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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1199722
審判番号 不服2007-11362  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-19 
確定日 2009-06-25 
事件の表示 平成11年特許願第105840号「ガスセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月24日出願公開、特開2000-298108〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年4月13日の出願であって、平成19年3月13日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年5月18日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。その後、平成20年9月25日付けで審尋がされ、これに対して同年11月5日に回答書が提出され、平成21年1月20日に面接がなされ、同年3月27日に上申書が提出されている。


第2 本件補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年5月18日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正は、平成18年12月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1を、
「 【請求項1】
厚みの一部を薄くした基板と、
前記基板の厚みを薄くした部分に形成されたヒータと、
前記ヒータ上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられたメタンガスに対するガス感応体と、
前記ガス感応体に設けられた一対の電極とを有し、
前記ガス感応体は、
前記絶縁層上に設けられた膜状の酸化物半導体と、
前記酸化物半導体の気相接触部及び前記一対の電極を覆うように設けられた多孔質の触媒層と、
から構成されて間欠駆動を行うものであって、
前記酸化物半導体が、前記基板に対して直交する方向、または、略直交する方向に配列した柱状構造径が0.001μm?10μmの柱状構造粒子の集合体として形成されると共に、前記酸化物半導体の主成分が酸化スズであり、
前記柱状構造粒子が5?20nmの微細結晶の集合体である、
ことを特徴とするガスセンサ。」(以下、「本願補正発明」という。)とする補正を含むものである。(下線部は補正箇所を示す。)
上記補正は、発明特定事項である「柱状構造粒子」について、「5?20nmの微細結晶の集合体である」とする限定を付すものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭62-287142号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
[1a]「2.特許請求の範囲
(1)基板上に孔部または凹部を設け、この孔部上または凹部上に絶縁性膜状支持体を配置し、前記絶縁性膜状支持体の、前記半導体基板の孔部または凹部側と反対側の面上にヒータと薄膜状感ガス体とを形成してなることを特徴とするガスセンサ。」
[1b]「 本発明は前記従来の問題点を解決するもので、応答性に優れ、消費電力が少なく、量産に適したガスセンサ装置を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第12?14行)
[1c]「 作 用
これにより、感ガス部はその厚さがきわめて薄くなり、熱容量が小さくなるとともにヒータを感ガス体と積層できることから、熱応答がいちじるしく早くなる。また、感ガス部が非常に薄いことから、支持体やリード線を通しての従来品におけるような熱放散が少なく、ヒータ動作時間が短縮されるので消費電力が少なくてすむ。さらに、半導体製造技術を利用して製造できることから、量産性もいちじるしく向上する。」(第2頁右上欄第1?10行)
[1d]「〔実施例1〕
第1図は本発明の一実施例のガスセンサの構造を示し、同図(a)は平面図、同図(b)は断面図である。
図において、1はシリコンなどの半導体からなる基板、2は絶縁性の膜状支持体で、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜もしくはそれらの多層膜、またはそれらのいずれかと金属との積層構造体からなり、基板1の一方の面上に形成されている。その厚さは、感ガス部を支持するのに十分な強度が得ることができる程度であればよい。基板1には、膜状支持体2の形成面とは反対側の面から、この膜状支持体2に達する孔部3が選択エツチング法で形成されている。4は感ガス部を加熱し、所定の温度に保持するためのヒータで、膜状支持体2の孔部3上の感ガス領域5内に、ジグザグ状に形成付与されている。6は膜状の感ガス体で、たとえば金属酸化物半導体薄膜で構成されており、ヒータ4上を含む膜状支持体2の孔部3上に形成されている。7は感ガス体6の電極、8はヒータ4の電極端子、9は感ガス体6の抵抗値変化を検出するための電極端子である。」(第2頁右上欄第14行?同頁左下欄第15行)
[1e]「〔実施例2〕
第2図は本発明の他の実施例のガスセンサの構造を示し、同図(a)は平面図、同図(b)は断面図である。
このガスセンサにおいて、実施例1の装置と対応する構成要素には同じ符号を付している。
そのもっとも異なるところは、基板1の一方の面側に凹部10が形成されており、かつこの凹部10上に基板1上から延びる舌片状の膜状支持体2が配置され、さらに、この膜状支持体2上に感ガス部3が形成されていることである。
この実施例によれば、感ガス部を薄膜化したことにより、感ガス部を少ない電力で容易に所定の温度にすることができ、また応答速度もいちじるしく早めることができる。さらに、半導体製造技術を用いて製作することができるので、再現性よく量産することができる。
なお、本実施例の感ガス部では、膜状支持体2の上にヒータ4と感ガス体6とを積層して形成したが、第3図(a)に示すように、ヒータ4と感ガス体6との間に絶縁膜11を介在させ、両者間を絶縁したり、または、同図(b)に示すように、検出すべきガスを選択的に透過するガス選択透過膜12で感ガス体6を被覆した構造としてもよい。」
[1f]第1図(第2図)には、一対の電極7が設けられていることが記載されている。
[1g]第3図には、感ガス体6により電極7が覆われていることが記載されている。
上記[1a]、[1d]?[1g]の記載によると、引用例には、
「基板上に凹部を設け、この凹部上に絶縁性膜状支持体を配置し、前記絶縁性膜状支持体の面上にヒータと金属酸化物半導体薄膜で構成されている薄膜状感ガス体とを形成し、ヒータと感ガス体との間に絶縁膜を介在させ、一対の電極7が設けられ、感ガス体6により電極7が覆われてなるガスセンサ。」の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。


3.対比
本願補正発明と引用例発明とを対比する。
(ア)引用例発明の「基板」および「絶縁性膜状支持体」により形成される部材は、凹部上に絶縁性膜状支持体を配置することによって空洞部を形成し、厚みの一部を薄く形成したものであるから、本願補正発明の「厚みの一部を薄くした基板」に相当する。
(イ)引用例発明の凹部上に配置された絶縁性膜状支持体の面上に形成される「ヒータ」は、本願補正発明の「基板の厚みを薄くした部分に形成されたヒータ」に相当する。
(ウ)また、引用例発明の「絶縁膜」は、ヒータと感ガス体との間に介在するものであるから、本願補正発明の「ヒータ上に形成された絶縁層」に相当する。
(エ)引用例発明の「薄膜状感ガス体」と本願補正発明の「絶縁層上に設けられたメタンガスに対するガス感応体」とは、「絶縁層上に設けられたガス感応体」である点で共通する。
(オ)引用例発明の「一対の電極7」は、本願補正発明の「一対の電極」に相当する。
したがって、両者は、
「厚みの一部を薄くした基板と、前記基板の厚みを薄くした部分に形成されたヒータと、
前記ヒータ上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に設けられたガス感応体と、前記ガス感応体に設けられた一対の電極とを有するガスセンサ。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]感ガス体が、本願補正発明では、膜状の酸化物半導体と前記酸化物半導体の気相接触部及び前記一対の電極を覆うように設けられた多孔質の触媒層とから構成されるのに対し、引用例発明では、金属酸化物半導体薄膜で構成されており、感ガス体により電極7が覆われるものの、酸化物半導体の気相接触部及び一対の電極を覆うように設けられた多孔質の触媒層から構成されていない点。
[相違点2]感ガス体が、本願補正発明では、メタンガスに対するものであって、酸化物半導体が基板に対して直交する方向、または、略直交する方向に配列した柱状構造径が0.001μm?10μmの柱状構造粒子の集合体として形成されると共に、前記酸化物半導体の主成分が酸化スズであり、前記柱状構造粒子が5?20nmの微細結晶の集合体であるのに対し、引用例発明では、ガスの種類が特定されておらず、金属酸化物半導体がどのような構造および組成であるのかが明らかにされていない点。
[相違点3]感ガス体が、本願補正発明では間欠駆動を行うものであるのに対し、引用例発明では不明である点。

4.判断
(1)[相違点1]について
金属酸化物半導体からなる感ガス膜と感ガス膜の気相接触部および電極を覆うように設けられた多孔質の触媒層により感ガス体を構成することは、本願出願前において周知である。例えば、特開平3-200056号公報の第2頁右下欄第17?20行および第1図(e)には、金属酸化物半導体膜5および電極2を覆うように多孔質の触媒層6が形成されることが記載されており、特開平1-250852号公報の第3頁右上欄第5?12行および第1図には、金属酸化物半導体3および対向電極2を覆うように触媒層4が形成されることが記載されている。
したがって、引用例発明における感ガス体として、周知の感ガス膜と感ガス膜の気相接触部および電極を覆うように設けられた多孔質の触媒層からなる周知の感ガス体を採用し、相違点1における本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。

(2)[相違点2]について
メタンガス用の感ガス体に用いられる金属酸化物半導体として、基板に対して直交する方向、または、略直交する方向に配列した柱状構造径が0.001μm?10μmの柱状構造粒子の集合体として形成されると共に、前記酸化物半導体の主成分が酸化スズである金属酸化物半導体は周知である。例えば、特開平10-123081号公報には、ガス検知素子を用いてメタンガスを識別する技術に関し(段落【0001】)、絶縁性基板1表面に垂直あるいはほぼ垂直の方向で、径0.001?10μmの柱状結晶として形成され、かつ、隣接する柱状結晶間の非融着部の平均長さが柱状結晶長さの30%以上となるように、金属酸化物薄膜2を絶縁性基板1上に設けること(段落【0011】)、蒸着材料源としては、酸化スズ等の金属及び金属の酸化物が使用されること(段落【0012】)が記載されている。また、特公平6-43978号公報にも、第5欄第13?21行に、ガスセンサの金属酸化物薄膜が絶縁性基板面に垂直乃至ほぼ垂直の方向に平均代表径0.001μm?10μmの柱状結晶の集合構造体として形成されていることが記載されており、第7欄第25行?第8欄第11行には、実施例1として、酸化スズ薄膜層を備えたガスセンサ素子がメタン検知能を有していることが記載されている。
また、上記特開平10-123081号公報の段落【0012】および上記特公平6-43978号公報の第6欄第25?27行に記載されているように、柱状構造中にデンドライトのような微細構造が形成されると炭化水素に対する感度が向上することも周知である。上記周知技術には、微細構造の粒子径について記載されていないが、本願の段落【0070】の記載によれば、本願発明の酸化物半導体は、製膜手法として、特開昭63-8548号(特公平6-43978号公報の公開公報)に示されるようなスパッタリング法により形成されるものであるから、同程度の粒子径の微細構造を有するものといえる。そして、柱状構造に存在する微細構造の径をどの程度とするかは、必要とするセンサとしての性能に応じて当業者が適宜最適化しうる事項である。
したがって、引用例発明において、測定対象をメタンガスとし、メタンガス用の金属酸化物半導体として知られた、基板に対して直交する方向、または、略直交する方向に配列した柱状構造径が0.001μm?10μmの柱状構造粒子の集合体として形成されると共に、前記酸化物半導体の主成分が酸化スズであり、前記柱状構造粒子が5?20nmの微細結晶の集合体を酸化物半導体として採用することは、当業者が容易に想到しうることである。

(3)[相違点3]について
感ガス体を用いたガスセンサにおいて、間欠駆動を行うことは周知である。例えば、特開平2-216043号公報には、従来の技術として、第1頁右下欄第7?11行に、ヒータをパルス的に通電発熱させ、センサ素子が加熱されている時だけセンサ素子の抵抗値をパルス状に測定することが記載されており、特開平2-307050号公報にも、第2頁右上欄第4?5行に、ガス検出用の金属酸化物半導体を、1秒以下の幅のパルスで周期的に加熱することが記載されている。
したがって、引用例発明において、周知の間欠駆動を行うようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(4)効果について
本願明細書には以下の記載がある。
(ア)「【0061】図12に示すように、実施例1では、比較例と比較してガス流量が増加してもメタン感度はほとんど低下しない。その理由は、酸化スズ薄膜26が多孔質の触媒層28に覆われており、酸化スズ薄膜26の表面が冷却されにくく、実効温度の変化による影響が少ないためと考えられる。」
(イ)「【0049】シリコン基板12の凹部18を設けて厚みを薄くしたが、ヒータ20の上方または下方に位置するシリコン基板12の厚みを薄くすることが重要である(実施例1では下方、後述する実施例1の第1変更例の場合では下方、後述する第2変更例では上方でシリコン基板12の厚みを薄くしている)。このような構造をとることにより、ヒータ20から周辺部への熱散逸経路の断面積を小さくし、消費電力を低く抑制しつつ、周辺基板部の厚みを確保し、実用的な構造強度を有するものとすることができる。」
(ウ)「【0069】実施例2と実施例1の異なる点は、酸化物半導体の構造にある。すなわち、酸化物半導体は、メタンに対する感度を大きくするため、SiO_(2) 絶縁層22の表面に対して直交する方向あるいは略直交する方向に配列した柱状構造径が0.001?10μmの柱状構造粒子の集合体として形成されていることがより好ましい。ここで、「柱状構造径」とは、柱状の構造として観察される2次粒子集合体の直径をいう。なお、酸化物半導体としては、メタン感度が大きく発現する酸化スズが好ましい。
【0070】この製膜手法としては、例えば、特開昭63-8548号に示されるようなスパッタリング法により、SiO_(2) 絶縁層22の上に設けられた電極24,24の一部分を覆うように形成できる。金属酸化物として酸化スズを用いた場合は、柱状構造粒子は5?20nm程度の微細結晶(1次粒子)の集合体(2次粒子)として形成される。」

そして、本願明細書の段落【0100】の記載によれば、本願発明の効果は、「実効温度変化が小さく、低消費電力で、かつ、高選択的にメタンを検知することができる。」というものである。
しかし、ガスセンサにおいて、金属酸化物半導体からなる感ガス膜と感ガス膜の気相接触部および電極を覆うように設けられた多孔質の触媒層により感ガス体を構成することは、上記(1)に記載したとおり周知であり、触媒層により薄膜表面が冷却されにくく、実効温度の変化による影響が少ないという効果は当該構造から当業者にとって自明のものである。
また、引用例発明は、引用例の[1b]に記載されているように、応答性に優れ、消費電力が少ないガスセンサ装置を提供することを目的とし、[1c]に記載されているように、感ガス部を薄くすることにより、熱容量や熱放散を少なくし、消費電力が少なくてすむという作用を有するものであるから、本願発明と同等の低消費電力を実現するものである。
さらに、メタンガス用の感ガス体に用いられる金属酸化物半導体として、基板に対して直交する方向、または、略直交する方向に配列した柱状構造径が0.001μm?10μmの柱状構造粒子の集合体として形成されると共に、前記酸化物半導体の主成分が酸化スズである金属酸化物半導体は、上記(2)に記載したとおり周知であり、メタン感度が大きくなるという効果も知られている。そして、周知技術として挙げた特公平6-43978号公報は、本願の段落【0070】において本願発明の酸化物半導体の製膜手法として例示される特開昭63-8548号公報の特許公報にあたるものであり、本願発明と同等の効果を奏するものである。

また、請求人は、審判請求書の請求の理由において、「この柱状構造粒子を5?20nmの微細結晶の集合体で形成することにより、一対の電極間の抵抗値の経年変化を抑制することができ、メタン感度を長年安定して向上させることができます。」とし、「この柱状構造粒子を5?20nmの微細結晶の集合体で形成する構成は、引用文献7,8(特開平10-123081号公報および特公平6-43978号公報)には記載されておらず、そのため、他の引用文献と組み合わせても、本願発明は新規な構成及び効果を有しています。」と主張している。
しかしながら、本願明細書には、経年変化を抑制することについては何ら記載されていない。また、酸化物半導体が柱状構造である実施例2?4と、柱状構造ではないとされる実施例1および比較例が記載されているが、5?20nmの微細結晶からなる柱状構造と5?20nmの微細結晶を有さない柱状構造との比較がなされていないため、柱状構造粒子を5?20nmの微細結晶の集合体で形成することの効果が記載されているとはいえない。このため、請求人の主張は本願明細書の記載に基づいたものとはいえない。
さらに、請求人は、平成21年1月20日の面接において、後日一次粒子の数値範囲についての補足試料を提出するとしたが、その後提出された同年3月27日付けの上申書には、Type1,Type2の2種類のメタン高選択性センサを構築し、フィールドテストを行った結果として、「メタン高選択性センサにおいて、2重積層の厚み比率を下層を1に対して上層を10(1:10)とした素子(Type1)」と「2重積層の厚み比率を下層2を2に対して上層を5(2:5)とした素子(Type2)」の比較結果が記載されているものの、一次粒子の数値範囲を5?20nmの内外とすることによる効果の差異については記載されていない。
このため、一次粒子の数値範囲を5?20nmとすることにより新規な効果を有するとする請求人の主張は採用できない。

以上より、本願発明の効果は、ガスセンサにおいて従来知られていた効果を寄せ集めたものに過ぎず、格別なものであるとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項により却下すべきものである。


第3 本願発明
1.本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成18年12月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。
「 【請求項1】
厚みの一部薄くした基板と、
前記基板の厚みを薄くした部分に形成されたヒータと、
前記ヒータ上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられたメタンガスに対するガス感応体と、
前記ガス感応体に設けられた一対の電極とを有し、
前記ガス感応体は、
前記絶縁層上に設けられた膜状の酸化物半導体と、
前記酸化物半導体の気相接触部及び前記一対の電極を覆うように設けられた多孔質の触媒層と、
から構成されて間欠駆動を行うものであって、
前記酸化物半導体が、前記基板に対して直交する方向、または、略直交する方向に配列した柱状構造径が0.001μm?10μmの柱状構造粒子の集合体として形成されると共に、前記酸化物半導体の主成分が酸化スズである、
ことを特徴とするガスセンサ。」

2.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物およびその記載事項は、前記「第2 2.引用刊行物の記載」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明の「柱状構造粒子」についての「5?20nmの微細結晶の集合体である」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 4.判断」に記載したとおり、引用例に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明および周知技術に基づいて発明者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-16 
結審通知日 2009-04-21 
審決日 2009-05-11 
出願番号 特願平11-105840
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
宮澤 浩
発明の名称 ガスセンサ  
代理人 夫 世進  
代理人 蔦田 正人  
代理人 富田 克幸  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 中村 哲士  

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