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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20056282 審決 特許
不服200625545 審決 特許
不服200523625 審決 特許
不服200611061 審決 特許
不服200625081 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1200042
審判番号 不服2006-22210  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-03 
確定日 2009-07-02 
事件の表示 平成 7年特許願第506839号「フラボノイド及びバイフラボノイド誘導体、その薬物的化合物並びにその抗不安活性」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 2月23日国際公開、WO95/05169、平成 9年 2月10日国内公表、特表平 9-501440〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯 ・本願発明
本願は,1994年8月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1993年8月17日,英国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明は,平成18年10月31日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「鎮静作用を伴わない不安治療剤を製造するための、有効量の一般式(I)で示すフラボノイド化合物の使用方法。
(一般式省略)
(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)及びR^(8)は、個別にH、OH、R、NO_(2)、ハロ、OR、NH_(2)、NHR、NR_(2)、COOR、COOH、CN又は糖類から選択され、R^(6)及びR^(7)は、共にHであるか、あるいは、R^(6)及びR^(7)は連携して一重結合を形成し、RはC_(1)?_(6)のアルキル基又はアルケニル基である。)

2 引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である「Kuk Hyun Shin, et. al, Sedative Action of Spinosin, Arch.Pharm.Res.(1978),Vol.1,No.1,pp.7-11 」(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。

「引用例1」
(1-a) 「Zizyphus 種子から単離されたスピノシンの急性毒性、及び鎮静作用がマウスでテストされた。スピノシンは、極めて弱い毒性を有し、また、比較的に高用量で、階段昇りテストにおける優れた鎮静作用、ヘキソバルビツール誘導催眠強化、並びにカフェイン誘導高活動性に関する拮抗作用を示した。」(要約)
(1-b) 「スピノシン・・・は、・・・であり、その化学構造は、2''-O-β-D-グルコピラノシル-スウェルチシンと確定された。」(第7頁左欄下から第5行?右欄第1行)
(1-c) 「本稿は、薬剤の中枢神経抑制活性に一般的な三つのテストを用いてスピノシンの詳細な鎮静作用を扱う。」(第7頁右欄第2?5行)
(1-d) 「マウスの階段登りテストに関する影響
・・・500mg/kg、1g/kg投与量で処理されたグループにおいて、階段を上らなかった動物はコントロールに対して、各々50%、65%であった。」(第9頁左欄第8?14行)
(1-e) 「ヘキソバルビタール誘導睡眠時間に関する影響
・・・コントロールグループの動物は機能障害のみで睡眠は見られない。スピノシン50mg/kgの投与によって、顕著な睡眠症状が現れた。」(第9頁左欄下から第6行?右欄第1行)
(1-f) 「カフェイン誘導高活動性に関する影響
カフェイン20mg/kg投与はマウスの孔横断頻度を著しく増大させた。・・・スピノシンを500mg/kg、1g/kg皮下投与されたマウスは、孔横断頻度を激減させた。」(第9頁右欄下から第12行?第10頁左欄第4行)
(1-g) 「薬剤の中枢神経抑制活性のテストのために行われた三つの動物実験から観察される結果は、スピノシンが穏やかだが重要な鎮静作用(データは示されていない)を有することを示した。」(第10頁左欄下から第7?34行)
(1-h) 「スピノシンは、クロルプロマジンと異なり、ペンテトラゾール(90mg/kg,皮下)によって引き起こされる間代性痙攣に対し、拮抗効果を奏しない。このことからスピノシンが抗痙攣作用、もしくは筋弛緩作用を有しないことが示された。上記の結果から、スピノシンは、予期しなかった副作用を現すことなく中枢神経系に対して単に一時的な抑制作用を示すにすぎないとすることができる。」(第10頁右欄第7?17行)

3 対比・判断
3-1 対比
上記摘示事項(1-a)?(1-h)において、スピノシンが鎮静作用を有すること、また、当該作用が薬剤の活性を測定するためのテストにおいて確認されたものであること、具体的に、薬剤として使用されているクロルプロマジンとの対比においてその効果が比較検討されていることから、スピノシンはその鎮静作用を期待して薬剤としての使用を意図したものと理解できる。
そして、薬剤としての使用に際しては、その有効成分化合物を、当該薬剤としての作用を発揮する有効量を含有させるものとして調製することは当然であるから、引用例1記載のスピノシンは、鎮静作用を発揮する有効量を用いるものということができる。
そうすると、引用例1には、「スピノシンを鎮静剤の製造に有効量使用する方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
そして、引用例1記載のスピノシンは、上記摘記事項(1-b)の記載、及び、同引用例第7頁記載の化学構造式から、本願発明中、一般式(I)で表される化合物のうち、R^(1)=OH、R^(2)=糖類、R^(3)=OR(RがC_(1)のアルキル基)、R^(4)=H、R^(5)=OH、R^(8)=H、R^(6)及びR^(7)が連携して一重結合を形成した場合の化合物に相当する。
ここで、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、「薬剤を製造するための、一般式(I)で表される化合物のうち、R^(1)=OH、R^(2)=糖類、R^(3)=OR(RがC_(1)のアルキル基)、R^(4)=H、R^(5)=OH、R^(8)=H、R^(6)及びR^(7)が連携して一重結合を形成した場合のフラボノイド化合物の使用方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

「相違点」
薬剤が、本願発明では鎮静作用を伴わない不安治療剤を製造するための、有効量を用いるとされているのに対し、引用発明では鎮静剤を製造するための、有効量を用いるとされる点。

以下、相違点、並びに本願発明の効果について検討する。

3-2 「相違点」についての検討
精神の不安・緊張を緩和または除去するのに有効な薬剤を抗不安薬といい、中枢神経系に対して一般的抑制作用を有する薬剤を鎮静薬ということは、本願出願前に広く知られている(たとえば、南山堂医学大辞典,1990年第17版,株式会社南山堂発行,第1306頁,第650頁;薬学大事典縮刷版,1982年第1版,日本工業技術連盟発行,第196頁;渋谷健 編,新薬理学入門,1981年第2版,株式会社南山堂発行,第106頁参照)。 R^(8)=H、
そして、鎮静薬として精神的静穏作用の強い抗不安薬が用いられていること、また、抗不安薬が、軽度の催眠鎮静作用を併せ持ち、臨床応用に際して、鎮静薬、もしくは睡眠導入剤として用いられること、さらに、薬物を抗不安作用を期待して神経症に用いるか、それとも催眠鎮静作用を期待して鎮静薬もしくは睡眠導入薬として用いるかは中枢神経抑制作用に関しての用量反応曲線の勾配に応じて決定されること、すなわち、鎮静作用に対する用量反応曲線の勾配が比較的緩やかな時は抗不安薬として、勾配が急な場合は睡眠導入薬として用いられることもまた、上記と同様、本願出願前にすでに広く知られている(南山堂医学大辞典,1990年第17版,株式会社南山堂発行,第1306頁,第650頁;渋谷健 編,新薬理学入門,1981年第2版,株式会社南山堂発行,第106頁参照)。
そうすると、ある化合物が、鎮静作用を示すか、それとも抗不安作用を示すかは、当該化合物の用量の多少あるいは反応の強弱に応じて、上記両作用のうちのいずれの作用を発現するかによるものと理解することができる。
そして、本願明細書の記載、たとえば、第2頁下から第8?6行、実施例2の実験効果をみれば、本願発明にいう不安治療剤は、抗不安作用を有する薬物を意味するものであると理解できるから、抗不安薬と同義であるといえる。
したがって、引用例1記載の、鎮静作用を有するスピノシンを、抗不安薬、すなわち不安治療剤として使用してみることは当業者が容易に想到しうることである。
一方、上記したように、鎮静作用を発現するか、抗不安作用を発現するかは、薬剤の用量の多少あるいは反応の強弱によるものと理解されるから、鎮静作用を有する薬剤を抗不安薬として用いようとする場合には、精神の不安・緊張を緩和又は除去するに止めて、中枢神経系に対する抑制効果、すなわち鎮静効果までは発現させない量で使用する必要性があることは明らかであり、スピノシンの用量を、中枢神経系に対する一般的抑制作用を表す鎮静作用と関連づけて、不安治療効果を奏するが鎮静作用を伴わない量とする点も当業者が格別の創作能力を要さずに行いうるところと認める。
また、引用例1に、スピノシンは、「抗痙攣作用、もしくは筋弛緩作用を有しない」、「予期しなかった副作用を現すことなく」、と記載されており(摘示事項(1-h))、このような記載に接した当業者であれば、鎮静作用を期待する薬剤にあっても、抗痙攣作用や筋弛緩作用といった、精神以外の、たとえば身体、運動に関する中枢神経系に対する抑制作用は副作用である、と理解するものといえる。
したがって、仮に、本願発明における「鎮静作用」が、抗痙攣作用や筋弛緩作用を含む意味で用いられているとしても、このような抗痙攣作用や筋弛緩作用といった、身体、運動に関する中枢神経系に対する抑制作用は、引用例1のような鎮静作用を期待する薬剤にあっても副作用として理解されるのであるから、精神の不安・緊張を緩和または除去すれば足りる抗不安作用を期待する場合にあっては、なおさら、これを避ける用量で用いようとすることは当業者が容易に想到しうるところである。

3-3 「本願発明の効果」についての検討

鎮静作用と抗不安作用とが質的に異なるものでないことは、上記のとおり従来から知られていたことであり、用量の多少あるいは反応の強弱に応じていずれかの作用に基づいた薬剤として使用されていたことを考慮すると、鎮静作用を有することが知られている薬剤の中から、鎮静作用あるいは抗不安作用のいずれか一方のみを発現する薬剤が見いだされたとしても、そのことをもって当業者に予想外に格別の効果であるとすることはできない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-08 
結審通知日 2009-01-14 
審決日 2009-02-19 
出願番号 特願平7-506839
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新留 素子鈴木 一正田名部 拓也安藤 倫世  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 穴吹 智子
弘實 謙二
発明の名称 フラボノイド及びバイフラボノイド誘導体、その薬物的化合物並びにその抗不安活性  
代理人 朝倉 正幸  

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