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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1200020 |
審判番号 | 不服2007-29261 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-29 |
確定日 | 2009-07-01 |
事件の表示 | 特願2004-366346「全方向反射性の反射鏡を用いた光モード変換器」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月 7日出願公開、特開2005-182038〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成16年12月17日(パリ条約による優先権主張2003年12月17日、韓国)に特許出願したものであって、その請求項に係る発明は、平成19年10月29日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。 「【請求項1】 基板と、 前記基板に形成される第1導波路と、 前記基板に形成され、前記第1導波路と光学的に結合される第2導波路と、 前記第1導波路の両側に設けられ、第1導波路を進行するモードに対する全方向反射性の反射性を有する全方向反射性の反射鏡と、 を備え、 前記第1導波路と前記反射鏡との間にエアギャップが形成されていて、 前記全方向反射性の反射鏡は、Si/SiO_(2)による反復的な多重層構造を有することを特徴とする、モード変換器。」(以下「本願発明」という。) 2.引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前の刊行物である特開2001-356229号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a.「【0008】一方、最近研究が盛んになったフォトニック結晶構造(以下、PhC構造)とは、光の波長のおよそ半分程の周期の微細周期構造を作り込むことにより、その波長の光が存在できないという、いわゆる光のバンドギャップを発生させるものである。 【0009】従って、PhC構造に、光の伝搬すべき経路に沿って欠陥を作ることにより、その欠陥部分が光導波路として機能する。この方法による光の伝搬では、100%の閉じ込め効果が期待できるため、急激な曲げも可能となり、光回路の小型化が期待される。 【0009】従って、PhC構造に、光の伝搬すべき経路に沿って欠陥を作ることにより、その欠陥部分が光導波路として機能する。この方法による光の伝搬では、100%の閉じ込め効果が期待できるため、急激な曲げも可能となり、光回路の小型化が期待される。 【0010】本来、PhC構造は3次元に作製し、3次元的にバンドギャップを発生させるが、図8に断面構造を示すように、高さ方向に対しては、物質7a、7b、7cの屈折率の違いで光を閉じ込め、面内のPhC構造4により2次元的な閉じ込めのみを行う2次元PhC構造は、作製が比較的容易であるため、検討が進んでいる。 【0011】・・・・ 【0012】・・・・ 【0013】2次元PhC構造(以下、単にPhC構造と呼ぶ)4は、例えばSiのような屈折率の大きい1つの材料を用いて、図9や図10のような微細周期構造を作れば良いが、3次元方向への拡張性や、他のデバイスとの組合せなどを考慮して孔8a部分もしくは柱8bの隙間部分を他の材料で埋め込み、また、2次元構造の上に低屈折率物質を積層するという方法もある。このような場合に材料の組合せが問題となるが、Siとその酸化物であるSiO_(2)との組合せは材料の整合性も良く加工も容易で、最も有望な組合せである。」 b.「【0021】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態例として、主として下記の光集積回路について説明する。 (1) 光伝搬層内に形成した微細周期構造いわゆる2次元フォトニック結晶構造(以下、単にPhC構造と呼ぶ)内に欠陥を設けることでその欠陥部分に光を閉じ込める方法と、光の進行方向を含む面に対して垂直な方向においては上下の層に対して光伝播層のみ屈折率を高くすることにより光を閉じ込め、上記面内においては光の進むべき経路に沿って屈折率の高い物質のコアを設けて光を閉じ込める方法とを組合せた光集積回路。 ・・・・ (4) PhC構造による光閉じ込めを用いた光伝搬路と高屈折率コア形光導波路との接続部分に、スポットサイズ変換機能を付けることにより、PhC構造部分と通常の光導波路部分との接続効率を高めた光集積回路。 【0022】・・・・ 【0023】[実施形態例1]図1及び図2に、本発明の第1実施形態例として、PhC構造により光集積回路を構成した場合の光入出力部に、Si光導波路を適用した例の光集積回路を示す。 【0024】図1、図2において、PhC構造により形成したPhC回路部1は、そのPhC構造内に欠陥を設けて形成した光導波路構造(図11、図12中の光導波路2、3参照)を有しており、この光導波路構造にSi光導波路10のコア(図6、図7中のコア11参照)が接続される形で集積されている。・・・・Si光導波路10としては、図6(b)や図7(a)に示したリブ型Si光導波路、あるいは、図7(b)に示した埋込リブ型Si光導波路が用いられる。」 c.「【0043】[実施形態例3] 【0044】図4、図5に、本発明の第4実施形態例として、PhC構造による光導波路とSi光導波路との間に、スポットサイズ変換(SS変換)構造を有する光集積回路を示す。 【0045】図4、図5に例示した各光集積回路は、図1、図2に示した第1実施形態例と同様、PhC構造により光集積回路を形成した場合の光入出力部にSi光導波路10を適用した例であるが、実施形態例1との違いは、PhC構造による光導波路2とSi光導波路10との間に、スポットサイズ変換(SS変換)構造を設けていることである。 【0046】・・・・ 【0047】また、図5に例示した光集積回路のスポットサイズ変換構造6は、Si光導波路10との接続のために、PhC構造4による光導波路2を連続的にに(当審注:「連続的に」の誤記と認める。)徐々に光閉じ込め幅を拡大してスポットサイズを変換し、Si光導波路10と接続する構造となっている。 【0048】図5中、右側のSi光導波路10には、図4に示したようなスポットサイズ変換構造12を設けてある。 【0049】図4、図5どちらの光集積回路でも、スポットサイズ0.3μmとスポットサイズ4μmとの直接接続に比べて、結合効率が増大するのは明らかである。・・・・ 【0050】・・・・ 【0051】即ち、PhC構造4による光導波路2とSi光導波路10との少なくとも一方のサイズを変化させて、導波光のスポットサイズを変換することにより、結合損失を低減する効果がある。」 d.上記c.におけるPhC構造4(2次元フォトニック結晶構造)の材料は具体的には記載されていないが、上記a.(【0013】)には、Siのような屈折率の大きい1つの材料を用いて微細周期構造を作り、孔部分もしくは柱の隙間部分を他の材料で埋め込む場合、Siとその酸化物であるSiO_(2)との組合せが材料の整合性も良く加工も容易で、最も有望な組合せであることが示されているから、上記c.における、PhC構造により光集積回路を形成した場合の光入出力部にSi光導波路を適用した例において、PhC構造4の微細周期構造の材料に、SiとSiO_(2)との組合せを用いることは、当然想定されていることであると理解できる。 e.図6及び図8から、図5に示された光集積回路のSi光導波路10及びPhC構造4(2次元フォトニック結晶構造)は、基板の上に形成されるものであるといえることは、当業者において明らかである。 上記a.?e.によれば、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。 「PhC構造(2次元フォトニック結晶構造)による光閉じ込めを用いた光導波路とSi光導波路との接続部分に、スポットサイズ変換構造を設けることにより、PhC構造部分と通常の光導波路部分との接続効率を高めた光集積回路であって、 PhC構造の微細周期構造の材料に、SiとSiO_(2)との組合せを用い、 PhC構造及びSi光導波路を基板上に形成し、 PhC構造による光導波路を連続的に徐々に光閉じ込め幅を拡大してスポットサイズを変換した、光集積回路。」(以下「引用発明1」という。) (2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前の刊行物である特開2002-286958号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 f.「【請求項1】 入射口と出射口とを有し、前記入射口から入射された光を前記出射口へ導く導波路と、 前記導波路に接して設けられた第1のガイドと、 前記導波路に接し、かつ、前記第1のガイドに対向して設けられた第2のガイドとを備え、 前記第1および第2のガイドは、前記光が進行する第1の方向に垂直な第2の方向に屈折率が規則的に変化する一次元のフォトニック結晶体から成る、光導波路。」 g.「【0021】図3は、1次元のフォトニック結晶体における光の透過率の周期数依存性を示す。図3の(a)?(e)は、それぞれ、2周期、3周期、4周期、5周期、および6周期の場合を示す。また、図3の(a)?(e)の各図において、縦軸は、dB単位で表した光の透過率であり、横軸は光の振動数である。したがって、縦軸の値「0」は、光の透過率が100%であることを示し、縦軸の値がマイナスの値であれば、光の透過率が小さいことを示す。たとえば、縦軸の値が-20dBのとき光の透過率は約1%である。更に、各図において、破線は、1次元のフォトニック結晶体への光の入射角が0度の場合を示し、1点鎖線は入射角が45度の場合を示し、実線は入射角が89度の場合を示す。 【0022】図3の結果、1次元のフォトニック結晶体への入射角が大きくなると、各周期数において光の透過率が小さくなる。そして、4周期の場合、入射角が0度であっても、光の振動数を選択すれば光の透過率は-20dB以下になり、十分に光を閉じ込められる。好適な周期数の範囲は、4?6周期の範囲である。 【0023】図3に示したとおり、入射角が89度の場合、透過率が最も小さいため、ガイド2,3への光の入射角が89度になるように導波路4に光を入射させれば、入射した光は、殆ど損失することなく導波路4を伝搬する。すなわち、図4に示すように、ガイド2,3の法線30と成す角度が89度になるように導波路4に光を入射させる。入射された光は、ガイド2と導波路4との界面25およびガイド3と導波路4との界面26でほぼ100%反射されながら導波路4中を進行する。この場合、光は、界面25,26において89度の入射角と等しい反射角で反射されるため、導波路4中をほぼ平行光LBとして進行する。 【0024】このように、1次元のフォトニック結晶体をガイドに用いれば、導波路とガイドとの界面で光をロスしない光導波路を作製することができる。」 上記f.及びg.によれば、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。 「入射口と出射口とを有し、前記入射口から入射された光を前記出射口へ導く導波路と、 前記導波路に接して設けられた第1のガイドと、 前記導波路に接し、かつ、前記第1のガイドに対向して設けられた第2のガイドとを備え、 前記第1および第2のガイドは、前記光が進行する第1の方向に垂直な第2の方向に屈折率が規則的に変化する一次元のフォトニック結晶体から成る、光導波路であって、 一次元のフォトニック結晶体における周期数が4周期の場合、入射角が0度であっても、光の振動数を選択すれば光の透過率は-20dB以下になり、十分に光を閉じ込められ、入射角が89度の場合、透過率が最も小さいため、ガイドへの光の入射角が89度になるように前記導波路に光を入射させれば、入射した光は、ガイドと導波路との界面でほぼ100%反射されながら導波路中を進行する、 一次元のフォトニック結晶体をガイドに用いた、導波路とガイドとの界面で光をロスしない光導波路。」(以下「引用発明2」という。) (3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前の刊行物である特表平8-505707号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 h.「第8a図と第8b図は、発明の別の実施態様による導波管56の区分を描く。GaAs等の材料から作られた高屈折率エピレイヤー51は、基板53を形成するために、Ga_(x)Al_(1-x)As等の材料から作られた低屈折率ベース基板50の上面において形成される。基板53はまた、誘電又は光学材料の如く他の材料からも作られる。周期誘電構造52は、エピレイヤー51の平面において2次元で周期的である。光導波管56の区分は、ほぼ平行なトレンチ58と60の間のエピレイヤー51において形成される。導波管区分56は、900円形ベンド62を含む。90゜のベンド角度は、例示の目的のみのために選択される。ベンド角度は、90°である必要はない。トレンチ58と60は、エッチング又は他の公知のプロセスによって形成される。トレンチにおける空気は、導波管56によって伝達された光の内面反射に対して屈折率コントラストを設ける。周期誘電構造52は、トレンチ58と60の外側に設けられ、全内面反射のための必要条件が満たされない場合に損失を除去する。 周期誘電構造52は、導波管56において伝搬する光の既知周波数において周波数帯ギャップを有するように、第4?6図に関して記載された如く形成される。このため、光は、エピレイヤー51の平面において基板53に伝搬しない。結果として、ベンド62における光の損失は、事実上除去される。 例示のために、光は、矢印64の方向において導波管56を通って移動する。ベンド62に進入する時、光は、前述の如く角度の増大とともに導波管56とトレンチ58の間の障壁66に打ち当たる。一様な基板を有する先行素子において、光は、基板に伝搬し、損失される。しかし、第8a図と第8b図に示された如く本発明において、光は、周期誘電構造52のために基板53に伝搬しない。代わりに、光は、導波管56内に閉じ込められ、ベンド62を通って継続する。 第8a図と第8b図の実施態様において、導波管56は、エピレイヤー51においてトレンチ58と60を生成することにより形成される。第1a図と第1b図に関連して記載されたものを含む他の方法がまた、可能である。高屈折率チャネルが、一様基板に材料を拡散するか、又は基板における材料をエッチングすることにより形成される。チャネルが形成された後、周期誘電構造が、前述の手順により基板において形成される。」(17頁9行?18頁9行) i.「 22.縮小された放射損を有する光回路部品において、 基板(202)と、基板上又は基板内に形成された光集積回路(208、210、212)とを具備し、 少なくとも2つの次元において誘電率における空間周期変動を有する周期誘電格子構造(222)を有する、基板上又は基板内に形成した領域を具備し、格子次元は、光集積回路が動作可能である電磁放射線の周波数帯を規定する周波数帯ギャップを生成するように配分され、周期変動の平面において、そのような周波数における放射線が、領域内の少なくとも一つの次元において伝搬するのを実質的に防止されることを特徴とする光回路部品。 ・・・・ 36.光集積回路が、光導波管(212)を具備する請求の範囲22に記載の光回路部品。 ・・・・ 41.光導波管が、基板の表面において2つのほぼ平行なトレンチ(58、60)の間の材料のチャネルである請求の範囲36に記載の光回路部品。」(32頁15行?34頁4行) j.「光は、導波管の内側とその上の空気の間の屈折率コントラストのために、導波管から空間に伝搬しない。」(16頁16?18行。) 上記h.ないしj.によれば、引用例3には、次の発明が記載されていると認められる。 「基板と、基板上又は基板内に形成された光集積回路とを具備し、 少なくとも2つの次元において誘電率における空間周期変動を有する周期誘電格子構造を有する、基板上又は基板内に形成した領域を具備し、格子次元は、光集積回路が動作可能である電磁放射線の周波数帯を規定する周波数帯ギャップを生成するように配分され、周期変動の平面において、そのような周波数における放射線が、領域内の少なくとも一つの次元において伝搬するのを実質的に防止される光回路部品において、 光集積回路が、光導波管を具備し、 光導波管が、基板の表面において2つのほぼ平行なトレンチの間の材料のチャネルであり、 トレンチにおける空気は、光導波管によって伝達された光の内面反射に対して屈折率コントラストを設け、周期誘電格子構造は、2つのトレンチの外側に設けられ、全内面反射のための必要条件が満たされない場合の損失を除去したもの。」(以下「引用発明3」という。) 3.対比・判断 (1)本願発明と引用発明1とを対比する。 ア.引用発明1における「Si光導波路」、「SiとSiO_(2)」及び「基板」は、それぞれ、本願発明における「第2導波路」、「Si/SiO_(2)」及び「基板」に相当する。 イ.引用発明1における「『PhC構造(2次元フォトニック結晶構造)による光閉じ込めを用いた光導波路とSi光導波路との接続部分』に設けられ、『PhC構造による光導波路を連続的に徐々に光閉じ込め幅を拡大してスポットサイズを変換した』、『スポットサイズ変換構造』」は、「Si光導波路」(第2導波路)と接続されているから、 「『スポットサイズ変換構造』における『PhC構造による光導波路』の、光が導波する部分」は、本願発明における「第1光導波路」に相当し、引用発明1は、本願発明の「第2導波路」が「第1導波路と光学的に結合される」なる事項を備える。 ウ.引用発明1のPhC構造は基板上に形成されるから、上記イ.の「『スポットサイズ変換構造』における『PhC構造による光導波路』の、光が導波する部分」すなわち「第1光導波路」も基板上に形成されることは、明らかである。 エ.引用発明1の「スポットサイズ変換構造」は、「PhC構造による光導波路を連続的に徐々に光閉じ込め幅を拡大」したものであり、該「PhC構造」が「第1光導波路」(上記イ.参照。)の両側に設けられることは、明らかであるから、引用発明1の「PhC構造」と、本願発明の「全方向反射性の反射鏡」は、「第1導波路の両側に設けられ」、第1導波路において光を閉じ込める、すなわち、第1導波路を進行するモードを閉じ込める構造である点で一致する。 オ.引用発明1の「PhC構造の微細周期構造の材料」である「SiとSiO_(2)との組合せ」は、SiとSiO_(2)との周期構造、すなわち、SiとSiO_(2)とが交互に反復して備わった構造であると理解できる。したがって、引用発明1における「PhC構造」と、本願発明の「全方向反射性の反射鏡」は、「Si/SiO_(2)による反復的な」構造を有する点で一致する。 カ.引用発明1における「『スポットサイズ変換構造』を設けた『光集積回路』」は、本願発明の「モード変換器」に相当する。 上記ア.?カ.からみて、両発明は、 「基板と、 前記基板に形成される第1導波路と、 前記基板に形成され、前記第1導波路と光学的に結合される第2導波路と、 前記第1導波路の両側に設けられ、第1導波路を進行するモードを閉じ込める構造と、 を備え、 前記第1導波路を進行するモードを閉じ込める構造は、Si/SiO_(2)による反復的な構造を有する、モード変換器。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 第1導波路を進行するモードを閉じ込める構造につき、本願発明は、当該モードに対する「全方向反射性の反射性を有する全方向反射性の反射鏡」であって、その反復的な構造が「多重層構造」であるのに対し、引用発明1は、「PhC構造(2次元フォトニック結晶構造)」である点。 <相違点2> 本願発明は、「第1導波路」と「第1導波路を進行するモードを閉じ込める構造」との間にエアギャップが形成されているのに対し、引用発明1はそれが形成されていない点。 (2)上記相違点について検討する。 (2-1)上記相違点1について 引用例2には、上記2.(2)に記載のとおりの引用発明2が記載されており、引用発明2における「一次元のフォトニック結晶体」から成る「ガイド」は、光を反射し、反復的な多重層構造を有するものであると理解できるから、引用発明2の前記「ガイド」は、本願発明の「反復的な多重層構造を有する」「反射鏡」に相当するものである。また、引用発明2は、ガイドへの入射角が89度の場合、入射した光は、ガイドと導波路との界面でほぼ100%反射し、入射角が0度であっても、十分に光を閉じ込められるから、引用発明2の前記「ガイド」は、「全方向反射性の反射鏡」であるといえる。 そして、引用発明1において、光閉じ込めのためのPhC構造として、具体的のどのような構造を用いるかは、当業者が必要に応じて適宜選択すべき設計上の事項であるところ、引用発明1の光閉じ込めのための構造として、引用発明2のガイドを適用し、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 (2-2)相違点2について 引用発明3は、上記2.(3)に記載のとおりの「光回路部品」であって、トレンチ(本願発明における「エアギャップ」に相当する。)を、光導波管と、光を閉じ込める構造である「周期誘電格子構造」の間に形成するものであり、引用例3の上記2.(3)j.の記載に照らせば、該トレンチは、光導波管によって伝達された光の内面反射に対して屈折率コントラストを設けることにより、光導波管によって伝達される前記光が該光導波管から外部に漏れないようにしたものと理解できる。 そして、引用発明1と引用発明3はいずれも光を閉じ込める構造(PhC構造)を備えるものであり、引用発明1において、光導波路及びSi光導波路から伝達される光が外部に漏れないようにするために引用発明3を適用し、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 また、本願発明の効果は、本願明細書の記載をみても、引用発明1ないし3から当業者が予想し得る程度以上の、格別のものとは認められない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1ないし3のそれぞれに記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-28 |
結審通知日 | 2009-02-03 |
審決日 | 2009-02-16 |
出願番号 | 特願2004-366346(P2004-366346) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 林 祥恵、牧 隆志、河原 正 |
特許庁審判長 |
服部 秀男 |
特許庁審判官 |
吉野 公夫 三橋 健二 |
発明の名称 | 全方向反射性の反射鏡を用いた光モード変換器 |
代理人 | 小野 由己男 |
代理人 | 稲積 朋子 |