は表現上明りょうな記載である。
しかも、当該記載に対して、明りょうでない記載である旨の拒絶理由が通知されていない。
したがって、本件第2補正事項1は、特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当しない。


(5)
以上のことから、本件第2補正事項1は、特許法第17条の2第4項の規定に違反する。



4.本件第2補正事項2の判断

(1)
本件第2補正事項2は、請求項の数を減少させるものではないので、特許法第17条の2第4項第1号に規定された「請求項の削除」を目的とするものに該当しない。


(2)
本件第2補正事項2は、一時的な損失増大の原因について、
「前記下水道配管の水量増大によって留金具が外れること」(なお、「留金具が外れること」によって、「光ファイバーの撓みや曲がりの振れ」が生じること自体は容易に推測される。)から、
「前記下水道配管の水量増大による満管流水時の流水による前記光ファイバーの撓みや曲がりの振れ」に変更することによって、
「止め金具が外れること」という限定を解除しているのであるから、
特許法第17条の2第4項第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当しない。


(3)
本件第2補正前の「前記下水道配管の水量増大によって前記留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断する」という記載には、誤記は存在しないのであるから、
本件第2補正事項2が、特許法第17条の2第4項第3号に規定された「誤記の訂正」を目的とするものに該当しないことは明らかである。

また、本件第2補正前の「前記下水道配管の水量増大によって前記留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断する」という記載は、表現上明りょうな記載である。
しかも、当該記載に対して、明りょうでない記載である旨の拒絶理由は通知されていない。
したがって、本件第2補正事項2は、特許法第17条の2第4項第4号に規定された「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当しない。


なお、審判請求人は、

平成20年10月6日付けの回答書において、
「本願発明は、光ファイバーを敷設する留金具が水量増大によって外れることによる一時的な損失増大であるかを判断しているので、留金具が水量増大によって外れることによる光ファイバーの撓みや曲がりによる損失差が一時的に大きくなっても異常と誤判断するのを防止できるという顕著な効果を奏し得る。
したがって、本願発明は引例1?4を組合せただけでは得られない作用効果を奏し特許されるべきものである。」 (下線部は当審にて付加。)

平成21年1月5日付けの意見書において、
「8.本願発明をより具体的に述べると、光ファイバーの反射光レベル測定波形と正常状態における反射光レベル測定波形の損失差によって直ちに異常と判断することなく、留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断するための光ファイバー番号のリストを作成表示しておき異常監視を継続し異常発生時から所定時間継続したときに異常と判断するようにして一時的な損失増大によって異常と誤判断するのを防止しているのに対し、引例1?9には、留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断するための光ファイバー番号のリストを作成表示しておき異常監視を継続し異常発生時から所定時間継続したときに異常と判断することについて何ら記載されていないという点で相違する。
9.このように、引例1?9には、下水道配管内に敷設された光ファイバーが留金具が外れることによって損失が一時的に大きくなり異常と誤判断するのを防止するための本願発明の特徴とする構成である「留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断するための光ファイバー番号のリストを作成表示しておき異常監視を継続し異常発生時から所定時間継続したときに異常と判断する」ことについて何ら記載されておらず示唆するところもない。」 (下線部は当審にて付加。)

というように主張していることから、引例1乃至9に対する技術的優位性を明らかにすることを目的として、光ファイバーを敷設する留金具が水量増大によって外れることによる一時的な損失増大であるかを判断する新たな技術事項を本願発明に含めることを、『審判請求人が積極的に意図』していたことは明らかである。

そして、当該新たな技術事項を本願発明に含めないように補正することは、
たとえ、当該新たな技術事項が、実際は実施不能であったという技術上の『誤認』を正す補正であると善解しても、当該補正は、未完成発明を完成させるという一種の発明行為を含むものとなるから、
当該補正が、「『誤記』の訂正」や、「明りょうでない『記載』の釈明」に該当しないことは明らかである。


(4)
以上のことから、本件第2補正事項2は、特許法第17条の2第4項の規定に違反する。



5.むすび

本件第2補正事項1及び本件第2補正事項2を含む本件第2補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。




第3 本願について

1.平成21年1月14日付けの拒絶理由

本件第2補正は上記のとおり却下されたので、平成21年1月14日付けの拒絶理由通知書で提示した拒絶理由1、
すなわち、平成21年1月5日付けの手続補正(以下、「本件第1補正」という)は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない点、
の当否について検討する。

本件第1補正は特許請求の範囲を補正するものであって、本件第1補正後の特許請求の範囲第1項、すなわち、

「 【請求項1】
下水道配管内の上方に留金具によって所定間隔毎に吊るされて敷設された複数本の光ファイバーと、前記複数本の光ファイバーに順次試験光を送り反射光のレベルを定期的に測定した測定波形と異常点までの距離情報を検知する光ファイバー監視装置と、前記光ファイバー監視装置から前記反射光レベル測定波形と異常点距離情報を伝送される中央監視装置とを備え、前記中央監視装置は、前記光ファイバーを含む施設図面をディジタル情報として格納するファイル装置と、前記ファイル装置に格納されている施設図面情報を読み出して表示するディスプレイ装置と、前記ファイル装置から施設図面情報を検索する図面検索手段と、前記光ファイバー監視装置から伝送されてくる前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と異常点距離情報を異常発生日時と共に入力し、前記図面検索手段により検索された該当施設図面上における前記光ファイバーの異常点位置を検索して、軽異常と予め設定する閾値によって検知された異常情報を前記ファイル装置に格納する異常登録手段と、前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と正常状態における反射光レベル測定波形の損失差によって軽異常の発生回復を判断し前記光ファイバーの撓みや曲がりによる劣化を診断する劣化診断手段と、異常発生した光ファイバーの異常点位置と劣化程度を前記ディスプレイ装置に表示する表示編集手段とを具備し、前記表示編集手段は前記下水道配管の水量増大によって前記留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断するための前記光ファイバー番号のリストを作成表示することを特徴とする図面管理装置。」

と補正するものである。

つまり、本件第1補正によって、

(本件第1補正事項1)
「前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と正常状態における反射光レベル測定波形の損失差によって軽異常の発生回復を判断し前記光ファイバーの撓みや曲がりによる劣化を診断する劣化診断手段」

(本件第1補正事項2)
「前記表示編集手段は前記下水道配管の水量増大によって前記留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断するための前記光ファイバー番号のリストを作成表示すること」

という構成を備えるものとなった。


なお、平成21年1月14日付けの拒絶理由通知書の拒絶理由1で指摘した、特許法第17条の2第3項の拒絶理由について、
審判請求人は、平成21年3月17日付けの意見書において、「新規事項についての審判長殿の説示には審判請求人も首肯できる。」と主張している。



2.本件第1補正事項1の判断

(1)
上記「第2 2.本件第2補正事項1の判断(その1)」で判断したように、測定結果を解析し損失値が閾値より大きい場合や途中で測定不能になっている場合などに「異常」(但し、「軽異常」か否かを弁別する技術は開示されていない。)が「発生」したと判断することまでは開示されているといえる。


(2)
しかしながら、本出願当初明細書又は図面には、「軽異常の発生回復」を判断することは開示されていない。

したがって、「前記光ファイバーの反射光レベル測定波形と正常状態における反射光レベル測定波形の損失差によって軽異常の発生回復を判断し前記光ファイバーの撓みや曲がりによる劣化を診断する劣化診断手段」を備えることは、本出願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。


(3)
以上のことから、本件第1補正事項1は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。



3.本件第1補正事項2の判断

(1)
本出願当初明細書又は図面には、
「 【0006】
【発明が解決しようとする課題】
下水道管内に敷設される光ケーブルは、降雨により下水道管内が満水になると振れたり留金具の外れにより撓みにより光の減衰度が大きくなる。光の減衰度が大きと異常と判断することになる。しかし、降雨が止むと光ファイバーが正常に戻ることがある。」
というように、「・・・留金具の外れにより撓みにより光の減衰度が大きくなる。」ことは記載されているものの、満水によって外れた留金具が、満水でなくなった後に自然に留められることは常識的に有り得ないことから、「しかし、降雨が止むと光ファイバーが正常に戻ることがある。」場合は、「振れ」による場合であって「留金具の外れ」による場合ではないことは明らかである。

そして、このことは、
「 【0026】
雨水の増大や洪水により留金具608が外れ、光ファイバーが点線で示す光ファイバー609のように撓わんで損失が多くなったり,劣化、摩擦により断線することもある。断線するまでには、下水管渠606内の満管流水時などによる光ファイバーの撓わみや曲げによる損失の一時的な増大や成端箱など中間接続点でのコネクタの接触不良による損失が現れる。」
という記載(「光ファイバーの撓わみや曲げによる損失の一時的な増大」による要因は記載されているが、「留金具の外れ」による要因は明記されていない。)と矛盾しない。

したがって、本出願当初明細書又は図面には「前記留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断する」ことは開示されていない。

つまり、「前記表示編集手段は前記下水道配管の水量増大によって前記留金具が外れることによる一時的な損失増大であるかを判断するための前記光ファイバー番号のリストを作成表示すること」を備えることは、本出願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。


(2)
以上のことから、本件第1補正事項2は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。



4.むすび

本件第1補正事項1及び本件第1補正事項2を含む本件第1補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、
平成21年1月14日付けの拒絶理由通知書の拒絶理由1で指摘した、特許法第17条の2第3項の拒絶理由は依然として解消していない。

したがって、本件第1補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-17 
結審通知日 2009-04-21 
審決日 2009-05-08 
出願番号 特願平11-261436
審決分類 P 1 8・ 572- WZ (G06F)
P 1 8・ 561- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 彰上嶋 裕樹  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 手島 聖治
和田 財太
発明の名称 図面管理装置  
代理人 高田 幸彦  

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