ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q |
---|---|
管理番号 | 1199711 |
審判番号 | 不服2007-5754 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-22 |
確定日 | 2009-06-25 |
事件の表示 | 特願2004-140207「2周波共振マイクロストリップアンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月 4日出願公開、特開2005-311994〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願発明 本願は、平成16年5月10日(国内優先権主張 平成16年3月22日)の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年12月11日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 (本願発明) 「誘電体基板の一方の主面に接地用の導体パターンを備えると共に、他方の主面に導体パターン及び給電点を備えたマイクロストリップアンテナであって、 前記他方の主面の導体パターンは、基部と該基部から互いに平行に延びる二つの脚部とを一体的に形成したものであり、前記脚部は互いにその長さが異なることを特徴とする2周波共振マイクロストリップアンテナ。」 2.引用発明及び周知技術 A.これに対して、原審の拒絶理由に引用された特開平9-284042号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【請求項1】基板の一方の面上に配設された平面状の第1の導体と、上記基板の他方の面上に上記第1の導体と対向して配設された平面状の第2の導体とを、上記基板の側面に配設された第3の導体で短絡したアンテナ装置において、 上記第1の導体を分割して形成された複数の部分導体を具え、複数の上記部分導体に互いに異なる共振周波数を設定することを特徴とするアンテナ装置。」 (2頁1欄、請求項1) ロ.「【0010】 【発明の実施の形態】以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。 【0011】図3及び図4との対応部分に同一符号を付して示す図1は全体として携帯無線機に内蔵されるアンテナ装置としての片側短絡型平面アンテナ14を示し、比誘電率が高い基板を使用して小型化した状態で通過帯域幅を従来に比して広げている。片側短絡型平面アンテナ14は、第1の導体としての矩形の放射導体が従来の片側短絡型平面アンテナ1の長さL方向に2分割され、それぞれの長さが互いに異なるように形成されている。 【0012】すなわち、片側短絡型平面アンテナ14は、矩形で長さL_(1) の基板16の一方の面(ここでは上面)上に部分導体としての長さL_(1) の放射導体18と、部分導体としての長さL_(1 )に比して短い長さL_(2 )の放射導体20とが並行して展着されている。また片側短絡型平面アンテナ14は、基板16の他方の面(ここでは下面)上に第2の導体としての矩形で長さL_(1 )の地導体22が、放射導体18及び20に対向して展着されている。さらに片側短絡型平面アンテナ14は、放射導体18及び20と地導体22とを、基板16の一方の短辺側で第3の導体としての短絡導体8を介して短絡している。 【0013】これにより、片側短絡型平面アンテナ14は、放射導体18の長さL_(1 )に応じた周波数の高周波信号と、放射導体20の長さL_(2) に応じた周波数の高周波信号に同時に共振することができる。」 (2頁2欄?3頁3欄、段落10?13) ハ.「【0017】なお上述の実施例においては、本発明を片側短絡型平面アンテナ14に適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、逆F型平面アンテナにも適用し得る。この場合にも上述と同様の効果を得ることができる。」 (3頁4欄、段落17) 上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「比誘電率が高い基板」はいわゆる「誘電体基板」であり、上記「第2の導体としての矩形で長さL_(1 )の地導体22」は「一方の主面」に設けられた「接地用の導体パターン」であり、上記「第1の導体としての矩形の放射導体」は「他方の主面」に設けられた「導体パターン」である。 また、前記「導体パターン」は、図1から明らかなように、スリットにより「長さL方向に2分割され、それぞれの長さが互いに異なるように形成され」ることにより、スリットが設けられていない短絡片側の「基部」と「該基部から互いに平行に延びる二つの脚部」とを「一体的に形成した」ものであり、「前記脚部は互いにその長さが異なる」ものであり、それぞれの長さに応じた「2周波に共振する」ものである。 したがって、上記引用例には「片側短絡型平面アンテナ」として以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 (引用発明) 「誘電体基板の一方の主面に接地用の導体パターンを備えると共に、他方の主面に導体パターンを備えた片側短絡型平面アンテナであって、 前記他方の主面の導体パターンは、基部と該基部から互いに平行に延びる二つの脚部とを一体的に形成したものであり、前記脚部は互いにその長さが異なることを特徴とする2周波共振片側短絡型平面アンテナ。」 B.原審の拒絶理由に引用された例えば特開平10-93331号公報(以下、「引用例2」という。)には、「マイクロストリップアンテナ装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0004】これらの欠点を解決することを目的として提案されたのが図12に示すようにMSAに細隙を入れ2共振させた構造である(特願平7-314988)。この構造は、両素子とも片側を短絡することで、両周波数共λ/4MSAとして動作するようになっている。ここで、共振波長をλe1,λe2とすると、方形放射導体板1の長さLは、(1/4)λe2,(1/4)λe1より小さい。それぞれの素子に流れる電流I1とI2のイメージ電流がグランド導体板2へ流れる。グランド導体板2の代わりに図13Aの携帯電話を想定した大きさの金属筐体11に、短絡板4を上向きにして設置した場合、グランド導体板2上と同様に金属筐体11にイメージ電流が流れ、筐体自体もアンテナとして動作する。そのため、筐体の長さが放射パターンに影響を与えてくる。その影響の度合いは周波数によって変化してくる。 【0005】例えば、L=30mm,W=30mm,t=4.8mm,比誘電率2.6の誘電体を用い、コンデンサC1を約3pF,コンデンサC2を約0.5pFとしたアンテナを図13Aの金属筐体11に設置した場合のリターンロス図を図13Bに示す。C1側の素子でf=820MHz,C2側の素子でf=1.49GHzに共振させており、2共振していることがわかる。このときの各々の共振周波数における放射パターンを図14に示す。共にEθ成分が高くなっていることがわかる。 【0006】図2のコンデンサC2を取り去り、C2の付いていた方の導体板の長さをけずってL2とし(C1側はLのまま)、L=30mm,L2=25.5mm,W=25mm,t=4.8mm,比誘電率2.6の誘電体を用い、コンデンサC1を約3pFとしたアンテナを図13Aの金属筐体11に設置した場合のリターンロス図を図15に示す。C1側の素子でf=820MHz,C2側の素子でf=2.14GHzに共振させており、2共振していることがわかる。このときの各々の共振周波数における放射パターンを図16に示す。f=820MHzでは図14と同様にEθ成分が高くなっている。しかし、f=2.14GHzではEθ成分が低くなっており、特に+X軸方向のレベルが約-4dBに落ちている。」 (3頁3欄、段落4?6) ロ.「【0025】(実施例5)図9Aは請求項5の発明の実施例を示したものである。図1の短絡板4の代わりにコンデンサC5を接続し、2素子とも1/2λMSAのアンテナ構造としたものである。2共振とも1.5GHzを越えた周波数になった場合に、この構造にした方が、筐体の影響を抑えることができ、図2の実施例2と同様にX-Y面のEθ成分のレベルを高くすることができる。 【0026】図13Aの金属筐体11に取り付けた場合のリターンロス図を図9Bに示す。アンテナ寸法は、L=30mm,W=25mm,t=4.8mm,誘電体は比誘電率2.6のものを用いている。C1,C2及びC3は約0.5pF,C5は約1.0pFである。1.5GHzと2.26GHzで2共振していることがわかる。λe1/2=62mm,λe2/2=41.1mmであるので、いずれもL=30mmより大きい。」 (5頁7欄、段落25?26) 上記引用例2には、「共振周波数が1.5GHzを超える場合はλ/4マイクロストリップアンテナとして動作する片側短絡型マイクロストリップアンテナの短絡片を除去し、λ/2両端開放型マイクロストリップアンテナとして動作させる方が有利である」旨、及び「コンデンサの付加は脚部の長さ調整の代替手段である」旨が開示されており、 また、「側面電極の有無にかかわらず、給電点を放射導体板と同じ面に設けるマイクロストリップアンテナ」が開示されている。 3.対比 本願発明の「マイクロストリップアンテナ」と、引用発明の「片側短絡型平面アンテナ」は、いずれも「アンテナ」である点で共通することから、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「誘電体基板の一方の主面に接地用の導体パターンを備えると共に、他方の主面に導体パターンを備えたアンテナであって、 前記他方の主面の導体パターンは、基部と該基部から互いに平行に延びる二つの脚部とを一体的に形成したものであり、前記脚部は互いにその長さが異なることを特徴とする2周波共振アンテナ。」 <相違点> (1)本願発明は「他方の主面に導体パターン及び給電点」を設けているのに対し、引用発明の給電点がどこに設けられているのか不明である点。 (2)「アンテナ」に関し、本願発明は「マイクロストリップアンテナ」であるのに対し、引用発明は「片側短絡型平面アンテナ」である点。 4.判断 そこで、まず、上記相違点(1)について検討するに、 例えば上記引用例2には、「側面電極の有無にかかわらず、給電点を放射導体板と同じ面に設けるマイクロストリップアンテナ」が開示されており、 当該技術手段における前記「放射導体板」とは、引用発明及び本願発明でいう「他方の主面」に備えた「導体パターン」のことであるから、当該技術手段に基づいて、引用発明の「他方の主面に導体パターンを備えた」という構成を、本願発明のような「他方の主面に導体パターン及び給電点を備えた」という構成とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。 ついで、上記相違点(2)について検討するに、 引用発明の「片側短絡型平面アンテナ」は、上記引用例2でいう例えば図12に開示されている「2周波共振型λ/4片側短絡型マイクロストリップアンテナ(λ/4MSA)」と同様な構成を備えるものであるから、引用発明の「片側短絡型平面アンテナ」はいわゆる「マイクロストリップアンテナ」の一種である。 そして、本願発明はアンテナ基板側面に設けた導体(即ち、第3の導体としての短絡導体)の有無(もしくはλ/4又はλ/2等の振動モードを特定する事項)をその構成要件としていないのであるから、本願発明は引用発明の「片側短絡型平面アンテナ(即ち、λ/4片側短絡型マイクロストリップアンテナ)」を包含するものである。 したがって、引用発明の「片側短絡型平面アンテナ」を、引用例2に開示された技術手段に基づいて、λ/4片側短絡型を含む一般的な「マイクロストリップアンテナ」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。 また、仮に本願発明がλ/2両端開放型マイクロストリップアンテナに実質的に限定されているとしても、上記引用例2には更に「λ/2両端開放型マイクロストリップアンテナ」の実例が図9に開示されており、また「共振周波数が1.5GHzを超える場合はλ/4マイクロストリップアンテナとして動作する片側短絡型マイクロストリップアンテナの短絡片を除去し、λ/2両端開放型マイクロストリップアンテナとして動作させる方が有利である」旨及び「コンデンサの付加は脚部の長さ調整の代替手段である」旨が開示されているのであるから、これらの技術手段に基づいて、引用発明の「片側短絡型平面アンテナ」を本願発明のような(実質的にλ/2両端開放型マイクロストリップアンテナとしてのみ動作する)「マイクロストリップアンテナ」とする程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載されている技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-04-20 |
結審通知日 | 2009-04-21 |
審決日 | 2009-05-12 |
出願番号 | 特願2004-140207(P2004-140207) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01Q)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 圭一郎 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
柳下 勝幸 新川 圭二 |
発明の名称 | 2周波共振マイクロストリップアンテナ |
代理人 | 鈴木 均 |
代理人 | 鈴木 均 |