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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1199914
審判番号 不服2008-3959  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-20 
確定日 2009-07-02 
事件の表示 特願2006- 45073号「放電灯点灯装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月13日出願公開、特開2006-185924号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年7月26日に出願した特願2000-225416号の一部を平成18年2月22日に新たな特許出願としたものであって、平成20年1月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年2月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本件出願の請求項に係る発明は、平成19年11月30日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明は以下のとおりである。
(1)「【請求項1】
放電灯と、放電灯を点灯させるとともに放電灯への供給電力を制御可能な放電灯点灯部と、放電灯点灯部への給電時間を放電灯の点灯時間として計時する点灯時間タイマーと、放電灯の点灯時間の経過に伴う光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯への供給電力を放電灯点灯部に指示する制御部を備える放電灯点灯装置において、前記放電灯は蛍光灯であり、前記放電灯点灯装置が放電灯を一定電力もしくは放電灯の定格電力で点灯する状態に達した後、光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯へ電力を供給する機能を有することを特徴とする放電灯点灯装置。」(以下「本願発明」という。)

2.引用刊行物
(1)刊行物1の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-283784号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】蛍光ランプを点灯する点灯手段を備え、前記蛍光ランプの点灯累積時間を記録するメモリを備え、前記メモリの点灯累積時間を参照して点灯経過にともなう光束劣化分にほぼ見合う程度に増光するよう前記点灯手段を制御する補償手段を備え、前記点灯手段の動作状況下における前記蛍光ランプの未接続状態が主閾値時間を越えたときに前記メモリにおける前記点灯累積時間のデータをリセットするリセット手段を備え、前記主閾値時間を越えかつそれより長い副閾値時間を越えるかどうかで前記増光の程度を加減することを特徴とする蛍光灯点灯装置。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】一定照度制御式の蛍光灯制御装置は照度を検知してなされる。・・(中略)・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記照度検知形はまだ使える蛍光ランプを無駄にする場合があり、また外光の影響を受けるので好ましくない。これを解決する一つの方法は、個々の蛍光ランプないしはその点灯装置を近似一定照度に運用することである。新品の蛍光ランプは明るく、古くなるに従って暗くなる。その光束劣化の程度はほぼ一定であるので、点灯累積時間のデータがあれば、近似一定照度の制御は行える。」

すると、上記の事項を総合すると刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「蛍光ランプと、蛍光ランプを点灯する点灯手段と、蛍光ランプの点灯累積時間を記録するメモリと、メモリの点灯累積時間を参照して点灯経過にともなう光束劣化分にほぼ見合う程度に増光するよう前記点灯手段を制御する補償手段を備える蛍光灯点灯装置」

(2)刊行物2の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-28988号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の技術的事項が記載されている。
(ウ)「【0035】なお、全体的なランプ寿命については、放電ランプ3の電力初期値を定格値以下に設定して寿命の延長化が図られる一方、寿命末期の光量低下に伴うフィードバック制御でランプ電力供給を増大化(過負荷)して光量不足を補うためランプ寿命末期(ランプ劣化期)における寿命は短縮する傾向が有るがランプ寿命全体としては従来のランプと同等の寿命とすることができる。・・(中略)・・
【0038】ランプ寿命末期に入ってからランプ寿命(不点灯)までの投射映像の輝度は、ランプ寿命直前までほぼ一定の輝度が保たれ、ランプ寿命直前になると急速に立ち下がり、ついには放電ランプ3が不点灯となる。」
(エ)図2の寿命末期領域において、ランプ電力が、初期設定値から定格値を経て設定限度電力まで増加することが図示されている。
(オ)図3の寿命末期領域において、映像の輝度がランプ寿命直前までほぼ一定に保たれることが図示されている。

3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「蛍光ランプ」は、本願発明の「放電灯」に相当し、引用発明の「蛍光灯点灯装置」は、本願発明の「放電灯点灯装置」に相当する。
(b)引用発明の「蛍光ランプを点灯する点灯手段」は、「点灯経過にともなう光束劣化分にほぼ見合う程度に増光する」機能を有するものであって、その「増光」が供給電力の制御により行われることが自明であるので、本願発明の「放電灯を点灯させるとともに放電灯への供給電力を制御可能な放電灯点灯部」に相当する。
(c)引用発明の「蛍光ランプの点灯累積時間を記録するメモリ」は、本願発明の「放電灯点灯部への給電時間を放電灯の点灯時間として計時する点灯時間タイマー」に相当する。
(d)引用発明の「メモリの点灯累積時間を参照して点灯経過にともなう光束劣化分にほぼ見合う程度に増光するよう前記点灯手段を制御する補償手段」は、本願発明の「放電灯の点灯時間の経過に伴う光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯への供給電力を放電灯点灯部に指示する制御部」に相当する。
また、引用発明の該「メモリの点灯累積時間を参照して点灯経過にともなう光束劣化分にほぼ見合う程度に増光するよう前記点灯手段を制御する補償手段」を備える蛍光灯点灯装置は、「点灯累積時間を参照して点灯経過にともなう光束劣化分にほぼ見合う程度に増光する機能を有する」と言えるものであり、かつ、上記(b)で述べたように、その「増光」が供給電力の制御により行われることが自明であるので、該蛍光灯点灯装置と、本願発明の「放電灯点灯装置が放電灯を一定電力もしくは放電灯の定格電力で点灯する状態に達した後、光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯へ電力を供給する機能を有する放電灯点灯装置」とは、放電灯点灯装置が、光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯へ電力を供給する機能を有する放電灯点灯装置である点において共通する。

(2)両発明の一致点
「放電灯と、放電灯を点灯させるとともに放電灯への供給電力を制御可能な放電灯点灯部と、放電灯点灯部への給電時間を放電灯の点灯時間として計時する点灯時間タイマーと、放電灯の点灯時間の経過に伴う光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯への供給電力を放電灯点灯部に指示する制御部を備える放電灯点灯装置において、前記放電灯は蛍光灯であり、前記放電灯点灯装置が、光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯へ電力を供給する機能を有する放電灯点灯装置。」

(3)両発明の相違点
本願発明は、「放電灯を一定電力もしくは放電灯の定格電力で点灯する状態に達した後、光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯へ電力を供給する機能を有する」ものであるのに対して、引用発明の「光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯へ電力を供給する機能」は、「放電灯を一定電力もしくは放電灯の定格電力で点灯する状態に達した後」の機能でない点(以下「相違点」という。)。

4.本願発明の容易推考性の検討
(1)相違点について
刊行物2の記載事項(ウ)?(オ)には、寿命末期の光量低下に伴う制御でランプ電力供給を増大化(過負荷)して光量不足を補い、ランプ寿命直前までほぼ一定の輝度を保つ技術が記載されている。
そして、引用発明と刊行物2記載の技術は、共に放電灯の光束低下を抑制することを意図する点で共通するものであるので、引用発明に上記刊行物2記載の技術を用いることは容易である。
なお、刊行物2の光束低下抑制は、フィードバック制御によるものであって、引用発明のように点灯時間に応じた制御によるものではないが、記載事項(イ)でも、引用発明がフィードバック制御を従来技術として、点灯時間に応じた制御に至った旨記載されているように、基本的に両者が互換性のある技術として認識されているものであり、該前提とした制御形態の相違が、前記技術の適用に特段の困難性を生ずるものとは認められない。
さらに、刊行物2記載の「ランプ寿命直前までほぼ一定の輝度が保つ」ことは、引用発明においても望ましいことと認識出来るものであり、技術適用の起因付けも存在している。
そして、引用発明の「光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯へ電力を供給する」において、刊行物2記載のランプ電力供給を過負荷まで増大化して、ランプ寿命直前までほぼ一定の輝度が保つようにする技術を用いることは、「放電灯の定格電力で点灯する状態に達した後」も「光束低下を抑制するように点灯時間タイマーにより計時された点灯時間に応じて放電灯へ電力を供給する」ことに他ならないので、引用発明に上記刊行物2記載の技術を適用して、相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(2)総合判断
そして、本願発明の作用効果は、引用発明及び刊行物2に記載の事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-24 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-05-14 
出願番号 特願2006-45073(P2006-45073)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 渡邉 洋
中川 真一
発明の名称 放電灯点灯装置  
代理人 倉田 政彦  
代理人 倉田 政彦  

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