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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M |
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管理番号 | 1199945 |
審判番号 | 不服2006-26566 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-24 |
確定日 | 2009-06-03 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第510048号「針を有さない非経口導入装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月21日国際公開、WO96/08289号、平成10年 6月 2日国内公表、特表平10-505526号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1995年9月12日(パリ条約による優先権主張1994年9月12日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年8月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において平成20年4月24日付けで拒絶理由を通知し、同年10月30日付けで意見書が提出されると共に、同日付け手続補正により明細書についての手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年10月30日付け手続補正により補正された、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「薬を非経口投与できる、針を有さない装置であって、該装置が胴体部材およびプランジャーを備え、該胴体部材が第1と第2の端部および固体形態にある薬を収容する内腔を有し、該内腔が前記胴体の第1の端部から第2の端部まで延在し、前記プランジャーが前記内腔の内径と実質的に同一の外径を有する細長いロッドを含み、該ロッドが前記胴体の第2の端部で前記内腔中に挿入され、前記プランジャーが前記内腔内で移動して、前記薬を前記胴体部材の第1の端部から、前記胴体部材が患者の皮膚に対して押され、該薬が患者の皮膚を貫通するのに十分な構造強度のものであるときに患者の皮膚を通して押し出すことができ、 前記胴体部材の内腔中に薬を備え、該薬が、爪楊枝の一方の端部の形状を有し、円柱部分まで先太りする針頭を備え、前記内腔において該針頭が前記胴体部材の第1の端部に向かって整合されている、 ことを特徴とする装置。」 ここで、本願発明の「前記胴体部材の内腔中に薬を備え、該薬が、爪楊枝の一方の端部の形状を有し、円柱部分まで先太りする針頭を備え、前記内腔において該針頭が前記胴体部材の第1の端部に向かって整合されている」の点について、本願の明細書の記載を参酌すると、胴体の第1の端部は皮膚に近接する端部であり、かつ、薬の長手方向において細い端部が皮膚の方向を指向していないと、薬が皮膚を貫通出来ないことを考慮すると、当該記載の「第1の端部」は「第2の端部」の誤記であると認められる。 3.当審における拒絶理由 当審において、平成20年4月24日付けで通知した拒絶理由における理由の備考「1.」の概要は以下のとおりである。 本願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内において頒布された特開昭57-116008号公報(以下、「引用文献1)という。)及び特開昭61-79470号公報(以下、「引用文献2)という。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 4.引用文献の記載事項 ア.引用文献1について 引用文献1には次の事項が記載されている。 a.「本発明成形薬材の特徴である体内へ刺し込み可能な棒状体に成形するためには圧縮強度の大きい純化学的に合成された生体吸収高分子材料が望ましい。」(4ページ左下欄13?16行) b.「本発明の特徴は生体吸収性高分子材料と医薬品の混合物を実質的に体内に刺し込み可能な棒状体に成形している点である。本発明で定義する実質的に体内に刺し込み可能な棒状の形態とは、直径2mm程度以下のいわゆる針状棒を含む棒状体のものや、一定の厚みを有するように板状に成形された成形物を、局部挿入巾に合せて5mm以下程度の適当な巾を持たせて棒状に切断したものである。好ましい棒状形態は針状のものであり、必要により棒状体の先端を尖らせていわゆる針灸の使用要領で局部周辺ないし患部内に直接またはプランジャー等の補助具を用いて刺し込み埋没させる。」(4ページ右下欄17行?5ページ左上欄8行) これら記載事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。 「プランジャー等の補助具を備え、 先端を尖らせた針状の棒状体からなる圧縮強度の大きい成形薬材を針灸の使用要領で、プランジャー等の補助具を用いて局部周辺ないし患部内に刺し込み埋没させる方法。」 イ.引用文献2について 引用文献2には、図面と共に、次の事項が記載されている。 c.「本発明者らはこの現状に着目し、鋭意検討した結果固形注射剤または半固型注射剤を安全にかつ簡便に体内に投与する投与キットを発明するに到った。」(1ページ左欄19行?右欄2行) d.「本発明は、このようにして得られた保護チューブ内の製剤とそれを保持する投与器具とを組み合わせることによって完成するものであるが、その投与器具の製法については特に限定されるものではなく、次に述べる各部品を組みあわせて作成される。すなわち図1-(1)-(3)に示すとおり、注射針部分1(例えば長さ20?150mm、内径0.5?3mm程度)と製剤2(例えば長さ5?50mm、直径0.5?8mm程度)の入った保護チューブ3(例えば長さ5?50mm、内径0.5?3mm程度)を固定するグリップ4(例えば長さl0?100mm、内径0.6?7mm程度)、さらに製剤を押し出すプランジャー5(長さ25?200mm、直径0.5?3mm程度)からなる。」(2ページ右上欄16行?左下欄9行) e.「まず、固形または半固形注射剤を含むこの器具の針の部分を、必要な深さまで体内に穿刺した(図2)後、指で固定する。次にプランジャーで製剤を押し出して投与する(図3)。」(2ページ左下欄12行?15行) また、図1、図2には、「固定グリップ4」、「製剤保護チューブ3」、及び「注射針部分1」からなる部分が第1と第2の端部を有すること、「固定グリップ4」、「製剤保護チューブ3」、及び「注射針部分1」からなる部分が、製剤を収容する内腔を有すること、「固定グリップ4」、「製剤保護チューブ3」、及び「注射針部分1」からなる部分の内腔が第1と第2の端部まで延在すること、及び「プランジャー5」が細長いロッドを有することが図示されている。 以上を総合勘案すると、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」いう。)が記載されていると認められる。 「固形注射剤を体内に投与する投与キットであって、 、投与キットが、固定グリップ、製剤保護チューブ、及び注射針部分からなる部分、およびプランジャーを備え、固定グリップ、製剤保護チューブ、及び注射針部分からなる部分が第1と第2の端部および固形注射剤を収容する内腔を有し、内腔が第1の端部から第2の端部まで延在し、プランジャーが細長いロッドを含み、プランジャーが製剤を押し出す投与キット。」 5.対比・判断 5-1.対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明1の「成形薬材」は、本願発明の「薬」に相当し、同様に「プランジャー等の補助具」は「プランジャー」に相当する。 また、引用発明1において「成形薬材を針灸の使用要領で」「局部周辺ないし患部内に刺し込み埋没させる」ことは、本願発明において「薬」を「非経口投与」していることと同義であり、かつ引用発明1の「プランジャー等の補助具」は「針を有さない」ことは自明である。 さらに、引用発明1は「成形薬材を針灸の使用要領で」「局部周辺ないし患部内に刺し込み埋没させる」ものであるから、「薬」を「患者の皮膚を通して押し出」している。そしてそのために「先端を尖らせた針状の棒状体」に成形され、かつ「圧縮強度」が「大き」く成形されているから、本願発明の「薬が患者の皮膚を貫通するのに十分な構造強度のものであるとき」の発明特定事項を有している。 また、引用発明1の「先端を尖らせた針状の棒状体」は、本願発明の「爪楊枝の一方の端部の形状を有し、円柱部分まで先太りする針頭を備え」た形状と同様の形状である。 また、引用発明1は「プランジャー等の補助具を用い」るから、本願発明の「装置」の発明特定事項を有する。 そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「薬を非経口投与出来る、針を有さない装置であって、 プランジャーを備え、 薬が患者の皮膚を貫通するのに十分な構造強度のものであるときに患者の皮膚を通して押し出すことができ、 薬が、爪楊枝の一方の端部形状を有し、円柱部分まで先太りする針頭を備える装置。」 そして、両者は次の相違点1及び2で相違する。 (相違点1) 本願発明は「装置が胴体部材およびプランジャーを備え、該胴体部材が第1と第2の端部および固体形態にある薬を収容する内腔を有し、該内腔が前記胴体の第1の端部から第2の端部まで延在し、前記プランジャーが前記内腔の内径と実質的に同一の外径を有する細長いロッドを含み、該ロッドが前記胴体の第2の端部で前記内腔中に挿入され、前記プランジャーが前記内腔内で移動して、前記薬を前記胴体部材の第1の端部から、前記胴体部材が患者の皮膚に対して押され」るものであるのに対し、引用発明1は「装置」が「プランジャーを備え」るもののその余の具体的な構成が不明である点。 (相違点2) 本願発明は、「胴体部材の内腔中に薬を備え」、「内腔において該針頭が前記胴体部材の第2の端部に向かって整合されている」のに対して、引用発明1は、そのように構成されるか不明である点。 5-2.相違点の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1、2について) 引用発明2における「固定グリップ」、「製剤保護チューブ」、及び「注射針部分」からなる部分は、本願発明の「胴体部材」に相当し、同様に「固形注射剤」は「固体形態にある薬」に、「投与キット」は「装置」に、それぞれ相当する。 また、引用発明2の「固形注射剤を体内に投与」することは、本願発明の「薬を非経口投与」することと同義である。 また、一般的に「プランジャー」の「ロッド」が「内腔の内径と実質的に同一の外径を有する」ことは、例示するまでもなく斯界における慣用技術である。 また、引用発明2のプランジャーは、ロッドが第2の端部から内腔中に挿入され、プランジャーが内腔内を移動して、薬を第1の端部から押し出すものであることは、その構成及び作用に照らして自明の事項である。 したがって、引用発明2について本願発明の用語を用いて整理すると、引用発明2は「薬を非経口投与できる装置であって、装置が胴体部材およびプランジャーを備え、胴体部材が第1と第2の端部および固体形態にある薬を収容する内腔を有し、内腔が胴体の第1の端部から第2の端部まで延在し、プランジャーが内腔の内径と実質的に同一の外径を有する細長いロッドを含み、ロッドが胴体の第2の端部で内腔中に挿入され、プランジャーが内腔内で移動して、薬を胴体部材の第1の端部から押し出す装置」であるといえる。 そして、引用発明1と引用発明2は、共に薬を非経口投与するための装置であるから、引用発明1におけるプランジャー等の補助具として、引用発明2の装置を採用する事は当業者であれば容易に想到し得ることである。 ここで、引用文献2には、注射針部分を体内に穿刺すること(「4.イ.e」参照。)、注射針部分の先端がそのための穿刺可能な形状を有している(図1参照。)ことが記載されているが、引用発明1において、薬が針状であって直接皮膚に刺し込むことができる形状を備えていることを考慮すると、挿入のためのプランジャー等の補助具の先端を穿刺可能な形状にする必要はないから、引用発明1において引用発明2の装置を採用するにあたって、先端の穿刺可能な形状を省いた形状を採用し、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 また、その際に薬の長手方向において細い端部が皮膚の方向を指向していないと、薬が皮膚を貫通出来ないことを考慮すると、薬の収納方向を、尖った先端が皮膚に指向するように、すなわち、「先太りする」「針頭が前記胴体部材の第2の端部に向かって整合」する方向とし、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明による効果も、引用発明1及び2引用発明2から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-12-26 |
結審通知日 | 2009-01-06 |
審決日 | 2009-01-20 |
出願番号 | 特願平8-510048 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中田 誠二郎 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
岩田 洋一 増沢 誠一 |
発明の名称 | 針を有さない非経口導入装置 |
代理人 | 佐久間 剛 |
代理人 | 柳田 征史 |