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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1199729
審判番号 不服2007-17368  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-21 
確定日 2009-06-25 
事件の表示 平成 8年特許願第158219号「出玉表示機構を備えた遊技台」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月13日出願公開、特開平10- 5433〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯

本件の経緯概要は以下のとおりである。

特許出願 平成8年6月19日
審査請求 平成15年6月16日
拒絶理由 平成19年2月21日
手続補正 平成19年4月25日
拒絶査定 平成19年5月17日
審判請求 平成19年6月21日
手続補正 平成19年7月20日

第2.平成19年7月20日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成19年7月20日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容

本件補正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

[本件補正前の請求項1]
「台間貸機を挟持するとともに前方に前板を設けて遊技台列を構成する複数の遊技台であって、
前記各遊技台に対応する前板上に専用玉箱が載置され、該専用玉箱からの遊技媒体を各遊技台毎に設けられた玉計数器にて計量するものにおいて、
前記遊技台又は遊技台列若しくはこれらの近傍には前記出玉計数器にて計量された出玉数に応じて出玉表示を行う出玉表示機構が備えられ、
前記出玉表示機構は、前記出玉表示を、少なくとも専用玉箱の箱単位毎に表示部の数を増減させるボリューム表示によって行い、かつ、該表示部の表示態様を動的に変化させるダイナミック表示によって行う
ことを特徴とする遊技台。」

[本件補正後の請求項1]
「台間貸機を挟持するとともに前方に前板を設けて遊技台列を構成する複数の遊技台であって、
前記各遊技台に対応する前板上に専用玉箱が載置され、該専用玉箱からの遊技媒体を各遊技台毎に設けられた玉計数器にて計量するものにおいて、
前記遊技台又は遊技台列若しくはこれらの近傍には前記出玉計数器にて計量された出玉数に応じて出玉表示を行う出玉表示機構が備えられ、
前記出玉表示機構は、
前記出玉表示を、少なくとも専用玉箱の箱単位毎に点滅させる表示部の数を増減させるボリューム表示によって行い、かつ、点滅させる表示部が複数の場合に各表示部が連続的に点滅を繰り返すダイナミック表示によって行うとともに、
前記表示部が前記遊技台と当該遊技台上方の幕板との間に屈曲自在に取り付けられたものである
ことを特徴とする遊技台。」

2.補正の適否

まず、補正の適否について検討する。

本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1を特定する事項について、以下の限定を行っている。
・「表示部」を「点滅させる表示部」と限定
・「表示部」について「前記遊技台と当該遊技台上方の幕板との間に屈曲自在に取り付けられたもの」という限定を付加
上記の補正事項は、明らかに限定的減縮に相当する。

さらに、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1における「ダイナミック表示」について、「該表示部の表示態様を動的に変化させる」とあったものを、「点滅させる表示部が複数の場合に各表示部が連続的に点滅を繰り返す」に変更している。
これについては、請求人が審判請求書において「「ダイナミック表示」の内容を明確に特定し得るようにするためのもので、その要旨を変更するものではない。つまり、かかる補正部分は、拒絶査定での指摘事項に対応したものであり」と主張しており、確かに拒絶査定の備考欄において「「表示部の表示態様を動的に変化させるダイナミック表示」…と記載されているが、それぞれどのような構成か明確に特定することができない。」と指摘されているから、この点の補正は、請求人の主張のとおり、明瞭でない釈明に該当すると判断することができる。

よって、請求項1にかかる本件補正は、補正の目的要件を満たすものであり、そして、特許請求の範囲を限定的に減縮する補正事項を含むものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討することとする。

3.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-68740号公報(以下「引用文献1」という。)には図面と共に以下の技術事項が記載されている。

【請求項1】 島を構成する形で膳板(30)に沿って多数のパチンコ遊技機(6)を配置したパチンコ装置において、各パチンコ遊技機(6)に対応して膳板(30)に多数の計数装置(40、52、54)を設けたことを特徴とするパチンコ装置。
【0016】図2に示すように、玉貸機100は、隣り合う2台のパチンコ遊技機6の間に設けられている。これは、手持ちの遊技玉がなくなった時に、必要に応じて硬貨を入れることにより、新規に遊技玉を遊技者に貸出すためのものである。
【0018】各パチンコ遊技機4の上方には、トラブル表示ランプ8及び表示装置10などが設けられている。
【0020】表示装置10は、図3に示すように幕板フレーム18に対して支持板20,22を用いて固定されている。
【0021】図2と図3に示すように、表示装置10は、複数の発光セグメント24,25,26,27,28から成る。発光セグメント24?28は、図示例では、たて方向に5段つみ重ねられている。
【0022】賞品玉50の量に対応して、たとえば下の段の表示セグメント27から他のセグメント25,28,26,24と順次点灯するようになっている。
【0023】各表示セグメントは、例えば賞品玉50が1000個増える毎に点灯して行き、1000個減る毎に消灯してゆく。したがって、表示装置10は、この図示例では最高5000個まで1000個ごとに表示する。
【0024】各表示セグメント24?28は、好ましくは2種類の別々の色を発光する発光インジケータを備えている。各表示セグメントの各発光インジケータは、好ましくは1つの発光インジケータが500個分の賞品玉50を表す。
【0026】図3と図4に示すように、膳板30の上には、下皿32の下方位置に玉箱34が置かれている。玉箱34はスライド形の開閉手段36を備えている。
【0028】ある量の、たとえば約3000個の賞品玉50が玉箱34に入ったところで、遊技者は玉箱34を図4の状態から矢印Cの方向に移動し、そのあと矢印Bの方向にもどす。これにより玉箱34の玉投入口66が開いて、賞品玉50がボックス40に入り、センサ52で順次検知され、カウンタ54でカウントされる。カウント値は記憶処理部56で記憶される。
【0032】ところで、図4のカウンタ54により計数された賞品玉の数に応じて、表示装置10の表示セグメント24、26、28が順次点灯する。もし払戻した玉があれば、その払い戻した玉の量に対応してその分の表示セグメントは払戻した時に消灯する。たとえば記憶部56が残り2000個の賞品玉を記憶しておれば、下方の2つの表示セグメント25と27が点灯する。
【0034】変形例
この発明は上述の実施例に限定されない。たとえば、図5のように表示装置110を構成することもできる。表示装置110は幕板フレーム118に対してサポート140を介して支持されている。表示装置110は5つの表示セグメント124,126,128,130,132を有している。

引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「玉貸機100が隣り合う2台のパチンコ遊技機6の間に設けられ、島を構成する形で膳板30に沿って多数のパチンコ遊技機6を配置したパチンコ装置において、
各パチンコ遊技機6に対応して膳板30に多数の計数装置4を設け、
膳板30の上には、下皿32の下方位置に玉箱34が置かれ、玉箱34の玉投入口66が開いて、賞品玉50がボックス40に入り、センサ52で順次検知され、カウンタ54でカウントされ、
各パチンコ遊技機4の上方には表示装置10が設けられ、表示装置10は幕板フレーム18に対して固定されており、
表示装置10は、たて方向に5段つみ重ねられている複数の表示セグメント24?28から成り、カウンタ54により計数された賞品玉50の量に対応して、たとえば下の段の表示セグメントから順次点灯し、各表示セグメントは、例えば賞品玉50が1000個増える毎に点灯して行き、1000個減る毎に消灯してゆく
パチンコ装置。」

4.対比

本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明における「玉貸機100」は、本願補正発明における「台間貸機」に相当し、以下同様に「膳板30」は「前板」に、「玉箱34」は「専用玉箱」に、「賞品玉50」は「遊技媒体」に、「表示装置10」は「出玉表示機構」にそれぞれ相当する。
本願補正発明においては「…複数の遊技台であって、…出玉表示機構が備えられ、…ことを特徴とする遊技台。」とあるから、「遊技台」は少なくとも出玉表示機構を備えることが構成要件となっている。一方、引用発明は「…パチンコ遊技機6を配置したパチンコ装置において、各パチンコ遊技機4の上方には表示装置10が設けられ…パチンコ装置。」とあるから、「パチンコ装置」が「パチンコ遊技機6」と「表示装置10」を備えており、よって、引用発明における「パチンコ装置」は本願補正発明における「遊技台」に相当する。そして、引用発明における「パチンコ遊技機6」は、本願補正発明の「遊技台」の構成要素の一部に該当する。
引用発明においては、「玉貸機100が隣り合う2台のパチンコ遊技機6の間に設けられ」ており、上記したように「パチンコ遊技機6」は「遊技台」の一部であるから、本願補正発明同様に、遊技台が「台間貸機を挟持」しているものであると認められる。
引用発明においては「下皿32の下方位置」に玉箱34が置かれており、下皿はパチンコ遊技機6に付属するものであるから、本願補正発明における「前記各遊技台に対応」して専用玉箱が載置される点は満たしている。
引用発明においては、賞品玉50を「センサ52で順次検知され、カウンタ54でカウント」しており、ここで「カウント」する点は本願補正発明における「計量」する点に相当するから、引用発明における「計数装置4」は本願補正発明における「玉計数機」及び「出玉計数器」の両者(本願補正発明においては両者の語句があるが、片方は誤記であると判断できる。)に相当する。
引用発明における「各パチンコ遊技機4の上方」とは、上記したように「パチンコ遊技機6」は「遊技台」の一部であるから、本願補正発明における「前記遊技台又は遊技台列若しくはこれらの近傍」に相当する。
引用発明においては、表示装置10は「カウンタ54により計数された賞品玉50の量に対応して、たとえば下の段の表示セグメントから順次点灯」するから、本願補正発明における、出玉表示機構が「前記出玉計数器にて計量された出玉数に応じて出玉表示を行う」点に相当する。
引用発明においては「各表示セグメントは、例えば賞品玉50が1000個増える毎に点灯して行き、1000個減る毎に消灯してゆく」とあり、表示セグメントの点灯数が増減することは明らかであるから、「表示部の数を増減させるボリューム表示によって行う」という点で本願補正発明と共通する。

したがって、両者は
「台間貸機を挟持するとともに前方に前板を設けて遊技台列を構成する複数の遊技台であって、
前記各遊技台に対応する前板上に専用玉箱が載置され、該専用玉箱からの遊技媒体を各遊技台毎に設けられた玉計数器にて計量するものにおいて、
前記遊技台又は遊技台列若しくはこれらの近傍には前記出玉計数器にて計量された出玉数に応じて出玉表示を行う出玉表示機構が備えられ、
前記出玉表示機構は、
前記出玉表示を、表示される表示部の数を増減させるボリューム表示によって行う
遊技台。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明においては「ボリューム表示」を「専用玉箱の箱単位毎に点滅させる表示部」を増減することによって行っているのに対して、引用発明は「ボリューム表示」を、表示セグメントの点灯及び消灯によって行っている点。

[相違点2]
本願補正発明においては「点滅させる表示部が複数の場合に各表示部が連続的に点滅を繰り返すダイナミック表示」によって出玉表示を行っているのに対して、引用発明においては、表示装置10が複数の表示セグメントから成っているが、その余の構成はない点。

[相違点3]
本願補正発明においては「前記表示部が前記遊技台と当該遊技台上方の幕板との間に屈曲自在に取り付けられたもの」であるのに対して、引用発明においては、表示装置10は幕板フレーム18に対して固定されている点。

5.相違点の判断

上記相違点1?3について検討する。

[相違点1について]

引用発明においては、「1000個増える毎」、「1000個減る毎」とあるが、引用文献1の段落【0024】には「1つの発光インジケータが500個分の賞品玉50を表す」といった例も記載されており、増減を表す表示(発光)の単位は設計事項に過ぎないから、「専用玉箱の箱単位毎」とすることも適宜決定できたことである。
また、引用発明は、「点灯」、「消灯」といった表示態様であるが、「点滅」といった表示態様も例を挙げるまでもなく慣用されているから、これを選択することも適宜設計できたことである(必要であれば、後記の[相違点2について]も参照)。

よって、本願補正発明の相違点1にかかる構成とすることは、引用発明に基づき遊技台の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって容易に想到できたことである。

[相違点2について]

引用発明においては、表示装置10が複数の表示セグメントから成っているから、引用発明も「表示部が複数」あるものであって、そして各表示部をどのように発光させるかは、当業者にとって適宜設計できることである。
また、表示部が複数ある場合において、連続的に点滅させる発光方法も例えば特開平4-64380号公報(4ページ左上欄1?3行目)にもあるように周知慣用の方法に過ぎないから、そのような手法を採用することも適宜なし得ることであり、そして連続的に点滅させることを「繰り返す」ことも、当業者にとって設計事項である。

よって、本願補正発明の相違点2にかかる構成とすることは、引用発明及び周知慣用方法に基づいて、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点3について]

新たに引用する特開平2-291888号公報(以下「引用文献2」という。)には図面と共に以下の技術事項が記載されている。

「まず、第6図を参照して、実施例に係る呼出表示装置が適用されるパチンコ島台について説明する。図において、パチンコ島台1には、多数のパチンコ機2と玉貸機3とが交互に設置され、各パチンコ機2の上部には、それぞれに対応して実施例に係る呼出表示装置10が取付けられている。」(公報2ページ左下欄)
「更に、呼出表示装置の他の実施例(以下、第3実施例という)として、第4図に示す呼出表示装置50であってもよい。この呼出表示装置50について説明すると、呼出表示装置50は、長方形状の枠体51を主構成部とし、その枠体51の上部に平板状の呼出ランプ表示部52が構成され、その下部にやはり平板状の平板面部54が構成されている。呼出ランプ表示部52には、呼出ランプ53が内蔵され、平板面部54には、呼出スイッチ55及び台番号表示部56が設けられている。一方、枠体51の一端部上下には、軸支部57a,57bが形成され、この軸支部57a,57bに特別入賞表示部材58が軸ピン59で開放自在に軸支されている。なお、特別入賞表示部材58は、閉じたときに前記呼出ランプ表示部52の前面を覆うように設けられるとともに、常に開放するように図示しないスプリングで付勢されている。また、特別入賞表示部材58の開放側端部には、保合部60が突設され、この係合部60が枠体51の他端部に内蔵された錠装置62と係合するようになっている。この錠装置62は、開錠信号によって駆動される開錠ソレノイド61によって作動されるようになっている。なお、開錠信号として、大当りとなったことを検出する検出信号であってもよいし、あるいは、枠体51の上部に設けられる開錠ボタン63からの信号であってもよい。
また、特別入賞表示部材58には、第1実施例及び第2実施例と同様に大当り表示ランプ64及び大当り回数表示ランプ65が設けられている。
以上説明した第3実施例に係る呼出表示装置50は、例えば、第5図に示す制御回路に基づいて制御される。これについて説明すると、まず、パチンコ遊技において、トラブルが生じたときに遊技客が呼出スイッチ55を押圧すると、その信号が呼出ランプ点灯・点滅回路72に送られ、呼出ランプ53を点灯する。一方、パチンコ機2において、パチンコ遊技が特別入賞状態となると、その信号が特別入賞検出回路70から呼出ランプ点灯・点滅回路72に送られ、呼出ランプ53及び大当り表示ランプ64を点滅させる。このとき特別入賞検出回路70からの信号は、同時にソレノイド駆動回路73及び記憶回路74に送られる。ソレノイド駆動回路73に信号が送られると、開錠ソレノイド61が駆動されて錠装置62と係合部60との係合が解除され、特別入賞表示部材58が図示しないスプリングの付勢力により直角方向に開放する。一方、記憶回路54に信号が送られると、記憶回路54に記憶されている情報(大当り回数情報)が記憶表示装置出力回路75を介して記憶表示装置である大当り回数表示ランプ65に表示される。
このように第3実施例に係る呼出表示装置50は、特別入賞状態(大当り)になると自動的に特別入賞表示部材58を開放するように構成することができる。なお、特別入賞状態を検出する方法として、特別入賞検出回路70に代えて、遊技盤に設けられて特別入賞状態となったときに点滅するランプから発せられる光を検出する光センサー71からの信号により呼出表示装置50を駆動させるようにしてもよい。また、呼出表示装置50には、必要に応じて前記記憶回路74に記憶されている大当り回数情報をリセットするリセットボタン76を設けてもよい。」(公報4ページ右上欄?5ページ左上欄)

また、引用文献2の第6図を参照すれば、図面には符号がないが、パチンコ島台1の上部に横長状の板状部が描かれており、これが本願補正発明における「幕板」に相当することは当技術分野の常識事項である(例えば引用文献1において第1?3図における「幕板フレーム18」も参照)から、よって呼出表示装置10はパチンコ機2と幕板の間に設けられていると認められる。そして、引用文献2の第3実施例における呼出表示装置50が第6図の呼出表示装置10に相当し、特別入賞表示部材58は呼出表示装置50に設けられているものである。

以上によれば、引用文献2には
・特別入賞表示部材58が、枠体51の軸支部57に軸ピン59で開放自在に軸支されている点
・特別入賞表示部材58には、大当り表示ランプ64及び大当り回数表示ランプ65が設けられ、パチンコ遊技が特別入賞状態となると大当り表示ランプ64を点滅させると共に、大当り回数情報が大当り回数表示ランプ65に表示される点
・特別入賞表示部材58がパチンコ機2と幕板の間に設けられている点
(以下「引用文献2記載の技術」という。)が開示されていると認められる。

ここで、引用文献2記載の技術における「特別入賞表示部材58」は、大当り表示ランプ64及び大当り回数表示ランプ65を備えており、遊技に関連する情報を表示し、かつランプも備えている点で、引用発明の表示装置と共通するものであって、また「軸支部57に軸ピン59で開放自在に軸支されている」ものであるから、本願補正発明における「屈曲自在に取り付けられたもの」に相当する。

よって、引用発明の表示装置10に対して引用文献2記載の技術を適用して、本願補正発明の相違点3にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点の判断のむすび]

よって、本願補正発明の相違点1?3にかかる構成とすることは、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知慣用方法に基づき、当業者が容易に想到できたことであるから、本願補正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知慣用方法から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3.本願発明について

1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.[理由]1.において、本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.引用例

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2.[理由]3.に記載したとおりのものである。

3.対比

本願発明と引用発明を対比する。
上記第2.[理由]4.も参照すれば、両者は
「台間貸機を挟持するとともに前方に前板を設けて遊技台列を構成する複数の遊技台であって、
前記各遊技台に対応する前板上に専用玉箱が載置され、該専用玉箱からの遊技媒体を各遊技台毎に設けられた玉計数器にて計量するものにおいて、
前記遊技台又は遊技台列若しくはこれらの近傍には前記出玉計数器にて計量された出玉数に応じて出玉表示を行う出玉表示機構が備えられ、
前記出玉表示機構は、前記出玉表示を、表示部の数を増減させるボリューム表示によって行う
遊技台。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明においては「ボリューム表示」を「専用玉箱の箱単位毎に」表示部の数を増減することによって行っているのに対して、引用発明はかかる構成がない点。

[相違点2]
本願発明においては「該表示部の表示態様を動的に変化させるダイナミック表示」によって出玉表示を行っているのに対して、引用発明にはかかる構成がない点。

4.相違点の判断

上記相違点1,2について検討する。

[相違点1について]

引用発明においては、「1000個増える毎」、「1000個減る毎」とあるが、引用文献1の段落【0024】には「1つの発光インジケータが500個分の賞品玉50を表す」といった例も記載されており、増減を表す表示(発光)の単位は設計事項に過ぎないから、「専用玉箱の箱単位毎」とすることも適宜決定できたことである。

よって、本願発明の相違点1にかかる構成とすることは、引用発明に基づき当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点2について]

本願発明の相違点2にかかる構成では「表示部の表示態様を動的に変化させるダイナミック表示」とあるが、「表示態様を動的に変化」とは具体的にどのような表示態様であるか不明瞭である。
これについて、発明の詳細な説明を参照すれば、ダイナミック表示に関して、以下のような記載がある。

「その出玉数(玉箱数単位)に応じて増減表示(ダイナミックに表示)」(段落【0013】)
「発光部を増減させ、かつ連続して発光(ダイナミック表示)させる。」(段落【0013】)
「その上各枡を上下又は左右連続的に発光させることでダイナミックな表示が可能となる。」(段落【0014】)
「桁数を増し、かつ点滅表示等によりダイナミックな表示が可能となる。」(段落【0014】)
「上記パチンコ台1による出玉のダイナミックな表示を図2により説明する。…図例の如く3段目までの発光部(面発LED)が連続して発光を繰り返す。」(段落【0015】、【0017】)
「各トップランプ31aが連続的に点滅をくり返すことで大当りをダイナミックに表現する。」(段落【0019】)

以上によれば、発光部の数を増減する例、連続して発光又は点滅する例、さらに発光又は点滅を繰り返す例等が記載されており、いずれもダイナミック表示に相当すると判断できる。

そして、引用発明においても「各表示セグメントは、例えば賞品玉50が1000個増える毎に点灯して行き、1000個減る毎に消灯してゆく」とあり、表示セグメントの点灯数が増減することは明らかである。そして、点灯数が増減することは「表示態様が変化」と云え、詳細な説明の記載を参酌すれば、引用発明の当該表示態様も「ダイナミック表示」に相当するものである。
なお、仮に「表示態様が動的に変化」とは、連続して発光又は点滅を繰り返すことであったとしても、引用発明における表示装置10は複数の表示セグメントから成っており、そして各表示セグメントをどのように発光させるかは当業者にとって適宜設計できることであって、また、複数の表示部を連続的に点滅させる発光方法も例えば特開平4-64380号公報(4ページ左上欄1?3行目)にもあるように周知慣用の方法に過ぎないから、そのような手法を採用することも適宜なし得ることであり、さらに連続的に点滅させることを「繰り返す」ことも、当業者にとって設計事項である。

よって、本願発明の相違点2にかかる構成とすることは、引用発明及び周知慣用方法に基づいて、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点の判断のむすび]

よって、本願発明の相違点1,2にかかる構成とすることは、引用発明及び周知慣用方法に基づき、当業者が容易に想到できたことであるから、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知慣用方法から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、原査定の理由に基づき、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4.むすび

以上のとおり、本件補正は却下され、そして、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2以下について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-23 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-05-12 
出願番号 特願平8-158219
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 康夫  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
池谷 香次郎
発明の名称 出玉表示機構を備えた遊技台  
代理人 船橋 國則  

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