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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1199980
審判番号 不服2006-15335  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-18 
確定日 2009-06-30 
事件の表示 平成 8年特許願第 98137号「運動用の緩衝ボード」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月 8日出願公開、特開平 9- 94308〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成8年4月19日の出願(パリ条約に基づく優先権主張日:平成7年4月25日)であって、平成17年9月16日付けの拒絶理由通知に対して、平成18年3月27日付けで意見書と共に手続補正書が提出されたところ、同年4月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月18日付けで、拒絶査定不服審判が請求されたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、平成18年3月27日付け手続き補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「上方へ凸の弓形を有し、人が運動するに十分な横方向への広がりを有する上表面を備えた繊維強化プラスチックの台と、該台の下側にあり上記台を支持面の上方に支持するために上記支持面と係合する複数の足とを有し、上記繊維強化プラスチックは台がボードの上で運動する人の重量に応答して弾性作用によって曲がることを可能にすることを特徴とする運動用の緩衝ボード。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された実公昭57-54号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
ア.実用新案登録請求の範囲
「板状形成体3がばね層2に載置され、該ばね層2の上面に結合しているタンブリング用走路のための弾性敷き板において、前記ばね層2がいくつかの互いに平行な板の横一杯に伸びている細長いばねエレメント4からなっており、該ばねエレメント4は1対の弾性ばね支え5,6から構成されており、該ばね支え5,6はその両端7で.互いに固く結合されていると共に、該ばね支え5,6のうちの少くとも上方に位置する一方のばね支え6は、他方のばね支え5から離れていく方向に力-ブしていることを特徴とするタンブリング用走路のための弾性敷き板。」
イ.1欄29?32行
「この本考は、特にタンブリング用走路のための、弾性のある敷き板に関するものである。この敷き板では、1つの板状形成体が、1つのばね層の上にのっていて、その上面にしっかり結合している。」
ウ.4欄32?41行
「板状形成体は、例えば、敷き板の全面にわたって拡がっているような一枚の平板である。しかし、特に本考案の目的に適しているものは、板状形成体が、ばねエレメントののびている方向と交差して、互いに平行な、ばね弾性をもちしなやかな複数のばね板からできているときである。板状形成体をこのような形に作ると、敷き板の跳躍の際おこる板状形成体の変形が、特に都合よくいくのである。
本考案の敷き板は、特に、弾性のある体操の走路を作るのに用いられる。」
エ.5欄5?9行
「板状形成体は、とくにばね弾性がありしなやかで、例えばプラスチック製である。これはしかし、又、木製でもよい。例えば、グラスファイバーによつて強化された合板製であってもよい。」
オ.5欄13?16行
「ばね支えは、例えばプラスチック製、又はグラスファイバーで強化された合板製である。ばね支えの端の結合は、例えばくっつけるとかあるいはねじでとめるとかしている。」
カ.5欄40行
「敷き板の寸法は約2m×2.2m。」
キ.6欄2?11行
「第1図、第2図に示される弾性のある敷き板は、平らな地面1に載っている。敷き板の下にはばね層2と、その上に板状形成体3がある。ばね層2は、一連のばねエレメント4を含んでいる。このばねエレメント4は、各々、下のばね支え5と、上のばね支え6とからできている。2つのばね支え5,6は、その両端7で互いに固く結びついている。ばね支え5,6は弓形をしているが、下のばね支え5は下へカ-ブしており、上のばね支え6は上へカーブしている。」
ク.6欄17?21行
「下のばね支え5の各々の下側には、両端7の近くに、各々、ささえ軸受け9が1つついている。ささえ軸受け9は、弾性があり縮むことのできるプラスチック製である。上のばね支え6の上側には、板状形成体3が接着されている。」
ケ.6欄26?28行
「第3図は本考案の第2実施例の概略断面図であって、第1図及び第2図に示されているものと同様、もち運びができる。」
コ.6欄39行?7欄6行
「第4図は本考案の第3実施例の概略断面図であり、常置用に作り付けになっている。ここでは、ばねエレメントが荷重されていないときには、上のばね支え6だけがカーブしており、下のばね支え5はまっすぐになっている。端7では、上のばね支え6は、下のばね支え5に、間にはさんだ台13を通して固定されている。その際、端7は、さゝえ軸受け9を通して地面1に固定されている。2つのさゝえ軸受け9の間には、更に、間にはさんだ軸受け14がとりつけられている。この間にはさんだ軸受けは、下のばね支え5が地面の方にゆかぬ様支えている。」

上記キ?コ、及び、第1?4図からみて、引用文献には、第1、2図に示される第1実施例、第3図に示される第2実施例、第4図に示される第3実施例に係る「弾性敷き板」が記載されており、その内、第3実施例に係る「弾性敷き板」は、上記ア?オ等も参酌すると、次のとおりのものである(以下、「引用文献記載発明」という。)。
「板状形成体3が、ばね層2の上面に載置・結合されたタンブリング用或いは体操用の走路のための弾性敷き板であって、
前記ばね層2は、ばね弾性のあるプラスチック製の一対の弾性ばね支え5、6から構成され、該一対のばね支え5、6は、両方の端7で、台13を介して固く結合されていると共に、上のばね支え6は上方にカーブする弓形に、下のばね支え5はまっすぐに、形成されており、
前記板状形成体3は、ばね弾性のあるしなやかなプラスチック製であって、敷き板の全面に拡がる一枚の平板で構成され、上のばね支え6の上面に接着されており、
下のばね支え5の裏面には、両方の端7にささえ軸受け9が、その間に軸受け14が取り付けられ、ささえ軸受け9により、両方の端7は地面に固定され、軸受け14により、下のばね支え5は地面の方に行かないように支えられている、弾性敷き板。」

3.対比
本願発明と引用文献記載発明とを対比する。
まず、本願発明の「台」に関連して、引用文献記載発明の「板状形成体3」等について、検討する。
上記のとおり、引用文献記載発明の「板状形成体3」は、ばね弾性のあるしなやかなプラスチック製の一枚の平板であって、上方にカーブする弓形の「上のばね支え6」の上面に接着固定されるから、「板状形成体3」と「上のばね支え6」とは、一体的に結合され、上方にカーブする弓形の一枚の板となるものである。又、その寸法は「約2m×2.2m」(上記カ参照)であるから、人が(その上で)運動するのに十分な横方向への広がりを有するものである。
そうすると、引用文献記載発明の、「板状形成体3」と「上のばね支え6」とが一体的に結合された一枚の弓形の板(第4図参照:以下、これを「板状体」という。)は、本願発明の「台」に相当するものと言える。
ところで、引用文献記載発明の「板状体」は、「下のばね支え5」を有するものであり、この点に関連して、請求人は、「この構成は、板状形成体3が、2つのばね支え5、6を有し、該2つのばね支え5、6及びそれらを連結する控えインゴット8によって支持され、弾性力は上下の双方のばね支え5、6から発生する点において、引用文献1(審決注:「本願発明」の誤りか。)の構成と異なる。」(審判請求書の手続補正書2頁11?14行)と主張する。
確かに、引用文献に記載された第1、2実施例に係る「弾性敷き板」の「下のばね支え5」は、下方へ弓形にカーブし、その中央部分で地面と接触しているから、上のばね支え6と共働して、弾性力を発生させるものかもしれない。
しかしながら、上記コ、或いは、第4図にも記載されるとおり、引用文献記載発明(第3実施例)の「下のばね支え5」は、まっすぐな部材であって、その両端は、台13を介して、上のばね支え6と固く結合され、更に、軸受け14により、地面の方に行かないように支えられているものであり、これらの点を勘案すると、下のばね支え5は、上のばね支え6の上方へのカーブを保持するための補強的な部材と解され、又、そのように解しても、特に矛盾はない。
即ち、引用文献記載発明(第3実施例)の「下のばね支え」は、引用文献の第1、2実施例の「下のばね支え」とは、その作用が異なるものと解されるから、請求人の主張は、採用できない。
なお、拒絶理由においても、引用文献1についての備考に「第1、3図及び第4図を参照のこと」と記載されているように、第1、2実施例に加え第3実施例も、拒絶理由として引用されている。
さらに、「板状形成体3」と「ばね支え6」とは共に、ばね弾性のあるプラスチック製であり、その形状(上方へ凸の弓形)も相俟って、「板状体」の上に人が乗った場合、「板状形」は、人の重量に応答して、プラスチックの弾性作用により、曲がることは明らかである。
そして、このように上側へ凸状をなしたカーブ形状(上方に凸の弓形)の板体は、スポーツ用跳躍板等において弾性を担保するためによく用いられるもの(例えば、特開昭55-52769号公報等参照)であって、格別な形状をなすものとも言えない。
又、本願発明の「台」は「繊維強化プラスチック」であり、引用文献発明の「板状体」は「プラスチック」であるところ、「繊維強化プラスチック」も「プラスチック」も、合成樹脂である点で共通する。

次に、本願発明の「複数の足」について、検討する。
本願発明の「複数の足」は、「支持面と係合する」と特定されているが、複数の足が支持面と「係合する」とは、どのような構成を言うのか不明確である(足は、単に、支持面上に置かれるだけである。)。
なお、原審における拒絶理由の「B.理由2」の「2」は、この点を、不明確と指摘していると解される。
そこで、発明の詳細な説明を参酌するに、発明の詳細な説明において、「係合」なる用語は、特許請求の範囲の請求項1の記載を繰り返す箇所以外に記載はなく、ただ、段落【0008】に、「支持面」に関連して唯一「ボードを使用する床の上にあるいは他の支持面の上に置くようにしている。」との記載が認められる。
この記載及び図1からみて、上記(複数の足が)「支持面と係合する」とは、単に、複数の足が「支持面(床)上に置かれる」ことを意味するものと解され、又、そのように解しても矛盾はない。
他方、引用文献記載発明の「両方の端7のささえ軸受け9」は、弾性敷き板を支持面より上方に支持する複数の部材であるから、本願発明の「複数の足」に相当するものと言うことができる。
しかしながら、引用文献記載発明の場合、地面(支持面)をもって固定されるものであるから、この点は、本願発明との相違点となる。

そして、引用文献記載発明の「弾性敷き板」は、運動時の緩衝ボードであると言える。

以上の点からみて、本願発明と引用文献記載発明とは、次の一致点及び相違点を有するものである。

《一致点》
「上方へ凸の弓形を有し、人が運動するに十分な横方向への広がりを有する上表面を備えた合成樹脂の台と、該台の下側にあり上記台を支持面の上方に支持するための複数の足とを有し、上記合成樹脂は台がボードの上で運動する人の重量に応答して弾性作用によって曲がることを可能にすることを特徴とする運動用の緩衝ボード。」

《相違点1》
「合成樹脂が、本願発明では、繊維強化プラスチックであるのに対して、引用文献記載発明では、プラスチックである点。」

《相違点2》
「台を支持する複数の足が、本願発明では、支持面に置かれるものであるのに対して、引用文献記載発明では、支持面に固定されるものである点。」

4.判断
(1)相違点1について
引用文献記載発明の「プラスチック」は、本願発明の「繊維強化プラスチック」と同様に、板状体(台)に負荷がかかったとき、その弾性作用により、板状体(台)を曲げるものであるから、その作用効果において、本願発明と何ら異なるものではない。又、「繊維強化プラスチック」は、プラスチック材料として格別、入手困難なものでもなく、更に、運動用の緩衝板である「踏切板」に「繊維強化プラスチック」を用いることは、周知の技術事項であること(例えば、実願昭55-119592号(実開昭57-42852号)のCD-ROM等参照)等を勘案すれば、引用文献記載発明のプラスチックに代えて、繊維強化プラスチックを採用することに、格別の困難性は認められない。
さらに付言すれば、引用文献記載発明の「板状形成体3」、「ばね支え6」は、プラスチック製、或いは、グラスファイバーによって強化された合板製(繊維強化合板製)でもよい、との記載(上記エ、オ参照)からみても、板状形成体等の材料として、「繊維強化プラスチック」を採用することに、格別の困難性は認められない。

(2)相違点2について
上記のとおり、本願発明の「緩衝ボード」は「支持面に置かれる」ものであるから、持ち運び可能であることは言うまでもない。
他方、引用文献記載発明の「弾性敷き板」は、ささえ軸受けにより地面に固定される作りつけのものである(上記コ参照)。
結局、上記相違点2は、「緩衝ボード」が、持ち運び可能なものであるか、作りつけのものであるか、ということに尽きる。
そこで検討する。
引用文献には、引用文献記載発明の他に、実施例1、2に係る弾性敷き板も記載されていることは上記のとおりである。これら実施例1、2に係る弾性敷き板は、持ち運びができるもの(上記ケ参照)である。
即ち、引用文献には、弾性敷き板を持ち運ぶもの、作りつけとするもの、の両方が記載されており、弾性敷き板として、そのどちらを選択するかは、当業者の設計事項であるから、引用文献記載発明の弾性敷き板を、実施例1、2に倣って、持ち運び可能なものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)請求人の主張
審判請求人は、審判請求書において、「引用文献1(実公昭57-54号公報)は、タンブリング用走路のための弾性敷き板に関し、本発明の「適当な場所でのランニングやエアロビクスそして跳躍運動といった様なさまざまな運動用の緩衝ボード」(段落番号0001)と技術分野が異なる。」と主張する(審判請求書の手続補正書2頁2?4行)。
しかしながら、本願発明の緩衝ボードは「運動用の緩衝ボード」と特定されているだけであって、特許請求の範囲の請求項1において、その運動が「適当な場所でのランニングやエアロビクスそして跳躍運動」と限定されているわけではない。しかも、発明の詳細な説明においては、これら運動の例示の後に「さまざまな(運動用)」とも付記されている。
他方、引用文献記載発明の「弾性敷き板(緩衝ボード)」は、タンブリング用走路として、或いは、体操用の走路として、使用されるものではあるところ、タンブリング、或いは、体操も、運動の一種であって、「さまざまな運動」の範疇に含まれることは明らかである。
即ち、請求人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであり、失当である。

(4)まとめ
以上のとおり、上記相違点1、2に係る事項は、当業者であれば容易に想到し得たことであると共に、それらを備えたことによる作用効果も当業者が容易に推察可能なものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献記載発明、引用文献に記載された技術事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-29 
結審通知日 2009-02-02 
審決日 2009-02-17 
出願番号 特願平8-98137
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 菅野 芳男
佐藤 宙子
発明の名称 運動用の緩衝ボード  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中村 稔  
代理人 村社 厚夫  
代理人 小川 信夫  
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