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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1199833
審判番号 不服2006-20238  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-11 
確定日 2009-06-24 
事件の表示 特願2001-303992「光記録再生機器用のエラー信号検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月31日出願公開、特開2002-157764〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成13年9月28日(パリ条約に基づく優先権主張 平成12年11月17日 韓国)に出願されたものであって、原審において、平成16年11月16日付けで、請求項4,8,18,19?21の各項に係る各発明について、特許法第29条第2項の規定より特許を受けられない旨、明細書及び図面の記載が特許法第36条第4項,第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨、及び、特許法第37条第3号,第4号,第5号に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由の通知がなされ、平成18年6月8日付けで、上記拒絶理由中、特許法第36条第4項,第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの理由、及び、請求項9?14の各項に係る各発明について特許法第29条第2項の規定より特許を受けられないとの理由、で拒絶すべきものである旨の査定がなされた。
これに対して、平成18年9月11日付けで、拒絶査定不服の審判が請求され、平成18年10月11日付けで、明細書の特許請求の範囲について手続補正がなされ、その後、平成20年7月25日付けでの前置報告書を利用した審尋に対して、平成20年10月24日付けで回答書が提出されたものである。


II.原審の拒絶査定の理由
原査定の拒絶の理由のうち、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないとの理由について、[理由3]は、大要、以下のとおりである。

**********************************[理由3]この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。


1.請求項2に、ラジアル方向に複数の領域に分割した光検出器の検出信号間の位相差からタンジェンシャルチルトエラー信号を検出する発明が記載されているが、タンジェンシャルチルトのみであれば反射光ビームは左右対称のはずであり、ラジアル方向に分割した信号の位相差からはタンジェンシャル方向のデータが得られるものとは認められず、なぜこの位相差からタンジェンシャルチルトエラー信号を検出できるのか、その理由が記載されていない
2.?4.・・・(省略)・・・。

よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項2?3,・・・(中略)・・・に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
**********************************


III.本願明細書又は図面の記載及び判断
平成16年11月16日付け拒絶理由に応答する平成17年5月26日付け意見書、及び、審判請求人が提出した平成18年10月31日付け手続補正書で主張する審判請求の理由によれば、上記平成18年10月11日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正後【請求項1】に係る発明」という。)は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1及び請求項2に係る発明(以下「補正前【請求項1】【請求項2】に係る発明」という。)に対応しており、上記原査定の拒絶の理由[理由3]において補正前【請求項2】についてした指摘は、上記補正後【請求項1】に対応するものであるから、上記指摘の内容が適正であったかを、上記補正後【請求項1】に係る発明、及び、同項に対応する発明の詳細な説明について検討する。

1.特許請求の範囲の記載
補正後【請求項1】に係る発明の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】 記録媒体の情報列から反射/回折され、対物レンズを経た光ビームの少なくとも一部領域を複数の光領域に分割して検出する光検出ユニットと、
前記複数の光領域の検出信号間の位相差を検出してタンゼンシャルチルトエラー信号を検出する回路部とを含み、
前記光検出ユニットは、前記光ビームを前記記録媒体のラジアル方向に対応する方向に第1ないし第4光領域に分割検出して第1、第2、第4及び第3検出信号を出力するように備えられ、
前記回路部は、前記第1及び第2検出信号間の位相差と第3及び第4検出信号間の位相差とを合算した信号を出力し、タンゼンシャルチルトエラー信号を検出することを特徴とする光記録再生機器用のエラー信号検出装置。」(なお、上記下線は審決で付与した。)

2.発明の詳細な説明の記載
審判請求人も認めている、補正後【請求項1】に係る発明に対応する発明の詳細な説明の記載範囲は、【0030】【発明の実施の形態】以下、及び、【図3】【図4】【図5】を用いた【0032】?【0042】以下である。
「光検出ユニット」について、
発明の詳細な説明には、「・・・記録媒体10の情報列から反射/回折され、対物レンズ17を経た光ビームLBを記録媒体10のラジアル方向に対応する方向(以下、R方向)に第1ないし第4光領域A、B、C、Dに分割/検出して第1、第2、第4及び第3検出信号S11、S12、S14、S13を出力する・・・」(【0032】)と、
「・・・例えば、図4に示されたように、前記光ビームLBを第1ないし第4光領域A、B、C、Dに分割して各々独立して光電変換可能にR方向に分割された第1ないし第4受光領域A、B、C、Dを具備する光検出器30を具備しうる。ここで、本実施形態及び後述する実施形態では光ビームLBの光領域及びその光領域を検出する光検出器の受光領域を便宜上同一な符号で表する。」(【0033】)と、
「前記第1ないし第4受光領域A、B、C、DはR方向に狭幅で、記録媒体10のタンゼンシャル方向に対応する方向(以下、T方向)に広幅であり、記録媒体10から反射/回折されて入射される前記光ビームLBの第1ないし第4光領域A、B、C、Dを各々独立して光電変換して第1、第2、第4及び第3検出信号S11、S12、S14、S13を出力する。」(【0034】)と、
更に、「前記光検出器30は第1ないし第4受光領域A、B、C、Dが図4に示された点線に沿ってT方向に2分割された8分割構造よりなることが望ましい。」(【0035】)と、
「ここで、本実施形態及び後述する実施形態において、光検出ユニットに入射される光ビームLBは記録媒体10に情報を記録したり、記録された情報の再生に用いられるメイン光ビームである。したがって、本実施形態及び後述する実施形態で光検出ユニットとして採用される光検出器は記録媒体10に記録された情報信号検出用として兼用されうるように、少なくとも2×4または4×2行列配置の8分割構造または2×2行列配置の4分割構造よりなっている。」(【0036】)と、
各々記載されている。

しかしながら、補正後【請求項1】に係る発明では、「8分割構造」「2×4または4×2行列配置の8分割構造」、乃至、「2×2行列配置の4分割構造」について発明の要件としていない。
したがって、補正後【請求項1】に係る発明の「光検出ユニット」の構造については、【図3】の光ビームLBの各領域に対応して、記録媒体のR方向に分割された第1ないし第4受光領域A、B、C、Dを具備する【図4】記載の光検出器に対応するものである。
そして、検出態様については、入射される前記光ビームLBの第1ないし第4光領域A、B、C、Dでは各々独立した光電変換しての第1、第2、第4及び第3検出信号S11、S12、S14、S13を出力することは明らかである。

3.判断
「タンゼンシャルチルト」とは、対物レンズの光軸(光ビームの光軸)と記録媒体(記録面)との相対的な傾きのうち、トラック接線方向の傾きを意味する。そして、光ビームが、所定の面に斜め方向から入射すると、その反射光ビームは、入射光と上記所定の面の垂線とがなす平面に含まれることは自明である。したがって、「タンゼンシャルチルト」のみがある場合には、光ビームは、ディスク面に垂直でトラック接線を含む平面内で反射され、ラジアル方向には変化しない。

ここで【図3】を検討すると、タンゼンシャルチルトがあると、記録媒体面での光スポットの変形は明らかでないが、反射/回折後の光ビームLBは、タンゼンシャル方向(矢印Tの方向)に変化したものであるから、図面上で、上側領域が、光記録媒体の情報面に対して、より接近(又は、離間)した位置で反射され、下側領域がより離間(又は、接近)した位置で反射されたものとなる。
したがって、タンゼンシャルチルトの発生で、反射光である光ビームLBに変化が現れるとしても、その変化は、トラック接線方向に現れ、光ビームLBをトラック接線方向(図面上で、上側領域、下側領域)に分割して両検出信号の差をみることで検出し得るものの、対して、ラジアル方向(以下、R方向という)には、格別の変化は生じないことは明らかである。

しかしながら、補正後【請求項1】に係る発明によれば、【図3】を参酌して、光ビームLBのA?Dの各領域はタンゼンシャル方向に分割されるのではなく、R方向に分割されて検出されるとしていることから、R方向に並んだ光ビームLBのA?Dの各領域と対応するようにR方向に分割された第1ないし第4受光領域A、B、C、Dを具備する光検出器の各検出領域では、検出される反射/回折光の光量に、タンゼンシャルチルトの影響による差が生じるとは到底考えられない。

又、補正後【請求項1】に係る発明について、反射された光ビームについて、「一方、図1を参照すれば、記録媒体10に光スポットとして集束された後、反射される光ビームは、例えば、記録媒体10に形成されたピットPにより0次及び±1次に回折される。したがって、記録媒体10から反射/回折されて対物レンズ7を経た光ビームは、例えば、0次回折光ビームと+1次回折光ビーム、0次回折光ビームと-1次回折光ビームとが重畳され、±1次回折光ビームが相互重畳されない形に光ピックアップの情報信号検出用の光検出器9に受光される。この際、0次回折光ビームと+1次回折光ビームとが重畳された部分及び0次回折光ビームと-1次回折光ビームとが重畳された部分の検出信号と0次回折光ビームのみの検出信号は相異なる位相特質を示す。すなわち、記録媒体10から反射/回折された光ビームはその領域によって相異なる位相特質を示す。そして、検出信号の位相特質はタンゼンシャルチルト及び/またはラジアルチルト量によって変化される。」(【0006】)と記載しているが、0次回折光ビームと+1次回折光ビームとが重畳された部分、0次回折光ビームと-1次回折光ビームとが重畳された部分、0次回折光ビームのみの部分は、それぞれ、ラジアル方向に並んでおり、又、各部分は、タンゼンシャル方向に平行に延びていることから、全ての部分で、タンゼンシャルチルトによる同じ影響を受けるものの、位相特質自体には格別の変化が生じるとは考えられない。
このことは、例え変化が生じたとしても、各部分の間で、チルトによる影響の違いはなく、その変化量に差異が生じるとは考えられない。
光ビームLBが、その領域によって相異なる位相特質を示すとしても、光検出器による検出信号(S11、S12、S14、S13)のそれぞれが、光ビームの各領域部分の位相特質に応じて、どのように異なる値、例えば、波形を示すのか、発明の詳細な説明には、具体的な記載等の説明はない。
仮に、光ビームの各領域・部分の位相特質が、タンゼンシャルチルト及び/またはラジアルチルト量によって変化されるとしても、タンゼンシャルチルトによる影響については、上記したとおり、光ビームLBの全ての部分で同じに受けており、したがって、光ビームLBの各部分と対応するように、分割された光検出器の各受光部分で受光した検出信号が変化したとしても、各検出信号には同じ変化が現れるのみであり、検出信号の差を演算して検出することはできないと考えられる。
「回路部50」での、「第1及び第2検出信号S11、S12が入力されて位相比較される第1位相比較器51と、第3及び第4検出信号S13、S14が入力されて位相比較される第2位相比較器53」(【0037】)の入力信号S11、S12、S13、S14についても同じ位相変化が現れ、各位相比較器での比較によっては、タンゼンシャルチルトによる影響、変化は現れることがなく、結果的に、タンゼンシャルチルトの検出ができないと考えられる。(なお、各位相比較器での、「位相」とは、光の波長領域での位相、光電変換後の電気量領域での位相の何を意味しているのか、必ずしも明確ではなく、又、入力信号S11、S12、S14、S13と出力信号P11、P12、P13、P14との具体的関係も不明確であることは、原査定の拒絶の理由通知[理由4]において指摘している。)

したがって、第1及び第2位相比較器側から入力された信号を演算して出力するマトリックス回路の出力に、タンゼンシャルチルトによるエラー信号が出力されるとは到底考えられず、補正後【請求項1】に係る発明に対応する発明の詳細な説明の記載が不明確である。

結局、発明の詳細な説明及び図面による、補正後【請求項1】に係る発明における、タンゼンシャルチルトの検出手法についての記載・説明は、当業者が理解することは困難であり、本願明細書の発明の詳細な説明は、補正後【請求項1】に係る発明について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載しているとはいえず、本願明細書の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項に規定された要件を依然として満たしていない。

-補足-
[請求人の主張について]
請求人は、審判の請求理由で、拒絶理由に対する平成17年5月26日付け意見書での主張、「光学的なシミュレーションの結果であり、タンジェンシャルチルトによってレーザービームの回折特性が受光部の各領域に異なる影響を与えるためです。」(主張1)、を引用し、更に以下の主張をする。

「記録媒体において反射/回折された光ビームがその領域によって相異なる位相特徴を示し、検出信号の位相特質はタンジェンシャルチルト及び/またはラジアルチルト量によって変わることが、本願明細書の段落0006?0011に記載されています。
故に、本願明細書には、記録媒体の情報列における反射/回折光ビームの領域別位相特質を考慮して、請求項1および請求項3のように、タンジェンシャルチルトエラー信号およびデフォーカスエラー信号を検出することについて、技術的に十分記載されていると確信します。」(主張2)、

「また、本技術分野におきましては、タンジェンシャルチルトエラー信号を検出するための多様な技術的な研究が行われてきています。
従いまして、請求項1の発明は、タンジェンシャルチルトエラー信号を検出することができる技術的な構成を示すもので、本願明細書の記載内容を考慮すると、ラジアル方向に複数に分割された光検出器の検出光の位相差からタンジェンシャルチルトエラー信号を検出できる理由つきましては、当業者にとって技術的に明確であると確信します。」(主張3)

加えて、審尋に対する回答書で、以下の主張をする。
「A.記載不備について
本願明細書の段落0006および図1から明らかなように、本願の「光検出ユニット」は、0次回折光ビームと、(0次+1次)回折光ビームと、(0次-1次)回折光ビームとを受光します。
ここで、上記段落0006に記載されていますように、上記3つのビームは、相異なる位相特質を示します。
また、図1から明らかなように、上記3つのビームは、おおむねラジアル方向に沿って並んでいます。
これらのことは、当業者にとって周知事項です。
そして、本願請求項1の発明では、タンゼンシャルチルトが発生することによって、上記3つのビームの(光検出ユニットにおける)受光領域が変化しますと、該「光検出ユニット」の4つの分割領域における検出信号の位相も変化します。
このことを利用して、請求項1の発明は、タンゼンシャルチルトを検出できます。」(主張4)

そこで、上記請求人の主張について検討するに、
-(主張1)について-
「光学的なシミュレーション」とは、具体的にどのようなものか不明で、発明の詳細な説明にも記載されてなく、発明の詳細な説明が不明であることには変わりはない。
又、本願添付の【図4】の回路についても、原審の拒絶理由でも指摘したように演算内容が不明で、回路構成を含めたシミュレーション自体、発明の詳細な説明の記載された範囲で実施することは困難であり、発明の詳細な説明の記載が、補正後【請求項1】に係る発明を実施できる程度に明確且つ十分に記載しているとはいえない。
「タンジェンシャルチルトによってレーザービームの回折特性が受光部の各領域に異なる影響を与える」とする点についても、タンジェンシャルチルトが、ラジアル(R)方向に並んだ受光部(受光領域)の各領域に、同じ影響を与えることはあっても、異なる影響を与えるといえないことは、上記のとおりであって、上記(主張1)の採用はできない。

-(主張2)について-
「記録媒体において反射/回折された光ビームがその領域によって相異なる位相特徴を示し、検出信号の位相特質はタンジェンシャルチルト及び/またはラジアルチルト量によって変わること」が、本願明細書の段落【0006】?【0011】に記載されているとしても、ラジアル(R)方向に並んだ受光部(受光領域)での、各領域の検出信号には、同じ影響、変化を与えることはあっても、異なる影響を与えるといえないことは、上記したとおりである。
又、ラジアル(R)方向に並んだ受光部(受光領域)で、各領域の検出信号により、ラジアルチルトが検出し得るとして、どうして、タンジェンシャルチルトが検出できるのか、発明の詳細な説明の記載自体不明であることは上記したとおりである。
結局、記録媒体の情報列における反射/回折光ビームの領域別位相特質を考慮したとしても、本願明細書には、補正後【請求項1】に係る発明のように、ラジアル(R)方向に並んだ受光部(受光領域)で、タンジェンシャルチルトエラー信号を検出することについて、技術的に明確かつ十分に記載されているとはいえず、(主張2)の採用はできない。

-(主張3)について-
拒絶査定の理由は、上記したとおり、「ラジアル方向に複数に分割された光検出器の検出光の位相差からタンジェンシャルチルトエラー信号を検出できる」ことの理由が技術的に不明であるというものである。当該技術分野において、タンジェンシャルチルトエラー信号を検出するための「多様な技術的な研究」が行われているとしても、その研究内容は、不明で、該研究内容と補正後【請求項1】に係る発明との関係も不明である。
研究内容を技術的にどのように具現化、実施できるのか、当業者が想定することは、極めて困難である。
研究の有無にかかわらず、上記不明とした点について、当初から、発明の詳細な説明において、明確かつ十分に記載すべきであるところ、このような記載はなく、結局、補正後【請求項1】に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載しているとはいえず、主張3は、採用できない。

-(主張4)について-
「本願請求項1の発明では、タンゼンシャルチルトが発生することによって、上記3つのビームの(光検出ユニットにおける)受光領域が変化しますと、該「光検出ユニット」の4つの分割領域における検出信号の位相も変化します。」としているが、タンゼンシャルチルトとは、前記(3.判断)したように、対物レンズの光軸(光ビームの光軸)と記録媒体(記録面)との相対的な傾きのうち、トラック接線方向の傾きを意味するものである。
光ビームが、トラック接線方向に斜めの方向から記録媒体面に入射(タンゼンシャルチルトが発生)すると、光ビームは、入射方向と平行なトラック接線方向に変化し、ラジアル方向には変化することなく、反射されることは、前記(3.判断)したとおりである。
タンゼンシャルチルトによって、3つのビームの各部分・領域は、タンゼンシャル方向には変化するものの、ラジアル方向には変化していないことは明らかである。
補正後【請求項1】に係る発明における光検出ユニットは、光ビームを記録媒体のラジアル方向に分割検出するものであって、検出信号には何ら変化は生じないことは明らかである。
「タンゼンシャルチルトが発生することによって、上記3つのビームの(光検出ユニットにおける)受光領域が変化します」としているが、タンゼンシャルチルトによって、3つのビームの(光検出ユニットにおける)受光領域が、どのように変化するのか、特に、ラジアル方向に並んだ各受光領域に、どのような変化が生じるのかについては、発明の詳細な説明のどこにも、具体的な記載はなく、結局、ラジアル方向に並んだ各受光領域で、光ビームの各領域を分割検出し、その検出信号を用いることで、どうして、タンゼンシャルチルトを検出できるのかについて、発明の詳細な説明に明りような記載はなく(主張4)は、採用できない。

以上のとおりであるから、明細書の発明の詳細な説明の記載では、補正後【請求項1】に係る発明について、当業者が、その発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しているとは認められない。


IV.むすび
したがって、本願明細書は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないとの理由によって、本願は、拒絶をすべきものであるとした原査定は妥当なものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-16 
結審通知日 2009-01-20 
審決日 2009-02-06 
出願番号 特願2001-303992(P2001-303992)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山澤 宏田良島 潔  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 山田 洋一
吉川 康男
発明の名称 光記録再生機器用のエラー信号検出装置  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  

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