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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03C
管理番号 1199739
審判番号 不服2007-25299  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-13 
確定日 2009-06-25 
事件の表示 特願2003-424117「浴室用封水筒型排水トラップ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年7月7日出願公開、特開2005-180077〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成15年12月22日に出願したものであって,平成19年6月25日付けで手続補正がなされ,同年8月9日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日付けで明細書についての手続補正(特許請求の範囲の補正はなされていない。)がなされたものである。


2.本願発明
本願請求項1?5に係る発明は,平成19年6月25日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであり,そのうち,本願請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「浴室からの排水を排水トラップ本体に導くための排水導管が、排水導管の中心軸が排水トラップ本体の円周と交わる下流側の交点と排水トラップ本体の水平面における中心軸とを通る直線と、同排水導管の中心軸と、の成す角度が、45度から排水導管の中心軸が排水トラップ本体の円周に対して接線となる90度の範囲の角度を有して、排水トラップ本体の円周方向に沿って、排水トラップ本体に連設されている浴室用封水筒型排水トラップ装置であって、排水トラップ本体は、その円周が大径となる上部とその円周が小径となる下部とに区分されており、排水トラップ本体から排水するための排水配管が排水トラップ本体の上部において連設され、前記排水導管が同排水トラップ本体の下部において連設されていることを特徴とする浴室用封水筒型排水トラップ装置。」


3.刊行物及びその記載内容
刊行物1:特公昭48-36364号公報
刊行物2:特開平5-9965号公報

(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された上記刊行物1には,「水封部に偏向入水管を連設するトラツプ装置」に関して,図面とともに,次のことが記載されている。
「本発明者はトラツプ装置を改良してトラツプ本体の高さは低くするが、排水管の管径を小さくすることなく使用できるようにしたもの、即ち、排水管の取付口に仕切壁を設けて、しかも排水口の出口部分の排水の導出部の横幅を広くするとともに、排水口の封水線を高くして高い仕切壁上に広い断面排水口を設けたので、トラツプ装置は高さが低いにも拘らず充分な水封と機能を有し、封水筒から流れ込んだ水はトラツプ装置の底部に集積され仕切壁を越えたとき、排出口から流出してゆくものである。
本発明は上記のようなトラツプ装置の封水本体の仕切壁によって形成される水封部に更に入水管を連設したものである。従つてその高さは全体として小さいが、充分臭気止めの作用を呈するので、本発明のトラツプ装置は排水管、入水管へ連結する排水管を上記トラツプ装置とともにコンクリート床画と…浴室、便所の床等の防水パンとの間の狭い部分に取付けることが可能となつた。
しかして本発明は入水管を偏らせて取付けたため、トラツプへの入水はトラツプの封水本体内底に流入して環流を起し、水量の増加と相俟つて封水本体内底の清浄作用も行うものである。」(2欄12?35行),
「図面に示した本発明の実施例について構成を説明すると、水封部5を排水口3の仕切壁4によつて形成する封水本体1に上方から封水筒8の下縁口9が上記水封部5に臨むように懸架し、一方上記封水本体1の水封部5に入水管2の中心線がトラツプ装置の中心縦軸線に交叉しないように偏らせて連設するトラツプ構造に係るものであり、6は仕切壁4の上縁、7は入水管2の封水本体における最上端縁、10は封水本体1上縁に設けた封水筒8および目皿13の嵌合支持枠12の支持鍔、11は排水口両側面の仕切壁4の連結部を示す。」(2欄36行?3欄9行),
「本発明は上記のような構成を有するので、封水本体1には上部の封水管8から流れ込んだ排水が底部5にたまつて仕切壁4の高さを越えると排水管3に流れ、その流量の増大とともに勢よく排水するものである。又、他の排水管から入水管2を通つて本トラツプ装置へ入水する排水も入水管が偏向しているので水封部5の下部周辺を環流状に流れて、その増水とともに排水管に流れ込むものである。更に入水管の排水とトラツプ装置の上方からの排水が集積されても順次流排水されるものである。又、流水は入水管が偏向していることによつて封水本体内で環流を起すので、封水筒からの排水も併せて排水が内底部の一定位置に止ることがない。」(3欄10?23行),
「このような本発明は封水筒からの排水が封水本体の底部中央の清浄を行い入水管からの排水は環流によつて底部を極めてきれいに清浄にするものである。」(3欄30行?4欄1行),
「本発明のトラツプ装置の最も重要な取付場所は浴室の洗場床であるが、…例えば浴室の場合は封水本体を洗場床に取付け入水管を浴槽に連設して使用するものである。」(4欄9?14行)。
また,第2図(第12?17図)には,封水本体1から排水するための排水管3が封水本体1の上部において連設され,入水管2が封水本体1の下部において連設されてなるトラツプ装置が記載されている。
上記記載及び図面の記載からみて,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。
「浴室からの排水を封水本体1に導くための入水管2が,入水管2の中心線がトラツプ装置の中心縦軸線に交叉しないように偏らせて,封水本体1に連設されている封水筒8を備えたトラツプ装置であって,封水本体1から排水するための排水管3が封水本体1の上部において連設され,前記入水管2が同封水本体1の下部において連設され,浴室からの排水を封水本体1に導くようにした,封水筒8を備えたトラツプ装置。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)同じく,上記刊行物2には,「排水トラップ」に関して,図面とともに,次のことが記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野及び発明の概要】本発明は、排水トラップ、特に、複数の排水経路を合流させる形式の排水トラップに関するものである。」,
「【0005】[課題]本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、『主体(1)の上端開放部からの排水流入部を封水貯留室(10)を介して排出管(2)に連通させると共に、他の排水流入部となる合流管(14)を前記封水貯留室(10)に連通させる形式の排水トラップ』において、排水トラップを小型化できるようにするとともに、前記排水合流部でのゴミつまり等を防止できるようにするため、この合流点での水の流れが円滑になるようにすることをその課題とする。」,
「【0006】
【技術的手段】上記課題を解決するための本発明の技術的手段は、『封水貯留室(10)の横断面を円形又は環状とし、この封水貯留室(10)の断面中心に対して合流管(14)の中心軸線を偏心させた』ことである。」,
「【0009】
【実施例】次に、上記した本発明の実施例を図面に従って詳述する。図5?図7に示す実施例は、図6に示すように、二つの合流管(14)を図1の形式の排水トラップに装備させたものである。主体(1)は、図5に示すように、上方に開放する筒状体となっており、この開放端部には、漏斗筒(12)の上端に連設した蓋板(15)を螺合装着するための雌ネジ部(16)が装備され、その外側にはフランジ(F)が張出している。主体(1)内には筒体(11)が一体的に且同心状に形成されているが、この筒体(11)の底壁は主体(1)の底壁(17)よりも下方に突出しており、この筒体(11)の突出胴部から二つの合流管(14)が水平方向に突出し、筒体(11)の内部と連通する。
【0010】この合流管(14)は図6に示すように、封水貯留室(10)を構成する筒体(11)の中心から一定距離(D)だけ偏心しており、両方の合流管(14)の偏心方向を円周方向において同方向に設定している。この偏心により合流管(14)から流入する排水は封水貯留室(10)内で旋回して筒体(11)の胴部に沿って上昇し筒体(11)と主体(1)の内壁との間に形成される環状通路(20)からこれに連通する排出管(2)に流れ出る。特に、この実施例では、筒体(11)の胴部外周に張出す主体(1)の底壁(17)を螺旋状に形成している。つまり、この底壁(17)は筒体(11)の外周に沿って周回降下するように構成され、図6において、排出管(2)の上方部から反時計方向に周回するに従って底壁(17)が徐々に降下して排出管(2)の下方の母線部に至るようにしてある。」,
「【0011】この実施例の場合、合流管(14)の偏心方向も図6において反時計方向に設定されていることから、合流管(14)から流入する排水の筒体(11)内における旋回方向と筒体(11)の上端から流れ出た排水の前記底壁(17)の周回降下方向とが一致することから、筒体(11)内から環状通路(20)を経て排出管(2)に至る水の流れも円滑なものとなる。尚、上記構成の排水トラップは、浴室の洗い場の床板に形成した開口部に装着される。…」。
上記記載及び【図5】?【図7】の記載からみて,刊行物2には,次の技術が記載されているものと認められる。
合流管(14)の中心軸線を封水貯留室(10)を構成する筒体(11)の中心から一定距離(D)だけ偏心させて設けた浴室用の排水トラップ装置において,合流管(14)の封水貯留室(10)への取付部分となる筒体(11)が小径であり,排出管(2)の封水貯留室(10)への取付部分となる主体(1)が大径であること。


4.対比・判断
(1)本願発明と上記刊行物1記載の発明との対比
刊行物1記載の発明の「封水本体1」が本願発明の「排水トラップ本体」に相当し,以下同様に,「入水管2」が「排水導管」に,「排水管3」が「排水配管」に,それぞれ相当し,また,刊行物1記載の発明の「トラツプ装置」は,浴室からの排水を封水本体1(排水トラップ本体)に導くものであって,封水筒8を備えているものであることから,「浴室用封水筒形排水トラップ」ということができる。
してみると,両者は,
「浴室からの排水を排水トラップ本体に導くための排水導管が,排水トラップ本体に連設されている浴室用封水筒型排水トラップ装置であって,排水トラップ本体から排水するための排水配管が排水トラップ本体の上部において連設され,前記排水導管が同排水トラップ本体の下部において連設されている浴室用封水筒型排水トラップ装置。」である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
排水導管と排水トラップ本体との連設について,本願発明が,「排水導管の中心軸が排水トラップ本体の円周と交わる下流側の交点と排水トラップ本体の水平面における中心軸とを通る直線と、同排水導管の中心軸と、の成す角度が、45度から排水導管の中心軸が排水トラップ本体の円周に対して接線となる90度の範囲の角度を有して、排水トラップ本体の円周方向に沿って」連設しているのに対し,刊行物1記載の発明では,入水管2(排水導管)の中心線がトラツプ装置の中心縦軸線に交叉しないように偏らせて連設している点。
(相違点2)
排水トラップ本体について,本願発明が,「その円周が大径となる上部とその円周が小径となる下部とに区分されて」いるのに対し,刊行物1記載の発明では,その点が定かでない点。

(2)相違点の検討
上記相違点1を検討する。
本願出願当初明細書の記載によれば,本願発明の上記相違点1に係る構成により,「…かかる角度および方向に連設することによって、排水が円周方向にスムーズに流れ、排水の円心作用(渦巻き作用)によって排水の流速が増大し、汚れやぬめり等を排水経路外へ強制的に流出させることができる…」(段落【0022】を参照。)との作用効果を奏するものである。
一方,刊行物1記載の発明は,「入水管2の中心線がトラップ装置の中心縦軸線に交叉しないように偏らせて」連設したものであり,これにより,「封水筒からの排水が封水本体の底部中央の清浄を行い入水管からの排水は還流によつて底部を極めてきれいに清浄にする…」(刊行物1の3欄30?32行を参照。)ものであるから,本願発明の上記相違点1に係る構成の作用効果と同様の作用効果を奏するものである。
そうすると,本願発明において,「排水導管」を,「排水導管の中心軸が排水トラップ本体の円周」に対して所定の角度を有するように,「排水トラップ本体の円周方向に沿って、排水トラップ本体に連設」するとの構成と,刊行物1記載の発明における,「入水管2の中心線がトラツプ装置の中心縦軸線に交叉しないように偏らせて」連設するとの構成とは,表現上の差異はあるものの,排水トラップ本体(封水本体1)内において,排水が円周方向にスムーズに流れ,排水の円心作用(渦巻き作用)によって排水の流速が増大し,汚れやぬめり等を排水経路外へ強制的に流出させることができるようにするため,排水トラップ本体(封水本体1)に対して排水導管(入水管2)を偏心して連設するという点において,同一の技術思想に基づく構成ということができる。
そして,本願発明の上記「排水導管の中心軸が排水トラップ本体の円周と交わる下流側の交点と排水トラップ本体の水平面における中心軸とを通る直線と、同排水導管の中心軸と、の成す角度が、45度から排水導管の中心軸が排水トラップ本体の円周に対して接線となる90度の範囲の角度」としたことによる格別の作用効果を見いだすことはできず,しかも,刊行物1には,封水本体1に対する入水管2の連設角度を様々な角度とした実施例が記載されていることからすると,刊行物1記載の発明において,「入水管2の中心線がトラップ装置の中心縦軸線に交叉しないように偏らせて」連設するに際して,上記のような角度範囲を採用することは,当業者が適宜なしうる程度のことといわざるをえない。

してみると,刊行物1記載の発明において,本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは,当業者であれば容易に思い付くことである。

上記相違点2を検討する。
刊行物2には,上記「3.(2)」で説示したように,合流管(14)(本願発明の「排水導管」に相当する。以下同様。)の中心軸線を封水貯留室(10)(「排水トラップ本体」)を構成する筒体(11)の中心から一定距離(D)だけ偏心させて設けた浴室用の排水トラップ装置において,合流管(14)の封水貯留室(10)への取付部分となる筒体(11)が小径であり,排出管(2)(「排水配管」)の封水貯留室(10)への取付部分となる主体(1)が大径であることが記載されている。
してみると,刊行物1記載の発明において,刊行物2記載の上記技術を採用して,本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは,当業者であれば容易に思い付くことであって,その構成による,「排水トラップ本体の小径となる下部で、排水の流れに勢いをつけて上昇する旋回流を発生させ、これにより排水経路中における汚れやぬめり等の堆積を効率良く除去し、排水トラップ本体の大径となる上部で、旋回流の勢いを緩めてスムーズに排出させることができる」(平成19年6月25日付け意見書2頁32?35行を参照。)という作用効果も当然予測できる範囲内のものである。


5.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2009-04-21 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-05-11 
出願番号 特願2003-424117(P2003-424117)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤木 啓二  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 関根 裕
宮崎 恭
発明の名称 浴室用封水筒型排水トラップ装置  
代理人 西澤 利夫  

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