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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1199696
審判番号 不服2006-22301  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-04 
確定日 2009-06-25 
事件の表示 平成 8年特許願第305947号「特典情報に基づく景品価値変換システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月19日出願公開、特開平10-127910〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯

本願の経緯概要は下記のとおりである。

特許出願 平成8年11月1日
審査請求 平成14年8月21日
拒絶理由 平成17年12月27日
手続補正 平成18年3月9日
拒絶査定 平成18年9月4日
審判請求 平成18年10月4日
拒絶理由・補正却下 平成21年1月5日
手続補正 平成21年3月10日

第2.本願発明についての判断

1.本願発明

平成21年3月10日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「遊技店と、該遊技店と共にシステムを構成する商店である有機的共同体と、該遊技店と前記有機的共同体とを電気的に連絡する外部連絡手段と、から構成し、前記遊技店並びに前記有機的共同体で使用される情報媒体に付加された特典情報に基づいて景品交換を実行可能な特典情報に基づく景品価値変換システムにおいて、
前記遊技店は、
遊技者の要求に基づき遊技価値を供給する遊技価値供給手段と、
遊技価値と特典情報とを景品価値に変換する遊技価値変換手段と、
情報の管理を行う情報処理手段と、を備え、
前記有機的共同体は、
前記情報媒体に付加された特典情報を更新するための特典更新手段を備え、
前記情報処理手段は、前記特典情報を含む会員情報が記憶される会員情報保持手段を有し、
前記遊技価値供給手段は、遊技者に供給する遊技価値に対応した特典情報を前記会員情報保持手段に記憶される会員情報に付加するための第1特典付加手段を有し、
前記特典更新手段は、前記有機的共同体における商取引に基づいて前記会員情報保持手段に記憶される会員情報に特典情報を付加するための第2特典付加手段を有し、
前記外部連絡手段により、前記情報処理手段と前記特典更新手段とを電気的に連絡して該情報処理手段と特典更新手段の相互で情報の送受信を実行可能とし、
前記第2特典付加手段は、前記情報処理手段へ特典情報と情報媒体情報を送信し、
前記情報処理手段は、受信した情報媒体情報に基づいて会員情報を検索し、該当する会員情報に受信した特典情報を付加し、該特典情報の付加が終了したことに基づいて当該特典情報の付加が許可されたことを示す許可情報を前記第2特典付加手段へ送信し、
前記会員情報保持手段の会員情報に付加される特典情報は、前記遊技店に備えられた前記遊技価値変換手段による景品価値への変換のみに使用可能としたことを特徴とする特典情報に基づく景品価値変換システム。」

2.当審拒絶理由

当審において平成21年1月5日付で通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、特開平6-71039号公報(以下「引用文献1」という。)、特開平6-134133号公報(以下「引用文献2」という。)、特開平6-251034号公報(以下「引用文献3」という。)及び特開平5-250569号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例

引用文献1には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

【0001】【産業上の利用分野】本発明は、パチンコ遊技機やスロットマシン等で代表される遊技機が設置された遊技場等で用いられる遊技用システムに関し、詳しくは、遊技者により購入され所定の有価価値を特定可能な情報が記録された有価価値記録媒体と、該有価価値記録媒体の記録情報により特定された有価価値を使用して遊技機による遊技を可能にする遊技使用可能化手段とを含む遊技用システムに関する。
【0016】遊技場1内に設置された共通カード販売機2,カード処理機3a,3b,カード式パチンコ機4,カード式スロットマシン5,景品処理装置8,景品カード処理装置9a,9bはそれぞれホール用管理コンピュータ10に接続されており、情報の伝達が可能に構成されている。このホール用管理コンピュータ10は、CPU,RAM,ROM等を内蔵しており、共通カード販売金額,共通カード使用金額,カード式パチンコ機4やカード式スロットマシン5の利益球数や不利益球数、景品処理装置8によって読取られた持点カードに記録されている有価価値データ,一般景品用レシートを使用しての一般景品の交換額情報,共通カードの増加更新情報,景品カードの新規発行情報,特殊景品の交換額情報等の遊技場から発生する種々の情報を集中管理する。なお、景品処理装置8によって発行された一般景品用レシートは、当該遊技場1でかつ当日限りという条件で景品交換することが可能なものである。利用者に払出された景品カード127を共通カード販売機2に挿入して景品カード127に記録されている有価価値の範囲内で利用者が共通カード125を購入することができる。
【0024】また、遊技場1,11においては、遊技者が共通カード125を使用した場合には、遊技者にサービスとして或る特典が与えられるようになっている。つまり、共通カード125を共通カード処理機3a,3bに挿入して使用した場合には、その使用額に応じたポイントが遊技者所有の消費情報用記録媒体の一例のポイントカード200(図6参照),210(図8参照)に加算更新されるようになっており、そのポイントカード200,210のポイント数がたとえば満点になった場合には、所定額の共通カード125と交換できる等のようにポイントカード200、210に所定の付加価値が発生する。なお、このポイントカードを新規入手するにおいては、遊技者が遊技場内のカウンタ等で係員から受け取る。また、共通カード販売機2にポイントカード200,210の新規発行機能を持たせてもよい。
【0034】一方、挿入した景品カード127が適正なカードである旨の判定が行なわれた場合には、その景品カード127の磁気ストライプ128における残額記録領域に記録されている残額に対し、現時点における持点表示器56により表示されている持点に相当する遊技価値が加算処理され、その加算更新された景品カード127が景品カード挿入/排出口69から遊技者側に排出される。そして、持点表示器56には持点が「0」となった旨の表示が行なわれる。この段階で、遊技の結果遊技者の所有となった有価価値を景品カード27に蓄えるいわゆる貯玉が行なわれたことになる。そして、その排出された景品カード127は、他の遊技機による遊技や景品交換に使用される。なお、図中72は台番号表示部であり、この景品カード処理装置9aに対応するカード式パチンコ機4の台番号が表示される。73はトラブルボタンであり、カード式パチンコ機4に異常が発生した場合に遊技者によって操作されるものであり、その操作に応じてスピーカ75により遊技場の係員にトラブルが発生したことが報知される。
【0042】前記カード式パチンコ機4やカード式スロットマシン5により遊技を行なった結果遊技者の所有となった有価価値が蓄えられた景品カード127は、遊技者によって景品処理装置8の景品カード挿入/排出口79に挿入される。その挿入された景品カードに記録されている有価価値が景品カード処理器80により読取られその読取った有価価値が持点表示器94により表示される。この景品処理装置8では、後述するように景品カード127を新規発行したりその読取った有価価値の範囲内で一般景品レシートや特殊景品128を払出したりする。
【0063】第1実施例の場合には、共通カード125の使用時にポイントカード200,210にポイントを加算記録するようにしたが、この第2実施例においては、遊技者が共通カード125を購入したときにその購入金額に相当するポイントをポイントカード200,210に加算記憶するものである。以下具体的に説明する。
【0064】共通カード販売機2の紙幣挿入口32に遊技者が紙幣を挿入すると、その挿入紙幣が紙幣識別器33で識別され、挿入紙幣が適正な紙幣であった場合にはその挿入紙幣の金額が金額表示器29で表示される。遊技者は、その金額表示器29で表示された金額の範囲内で希望する額の共通カード125を購入すべくカード選択ボタン44を押圧操作して購入したい金額のカードを選択する。すると、共通カード排出口36から共通カード125が排出される。そして、遊技者が手持ちのポイントカード200に共通カードの購入金額に相当するポイントを記録してもらいたい場合には、ポイントカード挿入/排出口180に自己のポイントカード200を挿入する。一方、遊技者がポイントカードを持っていない場合には、新規発行ボタン183を押圧操作してポイントカード収納部182内のポイントカードを1枚取出して新規に発行してもらう。挿入されたポイントカードまたは新規に発行されるポイントカードに対し、前記共通カード125の購入金額に応じたポイントが加算記録されて遊技者に排出される。このポイントの加算記録はポイントカード処理器181により行なわれる。この購入額に対し付与されるポイントのレートは、第1実施例と同様に、ポイント設定部184の設定操作に基づいて決定される。このポイント設定部184により設定されたレートはポイント表示器185により表示される。また、1ポイントに満たない端数額は、第1実施例と同様に、ポイントカード200,210の磁気ストライプ201,211のポイント端数領域に記録されて処理される。そして、挿入されたポイントカードのポイントが満点になった時点で、所定額(たとえば1000円)の共通カード125が自動的に共通カード販売機2から排出され、ポイントカード200,210が機内に取り込まれる。また、満点を超える場合には、超えた分については新しいポイントカードに書込まれて排出される。なお、ポイントカード200,210を機内に取込む代わりに、精算処理をして遊技者側に返却してもよい。さらに、満点となったポイントカード200,210を遊技者に排出し、その満点のポイントカード200,210を遊技場のカウンタ等において所定額の共通カードと交換するようにしてもよい。
【0066】第1,第2実施例とも、共通カードの使用により所定点数を遊技者の得点に加算するようにしたが、実際にパチンコ玉やコイン等の遊技媒体を遊技者に払出し、その払出された遊技媒体を使用して遊技を行なわせるようにしてもよい。また、遊技媒体の貸出しに際し、共通カードに加えて、貨幣の投入により貸出しを受けられるようにしてもよい。さらに、共通カード125の購入時と使用時との両方でポイントカードに加算記録してもよい。
【0071】(4) 各カード125,127,200,210において、カード番号,セキュリティコード以外の一部または全部の情報をホール別売上集中管理コンピュータ13や加盟店別売上・ホール別景品交換集中管理コンピュータ20あるいはホール用管理コンピュータ10に記憶させ、前記各カードの使用時にそのカードに記録されている情報と前記管理コンピュータ13,20,10に記憶されているカード情報とを照合していわゆる背番号管理を行なってもよい。
【0075】(8) 景品カード127をたとえばICカード化して、景品カード127に共通カードの機能とポイントカードの機能を持たせるようにしてもよい。すなわち、共通カード販売機2に残額更新機能を持たせて、景品カード挿入口42に景品カード127を挿入し、紙幣挿入口32に紙幣を挿入することにより、景品カード127の残額を加算更新するようにし、また、景品カード127をポイントカード挿入/排出口170,180に挿入し、景品カード127の残額の使用時や残額の前記加算更新時にポイント数を景品カード127に加算記憶してもよい。

ここで段落【0071】には「各カード125,127,200,210において、カード番号,セキュリティコード以外の一部または全部の情報を…ホール用管理コンピュータ10に記憶させ」と記載されているが、ここに『おいて』とあるのは意味が不明瞭である。しかし、「カードに記録されている情報」と「管理コンピュータ10に記憶されているカード情報」とを照合することが目的であり、各カードにおける情報を管理コンピュータに記憶させることは必須であるから、上記『おいて』は『おける』の誤記であると解される。また、「カード番号,セキュリティコード以外の一部または全部の情報を…ホール用管理コンピュータ10に記憶」とあるが、ここで「以外の」が「カード番号」、「セキュリティコード」の両者を指すのか、それとも「セキュリティコード」のみを指すのか不明である。しかし、これも上記同様に情報を照合することが目的であって、カードを特定する情報がなければ照合ができないこととなるので、常識的に「カード番号」を除いて記憶することは考えられない。とすれば、上記「以外の」が指すのは「セキュリティコード」のみであると解される。よって、段落【0071】からは「各カード127,200,210における『カード番号』及び『セキュリティコード以外の一部または全部の情報』をホール用管理コンピュータ10に記憶させ、前記各カードの使用時にそのカードに記録されている情報と前記管理コンピュータ10に記憶されているカード情報とを照合していわゆる背番号管理を行う。」という技術事項を認定することができる。
また、引用文献1の段落【0075】の記載を参照すれば、景品カード127にポイントカードの機能を持たせ、景品カード127をポイントカード挿入/排出口180に挿入しポイント数を景品カード127に加算記憶してもよい旨の記載があるから、景品カード127をポイントカードとして使用する場合を想定して、引用文献1におけるポイントカード200,210を景品カード127と読み替えた上で、引用文献1の記載事項及び図面を総合的に勘案すれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「遊技者がカード選択ボタン44を押圧操作して購入したい金額の共通カード125を選択すると、共通カード125が排出されると共に、ポイントカード挿入/排出口180に挿入された景品カード127に対し、共通カード125の購入金額に応じたポイントが加算記録されて遊技者に排出される共通カード販売機2と、
遊技の結果遊技者の所有となった有価価値を蓄えるいわゆる貯玉が行なわれた景品カード127が景品カード挿入/排出口79に挿入され、挿入された景品カードに記録されている有価価値が読取られ、その読取った有価価値の範囲内で一般景品レシートや特殊景品128を払出す景品処理装置8と、
遊技場1内に設置された共通カード販売機2,景品処理装置8と接続され情報の伝達が可能に構成され、種々の情報を集中管理するホール用管理コンピュータ10と、を備え、
景品カード127のポイント数がたとえば満点になった場合には、所定額の共通カード125と交換できる等のように景品カード127に所定の付加価値が発生し、
景品カード127における『カード番号』及び『セキュリティコード以外の一部または全部の情報』をホール用管理コンピュータ10に記憶させ、景品カード127の使用時にそのカードに記録されている情報とホール用管理コンピュータ10に記憶されているカード情報とを照合していわゆる背番号管理を行なう
遊技場1で用いられる遊技用システム」

4.対比

ここで、本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明における「遊技店」は引用発明における「遊技場1」に相当し、以下同様に「情報媒体」は「景品カード127」に、「特典情報」は「ポイント」にそれぞれ相当する。
引用発明の「共通カード販売機2」も、「遊技者がカード選択ボタン44を押圧操作して購入したい金額の共通カード125を選択すると、共通カード125が排出され」るものであり、ここで「共通カード125」は本願発明の「遊技価値」を具備しているから、本願発明同様「遊技者の要求に基づき遊技価値を供給する」ものであり、よって、引用発明の「共通カード販売機2」は本願発明の「遊技価値供給手段」に相当する。
引用発明の「景品処理装置8」も、「遊技の結果遊技者の所有となった有価価値を蓄えるいわゆる貯玉が行なわれた景品カード127が景品カード挿入/排出口79に挿入され、挿入された景品カードに記録されている有価価値が読取られ、その読取った有価価値の範囲内で一般景品レシートや特殊景品128を払出す」ものであり、ここで「有価価値」及び「一般景品レシートや特殊景品128」は、本願発明の「遊技価値」及び「景品価値」に相当するから、引用発明の「景品処理装置8」は「遊技価値を景品価値に変換する遊技価値変換手段」である点で本願発明と共通する。
引用発明における「ホール用管理コンピュータ10」も、「種々の情報を集中管理する」から、本願発明における「情報処理手段」に相当する。
引用発明も「ホール用管理コンピュータ10」は「景品カード127における『カード番号』及び『セキュリティコード以外の一部または全部の情報』」を記憶しており、「景品カード127における『セキュリティコード以外の一部または全部の情報』」とは、本願発明における「会員情報」に相当し、また景品カード127には「ポイント」も記録されており、引用発明も「景品カードの使用時にそのカードに記録されている情報とホール用管理コンピュータ10に記憶されているカード情報とを照合」するのであるから、照合において必要な情報は当然記憶すると判断され、引用発明と本願発明は「情報処理手段」が「特典情報を含む会員情報が記憶される会員情報保持手段」を有している点で共通する。
また、引用発明の「共通カード販売機2」も、「景品カード127に対し、共通カード125の購入金額に応じたポイントが加算記録されて」おり、ここで「共通カード125」は本願発明の「遊技価値」を具備するものであるから、本願発明同様「遊技者に供給する遊技価値に対応した特典情報」を付加しており、また引用発明も「ホール用管理コンピュータ10」が「共通カード販売機2,景品処理装置8と接続され情報の伝達が可能に構成」されており、「景品カード127における『カード番号』及び『セキュリティコード以外の一部または全部の情報』」を記憶しているから、「会員情報保持手段に記憶される会員情報」においても特典情報を付加していると判断でき、よって、引用発明も「遊技価値供給手段」が「遊技者に供給する遊技価値に対応した特典情報を会員情報保持手段に記憶される会員情報に付加する」ための手段を有する点で本願発明と共通する。
さらに、引用発明は「景品カード127のポイント数がたとえば満点になった場合には、所定額の共通カード125と交換できる等のように景品カード127に所定の付加価値が発生し」とあるように、引用発明のポイントも何らかの価値と交換可能であるから、引用発明と本願発明は「特典情報に基づいて価値交換」を実行可能である点で共通している。
そして、引用発明の「遊技用システム」は、上述したように「特典情報に基づく価値交換」を実行可能なシステムである点で本願発明と共通するから、両者は、
「遊技店で使用される情報媒体に付加された特典情報に基づいて価値交換を実行可能な特典情報に基づく価値交換システムにおいて、
前記遊技店は、
遊技者の要求に基づき遊技価値を供給する遊技価値供給手段と、
遊技価値を景品価値に変換する遊技価値変換手段と、
情報の管理を行う情報処理手段と、を備え、
前記情報処理手段は、前記特典情報を含む会員情報が記憶される会員情報保持手段を有し、
前記遊技価値供給手段は、遊技者に供給する遊技価値に対応した特典情報を前記会員情報保持手段に記憶される会員情報に付加するための第1特典付加手段を有する
特典情報に基づく価値交換システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、商店である有機的共同体が遊技店と共にシステムを構成しており、情報媒体は遊技店並びに有機的共同体で使用され、有機的共同体は情報媒体に付加された特典情報を更新するための特典更新手段を備え、有機的共同体における商取引に基づいて特典情報を付加するための第2特典付加手段を有しているのに対して、引用発明にはかかる構成がない点。

[相違点2]
「特典情報に基づく価値交換」について、本願発明は「景品交換」であり、また本願発明は遊技価値と特典情報とを景品価値に変換する遊技価値変換手段を備えているのに対して、引用発明は、特典情報である「ポイント」は「所定額の共通カード125と交換」するものである点。

[相違点3]
本願発明は、遊技店の情報処理手段と有機的共同体の特典更新手段とを電気的に連絡する外部連絡手段を備え、情報処理手段と特典更新手段の相互で情報の送受信を実行可能としており、第2特典付加手段は、情報処理手段へ特典情報と情報媒体情報を送信し、情報処理手段は、受信した情報媒体情報に基づいて会員情報を検索し、該当する会員情報に受信した特典情報を付加し、該特典情報の付加が終了したことに基づいて当該特典情報の付加が許可されたことを示す許可情報を第2特典付加手段へ送信しているのに対して、引用発明においてはかかる構成がない点。

[相違点4]
本願発明においては、特典情報は、遊技店に備えられた遊技価値変換手段による景品価値への変換のみに使用可能としているのに対して、引用発明にはかかる構成がない点。

5.当審の判断

上記相違点について検討する。

[相違点1について]

引用文献3には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

【0004】このように磁気カードを使用したシステムでは、各加盟店の端末機よりポイント数の交付とサービス点数の減点を遂次ホストコンピュータへ送信し、該ホストコンピュータでもって顧客別、加盟店別のデータ処理を行う。そして加盟店が交付したポイント数とサービス点数に応じた負担金を算出するため、上記ホストコンピュータは端末機の台数及び必要なデータ量に比例した処理能力のある大型コンピュータが必要となる。よって、加盟店の数が増加したり、顧客が増えることでホストコンピュータの処理能力が不足してしまうこともある。それに、上記のごとく各加盟店の負担金算出をホストコンピュータで処理するために、算出までに時間がかかり、必要な時に該負担金額がわからないといったことも従来のシステムでは問題となっている。
【0005】【本発明が解決しようとする課題】このように磁気カードを使用する従来のサービスシステムでは各顧客ごとのポイント数の交付及びサービス点数の減点、又各加盟店別のポイント数の総計及びサービス点数の総計を全てホストコンピュータにて処理するため、上記のごとき問題が生じる。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であって、端末機に従来のホストコンピュータが備えていた処理能力を持たせることでホストコンピュータを必要以上に大型化することのないサービスシステムを提供する。
【0006】【課題を解決するための手段】本発明のサービスシステムでは従来と同じように顧客にポイントカードを交付し、各加盟店には端末機を設置し、これら端末機と接続しているホストコンピュータをセンターに備えている。しかし上記端末機は従来のホストコンピュータが備えていたデータ処理能力を有し、売上げ金額の入力・集計を行い、顧客に交付するポイント数を集計したり、顧客に提供するサービス点数を上記ポイント数から減点するとともに残高点数を集計・記録する機能を有す。そしてこの結果は瞬時にプリントアウトしたり画面表示することが出来る処理能力を備える。又、上記売上げ金額、顧客に交付したポイント数及び顧客に提供したサービス点数を基にした負担金の算出も可能とする。ところで、各端末機と接続しているホストコンピュータは顧客別のポイント数やサービス点数を処理することなく、あくまでも加盟店別の上記ポイント数及びサービス点数を記録し、加盟店の負担金や、その他必要なデータ処理機能を有するように構成したシステムである。よって、本発明のシステムでは上記ホストコンピュータを必ずしも必要としない。以下、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0007】図1は本発明に係るサービスシステムの概要を示した実施例である。加盟店A,B,C…にはPOS端末機が設置されていて、これら各端末機は事務局となる計算センターに設置しているホストコンピュータと電話回線でもって接続されている。そして上記加盟店A,B…のいずれかで買物をする顧客に対してポイントカードを交付しておく。したがってある顧客aが例えばA店で買物をした場合、買物の代金を支払うと同時に上記ポイントカードをレジの係員に提出し、該ポイントカードを端末機へ入れることで買物金額に応じたポイント数がポイントカードに記録される。又同時にA店の端末機には顧客aのポイント数が記録される。
【0008】同じようにA店で顧客bが買物をした場合も、該顧客bのポイントカードには所定のポイント数が記録されるとともに、顧客bのポイント数はA店の端末機に加算されてポイント総数として集計する。後日、顧客aが別の買物をしたならば、この買物金額に応じたポイント数が加算されてポイントカードに記録される。勿論、このポイント数の加算は端末機が行う。さらに顧客aは同じ加盟店であるC店で買物をした場合も同一ポイントカードの使用が出来る訳で、C店でのポイント数がさらに加算されてポイントカードに記録される。このように顧客a,b,c…はそれぞれのポイントカードをレジに提出することにより、所定のポイント数が上記ポイントカードに記録され、又加算される。
【0009】A店の端末機には顧客a,b,c…に交付したポイント数を集計したポイント総数が記録され、B店の端末機も同じように顧客a,b…のポイント総数が記録されている。そしてポイントカードに記録されるポイント数が所定の点数以上になったところで買物券や商品等と交換することが出来る。買物券等と交換した場合、所定のポイント数をポイントカードに記録されているポイント数から減点しなければならず、端末機は所定のポイント数を減点するとともに、減点した残りのポイント数をポイントカードに記録する。
【0010】ところで、この買物券との交換は加盟店A,B,C…であれば、顧客の選択によっていずれの店であっても行うことが出来る。前記の通り各加盟店A,B,C…の端末機には顧客a,b,c…のポイントカードに記録したポイント総数が記録されており、又買物券と交換した場合のサービス点数の総計も記録している。したがって、加盟店によっては交付したポイント数に比べて買物券等のサービス点数が多い場合もあり、逆に少ない場合もある。この交付したポイント総数とサービス点数のズレは負担金の割当てによって調整がなされ、加盟店A,B,C…の負担金はポイント総数からサービス点数を差し引いた差額に基づいて算出される。すなわち、例えばA店のポイント総数が300でサービス点数が200、B店のポイント総数が100でサービス点数が0、C店のポイント総数が100でサービス点数が200とすれば、A店の負担金は100、B店の負担金も100となり、C店の負担金はマイナス100となる。
【0011】各加盟店A,B,C…に設置した端末機は入力した売上げデータを集計・記録し、又売上げ金額に応じて交付したポイント数を集計・記録する。さらに顧客に提供したサービス点数も集計・記録される。そしてこれらのデータを計算センターへ送信してホストコンピュータに記録することも出来る。又、端末機は上記入力データと集計データを画面に表示するとともに、プリントアウトすることも出来る。ところで、ホストコンピュータには各加盟店A,B,C…ごとの売上げデータ、交付したポイント総数、又提供したサービス点数が記録されることにより、ホストコンピュータは上記ポイント総数とサービス点数を基にして加盟店A,B,C…への負担金を算出する。それに、各データを基にして必要な資料やデータを作成したり、又その資料をプリントアウトする。以上述べたように、本発明のサービスシステムは各加盟店に設置する端末機にある程度の処理能力を与えたものであり、次のような効果を得ることが出来る。

引用文献3は段落【0004】や段落【0005】に記載されているような従来技術を前提としたものであって、それを採用することも困難はないから、上記引用文献3における記載事項及び図面を総合的に勘案すれば、引用文献3には次の技術(以下「引用文献3記載の技術」という。)が記載されている。
「複数の加盟店で同一ポイントカードを使用し、
各加盟店で買物金額に応じたポイント数をポイントカードに加算記録し、
加盟店いずれの店であってもポイント数に応じて買物券や商品券と交換することができ、
各加盟店に設置した端末機はホストコンピュータと電話回線でもって接続され、
各加盟店の端末機よりポイント数の交付とサービス点数の減点を遂次ホストコンピュータへ送信し、各顧客ごとのポイント数の交付及びサービス点数の減点をホストコンピュータにて処理するポイントサービスシステム。」

ここで、引用文献3における「ポイント」は本願発明の「特典情報」に、「ポイントカード」は「情報媒体」に、「端末機」は「特典更新手段」に、「買物」は「商取引」にそれぞれ相当する。とすれば、引用文献3における加盟店におけるポイント数の加算記録を行う手段は本願発明の「第2特典付加手段」に相当する。
次に、引用文献3における「加盟店」には本願発明における「商店である有機的共同体」に相当する店が含まれ、引用発明における遊技場1(遊技店)も消費者向けの店舗の一つであって、遊技場1での共通カードの購入は「買物」に該当するものであるから、該遊技場1も引用文献3記載の技術における加盟店の一つと当然なり得るものである。よって、引用発明に引用文献3記載の技術を適用し、遊技場1を含む加盟店で、ポイント及びポイントカード(引用発明におけるポイント及び景品カード127)を共通としたサービスシステムを構築し、各加盟店で景品カード127にポイントを付加し、それを遊技場1においても交換可能とすることは、景品価値変換システムの分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって容易に想到できたことである。

よって、相違点1にかかる本願発明の構成とすることは、引用発明、引用文献3記載の技術に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。

[相違点2について]

引用文献2には、有価価値の購入累計が多い場合等に、遊技者の保有する遊技媒体数の価値を景品価値の値に変換するにあたり、景品価値の値を所定値だけ減じることにより遊技者に特典を付与する旨の記載がある(段落【0080】-【0087】)。ここで景品価値の値を所定値だけ減じるとは、遊技媒体数の価値に「所定値」を加えて景品交換を行ったことに他ならないから、すなわち引用文献2には、遊技媒体数の価値(引用発明における「有価価値」に相当)と「所定値」とで景品価値に変換する点(以下「引用文献2記載の技術」という。)が開示されている。
ここで引用文献2の「所定値」は、有価価値の購入累計が多い場合等に遊技者に特典として与えられるものであって、引用発明における「ポイント」(本願発明における「特典情報」)に相当するものであり、引用発明も景品カード127上に有価価値とポイントとを記録しているから、引用発明に引用文献2記載の技術を適用して、「遊技価値と特典情報とを景品価値に変換する」ことは当業者にとって容易に想到できることである。
よって、相違点2にかかる本願発明の構成とすることは、引用発明及び引用文献2記載の技術から、当業者が容易に想到できたことである。

[相違点3,4について]

特典情報(ポイント)の交換箇所や交換対象をどうするかは、当該サービスの実施者がビジネス上の判断に基づいて人為的に適宜決定できることである。
例えば航空会社のマイレージサービス(提携先等でもマイルが獲得できるが、交換は特定の航空会社の航空券のみとする例)や提携クレジットカード(ポイントは通常のクレジットカードの利用で獲得できるが、ポイントから商品券等への交換は提携元の企業(例えば百貨店等)におけるもののみとする例)のように、複数箇所で特典情報(ポイント)を獲得できても、その特典情報を交換する箇所や交換の対象を限定することは従来より慣用的に行われていることに過ぎない。
引用文献3においては図面を参照すればホストコンピュータは事務局に配されているが、ホストコンピュータは各加盟店の端末機と接続されていればどこに設置されても障害はないから、どこに設置するかは人為的な決定事項に過ぎない。とすれば、サービスを主導する主体(サービスの実施者)が決定すればよいのであって、遊技店がそれを自店に配することも適宜決定できることであるから、引用発明におけるホール用管理コンピュータ10を加盟店と接続させ、情報の管理を行うことも、当業者にとって容易に想到できたことである。
また、引用文献3の段落【0004】には「磁気カードを使用したシステムでは、各加盟店の端末機よりポイント数の交付とサービス点数の減点を遂次ホストコンピュータへ送信し、該ホストコンピュータでもって顧客別、加盟店別のデータ処理を行う。」とあるから、ここで送信する情報としてカードを特定する情報(本願発明における「情報媒体情報」に相当)は当然必要であり、またホストコンピュータがそれに基づき顧客別の情報(本願発明における「会員情報」に相当)を検索することも処理を行う上で当然必要である。また処理を行った結果を端末機に対して返信すること、すなわち「相互で情報の送受信を実行可能」とし、「許可されたことを示す許可情報」を端末機(本願発明の「第2特典付加手段」に相当)に送信することは、ホストコンピュータでの処理に問題が発生した場合等を考慮して確認のための情報を返信させることが情報通信分野において従来周知の手段に過ぎないから、当業者にとって容易に想到できたことである。
さらに、遊技店における特典情報(ポイント)の交換についても、引用文献2には、遊技者に有利な特典として、景品価値への交換の他「有価価値(遊技媒体数)の現残高にプレミアム(おまけ)を付加」する例も記載されている(段落【0082】)ように、遊技者への特典付与の仕方として様々な例が開示されており、そこで何を採用するかはサービスの実施者が適宜決定できることであるから、特典情報(ポイント)を景品価値への変換のみに使用可能とすることも当業者の設計事項に過ぎない。

よって、相違点3,4にかかる本願発明の構成とすることは、引用発明、引用文献3記載の技術、引用文献2記載の例、周知手段及び慣用例に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。

[当審の判断についてのむすび]

そうすると、相違点1?4にかかる本願発明の構成は、引用発明、引用文献2,3記載の技術、引用文献2記載の例、周知手段及び慣用例から当業者が容易に想到できた範囲のものというべきである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献2,3記載の技術、引用文献2記載の例、周知手段及び慣用例から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第3.むすび

以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2以下について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-23 
結審通知日 2009-04-14 
審決日 2009-05-12 
出願番号 特願平8-305947
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
池谷 香次郎
発明の名称 特典情報に基づく景品価値変換システム  
代理人 津久井 照保  

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