• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1200001
審判番号 不服2006-25178  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-06 
確定日 2009-07-01 
事件の表示 特願2000-143882「匂いの低減したシリコーンポリエーテル共重合体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月28日出願公開、特開2000-327785〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成12年5月16日(パリ条約による優先権主張 1999年5月17日 アメリカ合衆国)の出願であって、平成16年12月24日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成17年7月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年7月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年12月6日に手続補正書が提出され、平成19年2月15日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたが、同年5月31日付けで前置報告され、その後、当審において平成20年6月9日付けで審尋がなされ、同年10月10日に回答書が提出されたものである。

II.本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、平成18年12月6日に提出された手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】匂いの低減したシリコーンポリエーテルの製造方法であって、該方法が下記(I)及び(II)の工程からなる、前記方法。
(I)下記(A)?(C)からなる混合物を反応させる工程
(A)アルケニル官能性ポリエーテル化合物;
(B)ポリジオルガノシロキサンポリオルガノ-ハイドロジェンシロキサン共重合体;及び
(C)均一系遷移金属ヒドロシリル化触媒;及び、
(II)温度20?200℃で、かつ、圧力6.9×10^(1)?1.38×10^(3)kPaで、0.1?48時間、(I)の生成物を水素ガスに晒す工程。」

III.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由である平成16年12月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由1の概要は、以下のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-12
・引用文献等 1-3

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平7-330907号公報
2.特開平9-165315号公報
3.特開平9-165318号公報」

IV.原査定の拒絶の理由の妥当性についての検討
1.引用例に記載の事項
平成16年12月24日付け拒絶理由通知書で引用した刊行物である特開平9-165315号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載がされている。
ア.
「【請求項1】 末端に炭素-炭素二重結合を有するポリオキシアルキレンとヒドロポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により合成されるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物であって、該ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に水素添加反応を行うことからなる精製されたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を0.01?100重量%含有する皮膚化粧料。」(特許請求の範囲【請求項1】)
イ.
「【発明が解決しようとする課題】一方、近年、無香料タイプの皮膚化粧料が普及するにつれて、皮膚化粧料の個々の成分の臭いが問題視されている。中でも、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物はその機能性とは逆に、臭いに関してはマイナスの影響を与えている。つまり、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物はヒドロシリル基をもつポリシロキサンと不飽和結合を有するポリオキシアルキレンとのヒドロシリル化反応によって合成されているため、皮膚化粧料の製造時および保存においてポリエーテル変性ポリシロキサン組成物中の未反応不飽和基含有ポリエーテルからアルデヒド等の臭い物質が生成し、製品が着臭する。」(明細書段落【0003】)
ウ.
「【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題点を解決すべくポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の脱臭方法について種々検討した結果、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に触媒存在下水素ガスを用い水素添加反応を実施することにより、加水分解および酸化反応等により臭気物質を発生することがなく、経時的にも安定な組成物を開発した。」(明細書段落【0006】)
エ.
「【発明の実施の形態】本発明で使用するポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を製造するためのヒドロシリル化反応に用いるヒドロポリシロキサンとしては、例えば次式:
【化1】

[ここで、R^(1)は同一または異なる置換または非置換の1価の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1?19のアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、ナフチル基、アルキルナフチル基、フェニルアルキル基、3-アミノプロピル基、3-(N-2-アミノエチルアミノ)プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等)または次式で表されるもの、
【化2】

{ここで、R^(2)は同一または異なる置換または非置換の1価の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基等の炭素原子数1?19のアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、3-アミノプロピル基、3-(N-2-アミノエチルアミノ)プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等)または水素基、qは0または正の整数である。}または水素基、nは0または正の整数である。但し、1分子中に少なくとも1つのケイ素原子に直接結合した水素基を有する。]で表されるものや・・・・・上記ヒドロシリル化反応は、公知の技術を用いて行うことができる。すなわち、この反応は、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、ジオキサン、THF等のエーテル系、脂肪族炭化水素系、塩素化炭化水素系の有機溶剤中または無溶媒で行われる。また、反応温度は通常50?150℃であり、塩化白金酸等の触媒を用い反応させることができる。通常、ポリオキシアルキレンを過剰にして反応させる。」(明細書段落【0008】)
オ.
「本発明では炭素-炭素二重結合等の不飽和置換基をもつ化合物、および加水分解および酸化に由来する化合物に水素添加反応を行い、精製したポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を皮膚化粧料の成分として用いた。
水素添加反応としては公知の水素添加触媒が用いられる。例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、コバルト、クロム、銅、鉄等の単体または化合物がある。触媒担体は無くてもよいが、用いる場合は活性炭、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ゼオライト等が用いられる。また、ヒドロシリル化反応に使用した白金触媒をそのまま利用することもできる。これらの触媒は単独で用いることもできるがその組合せで用いることも可能である。」(明細書段落【0011】【0012】)
カ.
「水素添加反応の溶媒は使用しなくてもよいが、使用する場合は、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、ジオキサン、THF等のエーテル系、脂肪族炭化水素系、塩素化炭化水素系などの水素添加条件に不活性な有機溶剤中で行われ、ヒドロシリル化反応に使用した溶媒をそのまま使用することもできる。」(明細書段落【0013】)
キ.
「水素添加反応は、常圧および加圧下で行うことができる。現実的には水素加圧下で、即ち水素圧1?200Kg/cm^(2)で行う。」(明細書段落【0014】)
ク.
「水素添加反応は、0?200℃で行うことができるが、反応時間の短縮のため、50?170℃で行うことが望ましい。」(明細書段落【0015】)
ケ.
「水素添加反応は回分式でも連続式でも良い。回分式の場合、反応時間は触媒量および温度等に依存するが概ね3?12時間である。」(明細書段落【0016】)
コ.
「【発明の効果】本発明の皮膚化粧料は、従来、皮膚化粧料の成分において、着臭の原因となっていたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を水素添加し精製したものである。これにより、ポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の経時による着臭および刺激性のあるアルデヒドの生成を著しく抑えることができ、さらに、アレルギーの原因となる可能性のある残存触媒の白金をなくしたものである。」(明細書段落【0064】)

2.引用例に記載された発明
引用例には、末端に炭素-炭素二重結合を有するポリオキシアルキレンとヒドロポリシロキサンとを塩化白金酸等の触媒を用いてヒドロシリル化反応させポリエーテル変性ポリシロキサン組成物を合成することが記載されており(摘示記載ア、エ)、また、合成されたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物中の未反応不飽和基含有ポリエーテルが臭気物質発生の原因となることから、合成されたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に水素ガスを用い水素添加反応を行い臭気物質の発生を抑えることが記載されている(摘示記載ア、イ、ウ)。
そうすると、引用例には、
「末端に炭素-炭素二重結合を有するポリオキシアルキレンとヒドロポリシロキサンと塩化白金酸の触媒からなる混合物をヒドロシリル化反応させた後、反応生成物であるポリエーテル変性ポリシロキサン組成物に水素ガスを用い水素添加反応を行う、臭気物質の発生が抑えられたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の製造方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、
引用発明の「末端に炭素-炭素二重結合を有するポリオキシアルキレン」は、本願発明1の「(A)アルケニル官能性ポリエーテル化合物」に相当し、引用発明の「ヒドロポリシロキサン」は、摘示記載エから、本願発明1の「(B)ポリジオルガノシロキサンポリオルガノ-ハイドロジェンシロキサン共重合体」に相当する。
そして、引用発明の「水素ガスを用い水素添加反応を行う」は、本願発明1の「水素ガスに晒す」に相当し、引用発明の方法で得られた「臭気物質の発生が抑えられたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物」は、摘示記載イ、ウ、コの記載から、臭気の少ないポリエーテル変性ポリシロキサン組成物であると認められるから、本願発明1の「匂いの低減したシリコーンポリエーテル」に相当するものである。
そうすると、両発明は、
「匂いの低減したシリコーンポリエーテルの製造方法であって、下記(I)及び(II)の工程からなる、方法。
(I)下記(A)?(C)からなる混合物を反応させる工程
(A)アルケニル官能性ポリエーテル化合物
(B)ポリジオルガノシロキサンポリオルガノ-ハイドロジェンシロキサン共重合体
(C)ヒドロシリル化触媒;及び
(II)(I)の生成物を水素ガスに晒す工程。」
の発明である点で一致し、以下の点で一応相違するものと認められる。
相違点1
本願発明1においては、ヒドロシリル化触媒として、「均一系遷移金属ヒドロシリル化触媒」を用いるのに対し、引用発明においては、「塩化白金酸」を用いる点
相違点2
本願発明1においては、(II)の水素ガスに晒す工程が「温度20?200℃で、かつ、圧力6.9×10^(1)?1.38×10^(3)kPaで、0.1?48時間」と規定されているのに対し、引用発明においては、特に規定されていない点。

4.相違点についての検討
相違点1について
本願明細書段落【0027】【0028】には、本願発明1において用いられる均一系遷移金属ヒドロシリル化触媒の例が記載されており、遷移金属酸が使用されること、さらには、遷移金属酸として「塩化白金酸」が例示されることが記載されている。
そうすると、引用発明でヒドロシリル化反応触媒として使用されている「塩化白金酸」は、本願発明1で用いられている「均一系遷移金属ヒドロシリル化触媒」に属するものといえるから、相違点1は、実質的な相違点ではない。

相違点2について
引用例には、ヒドロシリル化反応により得られたポリエーテル変性ポリシロキサン組成物の水素添加反応について「水素添加反応は、常圧および加圧下で行うことができる。現実的には水素加圧下で、即ち水素圧1?200Kg/cm^(2)で行う。」(摘示記載キ)、「水素添加反応は、0?200℃で行うことができるが、反応時間の短縮のため、50?170℃で行うことが望ましい。」(摘示記載ク)、「水素添加反応は回分式でも連続式でも良い。回分式の場合、反応時間は触媒量および温度等に依存するが概ね3?12時間である。」(摘示記載ケ)と記載されている。
そして、「水素圧1?200Kg/cm^(2)」は、「水素圧1×10^(2)?2×10^(4)kPa」と換算されることからすれば、引用発明のヒドロシリル化反応後の水素添加反応における反応温度、反応圧力、反応時間は、いずれも本願発明1と重複一致するものである。
したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。

5.請求人の主張についての検討
平成19年2月15日付けの審判請求書の手続補正書(方式)における請求人の主張の概要は、以下のとおりである。
「今回の補正後の本願発明は、(3-1)にも示したような構成であり、(C)触媒は均一系触媒であり、今回の補正後の本願発明は、均一系で実施される製造方法です。
均一系触媒とは、本願出願当初明細書[0026]および[0027]段落においても説明されますが、一般的に、汎用溶媒に溶解し得るようにされた触媒です。ヒドロシリル化反応や水素添加反応(水添)といった、活性水素種の生成を必要とする各種反応を触媒し得る遷移金属は、そのまま(単体)では、如何なる溶媒にも溶解し得ず、塩や錯体とされて、汎用溶媒に溶解し得るようにされます。
これに対して、引用文献1の[0014]段落、引用文献2の[0018]段落、および引用文献3の[0023]段落において、水添後に、濾過して触媒を分離すると断定されており、均一系触媒が示唆されていません。」

上記主張について検討する。
「3.対比」でも述べたように、均一系遷移金属ヒドロシリル化触媒については本願明細書段落【0027】に「均一系遷移金属ヒドロシリル化触媒の特定の例として、遷移金属錯体、遷移金属酸、又は、遷移金属塩等が挙げられる。」と記載され、さらに、本願明細書段落【0028】に「遷移金属酸は、塩化白金酸、臭化白金酸、塩化イリジウム酸及び塩化オスミウム酸によって例示される。」と記載されており、本願発明1における(C)均一系遷移金属ヒドロシリル化触媒として「塩化白金酸」が用いられることが明示されている。
そして、引用発明(引用例に記載の発明)においては、ヒドロシリル化反応触媒として「塩化白金酸」が用いられているのである(摘示記載エ)から、結局、引用例にはヒドロシリル化反応触媒として「均一系遷移金属ヒドロシリル化触媒」を用いることが記載されているものといえる。
なお、摘示記載オ、カからして、水素添加反応用の触媒、溶媒は、ヒドロシリル化反応に使用した白金触媒、溶媒をそのまま利用することができるものであるから、塩化白金酸を採用する場合には、引用発明における水素添加反応においてもヒドロシリル化反応と同様に均一系触媒が用いられるものであると認める。
したがって、請求人の主張は採用することができないものである。

6.まとめ
よって、本願発明1は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

V.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての原査定の拒絶の理由は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、この理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-27 
結審通知日 2009-02-03 
審決日 2009-02-16 
出願番号 特願2000-143882(P2000-143882)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 孝泰  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 山本 昌広
野村 康秀
発明の名称 匂いの低減したシリコーンポリエーテル共重合体の製造方法  
代理人 曾我 道治  
代理人 梶並 順  
代理人 古川 秀利  
代理人 鈴木 憲七  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ