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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1199695 |
審判番号 | 不服2006-21745 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-28 |
確定日 | 2009-06-25 |
事件の表示 | 特願2002-145236「メモリとプロセッサとを用いた取引方法及びICカード」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月28日出願公開、特開2003- 58718〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成 8年11月15日に出願された特願平 8-305373号の一部を、平成14年 5月20日に分割出願した特許出願であって、平成18年 2月21日付けで拒絶理由通知が通知され、これに対して同年4月27日付けで手続補正書が提出され、平成18年 8月25日付けで拒絶査定され、これに対して同年9月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月30日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.平成18年10月30日付けでした手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年10月30日付けでした手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本願の請求項1に記載の発明(以下、「本願補正発明」という)は、平成18年 4月27日付けでした手続補正における特許請求の範囲の請求項1に記載の発明において、 (a)「第1取引形態」及び「第2取引形態」との記載を、「前記リーダライタを通じてセンタシステムにアクセスする第1取引形態」及び「センタシステムでアクセスしない状態での取引を許容する第2取引形態」とし、 (b)「前記第1取引形態時に取引日時を取得し前記第1取引日時記録領域に最終取引日時として記録しておき」との記載を付加したもの に相当する。 (2)補正の目的 上記(a)については、「第1取引形態」及び「第2取引形態」に係る取引形態をそれぞれ限定したものと認められ、また上記(b)については、本願発明が備える構成である「前記第2取引形態時に・・・前記第1取引日時記録領域に記録されている・・・最終取引日時」が記録される時期を当該「前記第2取引日時」前に限定したものと認められるので、これら特許請求の範囲を限定する補正によっても、平成18年 4月27日付けでした手続補正における特許請求の範囲の請求項1に記載の発明と本願補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるものと認められるから、平成18年10月30日付けでした手続補正でした補正(以下、「本件補正」という)の目的は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (3)独立特許要件 本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記本願補正発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。 1)本願補正発明 本願の特許請求の範囲の請求項1には、「前記リーダライタより第2取引形態取引日を受信し」なる記載が認められるが、これは「前記リーダライタより第2取引形態日時を受信し」の誤記であるものと認められるから、本願補正発明を以下のとおりに認定する。 「リーダライタと通信可能なメモリとプロセッサとを用いた取引制御方法であって、 前記メモリには、 前記リーダライタを通じてセンタシステムにアクセスする第1取引形態の取引日時を追記または上書きするための第1取引日時記録領域と、前記第1取引形態での最終取引日時以降、センタシステムでアクセスしない状態での取引を許容する第2取引形態を行いうる有効期間が設定された有効期間設定領域とが形成されており、 前記プロセッサは、 前記第1取引形態時に取引日時を取得し前記第1取引日時記録領域に最終取引日時として記録しておき、 前記第2取引形態時に、前記リーダライタより第2取引形態日時を受信し、受信した第2取引形態日時から前記第1取引日時記録領域に記録されている前記第1取引形態での最終取引日時を減算して期間を算出し、該期間が前記有効期間設定領域に設定された有効期間を超えていない場合にのみ当該第2取引形態を許容することを特徴とするメモリとプロセッサとを用いた取引制御方法。」 2)引用文献に記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-264360号公報(以下、「引用文献」という)には、 引用文献に記載の実施例の前提となる従来技術におけるオンライン取引及びオフライン取引の定義に係る説明として、 (a)「カード取引端末装置は、カードを受け入れて、必要に応じてカードセンタとの間でオンライン取引を行い、またカードセンタに問い合わせることなく、カード取引端末装置だけでオフライン取引できるようにしたもの・・・カードに記録されているオフライン取引が行われた際、カードに記録されているオンライン取引の合計金額に新たに取引された金額を加算する。」(第2頁左上欄第2行乃至第11行) が記載され、また引用文献に記載の実施例に係る一連の記載として、 (b)「第4図は、前記カード取引端末装置の制御部のブロック図を表す。全体の制御はCPU100のプログラム制御によって行われる。・・・時計103はカレンダー機能を有し、現在の年月日のデータを常に計時している。カードリーダライタ4はカードに設けられている磁気ストライプのデータを読み書きするものであり・・・CPU100はインターフェイス回路105を介してデータの入出力を行う。」(第3頁左上欄第17行乃至同頁右上欄第10行)、 (c)「前記磁気ストライプには第3図に示すように・・・オンライン処理すべき日付、すなわちオフライン処理可能な処理期限SI・・・を記録する記録部を備えている。第5図は、前記カード取引端末装置のRAMの・・・メモリマップを示す。同図(A)は受け入れたカードの磁気ストライプに記録されていたデータを記憶する領域を表し、同図(B)はその他の作業用の領域を表す」(第3頁左下欄第3行乃至第15行)、 (d)「制御部の処理手順」(第3頁左下欄第17行乃至第18行)、 (e)「オフライン処理を行う。すなわち、まず現在の年月日のデータを時計回路から読み込み、バッファWMDに記憶する(n8)。有効期限を表す日付データWDONからこのバッファWMDの値を減算し、その結果をWDに求める(n9)。その結果が正、つまりオフラインの有効期限内であれば、オフライン処理を行う。・・・以上の処理によって一連のオフライン処理を終了する。・・・カード使用不許可の時はそのまま処理を終了する。・・・そうでない場合はn18にてオンライン情報をカードに書き込む。すなわち、カードセンタから送られてきたデータによって、オフライン許可金額WKINMと有効期間を表す次回オンライン処理年月日WDONのデータについて更新を行い・・・このようにして各データを設定した後、これらのデータをカードに書き込んでカードを返却する」(第3頁右下欄第14行乃至同頁右上欄第7行)、 (f)「以上のようにして、予め定められた条件の下でオフライン取引を行い、その他の場合にオンライン取引を行う」(第4頁右上欄第20行乃至同頁左下欄第2行) がそれぞれ記載されている。 上記摘記事項を参酌すると、引用文献には以下の構成が記載されているといえる。 (ア)上記摘記事項(f)における「以上のようにして」は、上記摘記事項(d)の「制御部の処理手順」を含むものと解することができることから、当該「制御部の処理手順」は、上記摘記事項(f)の「予め定められた条件の下でオフライン取引を行い、その他の場合にオンライン取引行う」という取引に関する制御部の処理手順、すなわち取引に関する制御方法を指し示すものと解することができるので、引用文献には「取引制御方法」が記載されているといえる。 (イ)上記摘記事項(e)における「そうでない場合」、すなわち「カード使用不許可の時」でない場合に、カード使用許可の下に「オンライン取引」を行うものと解することができ、また当該摘記事項(e)における「有効期間を表す次回オンライン処理年月日WDONのデータについて更新」は、上記摘記事項(c)における「RAMの・・・メモリマップ」を表す第5図(A)の記載からみて、当該「有効期間を表す次回オンライン処理年月日」をRAM上の「WDON」に記録するものと解することができるので、上記摘記事項(e)における「このようにして各データを設定した後、これらのデータをカードに書き込んでカードを返却する」及び上記摘記事項(c)における「磁気ストライプには・・・オンライン処理すべき日付、すなわちオフライン処理可能な処理期限SI・・・を記録する記録部を備えている」との記載によれば、RAM上の「WDON」に記録される上記「有効期間を表す次回オンライン処理年月日」は、「オフライン取引」を行いうる「処理期限」として「磁気ストライプ」の「記録部」に「記録」されるものと解することができ、さらに上記摘記事項(e)における「有効期限を表す日付データWDON」との記載からみて、上記「オフライン取引」を行いうる「処理期限」として「磁気ストライプ」の「記録部」に「記録」される上記「有効期間を表す次回オンライン処理年月日」と上記「有効期限を表す日付データ」とは、いずれも上記RAM上の「WDON」に記録された同じデータであることから、当該「処理期限」は当該「有効期限」のことを指し示すものと解することができ、また以上の各処理は、当該摘記事項(b)における「全体の制御はCPU100のプログラム制御によって行われる」との記載からみて、「CPU」によりなされるものと解することができることから、引用文献には「CPUは、オンライン取引の場合に有効期間を表す次回オンライン処理年月日を磁気ストライプの記録部にオフライン取引を行いうる有効期限として記録する」が記載されているといえる。 また上記摘記事項(c)によれば、引用文献には、「磁気ストライプには、オフライン取引を行いうる有効期限を記録する記録部が形成されており」が記載されているといえる。 (ウ)上記摘記事項(b)によれば、「カード取引端末装置の制御部のブロック図」を説明する図面(第4図)の記載からみて、時計回路からの読み込みは「カード取引端末装置」内においてなされるものと解することができ、また上記摘記事項(c)における「RAMの・・・メモリマップを示す。・・・カードの磁気ストライプに記録されていたデータを記憶する領域」を表す第5図(A)からみて、「WDON」の領域に「カードの磁気ストライプに記録されていたデータ」である「次回オンライン処理年月日」を記憶することを読み取ることができるから、上記摘記事項(e)における「有効期限を表す日付データWDON」との記載からみて、当該「WDON」の領域に記憶されている「有効期限を表す日付データ」は、「カードの磁気ストライプに記録されていたデータ」であるものと解することができ、また上記摘記事項(b)における「全体の制御はCPU100のプログラム制御によって行われる」との記載からみて、当該「CPU」は全体の制御に伴う各処理を行うものと解することができるので、上記摘記事項(e)における「オフライン処理を行う。すなわち、まず現在の年月日のデータを時計回路から読み込み、バッファWMDに記憶する(n8)。有効期限を表す日付データWDONからこのバッファWMDの値を減算し、その結果をWDに求める(n9)。その結果が正、つまりオフラインの有効期限内であれば、オフライン処理を行う。」によれば、引用文献には、「CPUは、オフライン処理を行う時に、カード取引端末装置において、現在年月日のデータを読み込み、カードの磁気ストライプに記録されていた有効期限を表す日付データから、当該現在年月日の値を減算し、その結果が正、つまりオフラインの有効期限内であれば、オフライン処理を行う」が記載されているといえる。 (エ)上記摘記事項(a)によれば、「オンライン取引」とは、「必要に応じてカードセンタとの間」で行う取引と解することができ、また上記摘記事項(b)の「カードリーダライタ4はカードに設けられている磁気ストライプのデータを読み書き」によれば、当該「カードセンタとの間で行う」は、カードリーダライタを介してなされるものと解することができることから、引用文献には、「カードリーダライタを介して必要に応じてカードセンタとの間で行うオンライン取引」が記載されているといえる。 (オ)上記摘記事項(a)によれば、「オフライン取引」とは、「カードセンタに問い合わせることなく、カード取引端末装置だけ」で行う取引であって、オンライン取引が行われた日以降、当該「オフライン取引」を行われたことから、当該オフライン取引が行われた際、既に、オンライン取引の合計金額がカードに記録されているものと推認できることを勘案すると、引用文献には、「オンライン取引を行う日以降に、カードセンタに問い合わせることなく、カード取引端末装置だけで行うオフライン取引」が記載されているといえる。 (カ)上記摘記事項(b)によれば、引用文献には「カード取引端末装置に設けられたCPU」が記載されているといえる。 上記(ア)?(カ)を考慮して、摘記事項(a)?(f)の記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献発明」という。)が記載されているといえる。 「カードに設けられている磁気ストライプとカード取引端末装置に設けられたCPUとを用いた取引制御方法であって、 前記磁気ストライプには、 カードリーダライタを介して必要に応じてカードセンタとの間で行うオンライン取引を行う日以降に、カードセンタに問い合わせることなく、カード取引端末装置だけで行うオフライン取引を行いうる有効期限を記録する記録部が形成されており、 前記CPUは、 前記オンライン取引の場合に有効期間を表す次回オンライン処理年月日を磁気ストライプの記録部にオフライン取引を行いうる有効期限として記録しておき、 前記オフライン処理を行う時に、カード取引端末装置において、現在年月日のデータを読み込み、カードの磁気ストライプに記録されていた有効期限を表す日付データから、当該現在年月日の値を減算し、その結果が正、つまりオンラインの有効期限内であれば、オフライン処理を行うことを特徴とする磁気ストライプとCPUとを用いた取引制御方法」 3)本願補正発明と引用文献発明との対比 本願補正発明と引用文献発明を対比すると、本願の発明の詳細な説明における「例えば「1996.11.15」のデータ・・・オンライン取引の日付「1996.11.03」を減算」(段落【0018】)及び「オンライン取引日付日付データを受信し(ステップS201)、取引日付の追記が可能な状態になっている」(段落【0023】)等の本願補正発明の実施例に係る記載からみて、本願補正発明における「日時」は「日付」を排除していないものと解するのが相当であることから、 引用文献発明における「カードに設けられている磁気ストライプ」、「CPU」、「取引制御方法」、「カードリーダライタを介して必要に応じてカードセンタとの間で行うオンライン取引」及び「オンライン取引を行う日以降に、カードセンタに問い合わせることなく、カード取引端末装置だけで行うオフライン取引」は、 本願補正発明における「メモリ」、「プロセッサ」、「取引制御方法」、「前記リーダライタを通じてセンタシステムにアクセスする第1取引形態」及び「前記第1取引形態での最終取引日時以降、センタシステムでアクセスしない状態での取引を許容する第2取引形態」にそれぞれ相当し、 本願補正発明が備える構成である「第2取引形態日時に、前記リーダライタより第2取引形態日時を受信し、受信した第2取引形態日時から前記第1取引日時記録領域に記録されている前記第1取引形態での最終取引日時を減算して期間を算出し、該期間が前記有効期間設定領域に設定された有効期間を超えていない場合にのみ当該第2取引形態を許容する」と引用文献発明が備える構成である「前記オフライン処理を行う時に、カード取引端末装置において、現在年月日のデータを読み込み、カードの磁気ストライプに記録されていた有効期限を表す日付データから、当該現在年月日の値を減算し、その結果が正、つまりオフラインの有効期限内であれば、オフライン処理を行う」とは、後記の点で相違するものの、「第2取引形態時に、第2取引形態日時を取得し、取得した第2取引形態日時に基づいて、当該第2取引形態日時が、所定の条件を満たしているかどうかを判断するために、演算を行って、当該条件を満たしている場合に当該第2取引形態を許容する」という概念で共通するから、両者は、 (一致点) 「メモリとプロセッサとを用いた取引制御方法であって、前記プロセッサは、第2取引形態時に、第2取引形態日時を取得し、取得した第2取引形態日時に基づいて、当該第2取引形態日時が所定の条件を満たしているかどうかを判断するために演算を行い、当該条件を満たしている場合にのみ当該第2取引形態を許容することを特徴とするメモリとプロセッサとを用いた取引制御方法」 である点で一致し、 (相違点1) 第2取引形態時に第2取引形態日時を取得する具体化手段について、本願補正発明では、カードとして、「リーダライタと通信可能な」メモリとプロセッサを設けたカードを採用して、前記カードに設けたプロセッサが、「当該第2取引形態日時が所定の条件を満たしているかどうかを判断するために演算」を行うために、「前記リーダライタより第2取引形態日時を受信」するのに対し、引用文献発明では、カードとして、磁気ストライプからなるメモリを設けたカードを採用して、カード取引端末装置に設けられたプロセッサが、前記「演算」を行うために、当該取引日時をカード取引端末装置内において取得する点、 (相違点2) 第2取引形態日時が所定の条件を満たしているかどうかを判断するために演算を行う具体化手段及び当該具体化手段を実施するためのメモリ領域の形成について、本願補正発明では、プロセッサが、「第2取引形態日時から前記第1取引形態での最終取引日時を減算して期間を算出し、該期間が有効期間を超えていない場合にのみ当該第2取引形態を許容」し、そのために、メモリには、「第1取引形態の取引日時を追記または上書きするための第1取引日時記録領域と、第2取引形態を行いうる有効期間が設定された有効期間設定領域とが形成」され、当該減算する計算の前処理として、当該プロセッサが、「前記第1取引形態時に取引日時を取得し前記第1取引日時記録領域に最終取引日時として記録」しておくのに対し、引用文献発明では、プロセッサが、有効期間を表す次回オンライン処理年月日を、有効期限を表す日付データから、当該現在年月日の値を減算し、その結果が正、つまり第2取引形態を行いうる有効期限内であれば、第2取引形態を許容し、そのために、メモリには、第2取引形態を行いうる有効期限を記録する記録部が形成され、当該減算する計算の前処理として、当該プロセッサが、有効期限を前記記録部に記録しておく点 で相違する。 4)相違点についての判断 (相違点1について) 例えば、特開平8-190614号公報の記載(段落【0002】、段落【0003】、段落【0009】)等にみられるように、カードという技術分野においては、プロセッサであるCPU、EEPROM及びRAM等からなるメモリ並びにI/O等が高度なセキュリティーを有するための単なる基本的な構成に過ぎないことから、当該基本的な構成を備えるICカードを磁気カードの代替として用いることは、周知技術であるものと認められるから、引用文献発明において、磁気ストライプを備えるカードである磁気カードに代えて、当該基本的な構成を備えたICカードを採用し、カード内にプロセッサであるCPU、RAM及びEEPROM等からなるメモリ並びにI/Oを備えることにより、カードとして、「リーダライタと通信可能な」メモリとプロセッサを設けたカードを採用して、前記カードに設けたプロセッサが、「当該第2取引形態日時が所定の条件を満たしているかどうかを判断するために演算」を行うことは、周知技術の単なる適用に過ぎず、当業者であれば適宜になし得るものである。 また引用文献発明において、「リーダライタと通信可能な」メモリとプロセッサを設けたカードを採用すれば、前記カードに設けたプロセッサが、「当該第2取引形態日時が所定の条件を満たしているかどうかを判断するために演算」を行うために、「前記リーダライタより第2取引形態日時を受信」する構成を備えることは、当業者であれば当然なし得る事項である。 したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用文献発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 (相違点2について) 例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-44664号公報の記載(段落【0011】、段落【0014】、段落【0017】、段落【0019】)等にみられるように、現在年月日当日の有効性の計算を実施するに当たり、有効期間と当該有効期間の起算日である最終利用日とを用いることは周知技術であるから、引用文献発明において、現在年月日当日である第2取引形態日時の有効性の計算を実施するに当たり、有効期間と当該有効期間の起算日である最終利用日を用いた計算を行って判断することは、周知技術の単なる適用に過ぎず、引用文献発明において、計算を変更して、プロセッサが、「第2取引形態日時から前記第1取引形態での最終取引日時を減算して期間を算出し、該期間が有効期間を超えていない場合にのみ当該第2取引形態を許容」することは、当業者であれば適宜になし得るものである。 また引用文献発明において、プロセッサが、「第2取引形態日時から前記第1取引形態での最終取引日時を減算して期間を算出し、該期間が有効期間を超えていない場合にのみ当該第2取引形態を許容」することを採用すれば、メモリには、「第1取引形態の取引日時を追記または上書きするための第1取引日時記録領域と、第2取引形態を行いうる有効期間が設定された有効期間設定領域とが形成」され、当該プロセッサが、上記計算の前処理として、「前記第1取引形態時に取引日時を取得し前記第1取引日時記録領域に最終取引日時として記録」しておくことは、上記計算の変更に応じて当業者であれば当然なし得る事項である。 したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用文献発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 そして,本願補正発明の作用効果も,引用文献発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 よって、本願補正発明は、引用文献及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)本件補正についてのむすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願の請求項に記載の発明 平成18年10月30日付けでした手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に記載の発明(以下、「本願発明」という)は、平成18年 4月27日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2)引用文献に記載の発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びこれらの記載事項は、上記2.(3)2)「引用文献に記載の発明」の欄に記載したとおりである。 (3)対比 本願発明と引用文献発明とを対比すると、本願発明は、上記本願補正発明において、上記2.(1)「補正の内容」において検討した上記(a)及び(b)による特許請求の範囲の限定を解除するものであることから、上記2.(3)3)「本願補正発明と引用文献発明との対比」において検討した相違点以外の相違点は存在しない。 (4)判断 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する上記本願補正発明が、上記2.(3)「独立特許要件」に記載したとおり、引用文献発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、本願発明も同様の理由により、引用文献発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.むすび 上記のとおり、本願の請求項1に係る発明が、引用文献発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-04-20 |
結審通知日 | 2009-04-21 |
審決日 | 2009-05-12 |
出願番号 | 特願2002-145236(P2002-145236) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小山 満 |
特許庁審判長 |
赤穂 隆雄 |
特許庁審判官 |
田代 吉成 山本 穂積 |
発明の名称 | メモリとプロセッサとを用いた取引方法及びICカード |
代理人 | 鈴木 正剛 |