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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1199708
審判番号 不服2007-2221  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-18 
確定日 2009-06-25 
事件の表示 平成10年特許願第314635号「画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月30日出願公開、特開2000-148735〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年11月5日の出願であって、平成18年11月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年2月19日付けで手続補正がなされたものである。




第2 平成19年2月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔結論〕

平成19年2月19日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕

1.補正内容

平成19年2月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、
本件補正後の特許請求の範囲は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】 原稿の画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取った画像中の第1の文字サイズを検出する検出手段と、
前記読取手段により読み取った画像中の文字を認識する文字認識手段と、
文字フォントを記憶する記憶手段と、
前記読取手段が読み取った前記画像の変倍率を指示する指示手段と、
前記検出手段が検出した前記第1の文字サイズ及び前記指示手段が指示した前記変倍率に基づいて第2の文字サイズを決定する決定手段と、
前記文字認識手段の認識結果に応じて前記記憶手段から前記文字フォントを読み出す読出手段と、
前記読出手段により読み出された前記文字フォントを展開して前記決定手段が決定した前記第2の文字サイズの文字画像及びスペースを含む再生画像を生成する生成手段とを有し、
前記生成手段は、前記再生画像の幅が、前記読取手段が読み取った画像の幅及び前記指示手段により指示された変倍率に応じた幅となるよう、前記スペースの幅を調整して前記再生画像を生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 前記再生画像に用いる文字フォントを原稿上の文字に最も近いフォントとすることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】 前記第2の文字サイズは原稿中の文字が再生画像として全て再生可能な最大のサイズとする事を特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】 前記読出手段が読み出す文字フォントを選択するための前記画像処理装置の操作者による指示を入力する入力手段を有し、
前記読出手段は、前記操作者による指示に対応する前記文字フォントを読み出すことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】 前記生成手段は、前記指示手段により指示された前記変倍率に応じて計算した文字間隔の画素数が整数でないとき、前記スペースを調整して前記再生画像を生成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。」


つまり、本件補正は、請求項1に、

「前記生成手段は、前記再生画像の幅が、前記読取手段が読み取った画像の幅及び前記指示手段により指示された変倍率に応じた幅となるよう、前記スペースの幅を調整して前記再生画像を生成すること」 (以下、「本件補正事項」という。)

を導入する補正を含むものである。



2.本件補正事項に対する判断

(1)
本出願当初明細書には、

「 【0009】
今、A4原稿の短辺200mmの幅を、600DPIの解像度で読み取る場合、バッファーに読み取った(ステップ100)画素の総数は4724画素であり、この原稿上に文字が40字存在している事が画像上のヒストグラム等から検出されたとする。この場合 1文字の幅は4724/40=118.1画素(ステップ101)となる。この文字幅とは、実際の文字のサイズにスペースを加えた幅と定義する。」

と記載されているように、「文字幅」は「実際の文字のサイズにスペースを加えた幅」と定義されている。
(なお、本出願当初明細書には「文字サイズ」という用語が用いられているが、誤記又は表記ゆれに起因するものであって、当該用語は「文字のサイズ」と同義であると認められる。)


また、本出願当初明細書には、

「 【0010】
各文字幅内の文字サイズもヒストグラム等の公知の手法で検出(ステップ102)し、今12ポイントが100ドットであるなら、118.1‐100=18.1画素が原稿の文字と文字のスペースの間隔(文字間隔)となる。これらの情報を基に、原稿全域を文字認識しコードデータを画像バッファーに格納する(ステップ103)。」

と記載されているように、「文字と文字のスペースの間隔」が「文字間隔」である旨定義されている。
(なお、本出願当初明細書には「スペースの幅」という用語が用いられているが、誤記又は表記ゆれに起因するものであって、「スペースの間隔」と同義であると認められる。)


したがって、当該定義に従い、本件補正事項に対する判断を行う。


(2)
本出願当初明細書の【特許請求の範囲】には、

「 【請求項1】 原稿の画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取った画像中の文字を認識する文字認識手段と、
文字フォントを記憶する記憶手段と、
前記文字認識手段の認識結果に応じて前記記憶手段から文字フォントを読み出す読出手段と、
前記読取手段により読み取った画像中の文字に関する情報を検出する検出手段と、
前記読出手段により読み出された文字フォント及び前記検出手段により検出された文字に関する情報に基づいて、再生画像を生成する生成手段と、
を有する事を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
・・・(中略)・・・
【請求項5】 前記生成手段は、前記検出手段により検出された情報及び設定された複写倍率に応じたサイズの文字を再生することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】 前記生成手段は、設定された複写倍率に応じた文字間隔で文字を再生することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】 前記生成手段は、設定された複写倍率に応じて計算した文字間隔の画素数が整数でないとき、複数の文字間隔を組み合わせて文字を再生することを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
・・・(以下略)・・・」

というように、
本願の生成手段が、「設定された複写倍率に応じた文字間隔で文字を再生すること」(請求項6)や、「設定された複写倍率に応じて計算した文字間隔の画素数が整数でないとき、複数の文字間隔を組み合わせて文字を再生すること」(請求項7)が記載されている。

しかしながら、当該記載では、『再生画像の幅』となる(すなわち、所望の幅と一致する)ように「スペースの幅を調整して前記再生画像を生成すること」は開示されていない。


(3)
本出願当初明細書の【発明の詳細な説明】の欄には、

「 【0008】
図2のフローに従い本発明による再生画像データの作り方を詳説する。・・・(中略)・・・
【0009】
今、A4原稿の短辺200mmの幅を、600DPIの解像度で読み取る場合、バッファーに読み取った(ステップ100)画素の総数は4724画素であり、この原稿上に文字が40字存在している事が画像上のヒストグラム等から検出されたとする。この場合 1文字の幅は4724/40=118.1画素(ステップ101)となる。この文字幅とは、実際の文字のサイズにスペースを加えた幅と定義する。
【0010】
各文字幅内の文字サイズもヒストグラム等の公知の手法で検出(ステップ102)し、今12ポイントが100ドットであるなら、118.1‐100=18.1画素が原稿の文字と文字のスペースの間隔(文字間隔)となる。これらの情報を基に、原稿全域を文字認識しコードデータを画像バッファーに格納する(ステップ103)。
【0011】
操作者の複写倍率の設定が70%に設定されているとすると(ステップ104)、4724×0.7=3307画素幅中に向じ文字を40字記録しなければならない。すなわち1文字に割り当てられる文字幅は3306.8/40=82.67画素であり、文字サイズは12×0.7=8.4ポイント(70ドット)となる(ステップ105,106)。
【0012】
この場合、文字幅は整数ではないので記録に適するよう文字幅を整数にするほうが好ましい。しかし、文字幅をすべて82画素にしたり、すべて83画素にしたりすると、文字サイズは設定された複写倍率に応じたサイズになるが、文字幅(文字間隔)は複写倍率に応じたものとは少し異なってしまい、設定された複写倍率で忠実に再生することができない。そこで本形態では、1行中の文字幅を82画素と83画素の両方を使い分けて、1行全体で見たときに3307画素になるような配分とする。
【0013】
すなわち、83画素を40×0.67=26.8≒27文字、82画素を40‐27=13文字とする。このように、設定された複写倍率に応じて、原稿の文字数を文字幅N画素とN+1画素の2種類を用いて所定比率で配分して配列すれば、ほば所定倍率の全長画素数内に配列出来る。尚 、2種の文字幅はその字数比に応じて均等に配列する事は述べるまでも無い。この例の場合、83,83,82,83,83,82,……のごとく均等に配列する。」

というように、設定された複写倍率で忠実に再生するために、
『再生画像の幅』となる(すなわち、所望の幅と一致する)ように「『文字幅』を調整して前記再生画像を生成すること」は開示されているとはいえても、
『再生画像の幅』となる(すなわち、所望の幅と一致する)ように「『スペースの幅』を調整して前記再生画像を生成すること」は開示されていない。


このことは、本出願当初明細書の【発明の詳細な説明】の欄に、

「 【0014】
次に両文字幅の中に展開する文字サイズについて述べる。上般に辞書から文字フォントを任意のサイズのドットデータに展開する場合、サイズは整数に設定する。上記の場合、600DPIの記録密度で、正確なサイズで画像を再生しようとすれば、文字サイズは600×8.4/72=70画素となり、整数となるが、もし原稿の文字が14ポイントであったとすれば、サイズは0.7×600×14/72=81.67画素となり整数にはならない。
【0015】
従ってこの様な場合、上記文字幅と同様な演算処理を行えば文字サイズ81画素と82画素の2種を夫々1対2の率で均等に配列設定し、その設定に従い文字毎に異なるサイズで展開すれば良い(ステップ107)。
【0016】
以上から70%縮小の画像は夫々文字幅82,83画素中に70画素サイズで8.4ポイントの文字フォントを展開し配列して1頁分の記録用画像データを作成出来る。尚、一方向のみで説明したが、これに直交方向も全く同じ処理である。図3は以上の処理の結果を示す。文字幅82画素、或いは83画素で区切られた1文字領域内における展開文字ドットは任意の位置に配置すればよいが、図3では図面左上を基準とした。」

という記載にあるように、「再生画像の幅」となる(すなわち、所望の幅と一致する)ように文字幅を設定した後に、所定の文字のサイズを有した文字を当該文字幅の中に展開する処理(なお、当該展開により、結果的に「スペースの幅」が決定される。)を行っていることからも明らかである。


(4)
したがって、請求項1に「前記生成手段は、前記再生画像の幅が、前記読取手段が読み取った画像の幅及び前記指示手段により指示された変倍率に応じた幅となるよう、前記スペースの幅を調整して前記再生画像を生成すること」を導入することは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。



3.むすび

以上のことから、本件補正事項を含む本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。




第3 本願発明について

1.本願発明の認定

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年11月29日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】 原稿の画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取った画像中の第1の文字サイズを検出する検出手段と、
前記読取手段により読み取った画像中の文字を認識する文字認識手段と、
文字フォントを記憶する記憶手段と、
前記読取手段が読み取った前記画像の変倍率を指示する指示手段と、
前記検出手段が検出した前記第1の文字サイズ及び前記指示手段が指示した前記変倍率に基づいて第2の文字サイズを決定する決定手段と、
前記文字認識手段の認識結果に応じて前記記憶手段から前記文字フォントを読み出す読出手段と、
前記読出手段により読み出された前記文字フォントを展開して前記決定手段が決定した前記第2の文字サイズの再生画像を生成する生成手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。」



2.引用例の認定

(1)原査定の拒絶の理由に引用された、特開平04-084380号公報(以下、「引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(ア)
「3.発明の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
本発明は、パターンマッチングによる認識結果として、認識文字コードと共にフォント情報を出力するようにした文字認識装置に関する。」
(第1頁右欄第11乃至15行)

(イ)
「〔従来技術〕
最近、ワードプロセッサ、デスク・トップ・パブリッシングシステム(DTP,卓上印刷装置)等の普及によって、印刷文書を利用する機会が多くなったが、その印刷文書を再び電子化することにより文書を再編集したいというニーズがある。このような電子化の際の入力手段として、日本語文字認識装置が用いられるようになり、ワードプロセッサの文字あるいは既存の文書を読むために、数種類の文体を読むマルチフォントOCR(文字認識装置)が開発されている。」
(第1頁右欄第16行から第2頁左上欄第6行)


(ウ)
「〔発明が解決しようとする課題〕
そのようなDTPにおいては、日本語文字認識装置の認識出力として認識文字コードだけでなく、フォント情報、文字サイズ情報も出力することが望まれている。即ち、DTPにおいて明朝体の文字列中の特定文字について、ゴシック体によってその部分を強調したい場合にフォント情報が必要となる。
・・・(中略)・・・
本発明の目的は、フォント情報、文字サイズ情報を出力することができ、更にフォント情報を用いることによって訂正能率を向上させた文字認識装置を提供することにある。」
(第2頁左上欄第7行から第2頁右上欄第8行)

(エ)
「〔作用〕
与えられた文字イメージから特徴を抽出し、その特徴パターンと標準特徴パターンとのマッチングによって、候補文字コードと共にそのフォント識別コードとを出力する。更にフォント識別コードに加えて文字サイズも出力する。従って、印字処理においてそのフォント情報を用いることにより、オリジナルの文書に忠実な文書を作成することができる。また、認識結果の訂正にフォント情報を用いて訂正能力を向上させている。」
(第2頁左下欄第7乃至16行)

(オ)
「〔実施例〕
以下、本発明の一実施例を図面を用いて具体的に説明する。第1図は、本発明の一実施例に係る文字認識装置のブロック構成図である。」
(第2頁左下欄第17乃至20行)

(カ)
「1は、図示しない半導体イメージセンサ等によって文書(例えば、ワードプロセッサによって作成された文書)が読み取られ、図示しない光電変換・量子化部で文字像の濃淡を白黒の2値あるいは多値に量子化された量子化信号中から認識の単位となる1文字分のパターンを切り出して、この切り出された文字パターンに対して各種の正規化処理(位置、大きさ、傾き等を正規化する)をする文字切り出し/正規化処理部である。」
(第2頁左下欄第20行から同頁右下欄第9行)

(キ)
「2は、正規化されたパターンから特徴を抽出する特徴抽出部、3は、標準の特徴パターンが記憶されている辞書、4は、抽出された特徴パターンと、標準パターン辞書3内に記憶されている標準の特徴パターンとを照合し、より一致している上位n個の候補文字コードを出力するマッチング処理部である。5は、後処理のための辞書、例えば単語辞書であり、6は、マッチング処理部4からの認識結果文字に対して、単語辞書5を用いて言語知識に基づく後処理を行い、類似文字等を弁別処理し、図示しないデスク・トップ・パブリッシングシステム等に文字コードを出力する後処理部である。」
(第2頁右下欄第9行から第3頁左上欄第1行)

(ク)
「また、オリジナルの文字パターンサイズは文字切り出し/正規化処理部1で検出され、ライン7を介して、後処理部6、更には図示しないデスク・トップ・パブリッシングシステムに入力される。」
(第3頁左上欄第1乃至5行)

(ケ)
「8は上記処理部を制御する制御部である。」
(第3頁左上欄第5乃至6行)

(コ)
「〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明によれば、認識された文字コードと共にフォント情報と文字サイズを出力することができるので、文字認識後の印字処理においてそのフォント情報を用いることによって、元の文書に忠実な文書を作成することができる。また、認識結果の訂正にフォント情報を用いることによって、認識率が格段に向上する。」
(第4頁左欄第12乃至19行)


以上の引用例の記載によれば、引用例には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例の上記(イ)の「最近、ワードプロセッサ、デスク・トップ・パブリッシングシステム(DTP,卓上印刷装置)等の普及によって、印刷文書を利用する機会が多くなったが、その印刷文書を再び電子化することにより文書を再編集したいというニーズがある。このような電子化の際の入力手段として、日本語文字認識装置が用いられるようになり、ワードプロセッサの文字あるいは既存の文書を読むために、数種類の文体を読むマルチフォントOCR(文字認識装置)が開発されている。」という記載、

引用例の上記(オ)の「以下、本発明の一実施例を図面を用いて具体的に説明する。第1図は、本発明の一実施例に係る文字認識装置のブロック構成図である。」という記載から、

引用例には、「文字認識装置を入力手段とするデスク・トップ・パブリッシングシステム」が開示されていると認められる。


(b)
引用例の上記(エ)の「与えられた文字イメージから特徴を抽出し、その特徴パターンと標準特徴パターンとのマッチングによって、候補文字コードと共にそのフォント識別コードとを出力する。更にフォント識別コードに加えて文字サイズも出力する。従って、印字処理においてそのフォント情報を用いることにより、オリジナルの文書に忠実な文書を作成することができる。また、認識結果の訂正にフォント情報を用いて訂正能力を向上させている。」という記載、

引用例の上記(カ)の「1は、図示しない半導体イメージセンサ等によって文書(例えば、ワードプロセッサによって作成された文書)が読み取られ、図示しない光電変換・量子化部で文字像の濃淡を白黒の2値あるいは多値に量子化された量子化信号中から認識の単位となる1文字分のパターンを切り出して、この切り出された文字パターンに対して各種の正規化処理(位置、大きさ、傾き等を正規化する)をする文字切り出し/正規化処理部である。」という記載、

引用例の上記(ク)の「また、オリジナルの文字パターンサイズは文字切り出し/正規化処理部1で検出され、ライン7を介して、後処理部6、更には図示しないデスク・トップ・パブリッシングシステムに入力される。」という記載から、

引用例には、
「文書のイメージを読み取る半導体イメージセンサと、
前記半導体イメージセンサにより読み取ったイメージ中の文字パターンサイズを検出する手段」
が開示されていると認められる。


(c)
上記(b)の
「文書のイメージを読み取る半導体イメージセンサと、
前記半導体イメージセンサにより読み取ったイメージ中の文字パターンサイズを検出する手段」
という開示、

引用例の上記(キ)の「2は、正規化されたパターンから特徴を抽出する特徴抽出部、3は、標準の特徴パターンが記憶されている辞書、4は、抽出された特徴パターンと、標準パターン辞書3内に記憶されている標準の特徴パターンとを照合し、より一致している上位n個の候補文字コードを出力するマッチング処理部である。5は、後処理のための辞書、例えば単語辞書であり、6は、マッチング処理部4からの認識結果文字に対して、単語辞書5を用いて言語知識に基づく後処理を行い、類似文字等を弁別処理し、図示しないデスク・トップ・パブリッシングシステム等に文字コードを出力する後処理部である。」という記載、

引用例の上記(エ)の「与えられた文字イメージから特徴を抽出し、その特徴パターンと標準特徴パターンとのマッチングによって、候補文字コードと共にそのフォント識別コードとを出力する。更にフォント識別コードに加えて文字サイズも出力する。従って、印字処理においてそのフォント情報を用いることにより、オリジナルの文書に忠実な文書を作成することができる。また、認識結果の訂正にフォント情報を用いて訂正能力を向上させている。」という記載から、

引用例には、
「前記半導体イメージセンサにより読み取ったイメージ中の文字を認識する手段と、
文字認識後の印字処理において文字パターンサイズ等を用いることによって、オリジナルの文書に忠実な文書を作成する手段」
が開示されていると認められる。


以上の引用例の記載によれば、引用例には下記の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。

「文書のイメージを読み取る半導体イメージセンサと、
前記半導体イメージセンサにより読み取ったイメージ中の文字パターンサイズを検出する手段と、
前記半導体イメージセンサにより読み取ったイメージ中の文字を認識する手段と、
文字認識後の印字処理において文字パターンサイズ等を用いることによって、オリジナルの文書に忠実な文書を作成する手段と、
を有することを特徴とする、文字認識装置を入力手段とするデスク・トップ・パブリッシングシステム。」



3.本願発明と引用例発明との対比

(1)
引用例発明の「文書」、「イメージ」、「文字パターンサイズ」、「文字認識装置を入力手段とするデスク・トップ・パブリッシングシステム」は、それぞれ、
本願発明の「原稿」、「画像」、「第1の文字サイズ」、「画像処理装置」に相当する。


(2)
引用例発明の「文書のイメージを読み取る半導体イメージセンサ」は、
本願発明の「原稿の画像を読み取る読取手段」に相当する。


(3)
引用例発明の「前記半導体イメージセンサにより読み取ったイメージ中の文字パターンサイズを検出する手段」は、
本願発明の「前記読取手段により読み取った画像中の第1の文字サイズを検出する検出手段」に相当する。


(4)
引用例発明の「前記半導体イメージセンサにより読み取ったイメージ中の文字を認識する手段」は、
本願発明の「前記読取手段により読み取った画像中の文字を認識する文字認識手段」に相当する。


(5)
したがって、本願発明と引用例発明とは、

「原稿の画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取った画像中の第1の文字サイズを検出する検出手段と、
前記読取手段により読み取った画像中の文字を認識する文字認識手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。」

という点で一致し、

(相違点1)
本願発明では、「文字フォントを記憶する記憶手段」を有しているのに対し、
引用例発明では、「文字フォントを記憶する記憶手段」を有することが明記されていない点、

(相違点2)
本願発明では、画像の変倍に対応すべく、
「前記読取手段が読み取った前記画像の変倍率を指示する指示手段と、
前記検出手段が検出した前記第1の文字サイズ及び前記指示手段が指示した前記変倍率に基づいて第2の文字サイズを決定する決定手段と、
前記文字認識手段の認識結果に応じて前記記憶手段から前記文字フォントを読み出す読出手段と、
前記読出手段により読み出された前記文字フォントを展開して前記決定手段が決定した前記第2の文字サイズの再生画像を生成する生成手段」
を有しているのに対し、
引用例発明の「画像処理装置」では、「オリジナルの文書に忠実な文書」(複写倍率が等倍に設定されているともいえる。)に対応するのみで画像の変倍に対応しておらず、そのため、「文字認識後の印字処理において文字パターンサイズ等を用いることによって、オリジナルの文書に忠実な文書を作成する手段」を有している点、

で相違する。



4.相違点の判断

(1)相違点1について

デスク・トップ・パブリッシングシステムにおいて、原稿等の文書を画像として出力するためには、「文字フォントを記憶する記憶手段」(例:辞書)を用いて、文書を構成する文字情報(文字コード、フォント識別コード、文字パターンサイズ)を画像に展開することによって文書の再生画像を生成することは、情報処理分野における技術常識であるといえ、

デスク・トップ・パブリッシングシステムである引用例には、引用例発明が「文字フォントを記憶する記憶手段」を有するとすることは自然なことである。
してみると、引用例発明において、「文字フォントを記憶する記憶手段」を有するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(2)相違点2について

デスク・トップ・パブリッシングシステム等の画像処理装置において、読取手段が読み取った文字を含む画像を変倍することは、

・特開平9-161049号公報(特に、段落【0002】、【0005】乃至【0006】、【0008】乃至【0009】、【0018】、【図2】を参照)

・特開平8-152871号公報(特に、段落【0003】乃至【0004】、【0006】、【0069】乃至【0070】、単純縮小することによって【図11】(a)から【図11】(b)となる図を参照)

にあるように周知技術といえ、しかも、読取手段が読み取った文字を含む画像を変倍する際、文字を含む画像を変倍する変倍率を操作者が指示可能とすること、すなわち、
「前記読取手段が読み取った前記画像の変倍率を指示する指示手段」
という構成を採用することは、画像処理装置の一種である複写機の事例(通常、変倍率を操作者が指示可能とする機能を有する。)等から明らかなように、情報処理分野における常套手段であるといえる。


一方、文字を含む画像を変倍する場合、認識された文字の文字パターンサイズ(第1の文字サイズ)に対して指示された変倍率を乗じて変倍後の文字の文字パターンサイズ(第2の文字サイズ)を決定すればよいことや、
変倍後の文字を画像として表示する場合、「文字フォントを記憶する記憶手段」(例:辞書)から、変倍後の文字の文字パターンサイズ(第2の文字サイズ)に対応する文字フォントを読み出し、画像に展開することによって、変倍後の文字の文字パターンサイズ(第2の文字サイズ)の再生画像を生成すればよいことは、情報処理分野における技術常識であるといえる。

つまり、文字を含む画像を変倍する場合、その具体的手段である、
「前記検出手段が検出した前記第1の文字サイズ及び前記指示手段が指示した前記変倍率に基づいて第2の文字サイズを決定する決定手段と、
前記文字認識手段の認識結果に応じて前記記憶手段から前記文字フォントを読み出す読出手段と、
前記読出手段により読み出された前記文字フォントを展開して前記決定手段が決定した前記第2の文字サイズの再生画像を生成する生成手段」
という構成を採用することは、情報処理分野における常套手段であるといえる。


したがって、引用例発明に対して、読取手段が読み取った文字を含む画像を変倍するという周知の機能を付加すべく、
「前記読取手段が読み取った前記画像の変倍率を指示する指示手段」
及び
「前記検出手段が検出した前記第1の文字サイズ及び前記指示手段が指示した前記変倍率に基づいて第2の文字サイズを決定する決定手段と、
前記文字認識手段の認識結果に応じて前記記憶手段から前記文字フォントを読み出す読出手段と、
前記読出手段により読み出された前記文字フォントを展開して前記決定手段が決定した前記第2の文字サイズの再生画像を生成する生成手段」
という情報処理分野における常套手段を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。


5.むすび

したがって、本願発明は、引用例発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-23 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-05-11 
出願番号 特願平10-314635
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 和田 財太
小曳 満昭
発明の名称 画像処理装置  
代理人 西山 恵三  
代理人 内尾 裕一  

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