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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1199897
審判番号 不服2005-10135  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-30 
確定日 2009-07-02 
事件の表示 特願2001-507441「抗日光化粧品組成物及びその用途」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月11日国際公開、WO01/01946、平成15年 1月28日国内公表、特表2003-503438〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本件発明
本願は、平成12年6月20日(優先権主張1999年7月2日、仏国)を国際出願日とする出願であって、平成17年1月13日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「皮膚及び/又は毛髪を光保護するための、局所使用用の化粧品組成物において、化粧品的に許容可能な支持体中に、
(i)第1の遮蔽剤として少なくとも1種のベンゾトリアゾール官能基を有するシリコン誘導体、及び、
(ii)第2の遮蔽剤として少なくとも1種のケイ皮酸誘導体、
を含有してなり;
前記第1及び第2の遮蔽剤の重量比が、
第1の遮蔽剤/第2の遮蔽剤=0.5/6.5?6.75/0.25の範囲にあることを特徴とする組成物。」

2.引用例の記載の概要
原査定の拒絶の理由に引用された以下の刊行物には、次の事項が記載されている。

・特開平8-188581号公報(以下、引用例1という。)

(1) 少なくとも一のアルコキシベンゾトリアゾールの機能を有するもの全ての一般的な特性を有する、短鎖で、直鎖状もしくは環状のジオルガノシロキサン型あるいは、トリオルガノシラン型の……化合物は有機サンスクリーン剤として紫外線から皮膚及び髪を保護するための化粧品組成物中に有用に用いられる。(【0001】)
(2) 現在までに皮膚の光保護(UV-A及び/またはUV-B)を意図した多くの化合物……のほとんどは、280?315nmの領域もしくは315?400nmの領域において、あるいはまたはこれら双方の領域に同時に、UV光線の吸収を示す芳香族化合物である。これらは、しばしば水中油型エマルション(……)の形態をとる抗太陽組成物中に処方され、従ってこのエマルションは、一以上の、有機官能基を含む親油性及び/または親水性の通常用いられる有機スクリーニング剤を種々の濃度にて含むものであり、有害な紫外線を選択的に吸収することができ、これらのスクリーニング剤(及びこれらの量)は、望ましい特定保護因子(特定保護因子(SPF)は、UVスクリーニング剤を用いた際の紅斑生成開始に達するまでに要する照射時間と、UVスクリーニング剤を用いない場合の紅斑生成開始に達するまでに要する時間との比率によって数学的に表わされる)によって選択される。(【0004】?【0005】)
(3) この目的のために推薦される全ての化合物の中で、p-アミノ安息香酸、ベンジリデンショウノウ誘導体、ケイ皮酸誘導体及びベンゾトリアゾール誘導体を特に挙げることができる。(【0007】)
(4) 上記の……化合物は、紫外線(生成物の構造によって、UV-AもしくはUV-B)に対する、本来の比類無いスクリーニング力を示す。異なる構造の生成物を混合することにより、すなわち、より詳しくは、純粋にUV-A活性を示す本発明による生成物と、純粋にUV-B活性を示す本発明による生成物を混合することにより、有害なUVの全ての範囲(UV-A+UV-B)に渡って、全体に特に優れたスクリーニング活性を示す組成物を自由に得ることができ……る。(【0040】)
(5) 本発明の化粧品組成物は、……脂肪、有機溶媒、シリコーン、増粘剤、軟化剤、付加的サンスクリーン剤、起泡抑制剤……、もしくはこれ以外の、特に抗太陽化合物の製造のために用いられているような、従来化粧品に用いられているあらゆる成分のように、従来当分野で用いられる化粧用補助剤を含むことができる。(【0043】?【0045】)

・特開平7-267842号公報(以下、引用例2という。)

(6) 一般式化1(省略)
一般式化2(省略)で表わされることを特徴とするシリコーン系桂皮酸誘導体と、上記以外の紫外線吸収剤及び/または紫外線散乱剤とを含有することを特徴とする日焼け止め化粧料。(【請求項1】)
(7) 実際日焼け止め化粧料として使用する場合にはUV-A、UV-AB吸収剤を併用しなければ不十分であり、公知の吸収剤を配合する必要がある。(【0004】)

・フレグランスジャーナル、1991年9月号、pp.64-65(「PARSOL MCX(パルソールMCX)」の項)(以下、引用例3という。)

(8) 「PARSOL MCX」は、化学物質名をメトキシケイ皮酸オクチルといい、化粧品用B波長紫外線吸収剤であって、日やけ(サンバーン)を起こすB波長帯(290nm?320nm)の紫外線を効率よく吸収し皮膚に与える障害を防ぐこと。

3.対比・判断

引用例1には、少なくとも一のアルコキシベンゾトリアゾールの機能を有するもの全ての一般的な特性を有する、短鎖で、直鎖状もしくは環状のジオルガノシロキサン型あるいは、トリオルガノシラン型の化合物であって、少なくとも1種のベンゾトリアゾール官能基を有するシリコーン誘導体(上記 (1))を有機サンスクリーン剤として含有する皮膚及び髪を保護するための化粧品組成物が記載されている。
本願発明と引用例1に記載の化粧品組成物とを対比する。
引用例1の、少なくとも一のアルコキシベンゾトリアゾールの機能を有するもの全ての一般的な特性を有する、短鎖で、直鎖状もしくは環状のジオルガノシロキサン型あるいは、トリオルガノシラン型の化合物であって、少なくとも1種のベンゾトリアゾール官能基を有するシリコーン誘導体(上記 (1))は本願発明の(i)の少なくとも1種のベンゾトリアゾール官能基を有するシリコン誘導体に相当する。また、化粧品組成物は通常、局所使用であり、化粧品的に許容可能な支持体を含むものである。
そうすると、両者は、「皮膚及び/又は毛髪を光保護するための、局所使用用の化粧品組成物において、化粧品的に許容可能な支持体中に、遮蔽剤として少なくとも1種のベンゾトリアゾール官能基を有するシリコン誘導体を含有する組成物」である点で一致し、前者は、第2の遮蔽剤として少なくとも1種のケイ皮酸誘導体を含有し、第1及び第2の遮蔽剤の重量比が第1の遮蔽剤/第2の遮蔽剤=0.5/6.5?6.75/0.25の範囲と限定しているのに対して、後者は第2の遮蔽剤について限定されてない点(相違点1)で相違する。

そこで、この相違点について検討する。

紫外線から皮膚や髪を保護する日焼け止め化粧料等の化粧品組成物は、1以上の有機スクリーニング剤を種々の濃度で含み、その量に応じたSPF値を示すこと(上記 (2))はよく知られている。
そして、有機スクリーニング剤としてケイ皮酸誘導体やベンゾトリアゾール誘導体は周知であり(上記 (3))、実際上十分な日焼け止め化粧料とするにはUV-A、UV-B吸収剤を併用する必要があること(上記(4) (7))も本願の優先日前の技術常識として知られており、引用例1に記載のベンゾトリアゾール官能基を有するシリコン誘導体を含有する化粧品組成物においても、さらに付加的サンスクリーン剤(=酸スクリーニング剤、遮蔽剤)を含むことができること(上記 (5))が記載されている。
一方、引用例1には抗UV活性を有する化合物としてケイ皮酸誘導体を含む各種化合物が挙げられ(上記 (3))、また、引用例2においても紫外線吸収剤としてシリコーン系桂皮酸誘導体(上記 (6))があげられている。
そして、引用例3には、化粧品用B波長紫外線吸収剤として、商品名パルソールMCX、化学物質名メトキシケイ皮酸オクチルが紫外線吸収能に優れ安全性の高いものであること(上記 (8))も記載されている。
そうすると、上記のとおり、紫外線から保護を目的とする化粧品の分野では吸収領域の異なる2種以上の紫外線吸収剤を併用することは普通に行われることであるから、引用例1に記載の化粧品組成物において、配合すべき付加的サンスクリーン剤として、引用例1?3に記載の周知の紫外線吸収剤であるケイ皮酸誘導体を配合することは当業者が適宜なし得ることである。
本願発明は、第1及び第2の遮蔽剤の重量比が、第1の遮蔽剤/第2の遮蔽剤=0.5/6.5?6.75/0.25の範囲にあることを限定している。
しかし、配合する紫外線遮蔽剤の量や比率は、組成物にどの程度のSPFを持たせるかにしたがって、当業者が適宜決定しうる範囲のものであって、2種以上の吸収波長の異なる遮蔽剤を適切な割合で使用することにより、1種のみの場合に比べて広範な波長範囲の紫外線が吸収可能となり、SPF値が上昇することも当業者が容易に予測可能であるから、本願明細書に記載の効果についても予測の範囲内のものである。

なお、請求人は、本願明細書(段落【0043】)のパルソールMCXとドロメトリゾールトリシロキサンの組合せの処方について、この数値限定に格別の相乗効果が存在すると主張する。しかしながら、本願発明における第1遮蔽剤であるベンゾトリアゾール官能基を有するシリコン誘導体は、引用例1に示されているように、ベンゾトリアゾールにおける置換基を変化させることによってUV-A又はUV-Bの波長を吸収可能な広範な化合物群(上記 (4))を包含している。また、第2遮蔽剤であるケイ皮酸誘導体も、同様にUV-B又はUV-Aの波長を吸収する広範囲な化合物群であることが知られている。
そうすると、上記の特定の紫外線遮蔽剤の組合せにおいて有効である使用比率が、本願発明に包含される他の広範な遮蔽剤のどの組合せにおいても常に同程度のSPF値の上昇をもたらすということはできない。
したがって、本願発明は、引用例1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-11 
結審通知日 2009-01-13 
審決日 2009-01-26 
出願番号 特願2001-507441(P2001-507441)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼岡 裕美  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 谷口 博
弘實 謙二
発明の名称 抗日光化粧品組成物及びその用途  
代理人 園田 吉隆  
代理人 小林 義教  

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