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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1199884
審判番号 不服2006-23812  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-21 
確定日 2009-07-03 
事件の表示 特願2002-303599「化粧石けん」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004- 99851〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成14年9月10日の特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成16年11月26日付け 拒絶理由通知
平成17年1月25日 意見書・手続補正書
平成18年8月18日付け 拒絶査定
平成18年9月21日 審判請求書

第2 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、平成17年1月25日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。
「100?500メッシュの粉末とした麦飯石1.5?10重量%、オリーブ油0.5?5重量%、ウコン0.1?3重量%を含有する固形石けん。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は、「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された引用文献1?6に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであるところ、引用文献1、4、5は、下記のとおりである。


1.特開2000-44997号公報(原査定における引用文献1。以下、「刊行物1」という。)
2.特開平9-87687号公報(原査定における引用文献4。以下、「刊行物2」という。)
3.特開2001-39823号公報(原査定における引用文献5。以下、「刊行物3」という。)

第4 各刊行物に記載された事項
1 刊行物1に記載された事項
本願の出願前である平成12年2月15日に頒布された刊行物である刊行物1には、以下の事項が記載されている。

(1a)「遠赤外線発散体の微細粉を1.5?4重量%含有してなるスキンケア石鹸。」(【請求項1】)

(1b)「本発明においては、当該石鹸に遠赤外線発散体の微細粉を含有せしめるのであるが、ここでいう遠赤外線発散体とは、いわゆる麦飯石を主体とし、15重量%以下の他の物質を含んでもよいものである。」(段落【0007】)

(1c)「本発明において使用される遠赤外線発散体は、その粒度が500?700メッシュの微細粉であることが好ましい。粒度が500メッシュより粗い場合は、その表面がザラつきを生じ、一方粒度が700メッシュより細かい場合は、肌に入り込む恐れがあり、いずれの場合も使用中に皮膚をいためるので好ましくない。」(段落【0010】)

(1d)「また、本発明の石鹸には、アロエ、杏の実、川芹、当帰、人参、甘しょ等のエキスを2.0?4.5重量%含有せしめることが以下に記載の種々の効用を高めるために好ましい。ただし4.5重量%を超えるような多量添加すると得られる石鹸の固さが保てず、形崩れを起こす恐れがあり好ましくない。これらアロエ、人参等のエキスは適当な器機により絞り出して液体で添加すればよい。本発明の石鹸を使用すると、次のような効用が認められるので、きわめて有効である。
・遠赤外線が肌深く浸透して皮質の老廃物を吸着して外に導き出す。
・しわを予防し、アトビー性皮膚炎、ニキビ、シミ、ソバカス等のトラブルから肌を守る。
・皮膚細胞の再生活性化と血液の循環を促進するため、肌の柔軟性が増す。
・皮膚に優しく、剌激を与えないため洗顔後つっぱり感がなく、使うほどに肌が美麗になる。
・弱い肌を保護し、荒肌や日焼けした肌のくすみをなくする。
・体臭を吸収し取り除き、水虫、足の悪臭を除去する。」(段落【0013】)

(1e)「実施例1
化粧石鹸を製造するために、下記の各成分を準備した。
石鹸素地(やし油) 9.48kg
アロエ エキス 0.27kg
香料 0.1 kg
色素 適量
さらに遠赤外線発散体として、麦飯石を篩別、洗浄した後、乾燥し、再度篩別して得られた平均粒度600メッシュのものを0.24kg用い、これら各成分を容器に混合してロールでよく練り、押出機で棒状に延ばした後に型打ちして化粧石鹸を得た。得られた石鹸を多数の人々に試用してもらったが、上記の優れた効用を示す報告があったが、副作用の発生は一例もなかった。」(段落【0015】)

2 刊行物2に記載された事項
本願の出願前である平成9年3月31日に頒布された刊行物である刊行物2には、以下の事項が記載されている。

(2a)「脂肪酸石けんに、粘土鉱物のうちのスメクタイト属のソジウム・モンモリロナイト又はヘクトライトを添加してなる、ゲル状又は固形状の粘土鉱物類を含有する脂肪酸石けん。」(【請求項1】)

(2b)「保湿剤として、1,3ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、尿素、各種アミノ酸類、還元性二糖類のマルトース、マルチトル又は多糖類のペプタイド類のいずれか1種以上を、油脂分として、スクワラン、ホホバ油、コメ胚芽油、オリーブ油、クロレラエキスのいずれか1種以上を、生薬として、グリチルリチン酸ジカリウム、オウゴン、カモミラ、ジョウヤク、ヨモギ、シソ、イリス根、オトギリソウ、シラカバ、マロニエ、ムクロジ、メリッサのいずれか1種以上を、鉱物類として、酸性白土、活性白土、ゼオライト、セピオライト、カオリン、石墨千枚岩のいずれか1種以上を、無機塩として、塩化ナトリウムを含む請求項1に記載の粘土鉱物類を含有する脂肪酸石けん。」(【請求項3】)

3 刊行物3に記載された事項
本願の出願前である平成13年2月13日に頒布された刊行物である刊行物3には、以下の事項が記載されている。

(3a)「アボカド、ウコン、ビャクダン、チョウジ、ニクズク、パパイヤ、マンゴー、ショウガ、タイヨウトウの中から選ばれる2種以上の植物抽出物を含有する化粧料組成物。」(【請求項1】)

(3b)「本発明は、かかる課題を解決するものであって、長時間保湿効果が継続する保湿性植物成分を含有し、皮膚に対しては、乾燥、肌荒れ、ヒビ、アカギレ、フケ、カユミ、炎症性疾患等の予防、軽減又は改善に、又、毛髪に対しては、乾燥、パサツキ、枝毛、切れ毛、光沢付与等に奏効する化粧料又は浴用剤、あるいは肌荒れ、ヒビ、アカギレ等のスキントラブルが起こりにくいように改良された洗剤組成物を提供する。」(段落【0006】)

(3c)「化粧料組成物としては、化粧水(ローション),乳液,クリーム,オイル,軟膏,パック,リップ,口紅,ファンデーション,アイライナー,頬紅,マスカラ,アイシャドウー,マニキュア・ペディキュア,爪被覆剤,爪被覆除去剤,ひげ剃り用剤,シャンプー,リンス,ヘアトリートメント,ヘアトニック,ヘアスプレー,ヘアクリーム,ヘアローション,整髪料,育毛料,パーマネント液,染毛料、ハンドソープ・ボディーソープ,歯磨き剤,洗口料,洗顔料・石鹸類等が上げられる。」(段落【0069】)

(3d)「本発明の化粧料組成物および洗剤組成物においては保湿性植物抽出物は、乾燥エキス分として0.001?5重量%程度、好ましくは0.01?1重量%程度含有していると使用性および良好な効果が得られる。また浴用剤組成物においては、浴湯中における濃度が0.00001?0.01重量%、好ましくは0.0005?0.005重量%程度となる1回分使用量を設定するとよい。」(段落【0073】)

(3e)「【実施例】植物抽出物の保湿性2本発明の植物抽出物の保湿性を評価するため、モニターによる経表皮水分喪失量の経時変化を測定した。
(試料溶液)各植物の30%EtOH抽出物の水溶液(固形分濃度0.01%に調整)
(測 定 器)TEWAMETER TM210;COURAGE+KHAZAKA Electronic Gmbh製
(モニター)23才女性、30才男性、25才女性、35才女性、37才男性
(方 法)モニターの左右前腕屈側に各試料水溶液(1mL)を1日3回塗布する。3回目の塗布後、恒温恒湿室(24℃、50%RH)にて1時間安定させた後、経表皮水分喪失量の測定を始める。測定は、2秒間隔で3分間測定し、全数値の平均値を被検部位のTEWL値とする。尚、各々のブランクは検体塗布前に同条件にて測定した。
表1,2は5名のモニターの平均水分変化量の結果である。本発明による植物抽出物は経表皮水分蒸発量を抑制し、保湿作用を示すことが判明した。また、複数の植物抽出物の組み合わせによりさらに良好な結果が得られた。
〈表1〉
┌────────────┬────────────┐
│ 試 料 溶 液 │経皮水分蒸散量(g/m^(2)hr)│
├────────────┼────────────┤
│ ブランク │ 18.6 │
│ 精製水 │ 16.4 │
│ アボカド │ 8.3 │
│ ウコン │ 8.5 │
│ ビャクダン │ 8.3 │
│ チョウジ │ 9.1 │
│ ニクズク │ 8.4 │
│ パパイヤ │ 8.2 │
│ マンゴー │ 8.2 │
│ ショウガ │ 8.6 │
│ タイヨウトウ │ 8.5 │
│ 比較対象:アロエベラ │ 9.8 │
└────────────┴────────────┘
」(段落【0081】?【0083】)

(3f)「【実施例】肌荒れ改善効果
製造例1?3で得た植物抽出液の肌荒れに対する改善効果を評価するため、肌荒れモデルを作成したモルモットを使用し、適用試験を実施した。尚、検体は同一の固形分濃度に調整し、また比較対象として溶媒のみについても実施した。
(方 法)背部を除毛したハートレー系モルモット(雌性、5週齢、1群3匹)に、白色ワセリンにて3重量%に調整したラウリル硫酸ナトリウム(0.2g)を3日間連続解放塗布して肌荒れを作成した。肌荒れ作成部位を4分し、各試料(1.0mL)を3回/日塗布し、3日後観察により定められた判定基準(スコア)に従い肌荒れ度を評価した。
(判定基準)紅斑、落屑ともほとんどみられない 1点
紅斑を伴わない軽度の落屑 2点
紅斑を伴わない中等度の落屑 3点
弱い紅斑を伴った落屑 4点
中等度の紅斑を伴った落屑 5点
著しい紅斑を伴った落屑 6点
結果は表3の通りであった。本発明の植物抽出物は、肌荒れ改善に有効であると認められた。また、異なる植物抽出物の組み合わせによって相乗的効果が得られることが確認された。
〈表3〉
┌─┬───────────────────────┬─────┐
│群│ 試 験 検 体 (固形分濃度) │スコア合計│
├─┼───────────────────────┼─────┤
・・(略)・・
├─┼───────────────────────┼─────┤
│ │ ウコン30% 1,3-BG抽出液(0.01%) │ 10 │
│2│ ウコン熱水抽出液(0.01%) │ 11 │
│ │ 30% 1,3-BG溶液 │ 15 │
│ │ 精製水 │ 18 │
├─┼───────────────────────┼─────┤
・・(以下略)」(段落【0085】?【0086】)

第5 当審の判断
1 刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「遠赤外線発散体の微細粉を1.5?4重量%含有してなるスキンケア石鹸」に関し記載するものであって(摘示(1a))、その「遠赤外線発散体」は、「麦飯石を主体とし、15重量%以下の他の物質を含んでもよいもの」であり(摘示(1b))、「石鹸素地(やし油)9.48kg」に対し、「遠赤外線発散体として、麦飯石を篩別、洗浄した後、乾燥し、再度篩別して得られた平均粒度600メッシュのものを0.24kg用い」るものであって(摘示(1e))、その「微細粉」は、「粒度が500?700メッシュ」であり(摘示(1c))、また、その「スキンケア石鹸」は、「各成分を容器に混合してロールでよく練り、押出機で棒状に延ばした後に型打ちして」製造されるものである(摘示(1e))。
したがって、刊行物1には、
「遠赤外線発散体としての麦飯石の粒度が500?700メッシュである微細粉を1.5?4重量%含有してなり、各成分を混合してロールでよく練り、押出機で棒状に延ばした後に型打ちして製造されてなるスキンケア石鹸」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

2 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「遠赤外線発散体としての麦飯石」は、本願発明の「麦飯石」に相当し、引用発明の「微細粉」は、本願発明の「粉末」に相当し、引用発明の「各成分を混合してロールでよく練り、押出機で棒状に延ばした後に型打ちして製造されてなるスキンケア石鹸」は、その製造方法からみて、本願発明の「固形石けん」に相当するから、両者は、
「粉末とした麦飯石1.5?4重量%を含有する固形石けん」
である点で一致するが、以下のA?Cの点で相違するといえる。
A 麦飯石の粉末の粒度が、本願発明は、「100?500メッシュ」であるのに対し、引用発明は、「500?700メッシュ」である点
B 本願発明は、「オリーブ油0.5?5重量%」を含有するのに対し、引用発明は、オリーブ油を含有することについて特定がない点
C 本願発明は、「ウコン0.1?3重量%」を含有するのに対し、引用発明は、ウコンを含有することについて特定がない点
(以下、これらの相違点をそれぞれ「相違点A」、「相違点B」、「相違点C」という。)

3 相違点についての判断
(1)相違点Aについて
引用発明の粒度の範囲は、「500?700メッシュ」であるから、「500メッシュ」において、本願発明の「100?500メッシュ」の範囲と重複するものであり、粒度を500メッシュとした場合は、相違点Aは、実質的な相違点とはいえない。
また、上記摘示(1c)によれば、「500メッシュより粗い場合は、その表面がザラつきを生じ」るものとされているから、本願出願時、表面のザラつきを考慮して、粒度の範囲を設定することは当業者に認識されていたことである。
ところで、このような固体粉末を含有することによるザラつきは、石けん表面の性状のみならず、使用時にも当然に知覚されるものであるところ、ある粒度範囲のものを、ザラつき感があって不快と感じるか、逆にスクラブ感があって快いと感じるかは、個人差によるところも大きいといえる。
そうしてみると、刊行物1に記載された範囲あるいはこの近傍の範囲の粒度のものを試し、固形石けんとした場合に、どの程度の粒度範囲のものが適するかを選定することは、当業者が適宜なし得ることといえる。
したがって、引用発明において、麦飯石の粉末の粒度を、引用発明のそれより若干大きい「100?500メッシュ」とすることは、当業者が適宜なし得るところである。

(2)相違点Bについて
固形石けんにおいて、複数種類の成分を含有してそれぞれの効能を付加することは、本願出願時、当業者に周知の技術であったものであり(例えば、摘示(2b)及び(3a)参照)、引用発明についても、「アロエ、杏の実、川芹、当帰、人参、甘しょ等のエキスを2.0?4.5重量%含有せしめることが・・・種々の効用を高めるために好ましい」とされている(摘示(1d))。
そして、刊行物2には、固形状の脂肪酸石けんに、油脂分として、オリーブ油を含むことが記載されており(摘示(2a)、(2b))、固形石けんに含有するオリーブ油等の油分が、皮膚を保護する作用を有することは当業者に周知の技術であるから(例えば、特開昭62-146997号公報の第1頁左欄第14-18行参照)、引用発明において、さらに、皮膚を保護するという作用を与えるために、オリーブ油を含有することは当業者が容易に想到し得たものであり、その際、オリーブ油による効用を高めつつ、液状のオリーブ油の含有によって、固形石けんが柔らかくなりすぎないようにするため、その含有量の範囲を0.5?5重量%に設定することも、当業者が適宜なし得ることといえる。
したがって、引用発明において、オリーブ油0.5?5重量%を含有することは、当業者が容易になし得ることである。

(3)相違点Cについて
上記(2)に示したとおり、固形石けんにおいて、複数種類の成分を含有してそれぞれの効能を付加することは、本願出願時、当業者に周知の技術であったものであり(例えば、摘示(2b)及び(3a)参照)、引用発明についても、「アロエ、杏の実、川芹、当帰、人参、甘しょ等のエキスを2.0?4.5重量%含有せしめることが・・・種々の効用を高めるために好ましい」とされている(摘示(1d))。
そして、刊行物3には、「・・・ウコン・・・から選ばれる2種以上の植物抽出物を含有する化粧料組成物」が記載されており(摘示(3a))、「化粧料組成物としては、・・・石鹸類等」が挙げられ(摘示(3c))、上記植物抽出物は、「長時間保湿効果が継続する保湿性植物成分」であり(摘示(3b))、これを石鹸類等の化粧料組成物に含有すると「皮膚に対しては、乾燥、肌荒れ、ヒビ、アカギレ、フケ、カユミ、炎症性疾患等の予防、軽減又は改善に、・・・奏効する」ものである(摘示(3b))。これらの効果を具体的に示すものとして、摘示(3e)の実施例は、ウコンによる経表皮水分喪失量の経時変化を測定することにより、ウコンが比較対象のアロエベラに対し、優れた保湿性を有することを示すものであり、また、摘示(3f)の実施例は、ウコンの適用による肌荒れに対する改善効果を示すものである。よって、石鹸類等の化粧料組成物に、ウコンを含有すると、保湿効果及び肌荒れ改善効果を奏するものであるから、引用発明において、さらに、保湿効果及び肌荒れ改善効果を与えるために、ウコンを含有することは当業者が容易に想到し得たものである。また、刊行物3には、「保湿性植物抽出物は、乾燥エキス分として0.001?5重量%程度、好ましくは0.01?1重量%程度含有していると使用性および良好な効果が得られる」ことが記載されているから(摘示(3d))、ウコンの上記効果を得られるように、その含有量を0.1?3重量%に設定することも、当業者が適宜なし得ることといえる。
したがって、引用発明において、ウコン0.1?3重量%を含有することは、当業者が容易になし得ることである。

(4)本願発明の効果について
ア 本願発明は、本願明細書に記載されるように、「麦飯石入りの化粧石けんは・・肌の健康への一層の効果や使用に際しての使用感(例えばざらつき感がなく、しっとり感を感ずるなど)にも優れていること」(段落【007】)が要求されるため、「麦飯石に加えて、オリーブ油とウコンを合わせて石けんに含有させることにより、肌荒れをなくし肌をなめらかとし、さらには美白効果やかゆみ、乾燥肌の症状改善にも効果があり、使用に当たってしっとり感や潤い感などの爽快感ををもたらす」(段落【009】)という効果を奏するものである。
イ しかしながら、上記(2)及び(3)で検討したように、引用発明に、オリーブ油及びウコンを所定量含有したことにより、引用発明の奏する皮質の老廃物の吸着効果、アトピー性皮膚炎等の肌のトラブルの防止効果、肌の柔軟性効果等(摘示(1d))に加え、オリーブ油の有する皮膚の保護効果、ウコンの有する保湿効果及び肌荒れ改善効果により、より一層優れた肌荒れの防止、乾燥肌の改善等の肌の健康効果を奏することは、当業者の予測を超える顕著なものであるとはいえない。また、本願明細書の実施例においては、本願発明の固形石けんを浴用石けん、洗顔石けんとして使用した際の爽快感、使いやすさや、肌の健康効果について確認してはいるものの、オリーブ油及びウコンを含有したことによる特有の効果が示されているとはいえず、本願発明の特定成分の含有により、格別顕著な効果を奏するものということはできない。
ウ さらに、本願発明の麦飯石の粉末が100?500メッシュの粒度であることの効果については、本願明細書において、「100メッシュより粗い粒度の麦飯石の粉末では、石けんを使用したときにざらつき感があり、また場合によっては皮膚を痛める場合もある」こと(段落【015】)、「500メッシュより細かい粒度の粉末は、原石からの加工に手間がかかりコスト高となるばかりでなく、石けんに加えた場合に石けん生地の溶融粘度が上昇し、石けんの加工にも手間がかかり、好ましくない」(段落【016】)ことを記載するにとどまり、特定の粒度とオリーブ油及びウコンの使用との関係について記載されているものではなく、上記(1)で検討したように、表面のザラつきを考慮して、麦飯石の粒度範囲を定めたことにより格別顕著な効果を奏するものということもできない。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、「本願発明は、・・・さらつき感があって使用感の良くない100?500メンシュの粉末の麦飯石を用いて、オリーブ油とウコンを組み合わせる構成によって、「使用に際してもミネラル含有の違和感もなく爽快感を持って使用できる」石けんを得るといった引用文献や参考文献から予測できないような顕著な効果を奏するものである。」と主張するが、麦飯石の粒度とオリーブ油とウコンの使用の関係が、本願明細書に記載されているものではないことは、上記「(4)ウ」に示したとおりであるから、上記主張を採用することはできない。

4 まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-17 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-05-13 
出願番号 特願2002-303599(P2002-303599)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 浩  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 橋本 栄和
松本 直子
発明の名称 化粧石けん  

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